インターネット上でプロジェクトの支援を呼びかけるクラウドファンディング。今回は、その種類ややり方、主要なサービスについて解説します。
目次
1.クラウドファンディングとは?
クラウドファンディングとは、個人や団体がプロジェクトを立ち上げるために、ソーシャルメディアを利用し、インターネット上で資金調達を広く呼びかける手法のこと。プロジェクトの内容や最終的に集めたい金額をインターネット上で説明します。少額でも資金提供者が多ければ、必要な資金を集められるのです。
クラウドファンディングの歴史
クラウドファンディングの原型は、17世紀初頭に書籍編集者が印刷にかかる費用の寄付を募って出版した点にあるといわれています。このとき寄付の見返りとして、寄付者の名前を書籍に掲載したそうです。
今日では21世紀以降のインターネットの普及に伴い、アメリカを中心としてクラウドファンディングが普及。日本でも現在のように普及しました。
2.クラウドファンディングの種類
クラウドファンディングには、購入型と寄付型、金融型があります。それぞれの種類について、その特徴やメリット・デメリット、注意点を紹介します。各種類について正しく理解すれば、クラウドファンディングを効果的に利用できるでしょう。
購入型
支援者にモノやサービスなどを事前に購入してもらう、すなわち支援金額に応じてリターンを提供する形態です。
つまり商取引として、売買契約にもとづきモノやサービスなどを事前購入してもらいます。寄付や投資とは異なる性質といえるでしょう。
購入型のメリットとデメリット
商品開発やクリエーターを応援できる点にあります。「新しい技術があるにもかかわらず開発資金が不足している」「生産数の少なさから製造費が高くなり、個性的な作品が生み出せない」場合などで役立ちます。
デメリットは、投資ではないため、金銭的な見返りがない点です。
All or NothingとAll In
クラウドファンディングの実施方法には、All or NothingとAll Inの二つがあります。All orNothingは支援総額が目標金額を超えないとプロジェクトが成立しない場合を指します。AllInは支援総額が目標金額に到達したかしないかにかかわらず、プロジェクトが成立する場合です。では、それぞれについて見ていきましょう。
All or Nothing
支援金を募集している間に支援総額が目標金額を超えた場合のみ、プロジェクトが成立し、資金を受け取れます。
つまり支援総額が目標金額に達しなかった場合、プロジェクトは不成立となるのです。資金は支援者に全額返金。適切な目標金額の設定が重要です。
All In
All Inは目標金額以上の支援金が集まっていなくとも、プロジェクトが成立する方法です。
もし支援金が目標金額に達しなくとも、All orNothingと異なり、資金を受け取れます。この方式の場合、プロジェクト立案者はプロジェクトを掲載する時点で、実施を確約する必要があるのです。
寄付型
支援者からの支援を「寄付金」として受け取れます。購入型のように商品やサービスなどのリターンはなく、活動報告や参加へのお礼をリターンとして設定するのです。
寄付型クラウドファンディングのメリット
商品やサービスなどでリターンをしなくてもよいため、プロジェクト立案者の金銭的負担が少ないです。
また立案者が公益的活動を実施する団体である場合、非課税となります。デメリットは、あくまで寄付として資金を集めるため、市場価値のあるリターンを設定できない点です。
金融型
株式発行やファンドのメカニズムを利用して投融の資金を募ります。金融型には支援者に対し金銭的なリターンのある点が、購入型や寄付型とは大きく違うのです。
支援者は株式を取得するため「株式の将来的な値上がりや運用による利益」といったリターンが望めます。
3.金融型クラウドファンディングについて
利息や株式をリターンとして資金を募る金融型クラウドファンディングについて、説明します。各種類の特徴や注意点をみていきましょう。
- 貸付型
- ファンド型
- 株式型
①貸付型
貸付型とは、支援者による出資金をクラウドファンディングサイトが企業に貸付ける形態のこと。資金調達の規模は数十万円から数百万円で、1人あたりの投資額は、一口1万円程度です。
金融機関からの融資が難しいような場合に利用されます。支援者と交流する機会はなく、支援者には元本割れのリスクがあるのです。
