「エグゼクティブ」という言葉には、どんな意味があるのでしょうか。ここではエグゼクティブについて解説します。
目次
1.エグゼクティブとは?
エグゼクティブとは、「実行力のある」「実行者」「重役」といった意味合いをもち、ビジネスでは「上級管理職」という意味で用いられるのです。たとえば企業では重要な決定権を持つ偉い人などを指し、英語ではexecutiveと表記されます。
重要な役職を示す際に使われる
企業における「エグゼクティブ」は、管理職の中でも最高位に位置する役職のこと。管理職と聞けば現場の監督、役職陣といったイメージですが、エグゼクティブはさらに重要な役職を指します。たとえば、社長やCEOなどの近くに位置する重役などです。
エグゼクティブは実行力があるといった意味合いのほか、「高級な」「優雅な」「特別な」といったニュアンスで使用される場合もあります。
CEO
CEOは英語で「Chief Executive Officer」と表記し、「最高経営責任者」と呼ばれます。取締役会の意思に従って経営方針や経営戦略を決め、その責任を持つ役職です。アメリカでは社長を「President」と表記するのでCEOとは別の肩書となります。
しかし日本では社長と同一視して「代表取締役」をCEOと表記する場合が多いようです。
エグゼクティブサマリー
エグゼクティブサマリーとは、サマリー(事業計画書)の中で大切なポイントをまとめた要約のこと。
多くは事業計画書の1ページ目に記載されており、投資家に伝えたい要約や企業のビジョンと目的、財務数値予測、重要成功要因(目的達成に最も影響する要因)などとなります。
このように「重要な」といったニュアンスでエグゼクティブという言葉が使われる場合もあるのです。
ビジネス以外の使い方も
多くは「重要な」「特別な」「贅沢」といった意味で使われます。ホテルや飛行機などの「エグゼクティブルーム」「エグゼクティブシート」といった贅沢なサービスが代表例として挙げられるでしょう。
「エグゼクティブ会員」といった場合「上級の・上位の」といった意味で使われるようです。
2.エグゼクティブ人材とは?
「エグゼクティブ」とは、幹部や上流管理職といった一定層の重役のこと。近年、エグゼクティブ層に向けた求人を出すといったように、「エグゼクティブ人材」と呼ばれる人材に注目が集まっているようです。
ここではエグゼクティブ人材について、解説します。
経営的な視点を持つ人材のこと
エグゼクティブ人材とは、経営者目線を持った人材や経営に携わるポジションの人材を指します。先に挙げたCEOやCOO(最高執行責任者)、CTO(最高技術責任者)のような、経営幹部層の人材が該当するでしょう。
経営に関する知識を持っているだけでなく、管理職や重役など、経営実行力がある役職をエグゼクティブ人材と呼ぶ場合もあります。
ハイクラス人材との違いとは?
ハイクラス人材とエグゼクティブ人材に明確な違いはありません。経営者目線で仕事ができる人や、特定の分野で専門的なスキルを持つ人などがハイクラス人材と呼ばれる傾向にあるようです。
ただし企業によっては、重役や管理職だけでなく、専門性の高い人材をエグゼクティブ人材と定義している場合があります。
エグゼクティブ転職事例が急増
近年、日本の企業制度や社会制度が変化したため、エグゼクティブ人材の転職が増加しています。
アメリカではCEO求人やエグゼクティブ層の人材募集が一般的とされていますが、日本では新卒から昇進してエグゼクティブな役職を目指すのが主流となっていました。
しかし昨今のビジネス環境はスピードが求められています。事業展開を早期実現するため、外部からエグゼクティブ人材を取り入れる必要が生じたのです。
エグゼクティブ転職が増えている理由
エグゼクティブ転職が増えている背景には、既存企業の事業拡大や後継者不足、企業のM&A(買収や合併)などが挙げられます。
近年、企業が生き残るためには海外進出が重視されているのです。それにともないエグゼクティブ層を獲得しようとする企業も少なくありません。エグゼクティブ人材が需要のある時代となってきており、エグゼクティブ層の転職は重宝されています。
3.エグゼクティブを採用する
