ビジネス上でよく聞く「PREP法」や「SDS法」は、どちらも文章やプレゼンテーションで役立つ考え方です。両者の違いやメリット、デメリット、使い方や練習方法について見ていきましょう。
目次
1.PREP法とは?
PREP法とは、分かりやすい文章や説明の構成を作るためのモデルのこと。シンプルで説得力を持った文章が書けるようになるため、文章力が高まります。
「PREP」は、
- Point(要点)
- Reason(理由)
- Example(具体例)
- Point(要点)
の頭文字です。
まず初めに「要点」を伝え、次に結論にまで至った「理由」を説明します。そのあと理由に納得してもらうための「証拠」を提示し、そして再び「要点」を伝える、という文章構成なのです。
物語をつくる際に利用する起承転結と違い、ビジネスでわかりやすく説得力のある文章を書くのに向いている方法といえます。
PREP法で解決できること
PREP法は日常や学業での情報発信はもちろん、ビジネスでも大いに役立ちます。企画書や提案書、さらに「話す」が前提のプレゼンテーションでも活用できます。
コミュニケーション能力に自信がなかったり、自分で何を話しているかわからなくなってしまったりする人は、PREP法を活用するとよいでしょう。明確な理由に裏付けられたシンプルかつ論理的な主張が可能になります。
話も長くならず、論理的に聞き手に伝えられる万能な技といえるでしょう。
2.PREP法を使った例文
より早く習得するためには例文の理解も大切です。さまざまなタイプの例文を声に出して読んでみたり、PREP法で短文を書いてみたりしてみましょう。
例文①
プレゼンテーションにおけるPREP法の例文をご紹介します。
- 結論:下半期の当社ホームページのアクセス数は、約350万件でした。上半期と比べると、46%の増加です。
- 理由:アクセス数が増加した背景には、アクセス解析への注力が挙げられます。
- 具体例:アクセス解析の外部講師を招き、その定期講習会を1年間受けた社員にアクセス傾向の分析や問題点の発見を一任しました。その結果、アクセスされやすいページのテーマが判明したため、該当するページを強化・増加したのです。
- 結論:以上のとおりアクセス解析に注力した結果、アクセス数を大幅に増加させられました。
例文②
面接におけるPREP法の例文をご紹介します。
- 結論:御社で採用していただいたあかつきには、新規顧客開拓にチャレンジし、貢献していきたいと考えています。
- 理由:前職でも営業をしていたため、対面での営業が自分の強みだと考えているからです。
- 具体例:自分の強みは、新規顧客開拓の経験と実績となります。前職では、3年連続で新規顧客開拓数がトップでした。
- 結論:前職で培った経験や実績を存分に生かし、御社でも新規顧客開拓に貢献していきたいと考えています。
3.PREP法とSDS法の違い
「SDS法」という手法もあります。SDS法は伝えたい内容を端的に伝えたい場面にて有効です。PREP法とSDS法の違いについて詳しく見ていきましょう。
SDS法とは
SDS法とは、「Summary(要点)」「Details(詳細)」「Summary(要点)」の頭文字を取った文章構成のこと。ニュース番組にてよく使われる構成で、文章やプレゼンテーションなどにて、聞き手や読み手の理解を促したいときに有効だとされています。
物事を端的に伝えたい場面に使用するとよいでしょう。
PREP法とSDS法の使い分け方
2つの使い分けは下記のようになります。
- PREP法:物事をわかりやすく説明するのに適している。要点以外にも説明や例をくわえているためより理解が深まりやすく、教本やセミナーといった教育での表現に有効
- SDS法:事実をわかりやすく伝えることに向く。読みやすく記憶に残る文章構成のため、ブログやプレゼンのように短時間で印象付けたい場面にて有効的
4.PREP法のメリット
ビジネス上でも効果的といわれるPREP法のメリットについて、見ていきましょう。
- 説得力が持てる
- 短時間で主張が伝わる
- 文章作成が楽になる
- スピーチ力が向上する
①説得力が持てる
PREP法では前述したとおり、結論を2回伝えます。そのため結論が強化されて聞き手の印象に残りやすいうえ、理由をあわせて伝えるため結論の説得力が強化されるのです。
シンプルなためわかりやすさはもちろん、結論に至った経緯や理由を伝えるため説得力も増すでしょう。
話を聞くときの人間の集中力は、相手が話し始めて30秒間の集中力が最も高いとされています。したがって30秒の間に要点や結論を伝えられれば、さらに説得力が増すのです。
②短時間で主張が伝わる
結論からスタートするPREP法は、伝えたいことを迅速に伝えられます。PREP法ではない場合、人によっては結論がわからずイライラしてしまうでしょう。
またPREP法は展開が明確なため、国籍や専門性といったバックグラウンドを問わず、論理的なコミュニケーションが求められる場面で活用できます。
③文章作成が楽になる
PREP法を活用すると、文章作成のスピードが格段に上がります。構成が決まっていないと文章を一から考える必要があるため、時間がかかるだけでなく、途中で方向性を見失ってしまうでしょう。
「主張がわからない文章になる」のを防ぐという意味でも、PREPは有効的な手法です。
④スピーチ力が向上する
