マネジメント能力とは? 必要なスキルと高める方法を簡単に

マネジメント能力とは、組織に成果を生み出すための人や機能、道具などを管理する能力のことです。ここではマネジメント能力の重要性やその種類、マネジメントに必要なスキルなどについて解説します。

1.マネジメント能力とは?

マネジメント能力とは、人やモノ、時間や道具を管理する能力のことです。組織利益の最大化を課題に据え、マネジメント能力をもって仕事の時間やタスクなどを適切に管理します。たとえば以下のスキルです。

  • 戦略や課題をとらえて、目標を設定するスキル
  • コーチングスキル
  • 目標に向かって進捗を管理するスキル

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マネジメント能力とリーダーシップの違い

「マネジメント能力」と「リーダーシップ」は、組織におけるそれぞれの役割が大きく異なります。

  • リーダーシップ:組織のトップに立って明確なビジョンや方向性を示す。メンバーのパフォーマンス向上や組織環境の整理が求められる
  • マネジメント能力:リーダーシップが示す方向性にもとづいてメンバーの目標を設定し、指示先導する。プロジェクトの管理や育成、評価などが求められる

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2.マネジメントの定義

「マネジメント(management)」は「管理」や「経営」と訳される英単語です。計画を立てて実行し、その結果を分析、比較、審査して次の計画に役立てます。

諸説あるものの「マネジメント」という言葉は、アメリカの経営学者ピーター・ファーディナンド・ドラッカー氏の提唱がはじまりといわれているのです。以来、おもに組織の管理や運営をあらわす言葉として使用されています。

ドラッカーが提唱したマネジメントの定義

ドラッカー氏は「マネジメント」と「マネージャー」を以下のように定義しました。

  • マネジメント:組織に成果を生み出す道具や機関、機能
  • マネージャー:組織の成果に責任を持ってマネジメントを実行する人

言い換えれば、組織の成果を向上させるためのツールや仕組みがマネジメント、組織の成果を向上させるために人材に働きかけて組織を動かすのがマネージャーです。

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3.マネジメント能力の重要性

昨今のグローバル化やインターネットの普及により、マネジメント能力の重要性はますます高まっています。マネジメント能力はなぜ必要なのでしょうか。

社会変化に対応する力

マネジメント能力は社会の変化に対応できる力をつけるうえで欠かせない能力です。ビジネス環境の変化が目まぐるしい現代にて、価値のある企業として認められるためにはつねに時代や環境に合った力を発揮していかなければなりません。

そこで活躍するのが、時代や環境の変化を敏感に察知してチームの方向性を判断するマネジメント能力です。

人材育成

マネジメント能力は人材育成の面でも必要不可欠です。学校法人産業能率大学総合研究所が実施した調査によると「部長として組織から期待されていること」の1位に「職場運営の方向性を明確に示すこと」がランクインしました。

管理職にはマネジメント能力を生かして組織の方向性を明確にできる能力、そして長期的なキャリアを見据えた人材育成能力が求められています。

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4.マネジメントの種類

一言で「マネジメント能力」といってもさまざまな種類があります。代表的な6つのマネジメントについて説明しましょう。

  1. タレントマネジメント
  2. モチベーションマネジメント
  3. パフォーマンスマネジメント
  4. メンタルヘルスマネジメント
  5. ストレスマネジメント
  6. アンガーマネジメント

①タレントマネジメント

タレントマネジメントとは、タレント(従業員)が持つスキルや能力を最大限に活かすための戦略的な人事手法のこと

かつて日本企業の働き方といえば、年齢や勤続年数に応じて役職や評価が上がる「年功序列制度」が一般的でした。しかしこれでは従業員が本来持っているスキルや能力を最大限に生かせません。

価値観の多様化や労働市場の流動化が進むなかで従来の終身雇用制や年功序列は適用しなくなりました。そこで注目されるようになったのが「タレントマネジメント」です。

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②モチベーションマネジメント

モチベーションマネジメントとは、従業員のモチベーションを高めて行動を促す手法のこと。生産性や効果を高めるための「動機づけ」と訳される場合もあります。

組織の生産性を向上するには、メンバー一人ひとりのモチベーションを高めなくてはなりません。やる気を出すための動機づけ要因を見直し、目標を定めて作業効率を改善するマネジメントです。

③パフォーマンスマネジメント

パフォーマンスマネジメントとは、PDCAサイクルを円滑に回す手法のこと。このマネジメントでは、目標の達成につながる行動を上司と部下が対話を通して一緒に考えます。

継続的なフィードバックやミスへのフォローを行いながら、相互にコミュニケーションを取り、部下の成長を促すマネジメント法です。

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④メンタルヘルスマネジメント

メンタルヘルスマネジメント、産業保健体制の整備やメンタルヘルス専門機関との連携などを行って、従業員のメンタル状況にあわせた管理を行う手法のこと。メンタルヘルスの問題はどの企業にも発生する可能性があります。

