ファーストペンギンは、未開拓の分野へ挑戦する精神の持ち主のことです。ここでは、ファーストペンギンについて解説します。
1.ファーストペンギンとは?
ファーストペンギンとは、新しい分野でもリスクを恐れず挑戦するベンチャー精神の持ち主のことです。常に集団で行動するペンギンのなかでも、天敵がいるかもしれない海へ、魚を求めて真っ先に飛びこむペンギンをそう呼ぶのが元々の意味です。リスクはあるものの誰よりも先に行動する分、対価を得られる可能性が高まります。
日本では朝ドラの影響で浸透
ファーストペンギンは、NHK連続テレビ小説「あさが来た」の影響により浸透しました。「あさが来た」は、実業家で教育者の広岡浅子の生涯を描いた「小説 土佐堀川」(古川智映子著)を原案としたドラマです。
ディーンフジオカ演じる五代友厚が主人公の浅岡をファーストペンギンと呼んだことから、広く認知される言葉になりました。
ビジネスの世界におけるファーストペンギンの使われ方
ビジネスの世界でのファーストペンギンは、「前人未到でリスクがある新分野にチャレンジする人」「チャレンジから利益を得る人」を意味しています。
従来の価値観に縛られず、「新しい価値観の創造」「新しい技術の開発」などにチャレンジする人が、ファーストペンギンと称されていることになるのです。
パイオニアとの違い
ファーストペンギンに類似する言葉に、パイオニアという言葉があります。ファーストペンギンとパイオニアとの違いは、1番であるか否か。パイオニアは、先駆けて物事を始める開拓者です。つまり下記のような違いになります。
- パイオニア:最初に物事を始めた開拓者
- ファーストペンギン:新分野へのチャレンジにより利益を得た人
2.ファーストペンギンのメリットとデメリット
【メリット】先行者利益を得られる
先行者利益とは、最初に参入した者が得られる利益のこと。ファーストペンギンになれば、「マーケットシェアをどこよりも誰よりも早く取れる」「顧客が持っているマインドシェアを最初に確保できる」といったメリットを享受できます。
【デメリット】リスクが高い
ファーストペンギンとして未開拓の分野に飛び込んでいくと、「参考にできる前例がない」「やり方によっては、失敗に終わる可能性もある」といったリスクがあります。ファーストペンギンには、メリットもある半面、このようなデメリットもあるのです。
3.ファーストペンギンになるためには
ファーストペンギンになるため必要なことは何でしょう。ここでは下記3つのポイントについて解説します。
- ベンチマークする
- アートシンキングを養う
- STEAM教育
①ベンチマークする
ベンチマークとは、指標や基準のこと。「ファーストペンギンの名に値する人材をベンチマークの対象に選定する」「ベンチマークとなった人材と自分とを比較する」などで、ベンチマークを踏まえた現状改善に取り組めます。
②アートシンキングを養う
アートシンキングはアート的な思考方法です。新分野にチャレンジする場合、成果や評価、失敗や才能といった現実世界の限界を超えた思考が求められます。アートシンキングは、効率や成果を重視したビジネス的思考から脱却した独創的な思考力でもあるのです。
ファーストペンギンにアートシンキングが必要なわけ
なぜファーストペンギンにアートシンキングが必要なのでしょう。それは、ファーストペンギンが未開の新分野にチャレンジするからです。新分野で既存の概念や思考、データはまったく参考になりません。
従前の既成概念に捉われず、「直感的な感性」「アーティスト的思考」で物事を推し進めていくことこそが、新分野で力を発揮するファーストペンギンに求められています。
③STEAM教育
「Science(科学)」「Technology(技術)」「Engineering(工学)」「Art(芸術)」「Mathematics(数学)」の頭文字を取ったもので、理数系や芸術をミックスした教育法です。
「論理的思考」「自由に表現する芸術的要素」は、ファーストペンギン育成に不可欠となります。
4.ファーストペンギンとされる人物
ファーストペンギンとされる人物がいます。ここでは下記3人とともに、ファーストペンギンアワードの受賞者2人をあわせてご紹介します。
- スティーブ・ジョブズ
- マーク・ザッカーバーグ
- 三木谷浩史
①スティーブ・ジョブズ
