フリーライダーとは集団利益にタダ乗りすることです。ここでは、フリーライダーについて解説します。
1.フリーライダーとは?
フリーライダーとは、集団の利益にタダ乗りすること。まず下記5つについて解説します。
- フリーライダーの存在が問題視されている
- 社会学や経済学で使われている用語
- フリーライダーが生まれる原因
- ローパフォーマーとの違い
- ぶら下がり社員との違い
①フリーライダーの存在が問題視されている
フリーライダーとは、会社や社会に貢献する以上の利益を得ており、他人の評価を自分のものにすること。事業活動に活用されていない人材で、その存在が問題視されているのです。
②社会学や経済学で使われている用語
フリーライダーは社会学・経済学で使われている用語です。これらの分野にてフリーライダーは、自己利益をはかる行動や対価を⽀払わず、便益を享受するといった意味で用いられています。
社会学におけるフリーライダー
社会学におけるフリーライダーには、非協力的な行動や駆け抜けといった意味があります。たとえば「選挙権があるにもかかわらず棄権すれば、結果は組織政党へ有利に働く」「環境問題は、罰金を科す対象や非協力的な行動を取る人の特定が難しい」などです。
経済学におけるフリーライダー
経済学におけるフリーライダーとは、公共財の対価を払わずに便益を享受すること。NHKの受信料を支払わずに視聴するケースが挙げられます。
経済学におけるフリーライダーの背景には、「対価が未払いでも公共財の利用を排除できない非排除性」「対価が未払いでも公共財を利⽤できなくならない非競合性」という側面があるのです。
③フリーライダーが生まれる原因
フリーライダーが生まれる原因には、雇用事情の変化があります。終身雇用の時代、雇用の安定や積極的な人材育成への姿勢により、労働者は1社で真面目に長く働き続けました。
現在は雇用の多様化や昇進チャンスの減少などで、限られた人材しか評価されない狭き門になっており、それがフリーライダー誕生の原因となっています。
④ローパフォーマーとの違い
ローパフォーマーとは、組織のなかで業績が悪かったりスキルが不足していたりする人材のこと。フリーライダーとの違いは下記のとおりです。
- ローパフォーマー:スキルそのものが低い人
- フリーライダー:ほかの人の成果にタダ乗りして能力以上の報酬を得ている人
⑤ぶら下がり社員との違い
ぶら下がり社員とは、「仕事への姿勢が受け身」「チャレンジ精神や自己実現の意欲が欠けている」「会社や社会に貢献する意識に欠けている」という人材のこと。フリーライダーとの違いは下記のとおりです。
- ぶら下がり社員:真面目に働くが意欲に欠ける人
- フリーライダー:仕事に対して怠慢な人
2.フリーライダー社員の特徴
フリーライダー社員にはどのような特徴があるのでしょう。下記5つの特徴を見ていきます。
- 責任感がない
- 仕事を怠ける
- 同僚の成果を横取りする
- 部下や後輩に横柄な態度を取る
- 自分の能力を過信している
①責任感がない
フリーライダーは自分の任務を完遂しようといった考えがないです。そのため手抜きや不手際といった自分の問題にてチームや会社に迷惑をかけても、周囲に対して申し訳ないといった気持ちになりません。
これはまさに、責任感のなさを象徴しています。
②仕事を怠ける
「仕事に対してやる気を起こさない」「最低限の仕事しかしない」「指示を待ち、自分から積極的に働こうとしない」「業務遂行能力が著しく低い」などです。
対外的には立派なことをいいながら、理由をつけて逃げようとしたり他人任せにしたりするのも、フリーライダーの特徴です。
③同僚の成果を横取りする
仕事への意欲は低いにもかかわらず、下記のような動きで同僚の成果を横取りします。
- プロジェクトの成功時、周囲の成果を利用して自身が昇進しようと画策し、自分の貢献度を激しくアピールする
- プロジェクトが失敗した際、自分に責任がないことだけをアピールする
④部下や後輩に横柄な態度を取る
