企業内保育所とは? メリット・デメリット、導入事例

企業内保育所とは、企業のオフィス内や会社の近隣の施設に設けた保育所や託児施設のことです。

この記事では、企業内保育所の種類、メリット・デメリット、さまざまな企業の事例、導入支援事業などについて詳しく解説します。

1.企業内保育所とは?

企業内保育所とは、自社で働く正社員やパート社員が就業中に子どもを預けられるように、企業のオフィス内や会社の近隣の施設に設けた保育所や託児施設のことです。

  • 社員が抱える保育所、託児所不足問題
  • 社員の出産、育児による離職を防ぐ
  • 育児休暇からの職場復帰を支援する

といったことを目的に全国の企業が導入しています。

働き手世代が育児と仕事を両立できるようサポートするために、女性社員が多い企業を中心に導入するケースが増えています。

企業内保育所の導入数・施設数

厚生労働省の発表によると、2021年3月までに設置された企業内保育所は全国で3,869ヶ所です。前年比で252ヶ所も増えており、企業内保育所を設置する事業所が増えていることがわかります。

また2021年3月までの入所児童数は56,344人、前年比で5,136人の増加です。このことからも、今後はさらに増えていくことが予想されます。

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2.企業内保育所の種類

企業内保育所には、

  • 認可保育所
  • 企業主導型保育所

などさまざまな施設形態があります。詳しく解説しましょう。

認可保育所(事業所内保育所)

認可保育所(事業所内保育所)は、国が定めた基準を満たし、各地方自治体に認可された保育所です。国が定めた基準項目は次のようなものがあります。

  • 施設の広さ
  • 保育士などの職員数
  • 給食設備
  • 防災管理
  • 衛生管理

これらの基準を満たすことが必要で、応募基準や施設基準は自治体により異なります。

企業主導型保育所(企業主導型保育事業)

企業主導型保育所(企業主導型保育事業)は、内閣府主体で行われている認可外保育所です。2016年度から始まった事業です。

一定の要件を満たすことで、認可施設と同じくらいの運営費や施設整備費などの助成金が受けられます。

  • 園の運営時間と企業の営業時間を合わせられる
  • 夜間や土日のみ開園できる

など、自由度の高い運営が可能です。

認可外保育所

認可外保育所は、認可外保育施設として設置された企業内保育所です。認可外保育施設とは「児童福祉法に基づく都道府県知事などの認可を受けていない保育施設」のことです。

企業内保育所の他に、

  • ベビーホテル
  • 一時預かり
  • 居宅訪問型保育施設

などがあります。運営は英語教育に力を入れた園や運動に特化して保育を行う施設などがあります。

託児スペース

託児スペースは、従業員の乳幼児のみが対象となる保育施設です。自治体への届出は不要です。

託児スペースが確保できればすぐに開所できるのがメリットですが、自治体からの助成金はありません。

企業が直接運営しているケースや、企業が事業委託して設置しているケースもあります。複数の企業が共同で施設を設けるケースもあるようです。

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3.企業内保育所を導入するメリット

子育て世代の社員だけでなく、企業側にも企業内保育所を設けるメリットがあります。詳しく見ていきましょう。

企業側

企業側のメリットは次のようなものがあります。

  • 離職率低下…結婚、妊娠、出産による離職防止
  • 企業のイメージアップ…子どもや親に優しい企業であるというイメージアップ
  • 地域の子どもを受け入れ…地域への貢献としても好印象になる
  • 優秀な人材確保…出産・育児による離職を防ぎ、手厚い福利厚生は求人の際のアピールポイントになる

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従業員側

従業員側のメリットは次のようなものがあります。

  • 送迎時間が不要…送迎に時間を取られない、勤務時間に合わせて利用できる
  • 土日や祝日も利用可能…企業の営業日に合わせて開所しているため、休日勤務があっても利用できる
  • 子どもが近くにいる…子どもの様子がわかりやすい、体調不良時などもすぐに連絡が取れる安心感がある

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4.企業内保育所を導入するデメリット

メリットが多々ある一方、従業員側、企業側にもデメリットがあります。それぞれ詳しく解説していきましょう。

企業側

企業側のデメリットは次のようなものがあります。

  • 企業の準備や作業負担が大きい…認可施設ではないため、場所の確保、園児や保育士の募集などすべて企業が行わなくてはならない
  • コスト的な負担…認可施設ではないため、補助金は5年で打ち切られる。運営には賃金以外にも経費の負担が必要
  • 認可保育園ならば加入できる公的な保険に加入できない

従業員側

従業員側のデメリットは次のようなものがあります。

  • 保育の質への不安…保育経験のない企業が運営する施設に子どもを預ける不安がある
  • 園庭がない…小規模のため、園庭や体育館を備える施設が少ない。そのため運動会や季節の行事ができない、できても規模が小さくなる
  • 集団行動が身につかない…一般の保育園と違い、子どもの人数が少ないため、社交性が身につくといわれる集団行動が体験できない

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5.企業内保育所を立ち上げるには?

