所得とは、収入から必要経費を差し引いた残金です。所得についてさまざまなポイントから解説しましょう。
目次
1.所得とは?
所得とは、収入からその収入を得るために支出した金額である必要経費を差し引き、残った残金のこと。所得について2つのポイントから解説します。
- 収入との違い
- 手取りとの違い
①収入との違い
収入とは、年間に得る合計収入のこと。店舗経営で得た売り上げも収入に該当します。所得と収入との違いは、下記のとおりです。
- 所得は、収入から必要経費を差し引いて残った金額
- 収入は、給与や賞与などで得た合計金額
②手取りとの違い
手取りとは、税金などを差し引く前の収入から税金や社会保険料を控除して、実際に賃金として受け取れる金額です。所得と手取りの違いは、下記のとおりです。
- 所得は、収入から必要経費を差し引いた金額
- 手取りは、所得から税金や社会保険料を差し引いた金額
2.所得の種類
所得には、さまざまな種類があるのです。ここでは、10種類の所得について解説します。
- 給与所得
- 事業所得
- 利子所得
- 配当所得
- 不動産所得
- 譲渡所得
- 一時所得
- 山林所得
- 雑所得
- 退職所得
①給与所得
パートやアルバイトなどを含む労働者が勤務先から支払いを受ける給料や賃金、歳費や賞与の総額で、「収入金額-給与所得控除額」で算定します。
給与所得は一部の例外を除き、残業手当や休日出勤手当、職務手当や住宅手当なども含みます。
②事業所得
事業所得とは、商業や工業、農業や漁業、自由業といった事業から生じる所得のこと。事業所得は、「卸売業や製造業などの営業、作家や自由業などの事業から生ずる営業等所得」「農産物の生産、酪農などの事業から生ずる農業所得」に分類されているのです。
「収入金額-必要経費」で算定します。
③利子所得
利子所得とは、「預貯金および公社債の利子、合同運用信託・公社債投資信託・公募公社債等運用投資信託の収益」などで生じる所得です。利子所得に必要経費はありません。
原則、支払を受ける際、「復興特別所得税を含む所得税15.315%、住民税5%」にて税金が天引きされます。
④配当所得
配当所得とは、「株主や出資者が法人から受ける剰余金や利益の配当・剰余金の分配・基金利息・投資法人からの金銭の分配または投資信託(公社債投資信託および公募公社債等運用投資信託以外のもの)・特定受益証券発行信託の収益分配」などから生じる所得です。
「収入金額-負債利子」で算定します。
⑤不動産所得
不動産所得とは、「家賃収入・土地や建物などを貸した結果生じた賃料・権利金・船舶や航空機の貸付け」などから生じる所得のこと。「収入金額-必要経費」で算定します。不動産所得で用いられる必要経費は、「修繕費・固定資産税・火災保険料」などです。
⑥譲渡所得
譲渡所得とは、土地や建物、株式やゴルフ会員権といった「事業用の固定資産・家庭用の資産」などを売却して得た所得のこと。
譲渡所得では、「ゴルフ会員権といった場合は総合課税」「土地や建物、株式などを売った場合は分離課税」と状況によって課税方式が変わります。そのため算定方法も異なるのです。
⑦一時所得
一時所得とは、「競馬や競輪などの払戻金・クイズの懸賞金・満期生命保険金・法人から贈与された金品・遺失物拾得者や埋蔵物発見者の受ける報労金」といった継続しない一時的に得た所得のこと。
(「収入金額」-「必要経費」-「特別控除額(上限は50万円)」)×1/2で算定します。
一時所得とは? 税率や計算方法、確定申告の有無をわかりやすく
一時所得とは、労働で得たものではない一時的な所得のこと。この記事では一時所得について詳しく紹介します。
1.一時所得とは?
一時所得とは、継続的な営利目的行為以外で得た所得で、労務や役務、資産譲渡に...