フリーライダーは基本、自分のことだけを優先して考えます。よって自分よりあとから入社した後輩や部下などに対して、人前で怒鳴ったり先輩風を吹かせたり雑用ばかり押し付けたりする、といった横柄な態度を取る場合が多いのです。
⑤自分の能力を過信している
フリーライダーのなかには、自分は仕事ができると思い込んでいる人がいます。しかしそこまで能力は高くありません。それにもかかわらず「自己評価の割に成果が上がらず、それは仕事のやり方のせいにする」のです。
3.フリーライダーがもたらす企業への悪影響
フリーライダーは、企業に悪影響をもたらします。一体どのような内容か、4点から解説しましょう。
- 職場のモチベーションが下がる
- 新たなフリーライダーを生む
- 優秀な社員が離職してしまう
- 企業の成長を止める
①職場のモチベーションが下がる
怠惰な社員が一人でもいると、しわ寄せは周囲にいる優秀な社員へ向かいます。そのため、周辺の社員から不平不満が挙がったりチーム内の雰囲気が険悪になったりするでしょう。その結果、社員だけでなく組織全体のモチベーションも低下します。
②新たなフリーライダーを生む
怠惰な社員の存在を組織が認めてしまうと、下記のような発想を持つ社員が出てきてしまいます。これは新たなフリーライダーを生み出す負の連鎖となってしまうでしょう。
- 怠けている人がいても問題ないなら、真面目に仕事をするほうが損だ
- 怠ける人がいるから、自分も手を抜いてもいいだろう
③優秀な社員が離職してしまう
フリーライダーによって生じた未解決・未処理の仕事は、周囲の優秀な社員に割り振られます。それにより優秀な社員は、仕事のやりがいを見失ったりストレスが生じたりしてしまうのです。場合によっては離職や転職を考えるでしょう。
④企業の成長を止める
フリーライダーの存在は、モチベーションの低下やフリーライダーの増加、優秀な社員の離職といった悪影響を生み出します。その結果、生産性や顧客満足度などを低下させ、企業の成長そのものを阻んでしまうのです。
4.フリーライダーを生まないための対策
フリーライダーを生まないためにも、対策を取りましょう。ここでは、その内容を6つ解説します。
- 職場環境を見直す
- 仕事内容を可視化する
- 人材教育を徹底する
- 適切な評価制度を導入する
- 適切な人材配置を行う
- 定期的に面談の場を設ける
①職場環境を見直す
「担当者や責任者が不明確」「期限が定められていない」「評価制度が存在しない」「教育・研修制度が未整備」といった職場環境は、フリーライダーを生みやすくなります。このような環境が確認できたら、早急に見直しましょう。
②仕事内容を可視化する
社員一人ひとりの、仕事の内容や質、進捗などが見える化できれば、自分がフリーライダーであるか否かを自覚しやすくなります。また組織としても仕事の進捗が確認できるため、フリーライダーを生み出しにくくなるのです。
③人材教育を徹底する
即戦力重視の採用を続ければ、人材教育コストは低減できるでしょう。しかし企業が求める人材と即戦力としての人材の意見に相違がある場合、トラブルが起こりやすくなります。企業は可能な限り、懸命に働く人材を育成しましょう。
④適切な評価制度を導入する
公正・適切な評価制度があれば、社員一人ひとりの働きぶりを可視化できます。評価が行われるため社員のモチベーションも高まるでしょう。また良い評価と結果を得るために社員は試行錯誤します。その結果、フリーライダーが誕生しにくくなるのです。
⑤適切な人材配置を行う
「仕事と自身の適性がマッチしない」「仕事の難度が高すぎてついていけない」などをきっかけにフリーライダーが誕生する場合もあります。適性に合った仕事に配属したり、専門性を生かした職種についてもらったりなど、適切な人材配置を心掛けましょう。
⑥定期的に面談の場を設ける
毎月や四半期、半期といったスパンを決め、定期的に上司と部下の面談を行います。定期的な面談によって、フリーライダー予備軍に早めのフォローができるのです。社員も、自分自身の仕事の仕方を見直すきっかけになるでしょう。