ポジティブフィードバックとは?【やり方をわかりやすく】

ポジティブフィードバックとは、相手のポジティブな面に注目したフィードバックのことです。ここではポジティブフィードバックのメリットや上手に行うポイント、NG行動などについて解説します。

1.ポジティブフィードバックとは?

ポジティブフィードバックとは、被評価者の言動から評価できるポジティブな点を見つけ出し、前向きな言葉で被評価者に伝えてさらなる自発的成長を促す手法のこと。ビジネスを始め、看護や医学などさまざまなフィールドで活用されています。

ポジティブフィードバックはもともと、制御系システムの帰還回路に関する用語として用いられていました。しかし現在、高い効果が得られる人材育成技術だと知れわたっているため、人材マネジメント用語として広く活用されているのです。

フィードバックとは?

フィードバックとは、物事の反応や結果を見て改良や調整を加える手法のこと。電気回路では出力による入力の自己調整機能、生体では代謝や内分泌の自己調整機能などを指します。

ビジネスにおけるフィードバックは、行動や成果に対する評価内容を被評価者に伝え、より良い結果へ導くための手法として使われています。

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ネガティブフィードバックとの違い

ポジティブフィードバックと対極にあるのが、部下の言動に対してあえて否定的な表現を使ってフィードバックする「ネガティブフィードバック」。

人材マネジメントにはふさわしくないと思われがちです。しかし相手が聞きたくない点や言いにくい改善点などを上手に指摘できれば、何が問題なのか自分で考えたり状況を打破したりする力を身に付けさせられます。

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2.看護におけるポジティブフィードバック

ポジティブフィードバックは、看護の現場でも同様の意味合いで用いられます。

看護の仕事は患者の命を預かる大事な役割。看護師間はもちろん、医師やほか部署と連携して、患者一人ひとりに適したより良い医療を提供していきます。適切な対応を進めるためには、ポジティブフィードバックが欠かせないのです。

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3.医学用語としてのポジティブフィードバック

医学用語としてのポジティブフィードバックは、「肯定的な」といった意味合いで用いられます。

女性ホルモンを例に見てみましょう。血中の女性ホルモン濃度が上昇すると視床下部や下垂体に抑制がかかり、卵胞刺激ホルモン(FSH)と黄体形成ホルモン(LH)の分泌が抑制されます。

反対に血中の女性ホルモン濃度が低下するとFSHとLHの分泌が促されるのです。これを「ポジティブフィードバック」といい、前者の抑制を「打消しの」という意味で「ネガティブフィードバック」といいます。

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4.ビジネスシーンでポジティブフィードバックを行うメリット

人材マネジメントではなぜ、ポジティブフィードバックを行う必要があるのでしょう。ここではビジネスシーンでポジティブフィードバックを行うメリットについて、4つの視点から説明します。

  1. 信頼関係の構築
  2. 組織目標と個人目標をすり合わせられる
  3. 部下の様子を日常的に観察できる
  4. 成長速度の促進

①信頼関係の構築

会議が停滞する主な理由は信頼関係の欠如、意見やアイデアに対する批判です。ではここで、会議にポジティブフィードバックが取り入れられたシーンを想像してみてください。

ポジティブフィードバックでは頭ごなしに相手を批判しません。たとえ意見に賛同できなくとも、それが非常に良い考えだと述べてから改善点やアイデアを提案するのです。これにより相互の信頼関係が構築され、話し合いを円滑に進められます。

②組織目標と個人目標をすり合わせられる

ポジティブフィードバックは「組織の目標」と「個人の目標」を紐付ける際にも有効です。ポジティブフィードバックによってプロジェクトメンバーが抱えている課題や目標を共有できれば、被評価者も「自分の役割」を理解できます。

組織目標を達成するために必要となるスキルや能力を個人目標として設定すれば、個人力の向上が組織力・チーム力の向上に結び付くでしょう。

③部下の様子を日常的に観察できる

フィードバックの際、「被評価者のネガティブな部分は浮かんでくるのに、ポジティブな部分はなかなか浮かんでこない」という経験はありませんか?

ポジティブな評価を行うためにも、日頃から被評価者の言動や雰囲気をしっかり観察しておきましょう。これが効率的で有意義なフィードバックにつながるのです。

④成長速度の促進

ポジティブフィードバックは、被評価者の動機付けに大きな効果を発揮します。自己評価の精度を高めるためには他者評価が欠かせません。そしてその他者評価や期待値が高ければ高いほど被評価者のモチベーションや成長速度が向上するのです。

被評価者の変化や成長を正当に評価し、本人に強みや問題点を伝えられれば、被評価者は現状をより具体的に認識できます。それにより、モチベーションや制直速度が向上するのです。

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5.ポジティブフィードバックの方法

ポジティブフィードバックを実行するには、どのような取り組みが必要なのでしょう。ここではポジティブフィードバックの具体的な方法について、以下3つの視点から説明します。

  1. 良かった点を具体的に伝える
  2. 成功結果を通知する
  3. 目標の達成度とこれからの課題について指摘する

①良かった点を具体的に伝える

ビジネス経験が浅い被評価者に、「何が良かったのか」具体的に伝えないとその事実をうまく自己認識できません。

部下がよくできたリポートを作成した際は、「どこがよかったのか」具体的かつできるだけ早いタイミングで伝えましょう。それによりフィードバックの効果が高まります。

②成功結果を通知する

ポジティブフィードバックでは、被評価者の望ましい行動がもたらした良い結果を本人に伝えるのがもっとも重要とされています。

前述した「評価できる行動」だけを伝えても、被評価者は「褒められるほどの行動をしていない」と感じてしまうのです。「あなたのAという言動がBという結果を導いた」のように、評価対象となる言動と成功結果をセットにして伝えます。

