キャリアセンターは、大学といった機関にて学生の就職活動を支援する部署です。就職活動でキャリアセンターを利用するメリットや利用する際の準備について、解説します。
目次
1.キャリアセンターとは?
キャリアセンターとは、大学などで就職支援や進路支援業務を行う専門部署のこと。大学によっては「就職課」とも呼ばれます。
就職相談や求人情報の提供を担当、すなわち学校における「ハローワーク」です。大学に在籍している学生なら基本、誰でも無料で利用できます。
2.キャリアセンター導入の目的
キャリアセンター導入の目的は、就職のバックアップ。学生が独自で就職活動するには限界があるため、希望する業界や企業へ就職するためにはさまざまなサポートが必要となります。
たとえば、「将来のキャリアプラン」「希望する業界や業種で必要なスキルの習得」「応募活動や面接対策などに対するサポート」です。キャリアセンターでは、キャリアカウンセラーの資格を持つ専門スタッフがこれらをサポートし、学生の就職支援を行います。
3.キャリアセンターで行われている支援
キャリアセンターでは、さまざまな支援が行われています。どのような支援なのでしょうか。8項目から支援について説明します。
就職先や進路先の相談
どのような業界や職種が自分に向いているのか、何をやりたいか、が明確になっていない学生も少なくありません。
応募したい企業が決まっていても、資格や実務経験を必須条件としていた場合、進路先は変わるでしょう。このように応募の前段階である進路相談もキャリアセンターが行う支援のひとつです。
キャリアカウンセラーによる就職活動支援
キャリアセンターでは、キャリアカウンセラーの資格をもった専門家が就職支援を行っています。「どのような仕事をしたいか」「どのような仕事が向いているのか」を考える際、学生自身が自分の能力や適性、考え方や価値観などを把握しなくてはなりません。
キャリアカウンセラーは、カウンセリングをとおしてこれらの把握と理解をサポートするのです。
企業や業界情報の収集
キャリアセンターでは、進路相談に乗るだけでなく、企業の求人票や業界情報を収集して提示しています。求人サイトやフリーペーパー、広告などで求人する場合が多いものの実は、学校にしか出さない新卒向けの求人も存在するのです。
一般非公開や新卒向け求人によって、学生が採用される可能性は高まります。
履歴書やエントリーシートの添削
履歴書やエントリーシートは、採用における第一の関門といっても過言ではありません。この書類選考が通らなければ面接に挑めないためです。
キャリアセンターでは、何百何千の履歴書やエントリーシートを添削してきたノウハウを活用して、書類選考を通過しやすい応募書類の作成をサポートしています。
就職支援講座の開催
資格取得で自分の能力を証明できれば、就職活動でも有利になります。「何がしたいか分からない」学生も、資格を取得する過程で進路が見えてくるかもしれません。
希望の職種で必須となる資格はもちろん、さまざまな職種や業界で役立つ資格の情報についても聞いておくとよいでしょう。
筆記試験対策
一般常識をはじめSPI実力確認テストや数的処理実力確認テストなどを実地している企業も多く、キャリアアドバイザーによる添削や練習は頼りになります。近年、Webで筆記試験対策を受講できるため、慌ただしくても都合のよいときに試験対策を行えるのです。
面接対策
企業や官公庁を想定した模擬面接により、学生の姿勢や礼儀作法、言葉遣いや受け答えについてアドバイスします。練習を繰り返せば、面接の本番でもスムーズに受け答えできるでしょう。
その際、模範解答を暗記するのではなく、面接対策で指摘された内容を参考に、自分の言葉で話せるような練習が必要です。
既卒者への就職支援
キャリアセンターでは、すでに卒業した「既卒者」に対しても就職活動支援を行っています。
「新卒就職した先で問題があった」「やりたいことではなかった」「就職浪人してしまった」などの理由で再度就職活動が必要になった卒業生に、相談や中途採用、第二新卒向けの求人票を展開しているのです。
既卒者支援を受けられる期間が決まっている場合もあります。詳しくは母校のキャリアセンターに聞いてみましょう。
4.キャリアセンターで行われるイベント
キャリアセンターが行うのは相談だけではありません。各社企業のセミナーやガイダンスなど各種イベントなども開催しているのです。ここではキャリアセンターで行われる学生向けの説明会やガイダンスについて、説明します。
就活ガイダンス
卒業生であるOBやOGが、在校生や保護者などに対して行う就職活動のガイダンス。目的は、就職や職種など就職活動に関する知識の増加です。
「どのような企業があるのか」「現在就職先でどのような業務を行っているか」「就活を始める際に知っておきたい事柄」などについて、卒業生が経験をもとに説明します。夏休み前から10月頃までの期間に行う学校が多いようです。
低年次学生向けガイダンス
1回生と2回生に向けて行われる就職や進路選択のガイダンス。目的は、社会で働くことを意識しにくい大学1回生や2回生に対して就活の意識や知識を付け、学生の職業観を早めに形成することです。
「キャリア選択を考える際に大学職員や教授の話に影響を受けた」という学生も多いとされています。ガイダンスを受ければ、適性や方向性に合った就職先を考えられるようになるでしょう。
企業説明会
企業説明会では、企業が学生に自社の魅力を求める人材などを伝え、学生は自分の興味のある業界や企業をリサーチします。自分が就職するかもしれない業界や企業を深く知るには、企業や業界で働く人の声に耳を傾けるのも重要です。
