自律とは、自らの規範に沿って行動することです。ここでは、自律についてさまざまなポイントから解説します。
1.自律とは?
自律とは、価値観や信条、理念や哲学など個人の内的要素に関して、支配や制約を受けずに独り立ちすること。英語で「self-directed」と表現します。自律している人は、自身で規範を打ち立て、それに沿って行動できます。よって仕事上で自律している人とは、「自ら仕事の目標を設定でき、仕事への価値や意義を見出せる人」となります。
自立との違い
自立とは、能力や経済力、身体などに関し、他者に依存せず行動すること。自立は英語で「self-stood」と表記します。仕事上で自立している人とは、「仕事のやり方を習得し、仕事をして生活を維持している人」。2つの違いは下記のとおりです。
- 自律は内的要素の独り立ち
- 自立は外的要素の独り立ち
自主性と自律性の違い
自主性とは、自ら判断して決められた事柄を自ら率先して行う態度のこと。一方、自律性とは、他者からの支配や強制を受けず、自らが立てた規範に従い行動する性質です。2つの違いは、下記のとおりです。
- 自主性:あらかじめ決まっているやるべきことを自ら進んで取り組む
- 自律性:自らで考え、行動を起こす
自主性とは? 主体性との違い、自主性を育てる・高める方法
自主性は、組織の競争力を高める重要な要素です。今回は、自主性の定義やその重要性、育成方法、注意点について解説します。
1.自主性とは?
自主性とは、誰かの指示がなくても、やるべきことに対して自ら行動...
2.自律型組織とは?
自律型組織とは、「権力が組織の一部分に集中していない・権力が分散されている」組織です。ここでは自律型組織が注目される理由と自律型組織の種類について解説します。
自律型組織が注目される理由
自律型組織が注目される理由は、新型コロナウイルス感染症の流行により、リモートワークが増えた点。リモートワークが増えると、会社と社員の心的距離が広がってしまうという問題が顕著になります。
職場に集まり仕事をするという、従来のような働き方を続けていた組織は、組織のあり方そのものを見直して再構築する必要に迫られているのです。
自律型組織の種類
「変動性」「不確実性」「複雑性」「曖昧性」の高いVUCAと呼ばれる現代社会。組織の求める自律型組織の正しい理解が重要です。そこでここでは、これら3種類の自律型組織について解説します。
- ティール組織
- ホラクラシー組織
- アジャイル型組織
①ティール組織
ティール組織とは、「組織内に階層構造がなく、管理マネジメントの仕組みも存在しない・組織の目的達成に関して所属するメンバーが個別に意思決定を行う」進化型の組織です。ティール組織には、5段階の進化過程があります。
- オオカミの群と呼ばれるレッド(衝動的)組織
- 軍隊と呼ばれるコハク(順応型)組織
- 機械と呼ばれるオレンジ(達成型)組織
- 家族と呼ばれるグリーン(多元的)組織
- 生命体と呼ばれるティール(進化型)組織
②ホラクラシー組織
ホラクラシー組織とは、役職階層型の対極にある組織の型のこと。役職階層型組織には、役職を基準にピラミッドが形成されているのです。
一方、ホラクラシー組織は、上下関係がないフラットな組織管理を実現しています。ホラクラシー組織に適するのは、短期プロジェクトや変化の激しい業界や事業です。
「一人ひとりの役割が明確化している」「変化に迅速に対応する力が求められる」ような業務は、ホラクラシー組織の特性を活用できます。
③アジャイル型組織
アジャイル型組織とは、組織全体をフラットな集合体と捉え、権限を組織に所属する各社員に分散して、迅速な意思決定や開発サイクルの短縮を実現する組織です。
アジャイル型の組織の特徴は、集合体の構造がフラットである点。そのため「ビジョンに向かって柔軟なアプローチができる・思考や実行、学習のプロセスにスピード感がある・各社員のリーダーシップを育成できる」といった特徴が生まれます。
3.キャリア自律とは?
キャリア自律とは、個人が自身のキャリアに興味を持ち、自律的にキャリア開発を行うこと。キャリア自律について5つから解説しましょう。
- キャリア自律の重要性が高まった背景
- キャリア自律の認知度はまだまだ低い
- キャリア自律が進まない理由
- キャリア自律のメリット
- キャリア自律のデメリット
①キャリア自律の重要性が高まった背景
キャリア自律の重要性が高まった理由として挙げられるのは、「少子高齢化による労働力不足の社会問題化・終身雇用や年功序列が終わり、急務となった個々の主体的なキャリア形成・副業や兼業といったさまざまな働き方の広まり」です。
②キャリア自律の認知度はまだまだ低い
現状、キャリア自律の認知度はまだまだ低いといえます。
「キャリア自律に対する認知度」の調査によれば、「以前から知っていた」と「以前から少しだけ知っていた」を合わせた「知っていた」派は、人事で64%、社員では22%。キャリア自律は人事以外の一般社員には広まっていないと分かりました。
③キャリア自律が進まない理由
キャリア自律が進まない理由は、下記のとおりです。
- 個人でキャリア形成に対する意識が異なる
- 研修などキャリア形成を実現する機会と具体的施策が分断されている
- キャリア形成してもそれを組織で活用できない
④キャリア自律のメリット
キャリア自律のメリットは、なんでしょうか。
「自らが選んだ仕事で活躍するため、やりがいにつながる」「転職を選択せず、今の会社でキャリアを磨く社員が増える」「優秀な人材を管理するマネージャー層が緊張感を持って仕事ができる」などです。
⑤キャリア自律のデメリット
キャリア自律のデメリットは、社員のモチベーションを著しく低下させる可能性がある点。進め方次第では、キャリアを考える過程で転職を意識させてしまったり、キャリア開発が昇進や昇給に必ず結び付くと勘違いさせてしまったりする可能性もあります。
会社は社員に対し、キャリア自律を正確に説明し、会社として全力で支援すると伝えましょう。
4.キャリア自律に必要な支援
キャリア自律に必要な支援があります。一体どのような内容なのか、下記4点から解説します。
- キャリア研修
- 副業制度を活用
- 相談場所の設置
- 年代ごとの支援
①キャリア研修
研修をもとにすると、キャリア形成を意識するきっかけ作りにつながります。キャリア研修は、階層別に行うのが効果的です。下記のようなテーマで実施してみましょう。
- 新入社員は、「自分の強み・弱み」を考える
- 中堅社員は、後半のキャリアを意識したキャリアの棚卸
- ベテラン社員は、次世代への業務の継承や社会貢献
②副業制度を活用
従来、副業は本業の妨げになるという扱いでした。しかし副業には、新たな事業展開につながるイノベーションや想像を超えたスキルの習得といった産物があります。そのため、副業を禁止していた企業から、副業を推奨する企業があらわれ始めているのです。
③相談場所の設置
相談場所として、キャリアカウンセリングやコーチング、キャリア面談やメンター制度といった仕組みを活用します。キャリア自律の進捗状況に停滞が生じていたら、原因と対策、方向性の見直しなどを随時考えていくのです。
④年代ごとの支援
「20代や30代の若年層では、組織の中における自分自身のキャリア形成」「40代のキャリア層では、今後のキャリアの見直し」「50代以降のシニア層では、管理職としてのモチベーションの維持と定年や再雇用後の活躍」といった視点から、支援を行います。
5.自律型人材とは?