またメンタルヘルスの不調による労災請求件数は年々増加傾向にあり、放置しておくと生産性の低下だけでなく訴訟問題に発展する恐れもあるのです。そこで注目されているのが、精神的な痛みや従業員の心の管理をする「メンタルヘルスマネジメント」なのです。

⑤ストレスマネジメント

ストレスマネジメントとは、あらゆる問題の背景となり得るストレスを適切に管理する手法のこと。業務上、そして日常生活にて誰もが、何かしらのストレスを抱えています。モチベーションや生産性をアップさせるには、これらのストレスをコントロールしなければなりません。

「ストレスマネジメント」ではストレスの生起プロセスを理解し、ネガティブな影響に打ち勝つための手段を身につけます。

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⑥アンガーマネジメント

アンガーマネジメントとは、怒りの感情を整理し、適切にコントロールして問題解決を図る手法のこと。怒りの感情は周囲との衝突や対人関係に支障をきたす要因になりますが、同時に自分を守るための感情でもあります。

アンガーマネジメントは怒らないようにするのではなく「怒るべきときは怒る、怒る必要のないときは怒らない」を区別するマネジメントです。

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5.マネジメント能力に必要とされるスキル

効率的なマネジメントを行うには、どのようなスキルが必要なのでしょうか。ここではマネジメント能力に必要な3つのスキルについて説明します。

  1. 問題解決力
  2. 目標を設定し、進捗を管理する力
  3. コミュニケーション能力

①問題解決力

組織が成長するには、現在抱えている課題を解決しなければなりません。しかし課題のなかには目に見えるものもあれば、抽象的で姿の見えない課題もあります。

この見えない問題を見つけ出し、どのように解決するかを論理的に伝える能力が「問題解決力」です。いわゆる「マネジメント能力が高い人」は、この「問題解決力」と分析力、洞察力が優れているといわれています。

②目標を設定し、進捗を管理する力

目標設定や進捗管理も、問題の解決に欠かせません。そこで必要とされるのが、チームのミッションを踏まえたうえで部下一人ひとりのスキルや意欲を見極め、目標を設定、進捗を管理する能力です。

部下によっては細かく管理されたい人もいれば、ある程度本人に任せて放置してほしい人もいます。彼らの特性を見極めながら、進捗を管理していく能力が必要です。

③コーチングスキル

一方的な指導や知識の伝達ではなく、同等の立場に立って相手の能力や可能性を引き出すスキルのこと。普段の何気ないコミュニケーションも、相手が本来持つ力を発揮させるという視点を持てば「コーチング」になるのです。

コーチングをとおして、相手の「これをやってみたい」「自分はこれが得意なのかもしれない」という欲求や行動力を生み出せます。

コーチングとは?

コーチングでは基本「教える」「アドバイスをする」はありません。あくまでも対話をとおして相手の考え方や行動の選択肢を引き出すマネジメントです。そんなコーチングには以下の効果が期待されています。

  • 相手に新しい気づきを与える
  • 考え方や行動の選択肢を増やす
  • これまで持ち合わせていなかった視点を増やす
  • 目標達成に必要な行動を促進する

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6.マネジメント能力を高める方法

業種や規模を問わず、さまざまな企業がマネジメント能力の向上に課題を抱えているのです。ここではマネジメント能力を高めるための具体的な方法を4つ説明します。

  1. ディズニーストラテジー
  2. インバスケット思考
  3. ポジションチェンジ
  4. ペーシング

①ディズニーストラテジー

ディズニーストラテジーとは、アニメーションに対して熱い夢を持っていたウォルト・ディズニーが、強い意識によってその夢を実現したことから名付けられた方法のこと。ディズニーストラテジーでは以下3つの視点を意識して、問題解決力や発見力、マネジメント能力を高めます。

  • ドリーマー:夢を語り、新たな発見を生み出す
  • リアリスト:夢の実現に必要な方法や計画を考える
  • クリティック:計画や方法にひそむリスクを洗い出す

②インバスケット思考

インバスケット思考とは、ビジネスに必要な能力を向上させる思考トレーニングのこと。いくつかのルールを定めてビジネスの場面を想定し、タスクを洗い出して解決方法を考えます。