スティーブ・ジョブズはアメリカの実業家です。アップル社の共同設立者の一人としても有名でしょう。
スティーブ・ジョブズは、個人がコンピューターを持つことなど考えもつかなかった時代から、「Mac」「iPod」「iPhone」「iPad」など新製品を次々と誕生させ、シリコンバレーを代表する企業に育て上げました。
②マーク・ザッカーバーグ
マーク・ザッカーバーグは、アメリカの実業家でプログラマです。世界最大規模のネットワーキングソーシャルサービス「Facebook」の共同創業者兼会長兼CEOとして活躍しています。
また売上高がほぼなかった「インスタグラム」を10億ドルという巨大な金額で買収するなど、自分の先見性や感性を大事にして時代の先を行くビジネスを展開しているのです。
③三木谷浩史
三木谷浩史は、日本の実業家です。楽天株式会社の創業者であり、現在も代表取締役会長兼社長を務めています。
「創業からわずか8年で、楽天を時価総額1兆円に急成長させた」「プロ野球球団を創設した」「『誰よりも早く走る』をモットーとし、eコマース事業の分野で勝ち抜き、ネットモールで圧倒的な地位を構築した」など、日本を代表するファーストペンギンです。
ファーストペンギンアワード
ファーストペンギンアワードは、デジタルガレージが主催しています。「世界におけるさまざまな分野で独創的な活動を続けている」「後進の育成に対しても積極的な取り組みを行っている」という人物に贈られる賞です。
【ファーストペンギンアワード受賞者】坂本龍一
ファーストペンギンアワード2017年の受賞者は、坂本龍一氏でした。
音楽活動や映画主演だけでなく、「先端テクノロジーを導入したグローバルな芸術活動の展開」「森林保全活動」「東日本大震災被災地の幼稚園や小・中・高等学校に対する音楽活動支援」など幅広い活動が、ファーストペンギンとして高く評価されました。
【ファーストペンギンアワード受賞者】本田圭佑
ファーストペンギンアワード2016年の受賞者は、本田圭佑氏です。
同氏は、「現役サッカー選手としての活躍」「複数プロサッカークラブのオーナー」「自らがプロデュースするサッカースクール『SOLTILO FAMILIA』」の開校により、選手・実業家・教育者としての幅広い活躍が認められ、受賞に至りました。
5.ファーストペンギンとセカンドペンギン
ファーストペンギンの類義語に、セカンドペンギンがあります。ここでは下記4つについて解説します。
- セカンドペンギンとは
- セカンドペンギンが必要な理由
- セカンドペンギンのメリット
- ファーストペンギンとセカンドペンギンは選択できる
①セカンドペンギンとは
セカンドペンギンとは、リスクの小ささを確認してから行動を起こす企業家です。
ファーストペンギンが未開の新分野に挑戦する勇者であるのに対し、セカンドペンギンは、「リスクが回避された分野に参入する」「ファーストペンギンの結果を参考にする」「優れた技術と的確なマーケティングを武器にする」などで利益を生み出します。
②セカンドペンギンが必要な理由
セカンドペンギンはなぜ必要なのでしょう。その理由は、市場を継続させるためです。もしファーストペンギンしかいなければ、ファーストペンギンはアローンペンギンと化してしまい、市場の継続性は望めません。
ファーストペンギンの後を追って市場に算入するセカンドペンギンがいるからこそ、市場は拡大や成長、成熟していくのです。
③セカンドペンギンのメリット
セカンドペンギンには、2つのメリットがあります。
初期の宣伝広告費がかからない
すでに市場はファーストペンギンが開拓してくれています。そのためブランド訴求のみに広告宣伝を絞れるのです。結果、初期の広告宣伝費を削減できます。
先発企業から学習できる
ファーストペンギンの失敗ならびに成功事例から学習するため、セカンドペンギンは「無駄な投資の抑制」「戦略的な事業展開」ができるようになります。
④ファーストペンギンとセカンドペンギンは選択できる
「ファーストペンギン」「セカンドペンギン」どちらになるかは、選択できます。選ぶ際は、「自社と競合他社の状況」「市場の状況」といった観点から冷静に判断するのです。
- リスクを取っても挑戦できる環境であれば、ファーストペンギンとして挑戦する
- より効率的な事業展開を望むなら、セカンドペンギンとして追随する