目標における指標とは、達成できたかどうかを判断するための基準です。ビジネスにおける指標の重要性や設定例などを説明します。
目次
1.目標設定で使われる指標とは?
指標とは、物事の目安となる目印や基準のこと。物事の判断基準や採点基準として使われる場合が多く、金額や頻度、時間や点数など根拠にもとづいた具体的な数値を設定するのがほとんどです。
ビジネスや理系実験などで目標を設定する際に用いられ、日常会話で用いられることはあまりありません。
目標達成のための指標では、指標が一定の水準に達したら目標を達成したと見なされます。目標が大きくなるほど達成するための要素が増えるため、複数の指標が設定されるでしょう。
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目標設定は、経営目標達成や個人のレベルアップのために重要なもの。適切な目標設定ができないと、最終的なゴールが達成されないだけでなく、達成のためにやるべきことも洗い出せなくなってしまうでしょう。
今回は...
2.企業目標達成のために用いられる指標
企業がビジネスにて目標を達成するために用いられる指標はいくつかあります。経営指標や財務指標はもちろん、混同されやすいKGIとKPIなどについても確認しておきましょう。
- 経営指標
- 財務指標
- 経営目標達成指標(KGI)
- 重要業績評価指標(KPI)
- 成果指標(OKR)
- 重要成功要因(KSF)
①経営指標
企業経営で重要な「人・物・金」に関する指標で、以下のようなものが用いられます。
- 売上高利益率:売上高のうち利益が占める割合
- 損益分岐点:利益と損益の境目となる売上高
- 自己資本比率:全体の資本のうち返済不要な資本が占める割合
- 流動比率:手形や売掛金など1年以内に現金化される資産
- 労働分配率:粗利総額のうち人件費が占める割合
②財務指標
企業の業績や財政状況を把握するために用いられる評価や基準となる指標のこと。以下の指標を分析して、企業の財務状況を計ります。
- 総合力を表す指標:ROE(自己資本利益率)やROA(総資産利益率)
- 成長性を表す指標:売上高成長率や総資産成長率
- 収益性を表す指標:売上高総利益率や売上高純利益率など
- 効率性を表す指標:総資産回転率や売上債権回転期間など
- 財務安全性を表す指標:純資産比率や流動比率など
③経営目標達成指標(KGI:Key Goal Indicator)
重要目標達成指標のことで、企業や組織が達成すべき最終目標です。KGIでも具体的な指標の設定は重要となります。
たとえば「売上を伸ばして業績を上げる」というKGIではなく、「年間の売上を20%向上させるために昨年比より○○円以上利益を上げる」といったKGIが適しているのです。
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④重要業績評価指標(KPI:Key Performance Indicator)
重要業績評価指標のことで、KGIを達成するために何をすべきかを明確にした中間的な指標です。
たとえばさきほどの「年間の売上を20%伸ばして○○円の利益を上げる」というKGIを達成するためには、「毎月○○円の利益を出す、そのためには毎月商品やサービスを○○円販売する」などの細かい中間目標が必要です。この中間目標がKPIとなります。
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⑤成果指標(OKR:Objectives and Key Results)
「目標と主要な成果」のことで、企業の目標と従業員の目標を紐づける目標管理手法です。Googleなどの大手企業が取り入れていることでも知られています。
組織全体で達成すべき課題を目標(Objectives)とし、部署やチーム、あるいは個人で達成すべき具体的な数値を設定した目標(Key Results)へ落とし込むのです。
たとえばObjectivesを「顧客満足度の向上」とした場合、Key Resultsには「リピート率」や「新規顧客の獲得数」などになるでしょう。
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⑥重要成功要因(KSF:Key Success Factor)
重要成功要因のことで、最終目標達成のために必要な条件や重要なポイントです。KSFを設定する際は、市場や競合などの外的要因と自社の事業や強みなどの内的要因を考慮して設定します。
たとえば最終目標が「売上の向上」でも、各店舗の地域や市場のニーズなどによって適した商品や販売方法は異なるでしょう。そのためKSFの達成は、経営戦略の達成にもつながるといえるのです。
3.目標設定における指標の重要性
目標達成のための指標は必須です。また指標は個人によい影響を与える場合もあります。目標設定における指標の重要性について、見ていきましょう。
- 組織の強化につながる
- やるべきことが明確になる
- 個々の成長につながる
- モチベーションを保てる
①組織の強化につながる
目標達成のための指標を従業員へ共有すると、組織全体の強化につながります。組織全体のKGIを設定すれば全体が同じ方向を向くため、方向性のブレが起こりません。
KPIを設定すれば、一人ひとりが目標のために何をすべきかが明確になるため、無駄な作業に時間を費やさなくなるのです。