単独で行われる企業説明会のほか、合同企業説明会や業界を絞った特定業界の企業説明会が行われる場合もあります。
インターンイベント
企業や官公庁で働き現場研修を行えるインターンシップに、キャリアセンターから申し込めます。企業や官公庁はインターンシップに来る学生を募るため、大学にインターンを募集するのです。
インターンを経験してから就職先を決定したいと考える学生も少なくありません。企業説明会だけでなくインターンシップを経験すれば、「実際に内定をもらって働いてみたけれど、思っていたのと違った」といった相違もなくなるでしょう。
5.企業側がキャリアセンターを利用するメリット
学生だけでなく、企業側もキャリアセンターを利用すれば採用活動を円滑に進められます。
学生は基本、ブラック企業を避けたいと考えるもの。ここで学校に求人票を出し学校指定の企業になれば、学生からブラック企業認定を受けにくくなり、人材の採用もスムーズになるでしょう。
ここでは企業側からみたキャリアセンターを利用するメリットについて、説明します。
低コストで採用活動ができる
キャリアセンターを利用すれば、企業案内やパンフレットを無料で設置したり、求人票を無料で掲載したりできます。
有料の求人媒体の利用や面接にあてる人事課の人件費など、採用活動にはかなりのコストがかかるもの。有名な某求人媒体では月に30万円掲載料がかかる場合も少なくありません。キャリアセンターを利用すれば、低コストで採用活動ができるでしょう。
採用自由化に対応しやすい
大学と接点をつくり学生との距離が近くなれば、通年採用の流れに対応しやすくなり、学生も安心して応募できます。毎年人材の入れ替わりが起こる企業にて、通年の採用枠を確保するのは採用人事の課題です。
大学と協力すれば、この課題を解決できます。また採用予定人数や企業の特徴、実際に就職した卒業生が働いているという事実は、応募する学生にとっても安心できる判断材料になるでしょう。
優秀な人材を確保しやすい
企業がその大学での採用実績を積み、採用された学生が活躍すると、キャリアセンターとの間に信頼関係が生まれます。学校側も、今後も採用実績の多い優良企業に学生を採用してもらいたいため、優良企業へ優秀な人材を推薦する傾向にあるのです。
キャリアセンターとよい関係を構築すると、優秀な人材を確保しやすくなります。
地方に就職したい学生にアピールできる
大学には地方出身者も多数いるものの、近隣から進学した学生も少なくありません。キャリアセンターを通して企業説明会を開催すれば、地元から進学した学生へアピールできるでしょう。
地方に支社がある場合、Uターン就職やIターン就職の希望者にアピールできます。
6.キャリアセンターを利用する際の準備
企業が採用活動でキャリアセンターを利用する際、何を準備しておけばよいのでしょう。5つの項目から説明します。
- 採用するターゲットの設定
- 開催する学校を選ぶ
- キャリアセンターを訪問する
- イベントを開催する場合、事前に社員の研修を実施する
- 学生の傾向を把握する
①採用するターゲットの設定
採用活動をする際にまず、採用するターゲット層を設定しましょう。このときターゲット像が明確になるよう、具体的に決めていきます。ターゲット層に盛り込むべき具体的な項目は以下のとおりです。
- 出身大学・学部学科
- 専攻分野、得意分野
- サークル活動や部活動での役割・立場
- アルバイト経験を通じた学び
- 募集職種で望ましい性格・価値観・経験
ターゲット層を事前にしておくと、求人票に記載する項目も変わります。キャリアセンターとの連携もスムーズになるため、学校側も推薦する学生を選びやすくなるでしょう。
②開催する学校を選ぶ
どの学校で採用活動を行うか、考えます。すでに社内にOBやOGがいる出身大学を選べば、学校の風習やどのような学生が多いか、把握しやすくなるでしょう。
偏差値や名門校を選ぶ企業も多いですが、名門校は採用活動の激戦区。競合他社も同じように人材確保に取り組んでいる場合も多いため、負けないよう自社の魅力を学生に伝える努力が必要となります。
③キャリアセンターを訪問する
キャリアセンターに足を運び、採用活動をとおして信頼関係を構築することも大切です。キャリアセンターも、ネットで求人票だけを送ってくる企業より、足しげく大学に通って採用活動を賢明に行っている企業を学生に薦めたくなるもの。
初回の訪問は顔合わせです。挨拶や希望する人材などの話で終わるかもしれませんが、次に訪問した際、学内説明会へ申し込める可能性があります。
④イベントを開催する場合、事前に社員の研修を実施する
イベントでは自社や業務に関する紹介や説明、質疑応答などがあるため、基本的なコミュニケーションは必須です。本番で円滑なコミュニケーションができるよう、事前に十分な研修を行いましょう。
なお学生に向けたイベントなどを開催する場合、管理職だけを連れていくのではなく、新卒で入社した若手や2年目の若手などを連れていくとよいです。学生と年齢が近い社員の存在によって、学生は入社後のイメージを持ちやすくなります。
⑤学生の傾向を把握する
把握すべき傾向として挙げられるのは、「学生が企業選びで何を重視しているか」「学生が何を望んでいるのか」「どのような学生が多いか」など。
企業選びで重視されるポイントは、企業規模や社風、福利厚生や給与などです。その学校でどれを重視されるかが分かれば、学生に対する説明内容や提示する資料を変えられます。学生の傾向を把握すると、効率よく採用活動を行えるのです。