角印とは、会社の認印として使われている、印面が四角い印鑑のことです。丸印との相違点や作成のポイント、電子印鑑や個人事業主の利用について説明します。
目次
1.角印とは?
角印(かくいん)とは会社の名前が入った印面の四角い印鑑のこと。見積書や請求書、領収書などで会社の認印として使われています。多くの企業で、角印と丸印という形が異なる2種類の印鑑が使用されています。角印と丸印の用途の違いについても見ていきましょう。
会社の認印として使われる印鑑
角印は会社にとっての認印で、代表者印の役割を持つ丸印とは異なる役割があります。見積書や納品書、請求書など、会社から発行された書類であると相手に知らせるために押される印鑑です。
日常の業務で使用される書類には「確かに自社から発行したもの」という確認のために押印されています。よって使用頻度は丸印より格段に多いのです。
角印は浸透印でもいい?
角印は浸透印でもよく、多くの会社で使用されています。
「多くの部署で使うため、複数用意する必要がある」「同じ印鑑を量産できる」「数多くの書類に押印するので使用頻度が高くなる」などで同じ印影の角印を各部署に置いて手早く利用する際、浸透印は便利です。
しかし使いやすい浸透印でも、「会社の認印」という重要な役割を見失わないようにしましょう。
代表者印として使える?
法務局に代表印として登録すれば、代表者印として使えるのです。角印が10mm以上30mm以下の正方形に収まるものなら、法人の代表印として登録できます。
ただし角印はデザインが単純になりがちで、偽造されやすい点も。複雑なデザインの丸印を実印として登録し、認印である角印と使い分けるのがよいでしょう。
代表者印とは?
法的拘束力がある会社の実印のこと。会社の代表者として契約するとき含めた、重要な場面で使われます。会社設立登記をするときに印影を法務局に登録します。法務局に印鑑を登録すると、印鑑証明書の取得ができるようになるのです。
会社の存在証明を求められるような契約や法的手続きの際は、代表者印の捺印と印鑑証明書が必要となります。
2.角印と丸印の違いは?
角印・丸印のいずれも、会社の印鑑として使われている「社判」です。両者の用途やサイズ、押し方を比較しながら、詳しく見ていきましょう。
- 丸印とは?
- 角印と丸印の用途の違い
- 角印と丸印のサイズの違い
- 角印と丸印の押し方の違い
- 角印と丸印を同時に押す場合
①丸印とは?
会社実印と呼ばれる代表者印で、個人使用する際の「実印」にあたるもの。法務局に印鑑登録すると、会社実印になります。基本、丸い形の印鑑が用いられるので「丸印」と呼ばれているのです。
会社の代表による契約や法的な手続きなど、重要な場面で使われるもので、役職者といった限られた立場の人が利用します。そのため一般社員が手に取る機会は少ないでしょう。
代表者の実印として使われる場合が多い
会社が用いる丸印は、その会社・法人の代表者の実印として用いられます。会社の権利や義務が発生するさまざまな契約書や法的な手続きなどにおいて、会社の代表者が内容を了承して捺印するのです。
印影は、中央に代表印や代表取締役印、理事長印など代表者の役職があり、外側に円形に会社名が記載されています。
②角印と丸印、用途の違い
- 角印:会社の認印として発注書や見積書、請求書や納品書などに使われ、確かに会社で発行したものであると証明する
- 丸印:会社の代表が決定した取引や契約や法的手続きなど、より重要な場合に使用される。たとえば物品購入や委託業務などの契約書類、不動産登記書類など
③角印と丸印のサイズの違い
- 角印:サイズの規定はとくにない。しかし15mmから27mm程度のものがよく見られる
- 丸印:印鑑登録の際、直径10mmから30mmという規定がある。しかし押しやすさや書類内でのバランスを考慮して、18mmから21mm程度のものが多い。認印として使用する場合、サイズの規定はない
④角印と丸印の押し方の違い
- 角印:社名などの文字の右側に、重なるように押印。認印である角印は、実印の役割を持つ丸印と違って印鑑証明と照合しないため、文字に重ねると文書の複製を防げる
- 丸印:社名記載部分の右側に押印。重要度の高い書類に使用され、印鑑証明と照合する場合があるため、ほかの文字と被らないようにする
⑤角印と丸印を同時に押す場合
角印と丸印の両方を押す場合、以下のようにします。
- 角印:住所や会社名の中央部に重ねて押す
- 丸印:住所・会社名・代表者名などに重ならないよう右横に押す
両方を押す場合、スペースが足りない場合も多いです。そのため角印は文字の真ん中に押し、丸印は印影をはっきりと見せるため文字の右横にします。
3.角印を作成するときのポイント
会社設立の際に、認印である角印の用意は必須です。角印は使用頻度が高く、印影はたくさんの人に見られるもの。よい角印を作成する際のポイントを下記の3点から説明します。
- 素材
- 文字
- 書体
①素材
角印は使用頻度が高いため、摩耗しやすいもの。耐久性がない素材だと、長年使っているうちに印影が変わる場合もあります。
印影が不鮮明になったり縁が欠けたりしてひんぱんに作り変えていると、取引相手が違和感を覚えて会社の信用にかかわる可能性もあるでしょう。
そこである程度の耐久性がある素材を選びます。おすすめの素材は「薩摩本柘や彩樺などの木材」「黒水牛・オランダ水牛」「チタン」などです。
②文字
印影の文字のバランスやデザインは重要なポイント。縦彫りが一般的で、文字数のバランスをとるために社名の末尾に「~印」「~之印」と入れます。
現在、社名や商号にアルファべットを使えるので、角印もアルファベットで作成できます。その場合、文字の並びは縦でも横でもかまいません。バランスが良いデザインになるようにしましょう。
③書体
角印の書体選びも重要なポイントです。「風格があり、堅実なイメージといった見栄えの良さがある」「偽造されにくい」などを考慮したうえでよく選ばれている書体は、下記のとおりです。
- 篆書体(てんしょたい)
- 吉相体(きっそうたい)
- 古印体(こいんたい)
いくつかの書体で実際の社名の印刷プレビューを確認後、作成するとよいでしょう。
4.角印の電子印鑑はつくれる?