さらにKPIおよびKGIの達成を目指して活動する間、コミュニケーションやチームワーク、スキルやノウハウなどが蓄積され、組織全体が強化されていきます。
②やるべきことが明確になる
目標指標が具体化されるため、やるべきことが明確になり生産性の向上につながります。KPIが設定されれば実行すべきアクションが決まるでしょう。そのあと実行したアクションの結果がKPIの水準に達していたか、検証しなくてはなりません。
達していなければ改善方法を検討する必要があります。このPDCAともいえるサイクルを回していけば、業務がより効率化して生産性の向上が実現できるのです。
③個々の成長につながる
目標設定において指標を設けると、指標と自分の成果のギャップに気づきやすくなり、個々の成長を後押しします。KPIまでの距離が遠いと感じれば、早めに手を打ったり、方法を変えたりといった工夫が必要です。
結果、惰性で仕事をする状況が無くなり、自分が何をすべきかを考えて行動できる従業員となるでしょう。もちろん個人の効率性や生産性の向上といった効果もあります。
④モチベーションを保てる
目標設定にて具体的な指標を設けると、従業員のモチベーション維持に役立ちます。漠然と「売上を伸ばそう」と言われても、何をどこまで頑張ればよいかわからず仕事の行動量を保つのが難しくなるからです。
具体的に「売上20%向上のため、この期間で○○円の利益を上げよう」と指標を具体化すれば、何を行動すべきか、達成まであとどれくらい利益を上げればよいか明確に可視化できます。それにより業務に対するモチベーションもアップするでしょう。
4.人事業務の目標設定における指標
人事業務では「人」に関するスキルや評価など、数値化しにくい情報を多数扱います。一見指標が設定しにくいように思えるものの、人事業務にて有効なKPIは多数あるのです。ここでは人事業務にて設定される指標について、見ていきましょう。
- 人材育成の指標例
- リーダー育成の指標例
- 人材配置の指標例
- 人事採用の指標例
①人材育成の指標例
可視化しにくい分野である人材育成でも、KPIやKGIなどの指標が活用されます。たとえば以下のような指標が挙げられるでしょう。
- 研修の受講率
- 研修コスト
- スキルや資格の取得率
- 育成プラン達成度
- 育成プランにおける従業員満足度
このような率や数字の増減を指標にすれば人材育成プランを構築しやすくなり、効率的な人材育成が可能になります。
②リーダー育成の指標例
リーダー育成にもKPIなどの目標指標が活用できます。たとえばリーダーや管理者としての評価やマネジメント能力を指標にするとよいでしょう。
- 管理者やリーダーに対しての部下の満足度
- 管理者やリーダー自身の自己評価と部下からの評価の乖離差
- 管理下の退職者の数
- 部下の目標の達成度
- 管理者やリーダーに対する人事評価の結果
③人材配置の指標例
組織の生産性を高めるためには、人材配置も重要なポイントです。現在の人材配置が適切か、どの部署に人材を補填すべきかを把握する指標としてKPIを活用します。人材配置の指標として挙げられるのは、下記のとおりです。
- 各部署での従業員満足度
- 各部署における有給休暇取得率
- 部署別の残業時間数
- 部署別での目標達成率
④人事採用の指標例
人事業務で重要となる採用活動には数値化しやすい項目が多く、KPIやKGIなどの指標を設定する場合が多いでしょう。たとえば下記のような指標が挙げられます。
- 採用コスト
- 新規応募者数
- 書類審査通過率
- 面接通過率
- 入社率
- 採用者の辞退率
- 採用後の部署内満足度
- 採用後の平均在籍期間
なおこれらのKPIを設定する際は、過去のデータを分析する必要があります。
5.目標設定における指標を決める際のポイント
目標指標を設定する際、いくつかのポイントがあります。それぞれについて解説しましょう。
- 複雑な指標に設定しない
- 数値化できる指標を設定する
- KGIと連携しているKPIを設定する
- 指標はひとつに絞り、ツールやSMART法を活用する
- フレームワークを活用する
①複雑な指標に設定しない
従業員が取り組みやすいよう、単純化した指標を設定しましょう。たとえば「残業が多い部署の労働時間を15%する」といったものです。わかりにくいKPIでは具体的なゴールが見えにくく、何をすればよいかわからなくなってしまいます。
わかりやすく単純化された指標を設ければ、KPIに対する従業員のモチベーションが上がりやすくなり、KPIの達成に近づくでしょう。
②数値化できる指標を設定する
目標設定となる指標は、数値化できる指標にしておくことをおすすめします。
顧客満足度やサービス品質の向上、サービス内容の浸透度など、可視化できない指標では具体的な数字が見えにくくなり指標としての効果が弱くなりやすいのです。
数値化できない指標はただの「掛け声」になってしまう可能性も高いでしょう。前年比やアンケート集計などを行って、数値化された指標に設定することが必要になります。
③KGIと連携しているKPIを設定する
KGIと連携しているKPIの設定も重要です。KGIと連携していないKPIを設定してしまうと、KPIで途中経過を測定できないうえに、KGIから外れてしまいかねません。
