ワーケーションとは? 普及に影響するデメリットとは?

ワーケーションとは「ワーク」と「バケーション」を組み合わせたニューノーマルな働き方のことです。ここではワーケーションのメリットやデメリット、導入企業の例について解説します。

1.ワーケーションとは?

ワーケーションとは、普段の職場とは違う観光地や帰省先などで働きながらも休暇を取る過ごし方のことで、仕事の「work」と休暇の「vacation」を組み合わせた造語です。

ワーケーションのルーツはアメリカ

ワーケーションが始まったのは、パソコンやインターネットが急速に普及した2000年代。ルーツはアメリカにあるといわれています。

アメリカでは年次有給休暇を取得する権利が法律で保障されておらず、休暇中でもメール対応や電話会議に追われ、完全休暇とならない場合も多くありました。

そこで生まれたのが、従業員の有給取得率向上と長期休暇促進を同時に叶える働き方「ワーケーション」です。

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2.ワーケーションの種類

ワーケーションは、下記2つに分類されます。

  1. 企業やチームで実施する「仕事目的型ワーケーション」
  2. 福利厚生としての意味合いが強い「旅行目的型ワーケーション」

①企業やチームで実施する「仕事目的型ワーケーション」

「仕事目的型ワーケーション」とは、企業が主体となって行き先を決め、普段とは異なる場所で仕事に取り組み、地方創生に貢献するスタイルのこと。

業務の前後や週末に食事会や懇親会、アクティビティなどの時間を設けるため、地域の魅力を味わえます。チームの結束が強まる、各プロジェクトや個人業務に集中できるといった効果が期待できるのです。「出島型ワーケーション」と呼ばれる場合もあります。

②福利厚生としての意味合いが強い「旅行目的型ワーケーション」

「旅行目的型ワーケーション」は、さらに休暇取得を伴う「休暇型」と、休暇取得を伴わない「非休暇型」に分かれます。いずれも日常の職場とは異なる地に赴き、主に旅行を楽しむことを目的としたワーケーションです。

「仕事目的型」は仕事を目的に、「旅行目的型」は旅行を楽しむことを目的にしたワーケーションとして区別されます。

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3.日本におけるワーケーションへの取り組み

ワーケーションはもともと日本と同様、有給取得率の低いアメリカで広がりました。さて近年の日本ではどのような取り組みが行われているのでしょう。日本における主な取り組みとして、以下の3つが挙げられます。

  1. 環境省による補助金の支給
  2. 和歌山県のワーケーションプロジェクト
  3. 長野県の信州リゾートテレワーク

①環境省による補助金の支給

ワーケーションの普及に取り組んでいるのは、自治体や各企業だけではありません。環境省によってもワーケーション普及に向けて取り組みが行われているのです。

この取り組みは、新型コロナウィルス感染症の流行で打撃を受けた観光地への経済支援対策のひとつ。実施に係る事業や環境整備事業に上限300万円の補助金を交付しています。

②和歌山県のワーケーションプロジェクト

和歌山県は、早くからワーケーションの推進に取り組んできました。

ワーケーションの先進地として情報交換会やワーケーション体験会の実施、ワーケーションに適切なカフェや宿泊場所などの問い合わせに対応する、ワーケーション・コンシェルジュなどを設置してきたのです。

ワーケーションを単なる企業誘致ではなく、「価値創造ツール」として捉えて取り組んでいます。

③長野県の信州リゾートテレワーク

長野県では、仕事をしながら休暇を楽しめる働き方として「信州リゾートテレワーク」を推奨しています。支援対象は、長野県外に拠点を有する民間企業や団体。

宿泊業者を対象とした宿泊プランの開発相談窓口を設置し、信州リゾートテレワークの実践に係る経費のうち、宿泊費の一部を支援しています。

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4.ワーケーションを導入している企業

JAL(日本航空)や三菱UFJ銀行、ユニリーバ・ジャパンなど民間企業も働き方改革の一環としてワーケーションを導入しているのです。ここでは国内でも早い段階からワーケーションを導入した3つの企業事例について説明します。