角印の電子印鑑は作れます。コロナ禍によってリモートワークが進んだため、これまでの「ハンコ文化」に代わり電子印鑑が注目されているのです。オンラインで完結できる仕組みを導入すれば、押印のために出社しなくてもよくなるでしょう。
電子印鑑とは?
PC上で書類に印影を貼り付けて、「この書類は実際に人が見て、内容を確認した」と証明するものです。
たとえば会社設立時に電子定款を作成するケースがあります。紙で行うよりも低コストなので、最近では電子定款が主流になりました。会社の設立や官公庁手続きに関しては、電子印鑑の認知度が高くなっています。
法的効力はどれくらい?
2005年4月から「e-文書法」が施行され、電子印鑑を必要とするデータ化した書類は、一部「電子化が可能な文書」として認められるようになりました。たとえば見積書や納品書、請求書や領収書、契約書や振替伝票などです。
電子印鑑は、電子証明書を申請し、ダウンロードして発行します。
電子印鑑のメリット
電子印鑑を導入すると、下記のようなメリットが生まれます。
- 押印業務が効率化し、社内決済が早くなる
- ペーパーレス化により、書類を印刷するコストが削減できる
- 取引先とのやり取りがスムーズになる
- 電子契約にすることで収入印紙が不要となる
- 全体的にスピードアップ
- 紙や印刷、収入印紙などの経費が削減できる
- 取引先の負担も減り、良い評価を得られる
電子印鑑のデメリット
電子印鑑を利用する際、注意点もあります。
- 不正利用といったセキュリティ面の不安
- 安全で法的効力が高いシステムを導入するとコストがかかる
- 今までの業務内容を見直し、フローを変更する
- 取引先に説明し、同意してもらう必要がある
導入後「こんなはずではなかった」とならないよう、しっかり調べて準備しましょう。
電子印鑑に効力はある?
法的効力が「あるもの」「ないもの」にわかれるのです。
電子印鑑に法的効力を持たせる方法は、電子サインや電子署名のように、メール認証や電子証明書など別の証明方法を追加すること。単純に印影をデータ化しただけのものは法的効力が乏しくなります。しかし角印を認印として利用するのであれば、差し支えないでしょう。
電子印鑑のつくり方
電子印鑑作成ソフト「パパッと電子印鑑3PRO」を利用して、既存の角印から電子印鑑を作る方法を解説します。
- ソフトを起動させて、「スキャナ印」を選択
- 印影の画像をスキャナやスマートフォンから取り込む
- 読み込まれた画像の印影をトリミングする
- 背景の透かしや印影のかすれを調整して登録すれば電子印鑑が完成
電子印鑑を「印鑑パネル」に登録しておけば、いつでもドラッグ&ドロップで書類に押印できます。
5.個人事業主に角印は必要?
個人事業主として開業するとき、数種類の印鑑が必要です。そこで角印は必須なのでしょうか。ここでは下記3つについて説明します。
- 必ず角印を使うわけではない
- 個人事業主が準備しておきたい印鑑
- 個人事業主が印鑑を使う場面
①必ず角印を使うわけではない
個人事業主は、必ず角印を使うわけではありません。しかしあると便利です。
屋号を使って活動する個人事業主も多いでしょう。請求書や領収書を発行する際、屋号の角印を押しておけば取引相手にもわかりやすく信用度も高まりますし、実印の多用も防げます。このような理由から、個人事業主も角印を作っておくと便利でしょう。
②個人事業主が準備しておきたい印鑑
個人事業主が準備しておきたい印鑑は6種類です。
- 認印
- 実印
- 屋号印
- 銀行印
- 角印
- 住所氏名印
認印と実印は、プライベートと兼用で構いません。ビジネス面では、屋号があれば屋号印、事業用銀行口座の銀行印が必要です。角印と住所氏名印は、納品書や請求書、領収書など各種書類に使います。
③個人事業主が印鑑を使う場面
契約書や不動産取引、銀行から融資を受ける際などには実印を用います。屋号やペンネームがあるなら屋号印を各種書類に押印すると、取引相手の信頼度が高まるでしょう。住所氏名印を用意しておくとさまざまなシーンで利用できるので、記入の手間が省けます。