役職手当とは? 役職ごとの金額の相場や決め方をわかりやすく

昇進して「主任」や「課長」といった「役職」についた際、「役職手当」が支給されます。役職手当はどのような基準で金額を決めているのでしょうか。ここでは役職手当について解説します。

1.役職手当とは?

役職手当とは、その役割や責任の大きさに応じて支給される手当のこと。会社組織では、昇進すると「主任」「課長」「部長」などの役職がつく場合もあり、その役職に応じて定められた役職手当が給与に含まれるようになるのです。

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役職手当の目的

役職手当を支給する目的は、その人がまっとうする役職の責務や権限の大きさに応じた、「会社への貢献」に見合った対価を払うこと。

役職の多くは「管理職」でもあります。企業によって異なるものの、管理職は時間外手当や休日出勤手当の対象外となるケースが見られます。そこで役職手当で給与を調整するのでです。

管理職とは?

管理職とは、一般的には組織のなかで管理や監督をする職のこと。しかし管理職の定義には、労働基準法と一般の認識に大きく隔たりがあるようです。

労働基準法では、監督や管理を行う人を「管理監督者」と定義しています。しかし厚生労働省での管理監督者の定義は、「管理監督者は経営者と限りなく近い立場で業務にあたり、非常に大きな責任と権限を持った役職」とされているのです。

「管理監督者」に該当するかは、職務内容や勤務形態、責任や権限などから判断しなくてはなりません。

役職=管理職

役職とは、「課長」や「部長」など、社内規定における役割やポジションを指し、その多くは管理職である場合も多いようです。そのため一般的には「役職=管理職」と認識されているでしょう。

役職には求められる能力や責任の重さが定められているものの、同じ役職名でも企業によって職務内容や責任範囲が異なります。一般的には役職に就くと役職手当が毎月の給与に加算されるケースが多いです。そして業績による短期的な変動はありません。

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2.役職ごとに見る手当の相場

手当の相場は、その役職で求められるマネジメントの内容や規模、難易度や背負う責任、会社への貢献度や本人の成長度などで変わります。ここでは役職手当の相場を見てみましょう。

〈部長〉7万~9万円程度

「部長」とは、企業の下位組織である部署を統率あるいは管理する役職のこと。企業規模や業績により違いはあるものの、企業や業界によっては「ゼネラルマネジャー」や「事業部長」などの呼び方をする場合もあります。

一般的な部長職の役職手当は7万~9万円程度。部長は経営層や役員に近いため、戦略の意思決定に関わる役職とされます。部長には、「経営資源を利活用して事業や組織を成長させるため、長期的視点から戦略を練る」といった内容が求められるでしょう。

〈課長〉5万~6万円程度

「課長」は組織の中堅リーダーのことで、下位職の「係長」をとりまとめて課全体を監督します。「室長」や「マネジャー」も同等の役職にあたるでしょう。課長の役職手当は5万~6万円程度。

課長は、部長やさらに上の上司から受けた戦略方針を、戦術に落とし込んで実行する責任を負います。基本、現場を向いて動くため、短中期的な見通しを確実にとらえることが求められるでしょう。

上位職へ昇進するためには、長期的な視野と経営感覚が必要です。

〈係長〉1万~3万円程度

「係長」は班長・チームリーダーのように組織の最小単位を統率する役割で、管理職ではありません。直属の上司である課長以上を管理職と呼びます。

係長は現場の責任者で、自身も業務をこなしながらプレイヤーとして個人目標を追いつつ、チーム全体の目標達成にも責任を持たなければなりません。部下を適材適所に配置したり、意欲を引き出したり、チームマネジメントの手腕を問われる立場です。

役職手当は1万~3万円程度である場合が多くなっています。

〈主任〉5,000円~1万円程度

「主任」は基本的に社員内での熟練者を指す場合が多く、「チーフ」や「メンター」などの呼び方も見られます。役職手当は5,000円~1万円程度。グループリーダーという感覚が近く、業務における普段の動きは一般社員とそこまで変わりません。

しかし後輩の指導や、上長とほかの一般社員とのパイプ役になる場合もあります。マネジメントの基礎を学びながら実践する立場といえるでしょう。

役職手当は、責任の重さやマネジメント業務の熟練度によって変わります。より多くの人を管理し、経営戦略に携わるようになると役職手当の金額がアップするでしょう

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3.役職手当の決め方

役職手当はどのように決めるのでしょう。ここでは役職手当の決め方について解説します。

  1. ざっくりとした金額を決める
  2. 定義や業種ごとの相場を知る
  3. すべて決めたら調整していく

①ざっくりとした金額を決める

まずはそれぞれの役職に求める業務の難易度や裁量や責任の大きさに応じて、おおよその金額を決めていきましょう。一番権限の低い役職の手当を真っ先に決めて、それを基準に考えていくとほかの役職の金額が比較的決めやすくなります。

業務内容やマネジメントする部下たちの人数、権限の大きさなどを、具体的に比較しながら検討していく必要があるでしょう。

②定義や業種ごとの相場を知る

役職が上がれば上がるほど、役職手当も高くなっていきます。業種によって金額の相場は異なるため、業界の傾向や平均金額についても情報収集しておきたいところです。

社員にとって魅力的である役職手当を目指す姿勢というのも大切ですが、自社の資金的体力や今後の業績見通しを考慮に入れるのも忘れてはいけません。

③すべて決めたら調整していく

すべての役職について手当の金額を決めたら、細かく全体のバランスを調整していきます。基本給やほか手当などを合わせたとき、妥当な金額になるかを考慮して調整しましょう。