JAL

JAL(日本航空)がワーケーションを導入したのは2017年の夏。「帰省先に行ってもテレワークをしたい」「長期の休暇が取りにくい」という声から、休暇取得の促進を目的に実施されました。

同社では、事前に決めた日のみ業務を認める制度を策定。アクティビティを融合したプログラムなどを実施し、ワーケーションの可能性につながる施策を行っています。

ユニリーバ・ジャパン

ユニリーバ・ジャパンでは全国の自治体と連携したワーケーション制度「地域deWAA」を実施。

連携地域の施設をコワーキングスペースとして利用したり、地域イベントやアクティビティなどに参加したりして、生産性の向上や新たな企業価値の創造を目指す取り組みです。

三菱UFJ銀行

三菱UFJ銀行では、旅行感覚で仕事ができるワーケーションオフィスを、国内屈指のリゾート地として知られる長野県軽井沢に設置しました。

快適な空間のなかで生産性を高め、これまでにない柔軟なアイデアの創出を目的としています。このワーケーションオフィスは国内に留まらず、シンガポールにも開設されているのです。

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5.ワーケーションのメリット

ワーケーションを導入するとどのようなメリットが得られるのでしょうか。ここではワーケーションの導入によって得られるメリットを、従業員と企業側の双方から説明します。

従業員にとってのメリット

従業員にとってのメリットは、以下の2つです。

  1. リフレッシュできるうえモチベーションも高まる
  2. 創造性と生産性の向上

①リフレッシュできるうえモチベーションも高まる

ワーケーションでは、従業員の好きな場所や行きたかった場所に長期滞在できます。心身を癒せる場所に身を置けるため、モチベーションやワークライフバランスを取り戻せるのです。

②創造性と生産性の向上

ワーケーションによって集中力が途切れず生産性が上がる点は、過去の事例でも報告されています。

リゾート地で心身ともにリフレッシュできれば、従業員の創造性も向上するでしょう。いつもと異なる環境で仕事をするため、新しい発想が得られる場合もあるのです。

企業にとってのメリット

ワーケーションによるメリットを享受できるのは、なにも従業員だけではありません。続いて企業にとってのメリットを説明します。

  1. 優秀な人材の獲得
  2. 有給消化率が向上する

①優秀な人材の獲得

自主的に働ける優秀な人材ほど、柔軟な働き方が可能な企業を選択する傾向にあります。従業員が高いモチベーションで仕事に取り組めば、企業全体の生産性も向上しますし、離職率も減少するでしょう。

また同業他社との差別化やCSR活動、企業のイメージアップ戦略としても有効なのです。

②有給消化率が向上する

働き方改革の一環として、2019年4月から年次有給休暇を確実に取得させるよう義務化されました。企業は会社規模の大小、業界を問わずすべての従業員に有給を取得させなければなりません。

休暇先でも仕事できるワーケーションを導入すれば、有給休暇取得率の向上が期待できます。有給取得率が高まればさらなる業務効率や生産性の向上も期待できるでしょう。

地方自治体にとってのメリット

ここでは地方自治体にとってのメリットについて説明します。

  1. 関係人口による地域活性化
  2. 移住者の呼び込み

①関係人口による地域活性化

地域と関わる人々のなかで、移住した「定住人口」でも観光に来た「交流人口」でもない人口を「関係人口」といいます。地方圏にとって、人口減少や高齢化に伴う地域づくりの担い手不足は喫緊の課題。

そこで注目されているのが、ワーケーションによる関係人口創出のきっかけづくりです。ワーケーションでは通常の観光旅行に比べて、地域の生活圏に触れやすくなります。地域に慣れ親しみ、地元の人々と触れ合うと、地域活性化につなげられるのです。

②移住者の呼び込み

地方自治体によっては現在人口の減少を問題視する地域もあります。人口減少に歯止めをかけるためには、新たに移住者を呼び込まなければなりません。

ワーケーションは移住者を呼び込むきっかけとしても効果的です。「この場所では、働きながらこういった生活を送っていける」と具体的にイメージしてもらえれば、移住のきっかけになるでしょう。