企業が保育施設を開設するためには、いくつか確認・検討する項目があります。順を追って詳しく解説しましょう。

設置要件の確認

設置に必要な法定要件や保育従事者の配置などを確認し、条件を満たします。

  • 職員設置数…児童の数に応じて配置する必要がある
  • 職員資格…施設職員の半数は保育士資格が要る。それ以外の職員は、「子育て支援員研修」を受講、修了している必要がある
  • 設備基準…児童の年齢や利用定員などに応じて、施設基準が設けられている

利用者ニーズの把握

利用者ニーズを正確に把握することが重要です。せっかく施設を整備しても利用されない場合もあります。

内閣府の調査では約4割が利用されていないことが分かっています。利用率をアップさせるためには充実した保育を考えなければいけないでしょう。

企業内保育所の保育料(料金)の目安

企業内保育所の保育料の相場は、平均で月額3万円前後です。保育施設の規模や子どもの年齢などによって多少の差はありますが、この月額は認可保育園とくらべても大きな差はありません。

企業内保育所は内閣府から助成金が支給されるため、低い保育料の設定が可能です。福利厚生の一環として企業が保育料の一部を負担し、低い保育料を設定する企業もあります。

設置方法の検討

設置パターンは、次の2通りがあります。

  • 単独設置型…設置を1社のみで行うもの。利用は周辺の企業も契約を結んで利用することが可能
  • 共同設置型…複数の企業が共同で設立し、共同で利用するもの。施工の費用なども共同で負担する

いずれのパターンにおいても、保育所の運営自体は外部に委託することが可能です。

運営方法の検討

運営方法は、

  • 自社直営にする
  • 専門の保育事業者へ委託する

のふたつのパターンがあります。

自社の直営にする場合は、保育従事者を自社の社員として雇用します。
このいずれかを検討しますが、近年は委託するパターンが多いようです。

設置場所の検討

設置場所を決めます。

  • 自社施設の一部にする
  • 別の物件を利用して設置する

のいずれかです。その際に、

  • 従業員の交通アクセスのよい場所
  • 駅の近隣
  • 自社敷地内

など、送迎のしやすさや利用者のニーズを考慮しながら設置場所を検討しましょう。

自治体への相談

地方自治体では保育施設立ち上げの支援機関を設置し、企業の人事担当者などへの相談対応を行っています。

  • 制度に関する情報提供
  • 開設にあたっての準備に必要な情報提供
  • 国や地方自治体から受けられる助成制度

などの支援があります。

定員の検討

施設の設備やひとりあたりの必要面積の規定に沿って定員を検討します。
利用定員20名以上の場合に必要な設備は、

  • 保育室
  • 子ども用便所
  • 調理室
  • 屋外遊技場
  • 非常口

です。設備それぞれに対して、1人あたりに必要な面積が決まっています。

企業内保育所の補助金の確認

国や自治体の補助金・助成金制度を満たせるかどうか確認します。具体的には次のような項目があります。

  • 雇用保険適用事業所の事業主、または事業主団体であること
  • 助成金の審査に必要な書類などを整備、保管していること
  • 都道府県労働局長が審査に必要と認める書類などを求めに応じて提出または提示すること
  • 労働局の実地調査に協力すること
  • 審査に協力すること

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6.企業内保育所の事例

実際に企業内保育所を導入している企業を3社紹介します。各企業とも特色を持ち社員の子育て支援に取り組んでいます。

トヨタ自動車株式会社

事業所内託児施設「ぶぅぶフォレスト」を導入しました。対象年齢は生後8週~小学就学前まで、定員は320名と集団での幼児保育が可能です。

おもなサービスは、

  • 本社地域の全工場からのバスによる送迎
  • 早朝保育や宿泊保育
  • 一時預かり保育
  • 給食およびおやつの提供

また同じ敷地内のトヨタ記念病院と連携し、子どもの病気の際にも、安心して預けられる病児保育を併設します。

株式会社東急百貨店

従業員枠の利用者を安定的に確保するため、他企業との共同利用の契約を1年単位で実施しています。定員は19人で、そのうち地域枠が9人、対象年齢は0〜2歳児です。

保育施設がある店舗屋上の専用スペースのほかに、店舗内にある一般客向けのキッズスペースを営業時間外に活用し、雨の日の子どもたちの遊び場にしたり、運動会を開催したりしています。

株式会社ニチイ学館

全国98の支店所在地域すべてに企業主導型保育施設を設置・運営しています。全国どの地域でも18人定員です。

各施設に栄養士を配置し、地産地消を心がけた自園調理を行っており、食育にも力を入れています。各支店担当者も保育の現場に入り、子どもや保育士、保護者とも日常的に接し、コミュニケーションを図っています。

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7.企業内保育所の導入支援事業(支援サービス)

さまざまな企業や団体が企業内保育所の導入支援事業を行っています。特色ある取り組みを紹介しましょう。

東京しごと財団

相談窓口を設置し、企業内保育施設の設置に向けた留意点やポイントなどの情報提供を実施しています。相談費用は無料です。

相談できる内容は次の通りです。

  • 企業主導型保育施設を設置するメリット
  • 企業主導型保育施設設置促進助成金(東京都助成金)などの支援メニュー
  • 各種関係機関の案内
  • 企業主導型保育事業に関する制度の情報提供
  • 助成金申請のアドバイス

株式会社アミー

保育所の開設から運営までをサポートしています。企業主導型保育事業専門のコンサルティングの内容は次の通りです。

  • 助成金申請代行業務 (申請~完了報告まで)…整備費・運営費の申請代行業務
  • 運営アドバイス業務 …運営開始後の助成金の申請および行政関係に関する対策サポート
  • 監査対策業務…監査前の準備および対策のアドバイス

hoiCo.(ホイコ)

保育所開設、運営支援サービスを提供しています。サービス内容は次の通りです。

  • 開設支援・代行…行政への申請資料の作成・提出、国の条件を満たした用地の確保など
  • 運営委託…日次保育から月次・年次保育までを提供
  • 保育園サイトの作成・更新
  • 乳幼児に対する教育サービスの提案・提供
  • 保育士教育…eラーニングサービスを作成・提供
  • 保育士派遣