一時所得とは、労働で得たものではない一時的な所得のこと。この記事では一時所得について詳しく紹介します。
目次
1.一時所得とは?
一時所得とは、継続的な営利目的行為以外で得た所得で、労務や役務、資産譲渡による対価の性質を持たない所得を指します。所得税における所得の区分で、懸賞の賞金や商品、ギャンブルの払戻金、保険の一時金や満期返戻金、拾得物の礼金などが該当します。また、一時所得は所得として認められるため所得税の対象となります。
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所得とは、収入から必要経費を差し引いた残金です。所得についてさまざまなポイントから解説しましょう。
1.所得とは?
所得とは、収入からその収入を得るために支出した金額である必要経費を差し引き、残った...
2.一時所得に該当するもの
一時所得に該当するケースは複数あります。一体どのようなケースなのでしょう。
- 生命保険や損害保険などの一時金や満期返戻金
- 賞金と賞品
- 法人からの贈与金品
- 公営ギャンブルの払戻金
- 遺失物の報労金
- ふるさと納税の返礼品
①生命保険や損害保険などの一時金や満期返戻金
生命保険や損害保険など、加入している保険類の一時金や満期払戻金なども一時所得の対象です。一時金として受け取った場合は一時所得として扱われるものの、年金として受け取った場合は雑所得として扱われますので注意しましょう。
受け取った一時金や払い戻し金から支払った保険料を差し引き、排除額である50万円を差し引いた半額が一時所得金額になります。
②賞金と賞品
懸賞サイトの懸賞、福引の賞金や商品などは一時所得です。そのほかスポーツ大会で得た賞金や、何かを受賞したときの賞金なども該当します。
当選して手に入れた所得や成果による所得は、労働の対価に該当せず、また継続性もありません。そのためいずれも一時所得と見なされるのです。なお宝くじは購入時に税金を支払っているため、当選金は非課税所得となります。
③法人からの贈与金品
法人企業や法人格ではない代表者、管理者がいる社会団体や組合などから、金品を寄付あるいは贈与された場合、その金品は一時所得と見なされます。
ポイントは、業務との関連がなく継続性がない点。たとえば親会社が子会社へ財産を贈与するケースが該当します。なお個人から個人に贈与された場合、一時所得にあたらず所得税といった課税はありません。
④公営ギャンブルの払戻金
競馬や競艇、競輪やボートレースなどの公営ギャンブルに関する払戻金も一時所得に該当します。一時所得として申請する場合、「開催日や開催場」「受取額」「投票額」といった項目の記載が必要です。
年間でかかった払い戻し金の受取額から年間でかかった投票額を差し引き、控除額である50万円を差し引いた額の半額が、一時所得金額となります。
⑤遺失物の報労金
落とし物を拾った際にお礼として支払われる「報労金」も一時所得です。
遺失物や埋蔵物を発見して届け出ると、拾得者は持ち主へ拾った品物価格の5%から20%にあたる金額を請求できます。もし持ち主が現れなかった場合は、拾得した物や財産のすべては拾得者に譲渡されるのです。
このように遺失物などで得た報労金は一時所得として所得税の対象となります。
⑥ふるさと納税の返礼品
ふるさと納税の返礼品も、一時所得となります。ふるさと納税は納税した自治体から返礼品として品物が送られてくるサービスです。
譲与する自治体は法人、あるいは法人格はないが管理者のいる組織として扱われるので、そのような組織からの寄付(贈与)と見なされます。返礼品価格の合計が年間50万円を超えた場合、超えた分の金額が所得税の課税対象です。
3.一時所得と雑所得の違い
一時所得と混同されやすいものに雑所得があります。主な相違点は、一時所得の場合労務等の営利目的の所得を含まないところです。具体的な雑所得は次の通りです。
雑所得に該当するもの
雑所得の対象は、ある程度継続的な所得です。
- 不動産や山林による所得
- 譲渡所得
- 利子による所得
- 給与(副業)所得や退職所得
- 公的年金
- 印税
- インターネットオークション
なお株式といった金融資産の取引による所得は、上記の譲渡所得にあたります。
保険金は受取方法で一時所得か雑所得が決まる
保険金を一時金で受け取った場合、一時所得となります。満期保険金を年金で受け取った場合は雑所得となるのです。ただしこれらは保険料の負担者と保険金受取人が同じ場合に限ります。
もし受取人が保険料の負担者と異なる場合は、贈与税の対象となるので注意しましょう。
4.一時所得における確定申告が必要なケース・不要なケース
一時所得は、確定申告が必要になる場合と不要な場合があります。ここでは一時所得における確定申告について見ていきましょう。
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1.確定申告とは?
