雇用契約書を電子契約にするには?【メリットと5つの注意点】

新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、オンライン入社を採り入れる企業も出はじめました。政府も「ハンコレス」を後押ししており、電子契約への関心が高まりつつあります。

この記事では、そのなかでも雇用契約書について、

  • 電子化の方法や労働条件通知書との違い
  • 電子化の注意点

などを解説します。電子契約サービスもピックアップして解説しますので、ぜひ参考にしてください。

1.雇用契約書とは?

雇用契約書とは民法623条にもとづき、雇用者と労働者との間で、雇用契約について合意したことを証明する書類です。雇用契約とは、労働者が労働に従事すること、雇用者が労働に対し報酬を支払うことについて、互いに約束する契約です。雇用契約書は法律で交付が義務づけられていません。しかし労働上のトラブルを未然に防ぐために、締結するのが慣習になっています。

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2.労働条件通知書との違い


労働条件通知書は、労働基準法第15条にもとづき、労働者に明示が義務づけられている項目について記載された書類です。明示すべき項目は、労働基準法施行規則に定められていて、「労働契約の期間」や「就業場所」「業務内容」などがあります。

雇用契約との違いは、法律で交付が義務づけられている点です。契約書ではありませんので、署名や押印の必要はありません。雇用契約書と労働条件通知書をひとまとめにして「労働条件通知書兼雇用契約書」として締結することもあります。

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3.電子契約とは?

電子契約は、紙の書類に押印する代わりに、PDFなどの電子データを使って契約を行うことです。電子データは改ざんの可能性もあるため、本人であること(本人性)と改ざんなどがされていないこと(完全性)を「電子署名」と「タイムスタンプ」という技術で担保します。紙と違って押印や郵送の手間が省け、リモートワークにも対応しやすいため、注目を集めています。

①押印がなくても法的に有効?

2020年6月に、内閣府・法務省・経済産業省の連名で、契約時の押印に関する見解が発表されました。あらためて、契約書には必ずしも押印が必要ないことを強調しています。

Q1.契約書に押印をしなくても、法律違反にならないか。

私法上、契約は当事者の意思の合致により、成立するものであり、書面の作成及びその書面への押印は、特段の定めがある場合を除き、必要な要件とはされていない。特段の定めがある場合を除き、契約に当たり、押印をしなくても、契約の効力に影響は生じない。

契約における押印の見直し|経済産業省
https://www.meti.go.jp/covid-19/ouin.html

電子契約や「ハンコレス」は政府も積極的に推進していて、2020年9月には行政手続きにおける押印廃止を呼びかけるほどです。

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4.雇用契約書は電子契約できるの?

雇用契約書も電子化できます。

2019年の法改正によって労働条件通知書の電子化も解禁されたため、オンラインでの入社手続きも格段にしやすくなりました。

ただし労働条件通知書については、「当該労働者が希望した場合」とされているため、通知方法について労働者に合意を得る必要があります。

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5.電子化するメリット

雇用契約書を電子化するメリットについて企業側、入社者側それぞれの観点から解説します。

企業側のメリット

企業側のメリットは大きく5つあります。

①リモートワーク対応

雇用契約書などを電子化することで、書類の印刷や郵送が不用になり、手続きのために出社する必要がなくなります。新型コロナウイルス感染症拡大の影響で、オンライン入社に取り組む企業も出はじめています。採用関連の書類を電子化できれば、雇用契約書だけでなく、さまざまな手続きのオンライン化が可能です。

②採用業務の効率化

雇用契約書を電子化することで、採用業務を効率化できます。紙でのやり取りだと場合によっては数ヶ月間かかることもあります。採用人数が多かったり、対応部署が複数にまたがる場合は、タスクも煩雑になりミスも起きがちです。電子契約サービスにはタスク管理ができるものもあるので、業務の可視化と効率化ができます。

③契約管理の効率化

電子契約にすれば、従業員の契約更新業務なども一元管理できます。多店舗展開する飲食店や小売店などは、従業員も多く契約管理の業務負荷も高くなりがちです。電子化した契約書のPDFを人事データベースに登録しておけば、契約状況や更新の状況も管理しやすくなります。

④コスト削減

電子化することで印刷代や郵送代、キャビネット代などのコストを削減できます。キャビネットを減らし、休憩所にしたりするなど、オフィススペースの有効活用も検討できます。

⑤コンプライアンス強化

電子化することで、コンプライアンスも強化できます。紙の書類だと紛失や更新漏れのリスクも生じますが、電子契約だとそれらを抑制できます。データのアクセス権限を設定することで、セキュリティの強化も可能です。

入社者側のメリット

電子化することは、入社する側にとってもメリットがあります。

①契約のためだけに訪問する必要がない

雇用契約が電子化されれば、契約のためだけに会社に訪問する必要がなくなります。これまでは入社前に訪問し、雇用契約や労働条件について説明を受け、署名・捺印する必要がありました。電子化すればその必要がなくなり、移動にかかる時間やコストのムダを減らし、外出による密を避けられます。