「インバスケット」とは未対応の書類がたまった箱のこと。インバスケット思考を鍛えると、実際の現場ですばやく正確な判断を下せます。

③ポジションチェンジ

ポジションチェンジとは、自身の視点だけでなく相手の視点に立って、これまで見えなかった課題や優先事項、問題解決の糸口を探し出す手法のこと

ポジションチェンジが活用できるのは顧客対応だけではありません。対上司、対部下でも成り立つため、さまざまなシーンで役立ちます。

第三者的な視点を持ち、物事を常に多角的に把握できる「ポジションチェンジ」はマネジメント能力を高めるためにぜひとも身につけておきたいスキルです。

④ペーシング

ペーシングとは、話し方や状態、感情のレベルなどを相手に合わせるコミュニケーションスキルのこと。ペーシングには自分を理解してくれているという安心感や信頼感を与え、心を開かせる効果があります。具体的な手法は以下のとおりです。

  • 相手と同じスピード感で話す
  • 声の大きさや呼吸を合わせる
  • 趣味やスポーツなど、共通の話題について話す
  • 相手が使った言葉を再度使う

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7.マネジメント能力育成に役立つフレームワーク

マネジメント能力の育成には、以下2つのフレームワークが有効とされています。それぞれについて説明しましょう。

  1. カッツモデル
  2. 7S

①カッツモデル

カッツモデルとは、職階ごとに必要な能力を整理したフレームワークのこと。1950年代にアメリカの経営学者、ロバート・L・カッツ氏が提唱したこの考え方では、マネージャーが必要とする能力を以下の3つに分類しています。

  • テクニカルスキル
  • ヒューマンスキル
  • コンセプチュアルスキル

カッツモデルでは、職階が低いときはテクニカルスキルが重視され、職階が上がるほどヒューマンスキル、コンセプチュアルスキルが重視される構造になっています。

カッツモデルとは? 3つのスキルや人材育成への活用方法を解説
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トップマネジメント

カッツモデルでは、管理者の職階を「トップマネジメント」「ミドルマネジメント」「ロワーマネジメント」の3段階にわけています。

「トップマネジメント」とは、最高位で組織を指揮する最高経営者や最高管理者、会長や取締役員、CEOなどのこと。組織の根幹にかかわる業務や総合的判断、組織の現状把握などを行うことから「経営者層」とも呼ばれます。

ミドルマネジメント

トップマネジメントとロワーマネジメントの中間に立つのが支店長や本部長、部長や課長などの管理職を含む「ミドルマネジメント」。彼らはトップマネジメントの指示命令や組織運営への想いをロワーマネジメントに伝える役目を担っています。

ミドルマネジメントは議論の板挟みになる場合も少なくありません。そのため情報の分析スキルや伝達スキルなどを向上させる必要があります。

ロワーマネジメント

「ロワーマネジメント」とは、係長や主任、チームリーダーや現場監督など、現場で働く労働者たちのリーダーとしてマネジメントを行う監督者層のこと。

ロワーマネジメントではミドルマネジメント以上に現場の最前線で活躍し、従業員一人ひとりとコミュニケーションを取りながら具体的な指示を出していくことが求められます。

カッツモデルで注意すべきこと

現代でも十分通用する「カッツモデル」には注意点もあります。社会の情報化が進む現代にて、物事の本質を見て最適な選択をするコンセプチュアルスキルは、トップマネジメントのみに必要とされる能力ではなくなってきたのです。

物事を概念化して本質を捉えるコンセプチュアルスキルは、今や出世や昇進を目指さない人にも必要なビジネススキルとなっています。

②7S

7Sとは、組織を構成する要素を3つのS(ハード)と4つのS(ソフト)に分類したフレームワークのことで、世界的に有名なコンサルティングファーム、マッキンゼーが提唱しました。

それぞれの資源が相互に及ぼし合う影響を理解する目的で用いられるのです。また企業や抱える問題や課題を洗い出し、改革に役立てられます。

3S(ハード)

3つのS(ハード)は以下の要素で構成されています。

  • Strategy(戦略):経営課題を解決するための企業戦略
  • Structure(組織):高い生産性と成果を出せるように構成された組織構造
  • System(システム):従業員のパフォーマンスを最大限に生かす仕組み

3Sは経営陣がコントロールしやすく、マネジメント層の意思決定にあわせて改善、変更しやすいです。

4S(ソフト)

3つのS(ハード)に比べて変更や改善に時間がかかるのが、以下の要素で構成された4つのS(ソフト)。

  • Skill(スキル):従業員一人ひとりの能力
  • Staff(人材):組織の価値観に共感し、価値を提供できる人材
  • Style(経営スタイル):企業風土や社風
  • Shared Value(価値観):7Sすべての土台となる企業理念

自社の独自性を確立するためには3S(ハード)より先に4S(ソフト)を築き上げたほうがよいでしょう。