確定申告とは、1年間の所得にかかる税...
20万円以下なら、確定申告は原則不要
給与所得者の場合、一時所得金額を計算した結果が20万円以下の場合、確定申告は原則不要です。
また一時所得総収入金額から一時所得を得るために支出した総支出金額を引いた結果が50万円未満なら、50万円の特別控除が適用されて一時所得金額が0円となり、やはり確定申告が不要となります。
ただしパートやアルバイトをしていて所得税を収めすぎているケースでは、所得が20万円以下でも確定申告をしなくてはなりません。
一時所得が1円以上なら住民税の申告は必要
一時所得で所得税の確定申告が不要となっても、一時所得が1円以上あるなら住民税の確定申告が必要です。
前の項でご説明したとおり、一時所得金額が20万円以下の場合は所得税の確定申告は不要となります。しかし一時所得が1円以上ある場合、20万円以下でも住民税の確定申告が必要です。この場合、一時所得の半分にあたる金額が住民税の対象となります。
20万円以下でも確定申告が必要な場合
給与所得者の確定申告は一時所得が20万円以下の場合は原則不要です。しかし一時所得が20万円以下でも、下記の場合は確定申告が必要となります。
- 給与所得が年収2000万円以上である
- 副業をしていて副業収入の給与所得がある
- 給与以外の所得合計が20万円を超えている
- 医療費控除を申請する
- 初めて住宅ローンの控除を受ける
- 公的年金の収入が年間400万円以上ある
- ふるさと納税のワンストップ特例制度(確定申告せずに寄付金控除を受けられる制度)を申請しない
5.一時所得の計算方法
一時所得の計算方法はいたってシンプルで、難しくありません。一時所得金額の計算方法は次の通りです。
一時所得=一時所得の総収入金額 – 一時所得を得るために支出した総支出金額 – 特別控除額(最大50万円)
一時所得を得るために支出した総支出金額(必要経費)とは?
一時所得金額を計算する際、総収入金額から必要経費となった総支出金額を差し引きます。必要経費とは、収入金額を得るために必要となった経費のこと。毎月の保険料や競馬の掛け金、福引きの購入代金などが該当します。
6.一時所得にかかる税金と税率
一時所得は所得税や住民税の課税対象です。総合課税方針をとる一時所得では、一時所得金額の1/2に対して給与所得などのそのほか所得と合計し、控除を適用したうえで所得税や住民税が計算されます。一時所得の課税所得金額を算出する計算式は次の通りです。
一時所得の課税所得金額=一時所得金額× 1/2 +そのほかの所得
所得税はこの計算式で算出された課税される所得金額に応じた、7段階の税率(5%、10%、20%、23%、33%、40%、45%)と控除額で計算されます。
課税される所得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000円~1,949,000円 | 5% | 0円 |
1,950,000円~3,299,000円 | 10% | 97,500円 |
3,300,000円~6,949,000円 | 20% | 427,500円 |
6,950,000円~8,999,000円 | 23% | 636,000円 |
9,000,000円~17,999,000円 | 30% | 1,536,000円 |
18,000,000円~39,999,000円 | 40% | 2,796,000円 |
40,000,000円以上 | 45% | 4,796,000円 |
また住民税の税率は一般的に、都道府県税(4%)と区市町村民税(6)の合計で10%が適用され、これに加えて「均等割」と呼ばれる住民税が5,000円程度課税されます。
7.一時所得の確定申告の際に覚えておきたいこと