②切手代などのコストが不要

電子化されることで、郵送にかかる切手や封筒代などのコストが不要になり、郵便局に行く手間も減ります。雇用契約書だけでなく、入社に必要な書類をすべて電子化できるサービスもあります。メールで送付された書類を自宅でプリントアウトする必要もないため、印刷代もかかりません。

③スマホさえあればどこでもできる

電子契約のほとんどはスマホ対応となっています。そのためスマホさえあればいつでもどこでも手続きが可能です。電子契約サービスは、入社者はコストを支払うことなく無料で利用でき、画面の操作に従うだけで契約手続きを完了できます。

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6.電子化するデメリット

雇用契約書の電子化はメリットだけでなく、デメリットもあるので注意が必要です。ここでも企業側と入社者側それぞれの視点で解説します。

企業側のデメリット

企業側のデメリットは大きく分けて3つあります。

①サービス利用のコストがかかる

電子化するには電子契約サービスの費用がかかります。電子契約はクラウドサービスとして提供されることが多く、初期費用と月額費用が必要になるのが一般的です。書類の送信件数ごとに課金となるタイプもあるため、あらかじめおよその送信件数を見積もっておく必要があります。

②新たな操作に慣れる必要がある

電子契約に限ったことではありませんが、新しいサービスを導入する際には、その操作方法などに慣れる必要があります。従業員のなかには、これまでの業務フローを変えたくないという人もいるので、理解を得ることが重要になります。マニュアルやサポートなどは積極的に活用したいところです。

③入社者への説明や理解が必要

電子契約に関して、入社者にきちんと説明しておく必要があります。電子契約のやり方や、書類の確認ポイントなどを事前に説明しておかないと、後々トラブルになりかねません。雇用契約の電子化は比較的新しい仕組みです。証拠力などについてもきちんと説明しておく必要があるでしょう。

入社者がITに詳しい人ばかりとは限らないので、不安を感じさせないよう、配慮しなければなりません。

入社者側のデメリット

入社する側にもデメリットはあります。ここでは3つご紹介します。

①スマホやパソコンなどの機器が必要

電子契約では当然ながら、スマホやパソコン、タブレットなどの機器が必要になります。所有しているモバイル端末がスマホではなくガラケーというケースもあるでしょう。その場合は企業に相談し、書面での契約にしてもらうなど、別途対応が必要となります。

②入力の手間がかかる場合もある

一般的に、雇用契約のみを電子契約する場合は、指示に従ってタップまたはクリックしていけば操作は完了します。それだけでなく、オンラインで入社手続きを完結させる場合、氏名などの個人情報を自分で入力するケースもあります。スマホやIT機器の操作に不慣れな場合、やや手間に感じてしまうかもしれません。

③誤送信や誤タップなどのリスク

紙の書類と違い、電子契約の場合はスマホなどで書類を確認しタップするだけで契約が成立してしまいます。しっかり確認せず誤って送信したり、誤操作で送信してしまった場合でも、契約が成り立つので注意が必要です。一度締結した契約を却下する場合は、所定の手続きが必要となり、手間がかかってしまいます。

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7.雇用契約を電子化する場合に注意すべき5つのこと

雇用契約を電子化する場合、どのような点に注意すべきでしょうか。5つ、ご紹介します。

①どこまでを電子化するのか

雇用契約を電子化する場合、どこまでを電子化(オンライン化)するのかを、あらかじめ決めておきましょう。契約手続きのみを電子化するのか、入社手続きや採用プロセスそのものをオンライン化したいのか、目的や範囲によって導入すべきサービスも変わってきます

②サービスにどこまで機能を求めるか

電子契約サービスにどこまでの機能を求めるかも、事前に決めておくとよいでしょう。電子契約サービスには、契約書作成やタスク管理、システム連携など多くの機能が搭載されています。紙の契約書のスキャンを代行してくれるサービスも提供されています。

③サービスの本人確認方法

電子契約の本人確認方法は「電子証明書」と「メール認証(電子サインとも呼ばれる)」の大きく分けて2種類があります。メール認証は、固有のリンクが記載されたメールを、本人のメールアドレスへ送付することで本人確認をします。電子証明書は、第三者機関である認証局が、個人に電子証明書を発行するタイプです。

電子証明書の方が、より厳格に本人性を担保できるので、自社のルールと照らし合わせたうえで、どちらにするか検討するとよいでしょう。

④入社者への周知、理解促進の方法

雇用契約の電子化について、入社者の理解を得るための方法も、事前に検討しておきましょう。十分な理解が得られないまま、誤操作などによる不備が多発すれば、逆に手間を増やすことになります。ITに不慣れな人もいることを想定し、操作マニュアルや電子契約の仕組みなどを、リーフにまとめるのもよいでしょう。