役職手当は一律で定額にしているケースも多いですが、必ずしもそれが正しいとはいえません。その人の管理能力や統率力などのレベルによって、役職手当の金額を調整する必要があります。

役職手当を決める際は、一番低い等級から順に個別で決めて最後に細かく調整するとよいでしょう。役職ごとの金額差が不公平感をもたらさないよう注意が必要です

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4.役職手当を支給する際に気を付けること

役職手当を支給する際、何に気を付ければよいのでしょうか。ここでは役職手当を支給する際に気を付けることについて、解説します。

  1. 金額の差
  2. 深夜手当

①金額の差

管理監督者にあたる人がいる場合、役職手当の金額設定に注意が必要です。管理監督者は非常に大きな裁量と責任を持つ代わりに、時間外手当や休日出勤手当を必要としません。

そのため管理監督者の役職手当は、ほか管理職の時間外手当や休日出勤手当などを含めた金額よりも高くする必要があります。

ほかの人よりも責任が重いにもかかわらず、下位の管理職よりも手取りが下がるとなれば、管理監督者を目指す社員はいなくなってしまうでしょう。

②深夜手当

午後10時~翌朝午前5時までの深夜勤務では、役職者にも深夜手当が発生します。深夜勤務ではすべての社員に労働基準法が適用され、管理監督者とそのほかの管理職も深夜手当を支給しなければなりません。

経営者や給与担当者でも、管理職は深夜手当がつかないと誤解している人が見受けられます。いま一度ルールを確認する必要があるでしょう。

役職手当は役職間に不公平感を与えないようバランスを取る必要があります。またどんな管理職をつとめる労働者でも、深夜手当は別途支給しなければなりません

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5.役職手当に残業代は含まれない

基本、役職手当に残業代は含まれません。労働基準法にて残業代は、時間外労働をした実態で判断されるため、固定金額での支給はそもそも不適切です。残業時間が予測できる場合はみなし残業代を含められるものの、その時間数を超える分は請求できます。

残業代を請求する権利

残業代が正しく支払われていない場合、役職者には残業代を請求する権利が生じます。ただし残業請求権には時効があるのです。

残業代が支払われるべきであった給料日を時効の起算点として、2020年4月1日以前に発生した残業代未払いは2年、2020年4月1日以降の発生は3年が時効期間となっています。

起算日から2年ないし3年が経ち、会社から時効の成立を主張された場合、請求は認められません。証拠集めや専門家への相談など準備期間も含め、スケジュールに余裕をもって行動しましょう。

悪質な管理職問題

役職手当には残業代が含まれないにもかかわらず、管理職に残業代を払わない事態は後を絶ちません。管理監督者の「一般的な労務管理から除外される」という特殊な条件を曲解したり悪用されていたりする点が理由です。

悪質な管理職問題には、近年で社会問題ともなっている「名ばかり管理職」が挙げられます。これは残業代どころか給与や業務内容もほとんど変えず、管理職の肩書きだけを与えているケースです。

法律の知識をしっかり持ち、このような不当な扱いから自分の身を守りましょう。

原則、役職手当と残業代は別です。管理監督者でなければ、働いた分の残業代は請求する権利があります

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6.役職手当を理由に残業代が相殺される?

企業によっては残業代を役職手当に含みます。この場合、残業代は請求できないのでしょうか。残業代を請求できる2つのポイントをご紹介しますので、自分のケースが当てはまるかどうかを検証してみてください。

残業代を請求できる2つのポイント

役職手当で残業代を相殺されている人が、残業代を請求できるポイントは下記の2つです。

  1. 残業代でない名目で支払われている
  2. 残業時間にもとづいて支払われていない

残業代は、独立した名目として支給されなければいけません。そのため役職手当に残業代を含むのは認められず、役職手当とは別に残業手当の請求が可能です。

またそもそも残業代は時間外労働の時間数に応じて支払われるものとなります。役職手当に固定金額で含めるのも、労働基準法に則った支払い方法ではありません。

管理者は管理監督者ではないというポイント

社内で管理職と呼ばれる立場や役職にあっても、必ずしも管理監督者となるわけではありません。「裁量や権限が少ない」「上司の指示・命令を部下に伝達するだけ」の場合、ほかの社員と同じ扱いです。

労働基準法で決められている「管理監督者」は、経営者に近い責任と権限を持っている特殊な立場の社員となります。時間や場所を選ばず経営上の判断を求められるため、出退勤時間の概念がありません。

ただし労働時間の拘束や取り決めがない代わりに、残業代が必要ないほどの高い給与や手当を設定する必要があります。

管理監督者とは?

管理監督者とは、経営判断を伴うような重要な職務についており、与えられた裁量や権限が非常に大きい管理職のこと。そのためしばしば定時の出退勤や時間外労働、休日出勤などが必要となり、労働時間という枠組みを超えて活動せざるをえません。

このような勤務実態から、管理監督者は労働時間や休憩、休日などの規定の適用外となっており、時間外労働手当や休日出勤手当を支払う必要はないのです。

企業ごとに管理監督としてみなす基準はさまざまであるものの、管理監督の権限や責任に見合うだけの高い給与や手当の設定が必要でしょう。

役職手当と残業代は別名目とするのが原則です。「残業代が役職手当に含まれている」「みなし残業を超過した分」は別途請求できます