私用とは? 該当する範囲、トラブル、注意点

私用とは、旅行や冠婚葬祭など会社や所属する組織とは関係ない個人的な用事のことです。ここでは私用に含まれる用事や私用で起こり得るトラブル、私用に関する注意点などについて解説します。

1.私用とは?

私用とは家庭内の用事や通院、旅行や冠婚葬祭など自分のために使う用事のこと。ビジネスシーンでは「私用のためにお休みをいただきます」「来週のミーティングは私用のため欠席します」といった使い方をします。

所用との違い

私用と混同されがちな言葉に「所用」があります。所用とは用いる、または用いるもののことで、用事や用件といった意味でも用いられるのです。

私用と所用、どちらも「用事」という意味があるため混同されがちですが、私用は自分の用事、所用は用事全般として区別されます。ビジネスシーンでは休暇申請時に「私用でお休みします」と伝えても「所用でお休みします」と伝えても間違いではありません。

私事都合と同義

それでは「私事都合」と「私用」は何が違うのでしょうか。私事都合とは、その名のとおり個人的な都合のこと。つまり「私用」と同義の言葉として使われます。

たとえば「私事都合により、今週金曜日に有給休暇をいただきます」「私事都合により11月末をもちまして退職いたします」など。このように、明確な理由を伝えずに休暇を取得する際や遅刻する際、退職の際などに「私事都合」という言葉を使用します。

私用とは家庭内の用事や通院、旅行や冠婚葬祭など自分のために使う用事のこと。所用と混同されがちですが、私用は自分の用事、所用は用事全般として区別されます

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2.私用に含まれる用事

私用には一体どのような用事が含まれるのでしょう。それぞれについて見ていきます。

  1. 冠婚葬祭
  2. 通院
  3. 各種手続き
  4. 家庭の用事
  5. 旅行

①冠婚葬祭

平日のお葬式や結婚式に出席、参列する場合、会社を休まなければなりません。冠婚葬祭に関して特別休暇を用意している会社もあれば、休んだ分だけ単なる「欠勤」とする会社もあります。

冠婚葬祭に関する休暇に対して、労働法では一切のルールを定めていません。つまり家族の誰かが亡くなったり、自分自身が結婚したりする場合でも、会社が特別休暇を与えなければならないという法律上の義務は存在しないのです。

もちろん冠婚葬祭に関する特別休暇がなくても、有給休暇を取得して休めます。

②通院

自分自身の通院や検診、子どもの予防接種や定期健診、お見舞いなども私用の一部です。本人の体調不良時以外にも通院する機会はたくさんあるでしょう。

また病院には平日でないと融通が効かない場合も多いです。なかには友人や親戚のお見舞いに向かう際、相手の都合を考慮した結果平日となる場合もあるでしょう。いずれも「私用」として休暇を取得できます。

③各種手続

銀行や役所など各種窓口での手続きが必要な場合も「私用」を使います。市役所や銀行の窓口などは基本、平日の日中しか受け付けていません。平日昼間に仕事をしている人は、休暇を取得してそれぞれの手続きを行う必要があります。

各種手続きのなかにはクレジットカード紛失時の再発行手続きも含まれるのです。不注意でクレジットカードを紛失してしまった場合、それを理由とする「私用」で休暇を取得できます。

④家庭の用事

単なる「私用」や「私事都合」には、個人の用事や事情によって休むというニュアンスが強くあらわれます。しかし「通院」や「検査」では健康上に問題があるのではないかと疑われる可能性もあるのです。

「私用」の万能な理由として使えるのが、家庭内の事情や事柄全般を指す「家事都合」。家族の看病や育児、学校行事やレジャーなども広義には家事都合の一種となります。

⑤旅行

前述のとおり、旅行も「私用」のひとつ。疲れた体や気持ちをリフレッシュさせる旅行でも、家族や友人と過ごす趣味に関連した旅行でも「私用」には変わりありません。

休暇取得の理由を旅行とする点に問題はなく、またその理由や詳細な目的を説明する必要もありません。

ただし休暇を取得する際はいらぬトラブルや周囲への迷惑を考慮するという意味で繁忙期を避けましょう。自分がいなくても業務が円滑に進むよう調整・準備しておくと安心です。

有給休暇は「私用」で申請可能

有給休暇は基本的に「私用」で申請可能です。冠婚葬祭や旅行、家庭の用事や各種手続きであっても、取得の理由を説明する必要はありません。

当該従業員が有給休暇を取得し、万が一業務上にの差し支えが生じても、ほかの人員を配置するのは会社の義務。「かわりの人員を探さないと休暇を取得させない」というのは労働基準法に反します。もちろんそれを理由とした不利益な取扱いも禁止です。

