固定資産とは? 定義、種類、減価償却、管理方法

「固定資産」とは、企業にて長期に活用される資産のこと。固定資産の定義や種類などについて詳しく説明します。

1.固定資産とは?

固定資産とは、企業で1年以上にわたって保有あるいは使用される資産のこと。企業における資産には現金や預金、建物や土地、有価証券や著作権など、目に見える財産だけでなく権利も含まれます。

これらの資産は、「流動資産」「固定資産」「繰延資産」の3つに分類されるのです。「固定資産」に該当するのは、土地や建物、備品や投資有価証券など。企業の資産は、会計書類である「賃借対照表」から確認できます。

貸借対照表とは?

企業の資産と負債をまとめた書類で、バランスシートとも呼ばれます。決算日における資産総額と負債(返済しなければならない金額)総額、そして資産から負債を引いた純資産総額を記載するのです。

一般的に表の左側には「資産の部」として流動資産と固定資産の内訳を、右側には返済しなければならない金額の内訳である「負債の部」と、資本金や利益余剰金などを記載した「資本の部」を置きます。

固定資産と流動資産の違い

固定資産と流動資産では何が違うのでしょう。その違いは下記のとおりです。

  • 流動資産:現金や預金、商品や製品のようなすぐに現金化できる資産
  • 固定資産:すぐに現金化できない物、土地や建物、有価証券など

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2.固定資産の種類

固定資産は、3種類に分類されます。

  1. 有形固定資産
  2. 無形固定資産
  3. 投資その他の資産

①有形固定資産

事業を行うために長期にわたって使用される資産のうち、目に見える資産のこと。たとえば土地や建物、機械設備や工具器具備品、車両や船舶など。なお条件は、1年以上使用できるかどうかです。

土地

固定資産における土地とは、事業あるいは事業に付属して1年以上使用される土地のこと。工場や事務所で使われている事業用敷地、そのほか社宅の敷地や運動場など、間接的に事業にかかわる土地も固定資産として認められます。

建物

固定資産における建物とは、屋根もしくは柱と壁を有する工作物のこと。この条件を満たしていれば建物の目的は問いません。企業では、事務所や営業所、工場や倉庫などが該当するでしょう。

なお建物と一体化している建設設備や改修費、リフォーム費などが固定資産に含まれる場合もあります。

機械装置

機械装置とは、工場や建設現場などで建築や工作、運搬などに使われる設備全般のこと。たとえばブルドーザーやパワーショベル、そしてベルトコンベアなど。ただしパソコンや医療機器などは機械装置に含まれないので注意しましょう。

車両運搬具

車両運搬具とは、事業にて何かを運搬する際に使われるもの。たとえば自動車やトラック、バスやフォークリフト、鉄道車両など。陸上で運搬に使われる車両ならば基本的にすべて当てはまると考えてよいでしょう。

②無形固定資産

形は無いものの収益に必要な資産のこと。たとえば特許権や商標権、製品のアイデアやブランド力、施設などの利用権など。ここでは自社で使用するソフトウェアと、のれん(営業権)について見てみましょう。

ソフトウェア

ソフトウェアとは、コンピューターに一定の仕事を行わせるプログラムのこと。ソフトウェアを使用すると収益が確実に得られる、あるいは費用が削減できる場合、無形固定資産として認められます。ただし販売を目的としたソフトウェアは該当しません。

のれん

無形固定資産におけるのれんとは、営業権のこと。「のれんを分ける」という言葉を耳にしたことはありませんか?

たとえば事業を譲り受けた場合、事業を営業する権利と、事業が持つブランド力やノウハウなどの見えない価値がセットになります。なお実際の会計上でも「のれん」という科目名で記載するのです。

③投資その他の資産

事業に直接使われていない投資を目的とした資産のこと。たとえば短期的な売買目的ではない投資有価証券や、関連企業への出資金など。ほかにも関係企業の株式や長期貸付金、出資金や敷金保証金、ゴルフ会員権などがあります。

長期貸付金

長期貸付金とは、役員や従業員、または取引先や子会社に対して、決算の日から1年を超える範囲での返済期限で貸し付ける貸付金のこと。賃借対照表で長期貸付金は固定資産として計上されます。

なお1年以内に支払い期日を迎える場合は短期貸付となり、支払い期日が1年超の場合は長期貸付になるのです。

出資金

出資金とは、株式会社以外の法人や協同組合などへ提供した資金のこと。たとえば「合同会社や合資会社、合名会社」「信用組合や信用金庫、協同組合」などに対する出資持分、有限責任事業組合への出資が出資金など。

出資持ち分の譲渡は制約されていて、株式のようにかんたんに譲渡できないため、有価証券とは見なされません。

敷金保証金

敷金保証金とは、建物や事務所などを借りる際、担保や修繕費として支払う費用のこと。基本、契約の終了や解除の際に返還されます。しかし敷金の一部を修繕にあてる場合、その分の金額が差し引かれるのです。

会計上では、差引敷金勘定や保証金と表される場合もあります。

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3.固定資産の減価償却

減価償却とは、「時間が経つにつれて資産が持つ価値は減っていく」という考え方のこと。この考え方にもとづき、固定資産を取得したときの費用は、時間の経過とともに少しずつ計上されるのです。

減価償却するメリット

減価償却を行うと経費が一気にのしかかってくるリスクを減らせるのです。高額な固定資産を購入した場合、その年に支出が集中し、会計上で赤字になりかねません。

経費が原因でも黒字から一気に赤字になってしまうと財務状況が悪化したと見られてしまい、融資を断られてしまう可能性があります。減価償却はそれを防げるのです。

減価償却をするタイミング

減価償却が計算されるタイミングは、その購入した固定資産が実際に使われ始めたとき。たとえば事業に使用する設備や機械は、購入したときから使用を始める場合が多いので、記載忘れはあまりないでしょう。