⑧山林所得
山林所得とは、「5年を超えて所有した山林を伐採して売却・立木のまま売却」で得た所得のこと。ただし「山林の取得から5年以内の伐採または譲渡は事業所得か雑所得扱い」「山林を山ごと譲渡した土地の部分は、譲渡所得扱い」になるのです。
「収入金額-必要経費-特別控除額(上限は50万円)」で算定します。
⑨雑所得
雑所得とは、「年金や恩給などの公的年金・非営業用貸金の利子・原稿料や印税、講演料・国税還付加算金」など、9種類のどれにも属さない所得のこと。算定方法は、下記のとおりです。
- 公的年金は、「収入金額- 公的年金等控除額」
- 業務に係るものは、「総収入金額-必要経費」
- 上記以外のものは、「総収入金額-必要経費」
⑩退職所得
退職所得とは、「勤務先から受ける退職手当・社会保険制度で退職に基因して支給される一時金・適格退職年金契約にもとづいて生命保険会社または信託会社から受ける退職一時金・解雇予告手当・退職した労働者が弁済を受ける未払賃金」といった所得のこと。
(「収入金額-退職所得控除額」)× 1/2で算定します。
3.所得の計算方法
所得には計算方法があります。それぞれどのような点に注意して計算するのか、ポイントともに解説しましょう。
- 給与所得
- 年金所得
- そのほかの所得
①給与所得
まず支払われている給与をすべて、合計します。もし複数の企業から給与が支払われている場合、すべての給与収入を合計するのです。
こうした給与収入金額の合計から、給与所得控除と所得金額調整控除を差し引くと算定されます。給与所得は、源泉徴収票では「給与所得控除後の金額」に該当するのです。
②年金所得
まず年間総収入金額の算定から始めます。「年金の受給期間が1年以上引続き年金を受給している場合、原則、前年分の支払年金額」「年金を受給してから1年に満たない場合、原則、年金証書の支払年金額」が年間総収入金額になるのです。
年金所得金額は、年間総収入金額と受給者の年齢によって、それぞれ異なる計算方法で算定します。
③そのほかの所得
そのほかの所得は、下記のとおりです。
- 前年1月1日以前から引続き同じ事業をしている場合、前年分の年間所得金額
- 現在の事業を前年1月2日以後に始め、1年以上経過している場合、申込前1年間の所得金額
- 現在の事業を前年1月2日以後に始めてまだ1年が経過していない場合、事業を始めた翌月から申込み月の前月までの総収入金額をもとに計算した推定金額
4.所得控除について
所得控除とは、所得から一定金額を差し引いて税負担を軽減させる措置のこと。ここでは下記4つについて解説しましょう。
- 所得控除の仕組み
- 所得控除の種類
- 所得控除の申請に必要な書類
- 所得控除の確定申告
①所得控除の仕組み
所得控除は、所得税額を計算するにあたり、納税者の個人的事情を加味して税負担の軽減を目指します。計算式は、(「収入」-「経費」-「所得控除」)×税率です。つまり所得控除が大きければ、納める所得税額は低くなるのです。
②所得控除の種類
所得控除は、2020年4月1日時点で合計15種類です。
- 雑損控除
- 医療費控除
- 社会保険料控除
- 小規模企業共済等掛金控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 寄附金控除
- 障がい者控除
- 寡婦控除
- ひとり親控除
- 勤労学生控除
- 配偶者控除
- 配偶者特別控除
- 扶養控除
- 基礎控除
③所得控除の申請に必要な書類
所得控除を認めてもらうためには、控除証明書が必要です。たとえば生命保険料控除を受ける場合、生命保険料控除証明書を添付します。
また所得控除を受ける際に提出しなければならない書類があるのです。ここでは、「所得金額調整控除申告書」「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」について解説します。
所得金額調整控除申告書
