失業給付金とは、雇用保険から離職者に支払われる給付金です。ここでは失業給付金について詳しく解説します。
1.失業給付金とは?
失業給付金とは、労働者の雇用の継続が困難になった際、雇用保険から離職者に支払われる給付金のこと。
2.失業給付金の給付の種類
- 求職者給付
- 就職促進給付
- 教育訓練給付
- 雇用継続給付
①求職者給付
求職者給付とは、「求職中である失業者の生活安定」「再就職のために行う技能習得の援助」を目的とした給付のこと。
一般被保険者の求職者給付には、「基本手当」「傷病手当」「技能習得手当」「寄宿手当」の4種類があります。一般被保険者以外にも、「高年齢被保険者」「短期雇用特例被保険者」「日雇労働被保険者」に対して求職者給付が設けられているのです。
②就職促進給付
就職促進給付とは、「基本手当の受給中に就職が決まった」「一定の要件を満たした」人に支給される手当のこと。
「受給者が正社員としての再就職決定の際に支給される再就職手当」「受給者がパートやアルバイトでの就業決定の際に支給される就業手当」「45歳以上の受給者や身体障がい者において1年以上の雇用が決定した際に支給される常用就職支度手当」があります。
③教育訓練給付
教育訓練給付とは、厚生労働大臣が指定した講座を受講し終了した際、教育訓練施設へ支払った経費の一部を支給する給付のことで、講座受講者本人に給付されます。
教育訓練給付は、支給要件や金額、対象講座によって、一般教育訓練給付と専門実践教育訓練給付に分かれます。
④雇用継続給付
雇用継続給付とは、職業生活の円滑な継続の援助・促進を目的とした給付のこと。
一定要件を満たした場合に受給できる「60歳以上65歳未満の被保険者への高年齢雇用継続給付」「1歳未満の子を養育するため育児休業を取得する被保険者への育児休業給付」「家族を介護するための介護休業を取得する被保険者への介護休業給付」があります。
3.失業給付金の受給条件
失業給付金の受給条件はどうなっているのでしょう。ここでは、失業給付金の受給要件について下記3つから解説します。
- 一般離職者の場合
- 特定理由離職者の場合
- 特定受給資格者の場合
①一般離職者の場合
一般離職者の失業給付金の受給要件は、以下のとおりです。
- 一般被保険者で失業している
- 離職の日以前2年間に被保険者期間が通算して12カ月以上ある(特定受給資格者、特定理由離職者に該当する場合は、離職の日以前1年間に被保険者期間が通算して6カ月以上ある場合も可)
- ハローワークで求職の申込みを行い、就職の意思と能力があるのに失業の状態にある
②特定理由離職者の場合
特定理由離職者とは、以下のとおりです。
- 特定受給資格者以外の者で、定められた労働契約期間が満了し、かつ労働者が更新を希望したにもかかわらず当該労働契約の更新がなく離職した者
- 疾病、負傷、結婚、妊娠など正当な理由で自己都合により離職した者
失業給付金の受給要件は、「離職以前1年間に、雇用保険の被保険者期間が6カ月以上ある」「ハローワークで求職の申込みを行い、就職の意思と能力があるのに失業の状態にある」となっています。
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③特定受給資格者の場合
特定受給資格者とは、解雇や退職勧奨などにより再就職を準備する時間的余裕がないまま離職を余儀なくされた者です。
特定受給資格者の失業給付金の受給要件は、離職日以前1年間に離職日からさかのぼって1カ月ごとに区切った期間に、賃金支払いの基礎日数が11日以上ある月が通算して6カ月以上あることです。
4.失業給付金の金額
失業給付金は、労働者の雇用の継続が困難になった際、雇用保険から労働者に支払われる給付金です。失業給付の金額について下記2つのポイントから解説します。
- 基本手当日額の年齢別目安
- 失業給付金が減額となるケース
①基本手当日額の年齢別目安
基本手当日額には年齢別目安があります。基本手当日額とは、失業手当の1日の給付額です。「 賃金日額(退職前6カ月の賃金合計÷180)× 給付率(50~80%)」で計算します。上限額は、下記のとおりです。
- 29歳以下で6,815円
- 30~44歳で7,570円
- 45~59歳で8,330円
- 60~64歳で7,150円
②失業給付金が減額となるケース
失業給付金が減額となるのは、受給中に「内職または手伝い」といった1日4時間未満のアルバイトをしたとき。そこで得た収入金額により、失業給付が減額もしくは不支給となるのです。
アルバイトをしたら、「失業認定申告書」によりその旨を申告します。申告しなければ失業給付金の不正受給と見なされ、罰則が適用されるので注意しましょう。
5.失業給付金の給付期間
失業給付金の給付期間は、退職事由によって異なります。ここでは失業給付金の給付期間に影響を与える2つの退職事由と、給付期間の関係性について解説します。
- 自己都合退職
- 会社都合退職
①自己都合退職
自己都合退職とは、労働者側自らの意思や都合で退職すること。離職時の年齢が65歳未満の自己都合退職では、雇用保険加入期間に応じて、「10年未満で90日」「10年以上20年未満で120日」「20年以上で150日」になります。
②会社都合退職
会社都合とは、経営不振や倒産など会社側から一方的に労働契約を解除されること。給付日数は、90日〜330日です。