私用に含まれる用事は、「冠婚葬祭」「通院」「各種手続き」「家庭の用事」「旅行」の5つです

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3.「私的利用」という意味での私用

私用といえば通院や冠婚葬祭、家庭内の用事など自分のために使う用事を指すのが一般的でしょう。

しかしビジネスシーンでは「私的利用」という意味で「私用」という言葉を用いる場合もあるのです。ここでは「私的利用」の意味で使われる「私用」について説明します。

  1. 私用電話
  2. 私用メール
  3. 私用ネットワーク
  4. 私用端末

①私用電話

会社が従業員に対して賃金を払うのと同じように、会社に雇われている従業員には会社の職務に専念し、私的な活動を控えなければならないという義務があります。これを「職務専念義務」というのです。

会社貸与の携帯電話は、業務上の使用を目的として貸与しているもの。したがってたとえ金額にするとわずかな額でも、プライベートでは使えません。会社貸与の携帯電話ではなく「私用の電話」を利用する必要があります。

②私用メール

先に触れた「職務専念義務」では、業務時間中の私用メールも禁じています。しかし従業員のなかで「職務専念義務」について正しい知識を持つ人は多くないため、就業規則に私用メールを業務時間内に行ってはならない旨を記載。周知する必要があるのです。

この定めによって企業はメールの利用状況を調査できます。しかし反対に就業規則への記載や事前の通知がない場合、たとえ使用者が私用メールを行っていた可能性が高くても端末の調査・閲読はできません。

③私用ネットワーク

テレワークの拡大推進により、私用ネットワークを使わざるを得ない状況が続いています。私用ネットワークとは、その名のとおりセキュリティ対策や通信強度が十分ではない私的なネットワーク回線のこと。

自宅回線を利用した私用ネットワークにはどうしても安全上の懸念が残ります。しかしこの対策として検討されていたVPNがボトルネックになっている企業も少なくありません。

④私用端末

前述した「職務専念義務」にもとづいて私用端末つまり、プライベートで利用している携帯電話やパソコンなどの業務利用を制限している会社もあります。

万が一個人が所有する携帯電話に会社のデータを保存していると分かり、その行為が企業秩序の維持を脅かす場合、企業には調査権が、従業員には調査に応じる義務が生じるのです。

BYOD

個人が保有しているパソコンや携帯電話、タブレットなどのIT機器を業務で利用することを「BYOD(Bring Your Own Device)」といいます。

BYODの導入にはコスト削減や業務の効率化、テレワークをはじめとした多様なワークスタイルの実現などいくつかのメリットがあります。しかし同時に情報漏えいや通信費の自己負担などさまざまな問題が生じる恐れもあるのです。

シャドーIT

リモートワーク、テレワークの浸透により、これまでオフィスを中心としていた働き方は大きな見直しを迫られています。従業員それぞれが異なる環境のなかで働いているため、いまや一人ひとりの使用環境を細かくコントロールするのは困難です。

そこで問題視されるようになってきたのが「シャドーIT(社内で使用が許可されていないサービスやデバイスを業務に活用すること)」です。具体的には以下の行為となります。

  • 業務連絡に、LINEやWhatsAppなどのチャットツールを使用している
  • 個人のスマートフォンで業務データを取り扱っている
  • 業務上のデータ共有にDropboxやOne Driveなどのクラウドストレージサービスを使用している

「私的利用」の意味で使われる私用には、「私用電話」「私用メール」「私用ネットワーク」「私用端末」が含まれます

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4.私用で起こり得るトラブル

有給休暇の取得理由を私用とすることに何ら問題はありません。また場合によっては私用端末や私用ネットワークを使わざるを得ない場合もあるでしょう。しかしいずれの場合もトラブルが生じた際、処分につながる恐れもあるため注意が必要です。

私用での病気やケガ

業務以外の理由で病気やケガをした際、療養のため仕事を休むことを「私傷病休職」といいます。

仕事が原因の場合は「業務上災害」として労災保険の支給対象となるものの、私用の場合は当然、労災保険の支給対象にはなりません。有給休暇もしくは欠勤として扱います。

私傷病休職は各事業所が定めた就業規則に則って取得するのです。そのため1カ月から3年程度の休職期間を設けているところもあれば、私傷病休職制度自体がないところもあります。

傷病手当金制度

健康保険に加入している本人(被保険者)が病気またはケガによって業務に就けない場合、本人とその家族の生活を保障する目的で定められたのが「傷病手当金制度」です。傷病手当金制度を利用するには、以下4つの要件をすべて満たしている必要があります。