所得金額調整控除申告書とは、年末調整でその年の給与などの収入金額が850万円を超える給与所得者で、「本人が特別障がい者に該当・年齢23歳未満の扶養親族を有する・特別障がい者である同一生計配偶者または扶養親族を有する」者が所得金額調整控除を受けるための申告書です。
申告書は、その年の最後に給与等の支払を受ける日の前日までに所轄税務署長に提出します。
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書とは、給与所得者が給与に関する扶養控除を受ける際に必要な申告書のこと。
給与所得者が会社に提出すると会社は、扶養控除申告書の扶養親族情報をもとにして、控除額を差し引いて毎月の所得税額を計算します。扶養控除が受けられれば、納めるべき所得税が軽減できるのです。
④所得控除の確定申告の方法
所得控除の確定申告を書面で申告する場合、以下のような方法があります。
- 国税庁のWebサイトからダウンロードし、出力する
- 税務署や市区町村役場の税務課、確定申告相談会場で受け取る
- 税務署から郵送で取り寄せる
国税庁ホームページの「確定申告書等作成コーナー」を使えば、金額が自動計算されるため便利です。
5.所得税について
所得税とは、個人の所得に対してかかる税金のこと。所得税について4つ解説しましょう。
- 所得税とは
- 所得税の計算方法
- 所得税率
- 所得税計算ツール
①所得税とは?
所得税とは、商売や土地を売って得た利益や給料といった1年間の全所得に対して課される税金のこと。所得は計10種類あり、種類によって収入や必要経費の範囲、所得の計算方法などが定められているのです 。
平成25年から令和19年までは、「所得税」「復興特別所得税」をあわせて申告、納付します。
②所得税の計算方法
1年間の所得合計から所得控除を差し引き、残りの課税所得に対して税率を適用して税額を計算します。課税所得金額は、すべての所得から所得控除額を差し引き計算するのです。
所得控除とは、個人の事情を加味して所得税負担を軽減するための制度。所得控除は計15種類あり、それぞれ要件が決まっています。
③所得税率
所得税率は、分離課税に対するものといった分を除いて、5%から45%の7段階に区分されています。千円未満の端数金額を切り捨てた後の課税所得金額に対する所得税の金額は、速算表を使用して求めるのです。
たとえば課税される所得金額が700万円の場合、速算表を用いて計算すると求める税額は700万円×0.23 -63.6万円で、97.4万円となります。
④所得税計算ツール
所得税の計算には、所得税計算ツールを活用するとかんたんに計算できます。所得税計算ツールは税制改正に対応しており、給与や控除などの金額を入力するだけで、自動的に所得税額を計算してくれるのです。
所得税計算ツールを活用すれば、時短になり計算ミスを防げるうえだれでもかんたんに扱えます。
6.所得に関する相談先
所得に関する相談をしたい場合、税務に関する専門の相談窓口を利用するとよいでしょう。所得の相談窓口を3つ解説します。
- 税務署
- 税理士
- 国税庁
①税務署
税務署では、税金に関するあらゆる相談を受け付けています。所得税に関する窓口も設けられており、「所得控除や年末調整の計算方法」「確定申告の方法」など、さまざまな相談にのってくれるのです。
料金は無料。所得税に関して相談したい事柄があればまず、最寄りの税務署に相談してみましょう。
②税理士
税理士とは、納税者の代理人として申告納税を行う士業です。税理士にも、所得税に関する相談ができます。
税理士会では、税理士会が行うボランティア活動として「税理士会が行う無料申告相談センター」を全国各地で実施しています。税金の専門家である税理士と直接話ができるため、疑問や問題もスムーズに解決するでしょう。
③国税庁
国税庁とは、国税の賦課徴収を主たる任務、権限としている国の行政機関のこと。ホームページで、「タックスアンサー(よくある税の質問)」「所得税の確定申告や年末調整に関する疑問に答えるチャットボット(ふたば)」といった窓口を開設しているのです。
国税に関する一般的な相談は、国税局電話相談センターでも受け付けています。