たとえば「人材の定着率を向上させる」というKGIに、「応募者数を○人増やす」というKPIはさほど重要とはいえません。それよりも「退職率を○%低下させる」というKPIのほうが適しています。
④指標はひとつに絞り、ツールやSMART法を活用する
指標は複数設定せずひとつに絞りましょう。複数の指標を設定してしまうと、どの目標へと向かうべきか、判断がつかなくなるためです。
またKPIの設定に勤怠管理や営業管理、人材管理などの業務システムやツールなどを活用すると、行動や結果の分析や可視化がしやすくなります。KPIを作成する際、SMART法といったフレームワークを使うのもおすすめです。
⑤フレームワークを活用する
フレームワークとは、情報や思考などを整理する枠組みのことで、目標指標の設定や評価に役立ちます。ここでは指標設定におすすめのフレームワークをいくつか見ていきましょう。
PDCA
行動計画と実施、そして検証と改善を継続的に行うフレームワークのこと。KPIといった指標を設定するだけでは、業務改善につながりません。実行と改善を繰り返す4つのプロセスが必要なのです。
- Plan:KDIやKPIの設定、施策の計画
- Do:実際に施策を実行に移す行動
- Check:行動した結果とKPIとを検証
- Action:改善の実施
SMART
目標指標を設定するうえで必要となる5つの要素。設定された指標が適切であるかを判断するフレームワークとして、活用できます。
- Specific(明確性):指標は曖昧でなく明確になっているか
- Measurable(計量性):明確に数値化して計測できる指標であるか
- Achievable(達成可能性):目標達成が可能な指標か(無理難題を指標化してしまっても意味がないため達成可能な指標を設ける)
- Relevant(関連性):目標達成に関連する指標であるか(利益向上が目的であれば、売上数や問い合わせ件数などは関連性がある指標といえる)
- Time-bound(期限):達成までに期限を設けているか
KPIツリー
ツリー上にKPIを立てて分析・解析を進めるフレームワークのこと。1つのKPIに対して、それを達成するためのKPIを下あるいは右へ追記していき、考えられるKPIを可視化していくのです。
そのためKPIツリーで作成した場合、KGIに対してKPIは1つでなく、複数存在します。それらのKPIからどのKPIを優先するか、決めていくとよいでしょう。
6.目標達成のための人材指標と人材分析
目標を達成するためには人材指標と人材分析が必要です。
- 人材指標:人事戦略を効率的に行うために示す指標のこと。人事指標やHRメトリクスと呼ばれる場合もある
- 人材分析:HRアナリティクスやピープルアナリティクスとも呼ばれ、人材データを分析して経営戦略などに活用するのが目的
ピープルアナリティクスとは?
人事や採用データの集計・分析を行い、採用や教育、評価といった人事活動に役立てること。
人事担当者の経験や勘だけではなく、データによる偏りのない人事が行えるようになるため、ミスマッチを避けられるとして注目されているのです。社内で客観的で公平な評価や人材配置などが実施されるため、従業員の納得や了承も得やすくなります。
分析するデータ例
人事指標となる人事データでは、下記のようなデータを活用します。
- 従業員の基本データ:年齢や役職、スキルや資格、給与や評価など
- 履歴データ:電話やメールの通信履歴、インターネットの閲覧履歴、社用PCにおけるアプリなどの利用履歴など
- 職場環境に関するデータ:会議室や社内の設備などの利用状況
- 従業員の行動に関するデータ:社用による外出時間や訪問先、会議などの参加状況や時間数、自席で業務にあたった時間など
実施手順
人材分析を行う際は、PDCAに沿った実施をおすすめします。人材指標を設定する際の人材分析の実施手順を確認しましょう。
目的と必要データを決める
まずは人事戦略で改善すべき課題点を見つけて目標を設定します。そして社内で行ったアンケートや面談で得たデータなどをもとに、課題の発見を行うのです。
課題を仮定したら改善点を決め、どのような目標を設定するか、そのためにはどのようなデータを収集するか、決定します。データは先の「分析するデータ例」に挙げたものを参考に選ぶとよいでしょう。
収集したデータを分析する
データを収集した後は分析していきます。主なデータ分析方法は、次の4つです。
- 記述的分析:面談やアンケートで収集したデータを可視化できる数値へと変換して分析
- 診断的分析:具体的な要因を分析
- 予測的分析:AIなどを活用して要因から将来どのようなリスクが生じるかを予測
- 処方的分析:予測したリスクにいつどのような対処方法をとるのかを判断
仮説を検証する
課題が決定した後は仮説を検証していきます。たとえばある部署の離職率が高い場合、離職率が高まる前の人事異動が影響しているのかもしれません。このような仮説を立て、裏付けを取るためにさらに調査や分析を行い、解決策を考えて実行するのです。
調査や分析のためのデータが足りない場合は、データの収集ステップへ戻りましょう。
改善策を実行する
仮説を検証していき仮説が正しいと判断がついたら、目標達成のための改善策を実行します。あらゆる改善策を実行に移し、効果が得られるまで一定の期間を設け、目的に沿った改善が行われているか、確認していきましょう。
仮説を立てた改善策で目標達成に近づけない場合、仮説の見直しやデータの収集からやり直す必要があるかもしれません。