自社でエグゼクティブ人材を育てるには時間と労力が必要になるため、外部から採用する方法を取る企業も少なくありません。ここではエグゼクティブ人材の外部からの採用について説明します。
エグゼクティブサーチ
エグゼクティブサーチとは、ヘッドハンティングのこと。経営陣や幹部などエグゼクティブ人材を探し出し、他社から引き抜きます。エグゼクティブ人材を採用するために多く用いられる手法です。
現在働いている企業よりもよい給与や待遇などを提示し、自社でエグゼクティブ人材として活躍してもらえるように交渉します。
エグゼクティブサーチの目的
エグゼクティブサーチの目的としてまず挙げられるのは、組織力の強化。エグゼクティブ層を獲得すると、組織内にリーダー職を配置できるため組織力が強化されます。
また事業後継者となる人材の確保も目的のひとつです。エグゼクティブサーチによって獲得した人材に事業を後継する、あるいは事業拡大における新事業の知見がある人材を確保するために行われます。
エグゼクティブサーチファーム
エグゼクティブサーチファームとは、エグゼクティブ層のスカウトや人材紹介を行っている人材会社のこと。経営者や役員、事業部門の責任者といった経営層はもちろん、部長や課長などが対象となる場合もあります。
エグゼクティブサーチファームに登録している人材を紹介するだけでなく、企業が希望する条件の人材を探すのも業務の一部です。
4.エグゼクティブ転職転職
業界にはエグゼクティブ特化型の転職サービスも存在します。エグゼクティブ層の人材は企業内でも限られており、中途採用での獲得が難しいためです。ここでは企業が求める人物像やエグゼクティブの転職方法について解説します。
企業が求める人材
エグゼクティブ人材を募集する目的はさまざまで、必要となるスキルも異なるのです。
企業が求めるスキルとして挙げられるのは「経営的視点・問題解決能力・マネジメント経験・協調性・人脈形成・経営層と社員の橋渡しとなるコミュニケーション能力」など。ここでは企業が求めるエグゼクティブ人材について説明します。
マネジメント経験
どのような企業でも重役となるエグゼグティブ層には必ずマネジメント経験が求められます。「どのような結果を残したのか・どれだけの規模のチームをマネジメントしたのか」など、その人の経験をもとにマネジメント力を図ります。
マネジメントは自分個人の力だけでなく、他者を巻き込む力や人材を育てる力なども必要となるので、組織をけん引するエグゼクティブ人材には必須スキルです。
協調性
組織を束ね、人の上に立つ存在となるエグゼクティブ人材には協調性が求められます。エグゼクティブは自分が動くのではなく、周囲の人たちが快く業務にあたれるように、良好な人間関係性を構築する必要があるためです。
それはただ単に周りに合わせる、あるいは流されるのではなく、社内外のステークホルダーと協力できる能力を指します。
人脈形成
エグゼクティブ人材には、社内外の人脈を形成するスキルも求められるのです。社外の人脈では取引先や顧客などが、社内での人脈はほか部署や上司などが挙げられるでしょう。
人脈の幅が広いほど視野が広くなり、多角的な考え方ができるようになります。それにより今までにない組織改革や事業拡大、人材の活用方法などが生まれるでしょう。
転職方法
エグゼクティブ人材が転職する際の方法は、下記の3つです。
- 企業に自分を売り込む転職活動
- 企業にヘッドハンティングをされる
- 転職エージェントを利用する
エグゼクティブ人材の営業力をもってすれば、自ら企業に自分を売り込めます。もし多忙であまり時間が取れない場合は、転職エージェントを利用するとよいでしょう。
女性のエグゼクティブ転職
女性のエグゼクティブ人材は男性に比べ少ない傾向にあります。出産や子育てで仕事を退職したあと、キャリア復帰が難しいケースも多いためです。
しかし女性のエグゼクティブ人材は、男性とは異なる視点や価値観を持ち、消費者目線で考えられるという理由から、転職市場での需要が高まっています。
働き方改革の短時間勤務や育児休暇などの条件緩和、女性活躍推進法などによって、企業で働く女性のエグゼクティブ人材が今後も増えると予想されているのです。
5.エグゼクティブコーチングとは?