③目標の達成度とこれからの課題について指摘する

2回目以降、すでに目標を立てたうえでのフィードバックなら、目標に対する達成率とこれからの課題を具体的に指摘しましょう。同時に、目標に対する被評価者の長所や目標とは異なる角度から見た長所についても、フィードバックします。

そのあと「今後はどのように業務に取り組んでほしいか」、企業の経営戦略に踏み込んだ話につなげましょう。

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6.ポジティブフィードバックを上手に行うポイント

ポジティブフィードバックはただ単純にポジティブな言葉を投げかければよいわけではありません。限られたフィードバックの時間を有意義なものにするためにも、ポイントを押さえておきましょう。

  1. 根拠をしっかり立てる
  2. 本人の努力と関連性が低い成果を評価しない
  3. フィードバックだけで終わりにしない
  4. 総合評価を同時に行う
  5. サンドイッチ型を用いる

①根拠をしっかり立てる

根拠に欠けるポジティブワードを並べただけのフィードバックでは、被評価者の納得感や成長を期待できません。適切なポジティブフィードバックにするためにも、評価点についての根拠を明確にしておきましょう。

「よく頑張ってくれた」とあいまいに評価されるより「この取り組みのおかげでチームの売上が○%アップした」のように、具体的な根拠とあわせた丁寧な説明が重要です。

②本人の努力と関連性が低い成果を評価しない

被評価者が「自分の言動によってこの成果が生み出されたのだ」と実感できればできるほど、高い効果をもたらします。

努力と関連性が低い成果を過度に評価しても、被評価者は「活動内容が正しく把握されていないのでは」「評価者は自分の努力と関係ない点を褒めている」という疑念を抱いてしまうのです。

③フィードバックだけで終わりにしない

フィードバックは、出発地点を決めている段階に過ぎません。フィードバックを実施した点に満足して、そこで終了とならないよう注意しましょう。

フィードバックはアフターケアが重要です。「お互いの連絡先を交換する」「社内の集まりにはできるだけ顔を出す」など、フィードバック後も被評価者が相談しやすい環境を整えましょう。

④総合評価を同時に行う

具体的なフィードバックを行う前に総合的評価から切り出したフィードバックを行いましょう。被評価者はこれからどのような評価を受けるのだろう、と少なからず緊張しているもの。

総合的な評価を同時に行うと「アイスブレイク(緊張感を解いて雰囲気を和ませる)」効果が期待できます。結果としてポジティブフィードバックの質をより高められるのです。

⑤サンドイッチ型を用いる

ネガティブなフィードバックをポジティブなフィードバックで挟み込む手法を「サンドイッチ型のフィードバック」といいます。「サンドイッチ型」では「褒める→改善点を指摘する→褒める」の順番でフィードバックを行うのです。

ネガティブなフィードバックはモチベーションの低下や不快感を招く恐れもあります。ポジティブなフィードバックで挟めば、ネガティブなフィードバックがもたらす悪影響を軽減できるのです。

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7.ポジティブフィードバックでのNG行動

ポジティブフィードバックを上手に行うポイントとあわせて、注意点についても触れておきましょう。ポジティブフィードバックのNG行動は、下記の2つです。

  1. 複数人でフィードバックを行う
  2. 主観的な意見ばかりを述べる

①複数人でフィードバックを行う

フィードバックは1対1での実施が原則です。耳の痛い話は周囲に聞かれたくないもの。フィードバック内容がほかの人に漏れないよう、個室や会議室などで行いましょう。

また評価者が複数いた場合、どうしても被評価者は萎縮してしまいます。フィードバックはマンツーマンで、さらに他者の目につかない場所で行うのがベストです。

②主観的な意見ばかりを述べる

ポジティブフィードバックは、「貢献できる人材になるにはどのような改善が必要か」「業務を踏まえて本人が成長するにはどのような方法が必要か」を話し合う場です。

評価者の独断や偏見、主観的な意見ばかりを述べてしまうと、その発言から説得力や信頼性が損なわれます。あくまでも企業の一員として、客観的な視点から評価を行うよう意識しましょう。

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8.ポジティブフィードバックのその他の型

ポジティブフィードバックには、先に述べた「サンドイッチ型」のほかにも効果的な型が2つあります。下記の2つについて、解説しましょう。

  1. フィードバックの内容がより具体的に理解できる「SBI型」
  2. 被評価者自身の内省を促した「ペンドルトン型」

①フィードバックの内容がより具体的に理解できる「SBI型」

「SBI型」とは、Situation(状況)、Behavior(行動)、Impact(影響)の頭文字を取ったフィードバック手法のこと。S→B→Iの手順でポジティブフィードバックを行うと、被評価者はフィードバックの内容をより具体的に理解できるのです。

SBI型によって被評価者は「自分のことをしっかり見てくれている」という気持ちになるため、相互に信頼関係を築けます。

②被評価者自身の内省を促した「ペンドルトン型」

「ペンドルトン型」とは、被評価者自身に自分が行うべき行動を考えてもらい、主体的な行動を促す手法のこと。ペンドルトン型を用いると、被評価者に自らのアクションを考えさせられるのです。

他人から指摘されるよりも自分で気付けるため、積極的な行動やモチベーションの向上が期待できます。