自律型人材とは、自ら戦略を考えて課題を見つけ出すといった主体的に動く人材のこと。自律型人材について3点から解説しましょう。
- 自律型人材の特徴
- 自律型人材が注目される背景
- 自律型人材を育成するメリット
①自律型人材の特徴
自律型人材の特徴は、下記の3つです。
- 企業理念のもとで独創的な戦略やアイデアで企業競争力を生み出す
- 判断力・決断力がある
- 強い責任感を持つ
与えられた仕事の範囲を超えて、「企業理念の実現に向け、さまざまなアイデアを生み出す」「スピード感を持って結果を意識しながら業務を遂行する」「責任を持ってやり遂げる」といった人材を、自律型人材と呼びます。
②自律型人材が注目される背景
自律型人材が注目される背景は、能力開発ツールへの容易なアクセス環境が整備されてきた点にあるのです。
GoogleやYouTubeを始め、能力開発に寄与する代替ツールは、今や身近な存在。企業のラーニングテクノロジーの担当者も、コストや管理の負担がない、多様な学習機会を模索し始めています。
③自律型人材を育成するメリット
自律型人材を育成するとどんなメリットが得られるのでしょうか。メリットを3つ解説しましょう。
管理職の負担が軽減する
自律型人材は、指示を得なくても自らの仕事を試行錯誤しながら取り組みます。「上司に指示されたことしか取り組まない」「指示待ち・マニュアル人間」とは異なるのです。従って、上司は指示を出す代わりに、部下の成長のサポートに注力できます。
業務が効率化する
自律型人材は、「環境の変化に柔軟に対応できる」「目標から逆算し、今、自分が何をすべきか考える」「考えたプランを効率的に推進する」などが可能です。よって業務にスピード感が出たり業務効率が向上したりといった効果が期待できます。
テレワークに向いている
新型コロナウイルス感染症の広まりで、より一層テレワークの推進が叫ばれるようになりました。自律型人材は、管理職の目が行き届きにくいテレワーク下でも、自らを律しながら課題を淡々と進め、状況に応じた適切な対処を考えられるのです。
6.自律型人材を育成する方法
自律型人材を育成するにはどうしたらよいのでしょうか。ここではその方法を6つ解説します。
- 目的を明確にする
- 育成環境を整える
- 適切な目標を設定する
- 仕事を任せる
- フィードバックを行う
- 人事評価制度を整備する
①目的を明確にする
目的を設定する方法として挙げられるのは、「経営戦略をもとに、自律型人材に求める目的を明確に定義する」「社内にいる自律型人材を目的に定める」など。その際、求める行動などを具体的に検討し、目標となる自律型人材像を明確に設定します。
②育成環境を整える
良質な育成環境とは、「自然体でのびのびと行動できる」「他者の反応を気にして怯えない」「間違っても羞恥心を感じない」というもの。失敗しても大丈夫だと思えたり、失敗から学んで成長につなげられたりといった環境は、自律型人材の育成に不可欠です。
③適切な目標を設定する
適切な目標とは、これからどのような能力、スキルを身に付けていくのかというもの。能力開発という視点から考えた目標と社員本人が希望するキャリアプランをすり合わせ、丁寧に話をしながら目標を決定します。
④仕事を任せる
社員に責任のある仕事を任せれば、自分で取り組みについて考え、よい結果を出そうと試行錯誤するようになります。
ただし仕事を丸投げしてはいけません。クオリティや社員のモチベ・メンタルに影響が出る場合も多いです。仕事の価値や方向性などを共有し、範囲を決めて権限委譲を行います。
⑤フィードバックを行う
ネガティブフィードバックなら失敗や反省を次に生かせますし、ポジティブフィードバックなら成功事例によって自己肯定感を高められます。フィードバックは間隔をあけず、仕事の区切りごとといった定期的な周期で実施しましょう。
⑥人事評価制度を整備する
自律型人材は自ら考え行動するため、取り組み姿勢や意欲なども評価の対象にします。結果に結び付かなくても自ら考え行動した努力が認められれば、社員のモチベーションは向上するでしょう。