企業にとっての貸付型クラウドファンディングは、金融機関からの借入の代替手段であるといえます。金融機関や貸金業者よりも金利が高い点に、注意が必要です。
逆に支援者は、比較的高い利回りの分配金を受け取れます。クラウドファンディングサイトによって、事業の内容や財務状況、今後の収益の見込みなどが調査されるのです。
②ファンド型
ファンド型とは、特定のプロジェクトに対して個人の投資家から出資を募る形態のこと。貸付型と同じように企業が行う資金調達のひとつです。特徴は、社会貢献的な要素の強さ。
支援者は金銭的なリターンとともに、事業でつくられたモノやサービス、割引券などを受け取れます。その量は、出資した事業の売上高によって多くなったり少なくなったりするのです。
また事業が計画どおりに進行すればいいものの、そうとは限りません。しかしこうした変動を読むのは難しいもので、元本割れになる場合もあります。
③株式型
株式型とは、非上場企業の株式をリターンとして支援者が受け取れる形態のこと。少額でも投資できるため、ベンチャー企業をスタートから応援できます。
また投資家は、エンジェル税制の優遇(ベンチャー企業の株式の投資や売却に際して税金の優遇措置を受けられる制度)を、受けられるのです。
株式型のリターンは非上場の株式のですので自由に売買できず、元本割れのリスクもあります。また日本では2015年5月に始まった制度のため現状、実績がほとんどありません。
さらに非上場企業には営業状況に関する資料が乏しく、投資の判断が難しいです。年間投資額は1件50万円という上限もあります。
法律上の注意点
貸付型では、クラウドファンディングサイトは貸金業、および第二種金融商品取引業の登録を行う必要があります。登録が確認できないときは詐欺業者の可能性もあるため、利用しないほうがよいでしょう。
投資型でもクラウドファンディングサイトは、第二種金融商品取引業登録を行わなければなりません。株式型では会社法にもとづいて株式発行を手続きします。
4.クラウドファンディングのやり方
それではクラウドファンディングのやり方について、資金を集める側と投資する側、それぞれの視点から説明します。
資金を集める側
まず資金を集める側は、専門知識がなくともクラウドファンディングを始められます。プログラムを立案するには手間暇がかかるので、時間を確保しておきましょう。そしてきちんとした戦略を立てて、目標金額達成を目指すのです。
- 戦略を立てる
- チームを組む
- プロジェクトを登録する
- こまめに管理する
①戦略を立てる
スタートする際は、プロジェクトの内容や目標、支援者へのリターンをできる限り明確にし、集まった資金の使途などをきちんと詳細に決めておきます。それにより信頼性が高まるため、支援を多く受けられるのです。
②チームを組む
プロジェクトは個人でもスタートできるものの、共通のビジョンを持った複数の人々と共同で立ち上げれば、成功する可能性は高くなります。プロジェクトのスタート時点からチームメンバーを見つけておくとよいでしょう。
③プロジェクトを登録する
プロジェクトの流れやサムネイルにする画像、支援者へのリターン、連絡先を登録します。PR動画を貼り付けたり自らの原体験を書いておいたりすると、共感を得やすくなり支援者が増えるでしょう。ストーリーを作って訴えるような工夫が効果的です。
④こまめに管理する
プロジェクトの内容が記載されているウェブサイトは、支援者と閲覧者にプロジェクトの途中経過を報告するためにも定期的に更新しましょう。すでに支援してくれている支援者には、プロジェクトの現状や達成率なども報告します。
支援する側
次に支援する側についてです。支援者はどのクラウドファンディングサイトに登録し、どのサービスを利用するかによって支援する方法が変わります。さまざまな方法をきちんと確認したうえで支援しましょう。
- クラウドファンディングサイトに登録する
- 支援するプロジェクトを選ぶ
- 決済をし、リターン送付先を入力する
- 進捗確認
①クラウドファンディングサイトに登録する
まず利用先を選びましょう。クラウドファンディングサイトは多数あり、専門分野に特化したものもあります。自分に合ったサイトを見つけて、アカウントを作成しましょう。
②支援するプロジェクトを選ぶ
クラウドファンディングサイトを決めたら、次に支援するプロジェクトを調べて決めます。その際、クラウドファンディングの目的や種類や実施方法を理解し、それぞれに応じてリターンを選んでください。