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6.ワーケーションのデメリット

ワーケーションには有給休暇の取得率向上や業務効率の向上といったさまざまなメリットが期待できる一方、いくつかのデメリットも存在します。ここではワーケーションの実施によって生じるデメリットを従業員と企業、双方の立場から説明します。

従業員にとってのデメリット

ワーケーションの実施によって従業員に生じるデメリットは、「仕事と休暇の線引きがあいまいになる」点です。

仕事と休暇の線引きがあいまいになる

就業時間を明確に定め、残業も必要ない仕組みをしっかりと構築しておきましょう。そうしないと、休暇先でも仕事を求められる状況が常態化する危険があります。

フランスでは、勤務時間外や休日に発生する業務連絡を拒否できる「つながらない権利」が法律によって認められています。休暇先での業務常態化を防ぐためには、この「つながらない権利」を周知する働きも必要です。

企業にとってのデメリット

ワーケーションの実施によって企業に生じるデメリットは、下記の3つです。

  1. 導入や運用のコスト
  2. 労働時間の管理
  3. セキュリティ対策

①導入や運用のコスト

会社から離れた地から滞りなく業務を遂行するためには、インターネットやVPNが問題なく使える環境を整えなければなりません。またチャットツールやオンライン会議ツールなどを備えたハードウエア、勤怠管理システムの導入も必要です。

パソコンや専用機器、インターネット環境などが整っていない場合、当然これらに係るコストが発生します。

②労働時間の管理

ワーケーション中の労働時間や業務内容は、会社にいるときのように細かくチェックできません。就業時間の長短が人事評価に影響する制度や社風を持った企業では、適切な人事評価が行えないといったデメリットが生まれます。

ワーケーションを導入する際は、「勤怠ルールの整備」「リモートワークに対応した勤怠管理システムの導入」が必要となるのです。

③セキュリティ対策

ワーケーションには「個人情報を扱う際はどう対応するか」「端末はどのように管理するか」といったセキュリティ面での懸念も生じます。

会社のパソコンや周辺機器、データを外部に持ち出すため、機密データの漏えい、端末の紛失や盗難のリスクについて対策を行わなければなりません。

「端末の使用やデータの取り扱いには2段階認証を取り入れる」「Wi-fiアクセスを制限する」など、セキュリティ対策を徹底しましょう。

地方自治体にとってのデメリット

ワーケーションの導入に伴うデメリットは、従業員や企業だけでなく地方自治体にも存在します。その最たるものが、ワーケーションを受け入れる持続可能な施設運営の管理。

持続可能な施設運営の管理

地方自治体がワーケーションをきっかけとした「関係人口」の増加を期待する一方、首都圏に住む従業員はワーケーション後も都心に住み続けたいと考えている点も、明らかになっています。

そのため旅館やキャンプ場のバンガローなどもともとあるリソースではなく、ワーケーション専用の施設を新設する場合、国や自治体の補助金がなくても運営を持続できるか、考えなければなりません。

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7.ユニークなワーケーション

創造性と生産性の向上が期待できるニューノーマルな働き方には、ワーケーションのほかにもいくつかあるのです。ここでは近年海外で注目されつつある「ブリージャー」「バンライフ」について説明します。

ブリージャー

「ブリージャー(Bleisure)」とは、ビジネス(Business)とレジャー(Leisure)を掛け合わせた働き方のこと。仕事の出張期間中に旅行の日程を追加し、出張先で休暇を楽しむスタイルです。

遠方に旅行する際は、移動そのものに休暇期間や交通費をあてなければなりません。ブリージャーでは往復の交通費を会社の出張経費として賄えるのです。

バンライフ

「バンライフ」とは、キャンピングカーや車中泊仕様の車を利用した働き方のこと。ワーケーションには宿泊や滞在、移動に関する費用の問題が付きまといます。

そこで注目されたのが、車中泊仕様にカスタマイズした自家用車やキャンピングカーを使用し、旅するように暮らす「バンライフ」です。各種費用を抑えられるためワーケーションと非常に相性がよいとされており、日本でも少しずつ増え始めています。