  1. 業務外の病気やケガで療養している
  2. 仕事を4日以上休んでいる
  3. これまでしていた仕事ができない状態である
  4. 休業中の給与支払いがない

手続き方法

傷病手当金を申請する際は、以下の手続きが必要です。

  • 医師からの診断を受けたあと、従業員から企業に長期欠勤を取得する旨について連絡する
  • 「傷病手当金支給申請書」を用意する(被保険者記入用2枚・事業主記入用1枚・療養担当者記入用1枚の計4枚が必要)
  • 企業から対象の保険組合に「傷病手当金支給申請書」を提出する
  • 支給決定通知書を受け取ったのち、傷病手当金が入金される

社用車の私的利用による事故

会社名義の社用車を私的に利用していた際の事故は、業務時間外でも基本、会社側に運行供用者責任が発生します。しかし従業員が私用の目的で無断に利用していた場合、会社が利益を受けている時間であるとはいえないため、運行供用者責任は発生しません。

自家用車を使用して業務時間外の事故に巻き込まれた場合、業務とは無関係の事故であると見なされます。使用者責任・運行供用者責任は発生しません。

修理代の請求について

社用車の私的利用による事故で修理代が発生した場合、費用は誰にどこまで請求できるのでしょう。もし会社が車両利用に関する規定もないまま社用車を使用させていた場合、会社も責任を負わなければなりません。

本人が十分に納得したうえで修理代を支払うのであれば問題ありませんが、会社側の責任が大きいためその後訴訟問題に発展する恐れがあります。

情報漏えい

トレンドマイクロの調査によれば2019年4月から翌3月までのあいだ、8割もの国内法人組織で何かしらのセキュリティインシデントが発生していました。セキュリティインシデント・情報漏えいの主な原因は以下の4つです。

  1. 端末への不正アクセスやウイルス感染
  2. 端末の紛失および盗難
  3. 内部不正
  4. 攻撃対象を絞り込んだ標的型攻撃

個人アカウントに要注意

近年、各SNSやコミュニケーションアプリをメールや電話にかわる連絡手段として利用する人が増えています。しかしこれらの個人アカウントを業務上使用することには、情報の誤送信やなりすましなどのリスクがあるのです。

事実、ある病院ではGoogleグループが外部閲覧できる状態にあったため、患者の個人情報や非公開メールが外部からアクセスされてしまいました。

病気やケガ、事故や情報漏えいなど、私用で起こり得るトラブルは多いです。理解を深め、予防策を講じましょう

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5.私用に関する注意点

私用(私的利用)によるトラブルを防ぐためにも、あらかじめ私用(私的利用)の範囲やルール、問題が発生した場合の処遇などを就業規則に明記しておきましょう。ここでは私用に関する注意点を3つ解説します。

私用による有給休暇の場合は理由を尋ねてはいけない

「私用」を用いるシーンとして特に多いのが、従業員が有給休暇を取得する場合。有給休暇取得の権利は要件を満たした従業員に付与されるものであり、会社が取得の理由を聞くことは原則、認められません。

取得理由を聞いた場合、「理由によって休暇の可否を判断している」と解釈され、これがパワーハラスメント(パワハラ)となる場合もあります。

社内での私用(私的利用)にルールを設ける

私用(私的利用)の範囲を明確にするためにも、事業所ごとに私用(私的利用)に関するルールを設けておくと安心です。

  • 遅刻や早退、欠勤についての規定を定める。その際は単に事前に届出を行うだけでなく、会社の承認または許可を得る必要がある旨も明記する
  • 病気や体調不良時、連続欠勤時についての規定を定める。「会社はその日数にかかわらず医師の診断書等の提出を求めることがある」などと明記して、弾力的な運用ができるように規定する
  • パソコンや携帯電話端末の利用について規定を定める。その際は従業員のプライバシー権を侵害しないよう注意する

私用による一時外出の扱いを決めておく

私用による一時外出をどのように扱うかも、あらかじめ就業規則に明記しておきましょう。子どものイベントや通院、各種窓口での手続きを行うため、一時的に業務から抜ける場合もあります。

勤怠管理では一時外出(中抜け)を休憩時間として扱ったり、1日2回の就業として扱ったりするもの。いずれも管理が煩雑になるため、あらかじめどのような手続きが必要か、どのような扱いになるのかを明記しておけば、不要のトラブルを回避できるでしょう。

私用に関する注意点は、「私用による有給休暇の場合は理由を尋ねてはいけない」「社内での私用(私的利用)にルールを設ける」「私用による一時外出の扱いを決めておく」の3つです