⑤社内の理解促進

既存の従業員の雇用契約も電子契約にすれば、業務をさらに効率化できます。ただし、従業員の理解を得る必要があります。新しい操作を覚えたり、新たに入力などの作業が発生することをネガティブに捉える従業員もゼロとは限りません。説明会や研修など、電子化のメリットや意義を理解してもらうための機会を設けましょう。

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8.電子契約サービス比較7選

電子契約サービスについて、それぞれの機能や価格※などを比較しました。ぜひ参考にしてください。※価格は21年5月時点のものです

①クラウドサイン

弁護士が監修している電子契約プラットフォーム。シンプルな操作で契約手続きが完了できます。導入社数は10万社以上(2019年7月時点)。紙の契約書も管理できるという特徴があり、ユーザー数無制限の月額固定制です。

本人確認 メール認証
API連携
テンプレート登録
スキャン代行
ワークフロー管理 △※Slack連携は可能
料金 ・Standard?10,000円/月額固定 200円/契約一通
・Standard plus?20,000円/月額固定 200円/契約一通
・Business?100,000円/月額固定 200円/契約一通

クラウドサイン
https://www.cloudsign.jp/

②DocuSign

グローバルに電子契約サービスを提供するプラットフォームです。世界50万社以上が導入、44言語に対応しています。料金はユーザーライセンス型です。

本人確認 電子認証
API連携
テンプレート登録
スキャン代行 ×
ワークフロー管理
料金 ・Personal(個人向け)10ドル ※1ヶ月あたり5送信まで
・Standard
(企業向け)25ドル/ユーザーあたり
・Business Pro
(企業向け)40ドル/ユーザーあたり

DocuSign
https://www.docusign.jp/

③Adobe Sign

Acrobatを提供するAdobe社の電子サインサービス。簡単なステップで契約書を送付し、署名を依頼できます。署名がされると通知されたり、リマインドを送信するなどのワークフロー管理が充実しています。

本人確認 メール認証と電子署名に対応※エンタープライズ版のみ
API連携
テンプレート登録
スキャン代行 ×
ワークフロー管理
料金 【個人】
・Adobe Acrobat PDF Pack 1,107円/月
・Adobe Acrobat Pro DC?1,580円/月
【2ユーザー以上/企業向け】
・Adobe Sign小規模企業版?3,882円/ライセンス
・Adobe Signビジネス/エンタープライズ版?要問い合わせ

電子サインで業務の継続性を維持
https://acrobat.adobe.com/jp/ja/sign.html

④BtoBプラットフォーム 契約書

48万社が導入している電子契約プラットフォーム。ワークフロー管理が充実していて、ユーザー数無制限の月額固定制です。ドキュメントScanサービスを申し込めば、紙の契約書も電子化可能です。

本人確認 電子認証
API連携
テンプレート登録
スキャン代行
ワークフロー管理
料金 ・フリープラン 0円 電子契約5件まで/月
・シルバープラン 10,000円/月 50円/契約一通
・ゴールドプラン?30,000円/月 50円/契約一通

BtoBプラットフォーム 契約書
https://www.infomart.co.jp/contract/index.asp

⑤GMO電子印鑑Agree

弁護士が監修する電子契約プラットフォームです。ワークフロー管理やAD連携など豊富なオプションがあります。電子署名とメール認証(電子サイン)の両方に対応しています。

本人確認 メール認証と電子署名に対応
API連携
テンプレート登録
スキャン代行
ワークフロー管理
料金 ・お試しフリープラン 月額0円/月、送信料0円※5文書まで
・契約印&実印プラン 月額8,800円/月、送信料契約印タイプ100円/通 実印タイプ300円/通

GMO電子印鑑Agree
https://www.gmo-agree.com/

⑥NINJA SIGN

契約数が無制限な電子契約プラットフォーム。ワークフローや契約書管理、検索などの機能が充実しています。UIがシンプルで使いやすいのが特徴です。

本人確認 メール認証と電子署名に対応
API連携
テンプレート登録
スキャン代行 ×
ワークフロー管理
料金 ・Free 月額0円 ※送信数5件まで
・Light 月額4,980 1アカウント?※送信数50件まで
・Light Plus 月額19,800円 1~6アカウント※アカウント追加1,000円/アカウント
・Pro 初期費用330,000円 月額50,000円 1~20アカウント※アカウント追加500円/アカウント
・Pro Plus 初期費用330,000円 月額120,000円※アカウント追加300円/アカウント

NINJA SIGN
https://ninja-sign.com/

⑦SmartHR

導入社数30,000社以上のクラウド人事労務ソフトSmartHRが提供する電子契約サービス。契約書だけでなく在籍証明書など、他の人事文書にも対応しています。従業員データベースと紐づけ、契約更新などの情報も一元管理可能です。

本人確認 メール認証
API連携
テンプレート登録
スキャン代行 ×
ワークフロー管理
料金 オプション機能、詳細は問合せ

SmartHR
https://smarthr.jp/