PREP法を使うと、スピーチ力が自然と向上します。話の構成や順番をかんたんに考えながら同時に、自分自身の頭のなかも整理できるからです。
しかしPREP法を活用してもうまくまとまらない場合はどうでしょうか。その場合、PREP法が持つ3つの構成要素のいずれかが不十分になっている可能性があります。最も伝えたいメッセージを見直したり、具体例を集約したりすると解決するでしょう。
5.PREP法のデメリット
良いことばかりに見えるPREP法ですが、「追体験を伝えられない」「長文には向かない」「慣れるまで練習が必要」といったデメリットが挙げられます。場面に応じて最適な方法を取捨選択する必要があるため、デメリットもしっかり理解しておきましょう。
追体験を伝えられない
スピーチでよく利用する追体験ですが、PREP法の場合、先に結論と理由を述べてしまうため、事例はおまけのような立ち位置になりやすいです。
PREP法における事例は、聞き手や読み手の印象が薄れてしまう場合もあるので注意しましょう。追体験のような事例はしっかりと語り、話し手の見聞きしたことやそのときの感情が十分に聴衆に伝わるよう意識します。
長文には向かない
起承転結を利用し、文章にオチをつける物語のような長文には、構成上不向きといえます。物語では伝えたいことを最後に持ってくる傾向にあるため、結論を最初に述べる構成のPREP法は向いていません。
PREP法はビジネスやプレゼンテーションなどのほうが効果を発揮しやすいのです。
慣れるまでに練習が必要
PREP法の構成は順序があり、「たとえば」「なぜなら」など利用する接続詞も構成の順序上ある程度決まっています。そのため慣れるまで一定の期間練習をする必要があります。
声に出して話すような会話やプレゼンの練習よりもメールのように時間をかけて考えを言語化していくような練習が有効でしょう。
6.PREP法を使う場面
PREP法には伝えたい事柄をしっかりと主張しつつ、聞き手に納得感を与えながら、端的に分かりやすく伝えられます。そのためディスカッションやスピーチなどで使用される場合も多いようです。
ここではディスカッションやスピーチ以外で、PREP法が役立つ場面を見ていきましょう。
面接
面接の場では限られた時間で、自分自身についての説明が相手にしっかり伝わるよう話さなければいけません。PREP法を活用すれば、話すのが苦手な人でも、内容を端的に分かりやすく伝えられるでしょう。
要点と理由を話したあと、具体例として自身の経験の詳細をくわえると、より説得力のある内容として相手に伝えられます。
プレゼンテーション
論理的でわかりやすいことが重要とされるプレゼンテーションにて、冒頭に結論を持ってくるPREP法は最適です。また検討材料や調査の結果を報告するのにもPREP法が向いているとわかっています。
大勢の前でプレゼンテーションをする前、PREP法をもとにして、構成や台本を組み立てるとよいでしょう。
婚活
婚活の場にでもPREP法は有効です。婚活パーティーや食事会では時間制限が設けられているため、限られた時間で自分を相手に知ってもらう必要があります。
自分の仕事や趣味について話す機会がある場合、PREP法の構成を利用し、端的に要点が伝わる会話を意識しましょう。自分について相手にしっかりと知ってもらえます。
7.PREP法の練習方法
PREP法は構成の順序が決まっており、利用する接続詞もある程度決まっています。そのため使いこなせるようになるまでは少し練習が必要です。練習するときは、相手に伝わったかどうかを含めて、しっかりとフィードバックをもらいましょう。
ここではPREP法を自然と使えるようになるまでに必要な練習方法をご紹介します。
プレゼンをする
まずはPREP法を使って、プレゼンテーションの練習をしてみましょう。文章を書くときとは違って適切な言葉選びが求められるため、話し手は聞き手の反応や表情を直接確認しながら話を進める必要があります。
PREP法を意識して頭を整理しながら、人に話すのを繰り返すと、自然とPREP法を使えるようになるのです。
文章を書く
メールのような短文から作文のような長文までを実際に書くと、PREP法の基本構成やそれぞれの役割、構成ごとに利用する文章を理解できます。話す練習より時間はかかるものの、文面に起こすためPREP法への理解が深まるでしょう。実務でも役立ちます。
スピーチをする
実際に声に出して伝える練習がしたい場合、スピーチが有効的です。日本語教育では自分の主張を大勢の前で順序立てて説明する教育がされてきませんでした。日本は他国と比べても伝える能力が劣っている傾向にあるとされています。
短いスピーチでもいいので、自分の主張がわかりやすく伝わるよう練習を繰り返しましょう。
フィードバックをもらう
プレゼンテーションやスピーチの練習をする際、聞き手からフィードバックをもらいます。なぜならフィードバックには4つの効果があるとされているからです。
- 目標達成への効果:本番前に課題を知ると「軌道修正」できる
- 人材育成の効果:フィードバックを受ける側だけでなく、する側の成長にもつなげられる
- モチベーション向上の効果:フィードバックを通して問題解決の糸口をつかみ、前向きに取り組む気持ちを生み出す
- パフォーマンスの向上効果:フィードバックにより生産的な行動を選択できる
このようにフィードバックをもらうと、よりよい効果が得られます。