45歳以上60歳未満がもっとも手厚く、「1年未満で90日」「1年以上5年未満で180日」「5年以上10年未満で240日」「10年以上20年未満で270日」「20年以上で330日」となっています。
6.失業給付金の手続き
失業給付金を受給するためには、所定の手続きが必要です。下記4つの手続きについて解説しましょう。
- 離職証明書と離職票を受領し、書類を準備する
- ハローワークへ申請に行く
- 雇用保険受給者説明会に参加する
- 失業認定日に手続きをする
①離職証明書と離職票を受領し、書類を準備する
会社は「離職証明書」を発行し、離職者が記名捺印またはサインをした後、離職日の翌日から10日以内に、離職証明書と添付書類をハローワークに提出します。
その後、ハローワークは「雇用保険被保険者離職票」を会社に発行。離職者は会社経由で受け取った「雇用保険被保険者離職票」を持って、ハローワークで失業給付金申請を行うのです。
②ハローワークへ申請に行く
離職者は、「雇用保険被保険者証」「雇用保険被保険者離職票」「マイナンバーの記載が確認できる書類」「身元が確認できるもの」「証明写真2枚」「印鑑」「本人名義の預金通帳」などを持って、ハローワークへ申請に向かいます。
ハローワークでは、「失業手当の受給要件を満たしているかの確認」「受給資格の決定」が行われるのです。
③雇用保険受給者説明会に参加する
受給資格が決定したら、指定の日時に行われる雇用保険受給者説明会に参加します。雇用保険受給者説明会では、雇用保険制度の仕組みや失業給付の受給、不正受給に関する説明があるのです。
このとき、雇用保険受給資格者証と失業認定申告書が離職者にわたされます。そして失業認定日が決定するのです。
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④失業認定日に手続きをする
雇用保険受給者説明会日に決定した失業認定日に、所定の手続きをします。失業認定日とは、失業状態にあるとハローワークが確認する日です。失業認定日はハローワークが4週間に1回日時を指定して、決定します。
失業認定日に失業が確認できたあと、失業が認定された期間分の失業給付金が支給されるのです。
7.失業給付金にかかわる準備
企業が行う失業給付金に関わる準備とは、何でしょうか。ここでは下記3つの書類をもとに、失業給付金にかかわる準備について解説します。
- 雇用保険被保険者資格喪失届
- 離職票
- 離職証明書
①雇用保険被保険者資格喪失届
雇用保険被保険者資格喪失届とは、「退職」「週所定労働時間が20時間未満に変更する」「従業員が法人役員になった」「兼務役員が従業員としての身分を失う」「死亡」といった状況における手続きに必要な書類のこと。
企業は事由が発生した日の翌日から10日以内に、雇用保険被保険者資格喪失届を管轄のハローワークに提出します。
②離職票
離職票とは、雇用保険被保険者離職票のこと。「離職票-1は退職者に雇用保険資格喪失を通知する書類」「離職票-2は雇用保険被保険者離職証明書の複写の1枚」で構成されています。
ハローワークは企業から離職証明書が提出されたら確認して、企業へ離職票を交付します。企業は離職票を交付されたら、速やかに離職者に返送するのです。
③離職証明書
離職証明書とは、離職者が「会社を退職している」「社会保険加入のために被保険者資格がない」を証明する書類のこと。
離職証明書は、「転職先の企業へ退職を証明する」「市役所で国民健康保険へ変更、加入する」「ハローワークで離職票の代わりに用いて失業保険給付手続きを行う」際、提出を求められます。
8.失業給付金手続きの注意点
失業給付金手続きの際、注意点があります。ケースごとに注意点を解説しましょう。
- 外国人が退職する場合
- 労働者を解雇した場合
- 労働者を雇用保険に加入させていなかった場合
- パートやアルバイトの場合
①外国人が退職する場合
外国人が退職する場合の注意点は、下記のとおりです。
- 「雇用保険に未加入の外国人が離職する場合、「外国人雇用状況の届出」を離職日翌月末日までに、管轄のハローワークに対し行う
- 「外国人雇用状況の届出」を行っていない場合、一部例外を除き、受け入れ終了日から14日以内に「中長期在留者の受入れに関する届出」を入国管理局に対し行う
②労働者を解雇した場合
労働者を解雇した場合の注意点は、下記のとおりです。
- 「雇用保険被保険者資格喪失届」と「離職証明書」を会社は解雇の日から11日以内に管轄のハローワークに提出する
- ハローワークから「離職票」が交付されたら、解雇した労働者へ速やかに返送する
離職票は、解雇した労働者が失業保険をもらう際に必要になります。トラブル回避のためにも速やかに送りましょう。
③労働者を雇用保険に加入させていなかった場合
一定数以上の労働者を雇用する会社には、資格のある労働者を雇用保険に加入させる義務が発生します。もし労働者を雇用保険に加入させていなかった場合は、雇用保険法83条1号により「懲役6カ月以下もしくは罰金30万円」が科せられるのです。
また加入させていなかった事実を隠そうとして虚偽の届けを出した場合も、罰則の対象になります。
④パートやアルバイトの場合
パートやアルバイトの場合、「31日以上雇用される」「週20時間以上のシフトが見込まれる」ケースでは、雇用保険の加入手続きをしなければなりません。
ここでの週20時間とは、雇用契約上の所定労働時間を指します。シフト上で週の所定労働時間が異なる場合、月の合計が週20時間相当を超えるか否かで加入を判断するのです。