③決済をし、リターン送付先を入力する
支援するプロジェクトとリターンを決めたら、方法を選択して決済しましょう。決済方法は、クレジットカード払い、コンビニ払い、銀行振り込みなどから選べます。リターンを送付する先の情報入力も忘れずに。
④進捗確認
決済後は、プロジェクトのサイトにて進捗状況を確認できます。購入のAllorNothingでは、総額が目標金額を超えないとプロジェクトが成立せず、リターンを受け取れません。進捗状況はまめにチェックするとよいでしょう。
5.主なクラウドファンディングの一覧
自分に合ったクラウドファンディングサイトを探すのは難しいもの。なぜならそれぞれのサイトに特徴や専門分野があるからです。それではここで、主なサイト6例の種類や特徴をご紹介しましょう。選択の際、参考にしてください。
CAMPFIRE
CAMPFIREは、プロジェクトの掲載件数が国内最大規模を誇るクラウドファンディングサイト。音楽や写真、芸術といったアート系に強いのが特徴です。CAMPFIREは2016年まで、購入型のみにて運営していました。
近年、投資型や寄付型へ参入し始めたものの、購入型に比べてやはり日が浅いです。そのため購入型クラウドファンディングの比重が高いサイトになっています。
makuake
IT系会社として有名なサイバーエージェントを親会社とする「サイバーエージェント・クラウドファンディング」が運営しているサイトです。クリエイティブな分野を得意とする、購入型のサイトとなっています。
飲食店関係やモノづくり系などのプロジェクトが約200件近く常時進行し、累計プロジェクト数は1,000件を超えているのです。
Good Morning
GoodMorningは、社会問題に向き合い、課題解決に取り組む寄付型のクラウドファンディング。さまざまなプロジェクトを立ち上げて、社会の変革を目指しています。
「社会に何らか違和感を抱いたら声を上げる」「アクションを起こす」「アクションを継続して社会を変える」といった仕組みを提供しているのです。
CAMPFIRE Owners
CAMPFIRE Ownersは株式会社CAMPFIREの100%子会社となります。海外事業に関連する案件や最先端の研究開発などの社会貢献につながる案件を扱っているのです。
少額でもできる資産運用によってプロジェクトを支援する金融型クラウドファンディングで、運用期間中は待つだけで利息が受け取れます。
セキュリテ
1口数万円という少額からでも出資できるインパクト投資プラットフォームであるセキュリテ。経済的なリターンだけではなく、各地域で抱えている問題や環境、貧困などに関わる社会問題を、支援者からの出資をとおして解決できるよう取り組んでいます。
経済面と社会面、両方における価値の創出を目指しているのです。
FUNDINNO
株式型クラウドファンディングのFUNDINNO。個人投資家を保護するため、会計士や弁護士、税理士などの有識者による厳しい審査にもとづいて応募企業を選んでいます。
非上場株式への投資なのでハイリスクですが、成長が見込める企業に少額から投資できます。「ハイリターンを求める」「将来性の見込める企業を支援したい」人におすすめです。
6.クラウドファンディングの今とこれから
コロナ禍中の現在、クラウドファンディングのプロジェクト件数は増加しているのです。また緊急事態宣言中には過去最高件数を記録しました。最後にクラウドファンディングをめぐる現状から、将来の見通しについて考えてみましょう。
コロナ禍で過去最高件数を記録
コロナ禍では、過去最高件数のプロジェクトが立ち上がりました。飲食店を支援するプロジェクト、マスクや除菌グッズなどの衛生用品の販売プロジェクトも多数あったのです。
資金を最も多く集めたプロジェクトはREADYFORに掲載された「新型コロナウイルス感染症拡大防止活動基金」の寄付プロジェクト。12月までに約8億7,000万円が集まりました。
金融型クラウドファンディングの拡大が期待される
日本ではこれまで寄付型や貸付型が主流だったものの、今後は、金融型の拡大が見込まれています。しかし金融型を普及させるには、資金を集める側の課題があるのです。
- 悪質な事業者との取引を防ぎ、リスクを減らす
- 投資家に十分な情報を提供する
- 情報が漏えいするリスクを防ぐ
投資する側も、投資をする前に「プロジェクト内容や種類、特徴やリスクなどをしっかり理解する」といった前提が必要になります。