一時所得の確定申告では、一時所得金額を記載しなければなりません。ここでは一時所得の確定申告の方法について見ていきましょう。
確定申告の期間
確定申告の期間は翌年の2月16日から3月15日までの1カ月間です。そのため一時所得の確定申告期間もまた、2月16日から1カ月間となります。
この期間に前年の1月1日から12月31日までの1年間の所得を申告し、確定した所得税や消費税などを納税するのです。なお一定の条件に該当すると所得税の還付を受けられます。この場合は3月15日までの期間制限はなく、申請可能日から5年間申請が可能です。
必要な書類
確定申告で必要になる書類は下記のとおりです。漏れのないように準備を進めておきましょう。
- 確定申告書
- 源泉徴収票(ない場合は収入金額と必要経費がわかる書類)
- 本人確認書類(マイナンバーカードや通知カード、顔写真付きの身分証など)
- 支出経費金額が分かる書類
- 収入の受け取り先(金融機関)が分かる書類
- 各種控除が分かる書類(医療費の領収書や控除明細書、社会保険料控除証明書など)
確定申告書の書き方
確定申告で一時所得を記載する箇所は、「収入金額等」の「一時(サ)」の欄と「所得金額」の「総合譲渡・一時(8)」の欄です。収入金額等には、申請する1年間で得た一時所得の総収入金額を記入します。
所得金額に記入するのは、収入からその収入を得るために費やした経費を差し引いて1/2をかけた金額です。一時所得はこの2項目を確認しておきましょう。
申告書類の提出方法
確定申告の申告所得を提出する方法は、下記の3つです。
- e-TAXを利用して提出する
- 郵送にて所轄の税務署に申請書類を提出する
- 所轄の税務署に直接届け出る
郵送による申請を行うより、e-TAXでの提出がおすすめです。数値の修正が容易ですし、一度作成してデータを残しておけば次の確定申告の際、参考にできます。
提出前に確認すべきこと
確定申告の書類を提出する前に注意したいのは期限です。期限内に申告ができないと余分な税金を支払う状況になってしまいます。3月15日が土日祝日と法定休日だった場合、翌月曜日が申告の期限です。
また内容に不備がないかも確認しましょう。
- 控除忘れがないか
- 経費となるレシートや領収書はすべて計算したか
- 提出書類に書き間違えや不備がないか
などです。
一時所得の確定申告で困ったときの相談先
一時所得の確定申告で困ったときは、税務署か税理士会に相談するのがおすすめです。税務署では無料で相談を受けられます。ただし確定申告時期は混み合ってしまい、整理券が必要になる場合もあるので、余裕を持って相談しましょう。
税理士会では、無料で税理士の相談会を開催している場合もあります。ただし「30分まで」のように相談時間が制限されている場合も多いです。事前に質問したい内容をまとめて、うまく活用するとよいでしょう。
税務署
税務署は国税庁の下部組織で、国の行政機関です。こうした税務署では、無料で確定申告について相談できます。相談できる内容は、確定申告書の書き方や書類の添付の仕方、所得や費用の計算方法などさまざま。
ただし対応するのは一般的な職員が多いため、「これは経費に含められるか」といった判断は難しい場合も多いです。一般的な確定申告方法の相談窓口として利用するとよいでしょう。
税理士会
税理士会とは、税理士への指導や連絡、税理士の登録などを行う特別法人のこと。税理士会で、確定申告の無料相談を受けている場合もあります。税理士会によっては個別相談も可能です。
ただし税理士会の相談会でも控除や書き方など一般的な相談に限定している場合が多く、申告書の作成代行といった対応はしてもらえないでしょう。また1回30分まで、あるいは1人あたり1回までといった制限がある場合も多いようです。