売上台帳とは、会社や個人事業主などが売上を管理する帳簿のことです。売上台帳について、必要な場面や書き方、注意点などを解説します。
目次
1.売上台帳とは?
売上台帳とは、取引のなかで売上のみを集計した帳簿のこと。白色申告で必要となる「収入金額を記載した帳簿」がこれに該当します。売上台帳では、日付や販売先、販売した商品やサービス、売上金額などを月ごとにまとめるのです。
たとえば動画編集の仕事を10万円で請け負ったとしましょう。この場合、売上金額に「10万円」と記載します。なお売上は利益と混同されがちですが、利益は売上から経費を差し引いて残る金額です。
売上とは?
商品やサービスの提供によって得られた、「会社本来の営業活動」で稼いだお金のこと。
たとえば1個300円の商品を販売した場合、商品が売れるたびに300円の売上が発生します。1カ月で商品が100個売れた場合、その月におけるその商品の売上は3万円です。
2.売上台帳が必要な場面
先ほど確定申告で売上台帳が必要になると説明しました。それはなぜなのでしょう。ここでは売上台帳が必要になる4つのケースについて、説明します。
- 収支管理
- 所得税の計算
- 確定申告
- 持続化給付金・補助金の申請
①収支管理
支出が収入を上回らないよう、入金と出費を把握しておかなければなりません。売上台帳はこうした日々の収支管理に必要なのです。売上台帳に毎日の収支を記載すると入金を可視化できるので、集計や分析も含めた収支管理がしやすくなります。
②所得税の計算
売上を把握できていれば所得税を算出できます。所得税の対象となる「課税所得金額」は、その年の収入から経費や控除を引いて残った金額。つまりその年の売上から必要経費を引かなくてはなりません。
このような場合に売上台帳を記載していれば、売上と事業に必要な経費を確認できるため、所得税の算出がかんたんにできます。
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③確定申告
確定申告といった決算の際、売上台帳が必要となります。白色申告にて「収入金額を記載した帳簿」を作成し保存しなければならないからです。なお提出期限の翌日から7年間は確定申告の書類を保管しておく必要があるので、なくさないようにしましょう。
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④持続化給付金・補助金の申請
政府の給付金や補助金を申請する際、売上台帳が必要になる場合もあります。
たとえば持続化給付金は、売上が減少した中小企業や小規模事業者、個人事業者などが補助金を申請できる制度です。この給付金を申請する際は、前年同月比で売上が50%減少した月の売上台帳を提出しなくてはいけません。
3.売上台帳の書き方
売上台帳には何を書けばよいのでしょう。国税庁が売上の記載事項として挙げている「取引の年月日」「相手方の名称」「金額」を含めた、売上台帳の記載内容について説明します。
- タイトル
- 申請者名
- 売上日
- 取引先
- 売上日の発生要因
- 金額
- 助成金の申請月
①タイトル
売上台帳だと一目でわかるタイトルをつけましょう。「売上台帳XXXX年X月」というように対象月も入れるとわかりやすいです。あまり売上台帳と関連性がないタイトルをつけてしまうと、あとから必要なデータを探すときに時間がかかってしまいます。
②申請者名
売上台帳の上部に、申請者名を記載します。企業であれば会社名、個人事業者であれば屋号です。屋号がない場合は氏名を記載しましょう。屋号とは、個人事業者が商業上で使用する名前のこと。
会社名や屋号を記載しないと、何の事業に関する売上台帳かわからなくなってしまうので注意しましょう。
③売上日
日付の欄に、売上が発生した日を記載します。たとえば8月1日に発生した売上なら「8/1」や「8,1」などと記載するのです。
売上が発生する基準は、業種や業態によってさまざま。たとえば商品販売の場合、商品を引き渡した日や商品を発送した日など、業態によって基準が異なるので注意しましょう。
④取引先
どのクライアントから、発生した売上なのかも記載します。たとえば「A株式会社」から受け取った報酬なら、取引先の欄に「A株式会社」と記載するのです。取引先の記載は基本、正式な氏名や名称を記載します。
ただし取引先の略称が記載されていても相手方が特定できる場合は、略称による記載でも問題ありません。
⑤売上日の発生要因