しかし特定の条件でしか使わない機械は、その機械を初めて使用したときから減価償却が始まります。使用開始日の記載漏れがないよう注意しましょう。

減価償却する際に必要な項目

減価償却をする際に必要な項目として、固定資産の種類によって定められている耐用年数と取得価額、そして残存簿価が挙げられます。これらは減価償却の計算に必要です。それぞれについて詳しく見ていきましょう。

  1. 耐用年数
  2. 取得価額
  3. 残存簿価
  4. 固定資産の減価償却の特例

①耐用年数

法的に定められた使用可能な期間のこと。償却資産の種類によって細かく設定されており、耐用年数を過ぎた資産は価値がなくなります。

なお耐久年数はメーカーが独自で設定したもので、問題なく使用できる期間のこと。減価償却の計算に、耐久年数は用いられません。

主要な減価償却資産と具体例

主要な資産の耐用年数を見てみましょう。建物の場合、構造や用途によって耐用年数が異なります。

  • 木造や合成樹脂の建物:事務所用なら24年、工場や倉庫用なら15年
  • 鉄骨鉄筋コンクリート造や鉄筋コンクリート造の建物:事務所用なら50年、工場用・倉庫用なら38年

耐用年数が24年の場合、24年かけて減価償却費を計上していくのです。

②取得価額

固定資産を購入したときにかかった合計の金額のこと。資産の購入にかかった費用のすべてをまとめた金額で、本体そのものの価格だけでなく、運搬にかかった費用や関税にかかった費用、建設費や材料費なども含まれます。

減価償却の金額については基本、取得価額を参考に金額が決まるのです。

③残存簿価

資産が耐用年数を過ぎたときに残っている価値のこと。土地以外の資産は、時間が経つにつれてその価値は下がっていくと考えられており、耐用年数を使い切るとその資産の価値は法律上ほぼ0円になります。

しかし資産が完全に消え失せてしまうわけではありません。そこで資産が残っていると表すために1円の価値を残すのです。会計上ではこの1円を残存簿価として処理します。

固定資産の減価償却の特例

資産は何を購入するにしても基本、減価償却で対応します。しかし条件によっては、経費に一括で計上できる資産もあるのです。それは取得価格が10万円未満のものと、使用可能期間が1年未満のもの。これを減価償却の特例といいます。

少額減価償却資産の特例もあり、この場合10万円以上30万円未満の資産を一括で経費に計上可能です。ただし青色申告書の提出や企業規模といった条件があります。

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4.固定資産を減価償却する際の計算方法

固定資産を減価償却する際の計算方法は、「定額法」「定率法」の2つです。それぞれについて説明しましょう。

定額法

初年度から耐用年数の最後の年まで定額で償却する計算方法のこと。計算式は「取得価格×定額法の償却率」です。

最後の年の減価償却を計上したのち、残存簿価の1円が残ります。なお建物や無形固定資産は定額法で計算しなければなりません。そのほかの資産についてはどちらで計算するのか、選べます。

定率法

毎年一定の割合で減価償却する際の計算方法のこと。計算式は「(取得原価-減価償却累積額)×定率法の償却率」です。

初めの1年は多くの費用を払う必要があります。しかし翌年からは未償却残高に同じ割合をかけていくので、年々支払う費用の額は小さくなっていくのです。

たとえば100万円の資産を毎年0.25%ずつ8年で減価償却する場合、初年度の減価償却額は25万円、翌年は18万7,500円、翌々年は14万625円になります。

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5.固定資産の減価償却を仕訳する方法

固定資産の減価償却を仕訳する方法は、「直接法」「間接法」の2種類。いずれの方法でも課税額は変わりません。それぞれについて説明しましょう。

直接法

減価償却費を固定資産から差し引く方法のこと。借方科目には「減価償却費」を、貸方科目には「固定資産」をそれぞれ記入し、どちらの科目にも同じ金額を記入します。

「固定資産に現在どれだけの価値があるか」という帳簿価格がひと目でわかるのがメリットです。しかし帳簿価格とこれまでの減価償却費を足さないと取得原価が算出できないというデメリットもあります。

間接法

固定資産ごとに設けた減価償却累計額に、減価償却費を加算していく方法のこと。

仕訳では借方に「減価償却費」を記載し、貸方に「減価償却累計額」を記載します。減価償却累計額は、毎年の固定資産の減価償却を累計したもの。間接法は貸借対照表の科目として記載されないため、貸借対照表が見やすくなるでしょう。

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6.固定資産の管理方法

固定資産を管理していくには、確定申告でも必要となる「固定資産台帳」が不可欠です。スムーズに固定資産を管理するなら、システムの活用を検討しましょう。

固定資産台帳を作成する

建物や車などの固定資産を購入した際に、必要な情報を記載する帳簿のこと。特定の書式や様式がないため、固定資産をまとめて記載してもそれぞれの資産ごとに記載しても問題ありません。記載すべき項目は、下記のとおりです。

  • 資産の名称と資産区分
  • 取得金額と取得購入日
  • 耐用年数
  • 減価償却額や償却率、償却方法
  • 帳簿価格

固定資産管理システムを活用する

先ほどの固定資産や台帳の管理や減価償却の自動計算、確定申告書の作成などが行えるシステムのこと。

計算や記載のミスを防げますし、会計システムと連携できる固定資産管理システムなら、より固定資産管理業務の効率が向上するでしょう。

固定資産管理システムの多くは税法改正やIFRS(国際財務報告基準)に対応しており、随時自動アップデートされるのもメリットです。