エグゼクティブコーチングは、エグゼクティブ層に対してビジネスコーチングを行う手法のこと。全米上位500社のうち7割の企業が導入するほど、欧米を中心に世界的に取り組まれています。
そんなエグゼクティブコーチングについて解説しましょう。
エグゼクティブコーチングの目的
エグゼクティブコーチングの目的は、プロのコーチによる定期的なコーチングを受け、エグゼクティブ層の質を向上させること。
コーチング内容は決まっておらず、まずはエグゼクティブ人材とともにコーチングの目標を決めます。よく挙げられるテーマは、リーダーシップの強化や次世代の経営幹部の育成、働き方改革や組織開発などです。
一般的なコーチングとの違い
一般的なコーチングでは「人間関係を良くしたい・苦手なものを克服したい」など、個人の目標を中心に進めます。
対してエグゼクティブコーチングは「経営方針の見直し・組織の成長・後継者選びや育成」など、経営目標に関するコーチングが中心えす。エグゼクティブコーチングは本人だけでなく、組織全体に影響する点が一般的なコーチングと大きく異なる点でしょう。
エグゼクティブコーチングの効果
エグゼクティブコーチングを行うと、エグゼクティブ層に精神的な余裕が生まれ、リーダーシップを発揮できます。また幹部候補を育成するため、次世代のエグゼクティブ人材を自社内で確保しやすくなるのです。
幹部候補を育成し指導するため、エグゼクティブ層の基盤ができ、強固な組織に近付けます。
リーダーとしてのスキルを磨ける
「苦手な人や価値観が異なる人とのコミュニケーション・論理的かつ効率的なアクション・課題の把握と解決」など、リーダーに求められる要素を養います。
特にリーダーの発するコミュニケーションは、チームの雰囲気を左右するもの。チーム全体が話しやすく協力しやすい雰囲気になれば、同じように組織全体も良い雰囲気になるでしょう。
エグゼクティブの孤独感の解消、柔軟な思考力の育成
エグゼクティブコーチングは、リーダーとしての疎外感や孤独感をやわらげてくれるのです。
エグゼクティブ人材は管理者である場合が多いため、社内で相談できる相手も限られます。大きな責任やプレッシャーがかかっても相談相手が少なく、孤独感を覚えてしまうかもしれません。
エグゼクティブコーチングで外部のコーチと相談すると、こうした孤独感の軽減や解消が期待できます。エグゼクティブ人材に精神的余裕が生まれれば、部下やチームについて考えられるようになるため、より柔軟な対応が取れるでしょう。
エグゼクティブコーチングの方法
どのようにエグゼクティブコーチングの実施すればよいのでしょう。ここではエグゼクティブコーチングの方法について解説します。
形式と期間
一般的に1on1形式で行われ、実施期間は半年から1年間ほどとなります。6カ月の場合の流れを例としてご紹介しましょう。
コーチング開始後1カ月は、エグゼクティブ人材の利害関係者(部下など)へのヒアリングを実施し、現代の状況を確認します。2カ月目から4カ月目の間で本人とコーチの1on1コーチングが開始され、エグゼクティブとしての在り方を指導していくのです。
5カ月目から6カ月目は再度利害関係者へヒアリングを行います。そしてヒアリング内容をまとめて本人へフィードバックしたら終了です。
テーマを設定する
エグゼクティブコーチングではテーマを設定しなければなりません。何を向上させたいのか、何を改善したいのかによってコーチング内容が変わるからです。
「経営戦略や新事業の実現・リーダーやマネージャーなどの人材育成・組織改革や業務改善・チームビルディング」などビジネスに関するテーマが考えられるでしょう。
効果的な質問
エグゼクティブ人材への質問では、本人が抱いている怖れを聞き出す質問が効果的です。どうしようもない状況や対人関係に対して「自分では対応できない」といった怖れを抱いてはいるものの、弱みを見せられずにいる場合があるからです。
「具体的にどうしたいのか、あるいはどうなりたいのか」「恐れていることや不安に思っていることはあるか」などが挙げられます。