内容の欄に売上が発生した理由を記載するのです。たとえば販売業なら「A株式会社に〇〇を100個販売(●月分)」といった理由になります。売上台帳では月や金額とともに重要な事項となるので、ミスや漏れがないよう記載しましょう。
⑥金額
金額の欄に、各売上の金額を記載します。売上が0円でも「0円」と記載し、表内の末行には月の売上金額の合計を記載しておきましょう。消費税を払っている場合は、税込みか税抜きのどちらで記載するか、あらかじめ決めておく必要があります。
⑦助成金の申請月
持続化給付金や助成金の申請をする場合、前年と比較して売上が50%以上減少している月を申請します。提出する売上台帳には申請月の年月を必ず記載しましょう。なお申請月の売上台帳に、前年と今年の売上の両方を記載する必要はありません。
4.売上台帳作成に使うツール
売上台帳を作成するもはどうしたらよいのでしょうか。売上台帳作成に使うツールについて、解説します。
Excel
表計算ソフトであるExcelは、売上台帳作成に適したツールです。字体やフォント、罫線などを自由に設定して作成できるので、見やすく使いやすいレイアウトの台帳を作成できます。
一から作るのが大変な場合は、インターネットから無料テンプレートをダウンロードするとよいでしょう。ただし青色申告の際は、売上台帳(元帳)だけではなく金銭出納帳や仕入帳、経費明細など複数の帳簿を作らなければなりません。
会計ソフト
会計ソフトに売上の抽出機能があれば、売上台帳のような帳票を作成できます。なお会計ソフトでは「総勘定元帳」が売上台帳に相当するのです。
会計ソフトの抽出機能を使って売上勘定のみを抽出すれば、売上台帳が作成できます。先に説明した持続化給付金を申請する際も、この方法で作成した売上台帳でよいとされているのです。
5.売上台帳についての注意点
売上台帳の作成および保存に関しては、注意点がいくつかあります。確定申告の際、あとから1年分を修正するとなるとかなりの時間が取られるため、日々の扱いに注意しておきましょう。
- 記入漏れに気をつける
- 添付書類に注意
- 売上台帳の保存期間
- 売上げが0円でも提出は必須
①記入漏れに気をつける
売上台帳の書き方を確認し、記入漏れや間違いに気を付けましょう。記入漏れが発覚すると税務調査が一層厳しくなり、不備を指摘されやすくなる場合もあります。
また売上台帳の記載に不備があると、持続化給付金や助成金が申請できない可能性も高いです。申請者の名称や帳票名、申請年月や対象月の売上合計などについて、提出前に再確認しておきましょう。
②添付書類に注意
持続化給付金や助成金の申請時、売上台帳ではない書類を添付してはいけません。たとえば勤務日報や通帳の入金記録、請求書などを売上台帳の代わりに添付しても認められないのです。
そのほか「今年の対象月ではなく昨年の売上台帳を添付する」「添付された売上台帳の月が対象期間外である」場合も同様に、認められません。
③売上台帳の保存期間
売上台帳は、その事業年度における確定申告書の提出期限の翌日から7年間、保管しておく必要があります。帳簿書類の保存方法は、紙による保存が原則です。
④売上げが0円でも提出は必須
持続化給付金の申請時、売上が0円でも必ず売上台帳を提出しなくてはなりません。空欄のまま売上台帳を提出してしまうと、記入漏れになってしまい、売上台帳として認められない可能性が高まります。
売上が0円の場合は1行目に「○月売上なし」と書き、合計欄には「0円」と記載しましょう。
6.売上台帳作成で困った際の相談先
売上台帳作成について、困りごとや悩みが出てきた際は、商工会議所や税理士などに相談してみましょう。
商工会議所
非営利の地域経済団体のこと。会員制の組織で、会員に対してアドバイスや研修、助成金などさまざまなサービスを提供しているのです。
法人は専用窓口を、個人事業は無料の記帳指導や有料の記帳代行などが利用できる場合もあるので、まずは事業地域の商工会議所へ相談してみましょう。ただし事業によっては会員になれないケースもあります。事前に調べておくとよいでしょう。
税理士
税理士に売上台帳の相談をするのもひとつの方法です。税理士のアドバイスを受ければ、確定申告や持続化給付金や助成金申請で用いる売上台帳を、正しく作成できるようになります。
個人事業者向けでは無料の記帳指導サービス、法人向けでは毎月1回税理士が訪問して記帳指導を行うサービスなどがあるのです。ぜひ利用してみてください。