ストックオプションとは? 仕組み、メリット・デメリット

ストックオプションとは自社株を決まった額で購入できる権利を従業員に与える報酬制度のことです。

ここでは新株予約権との違いや購入するメリット、ストックオプションの種類や税制優遇措置などについて説明します。

1.ストックオプションとは?

ストックオプションとは「株式会社の役員や従業員があらかじめ決められた価額で自社株を取得できる権利」のことです。

もともとはアメリカではじまった制度ですが、1997年の改正商法において日本でもストックオプション制度が認定されました。

ストックオプションは、一定期間内であればあらかじめ決められた価額で株式が購入できます。

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2.ストックオプションの仕組み

ストックオプションの仕組みは次のようになっています

  1. 会社が「設定した価格で株式を購入できる権利」を従業員や取締役に付与する
  2. 一定期間後、付与された権利を行使して設定時の価格で株式を購入する
  3. 会社の株価が上昇したタイミングで株式を売却し、利益を得る
たとえば「今後5年間は1,000株まで1株1,000円で購入できる」ストックオプションを設定したとします。

将来的に会社の業績が伸びて1株2,000円になったタイミングで株式を売却すれば、1株あたり1,000円の利益が得られるということです。

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3.ストックオプションと新株予約権の違い

ストックオプションと混同しやすい用語として「新株予約権」があります。

ストックオプションは新株予約権の一種です。新株予約権のなかには、以下のものが含まれます。

  • 社内向けに発行されるストックオプション
  • 社外の投資家や権利者に発行されるもの
  • 既存株主に無償で発行されるもの
  • 第三者に対して有利な金額や条件で発行されるもの

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4.ストックオプションを導入するメリット

ストックオプションを導入する最大のメリットは「従業員が大きな利益を得られる可能性がある」点です。

ストックオプションの導入には、ほかにも次のようなメリットがあります

従業員のモチベーションがアップする

従業員のモチベーションに影響するのがメリットのひとつです。

ストックオプションではあらかじめ決められた価額で株式を購入できるため、自社の株価が上がったタイミングで株式を売却すれば、売却した際に発生する利益「株式売却益」を得られます。

会社の株価が上がれば自分が得られる株式売却益も上がるため、従業員のモチベーションもおのずとアップします。

優秀な人材を確保しやすくなる

上記のようなモチベーションアップが見込めるのは、既存従業員だけでなく将来の会社についても同様です。

ストックオプションは会社の業績が上がれば上がるほどが会社にも利益が出るシステムです。なかにはインセンティブとしてストックオプションを用意している企業もあります。

こうしたストックオプション制度のメリットが会社の魅力につながり、優秀な人材を確保しやすくなる場合もあるのです。

従業員にとってのリスクがない

ストックオプションを付与された従業員や取締役が損をすることは基本的にありません

そもそもストックオプションは従業員に株式の購入を強制する制度ではないうえ、株価が上昇しているタイミングのみで購入権を行使すれば、損が発生することはないのです。

株式を購入したとしても売却せずにそのまま保有し続けることもできます。

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5.ストックオプションを導入するデメリット

ストックオプションを導入するデメリットとして次の3つが挙げられます。

業績悪化でのモチベーション低下

ストックオプションの効果を得るには、購入した価額よりも株価が上昇しなければなりません。

業績悪化により株価が低下していたり、上場が達成されなかったりして売却益を得られないとなると、当然インセンティブ制度として機能しなくなってしまいます。

従業員の士気が下がり、更なる業績の悪化を招く可能性があります。

権利行使後に従業員が離れる

ストックオプションの権利を行使した後に従業員が離職する危険もあります。

ストックオプションに魅力を感じていた従業員が、権利行使後にその会社で働き続けるメリットがないと考えてしまうケースです。

ストックオプションの権利を行使した従業員のモチベーションが低下しないよう、また他社に流出しないようフォローしなければなりません。

既存の株主が保有している株式の価値が低下する

ストックオプションの付与に法律的な上限はありません。

しかし、ストックオプションを付与すればするほど既存株主が保有している株式の価値が低下する可能性があります。

株式価値の低下は株の売却、株価の下落につながる場合があります。

ストックオプションを設定する際は、既存株主に与える影響を調査して、株式の価値が低下しないよう注意する必要があります。

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6.ストックオプションに向いている企業

ストックオプションは株式を自由に売却することができなければメリットが出にくい制度なので、次のような企業に適しています

上場を目指すベンチャー企業

ストックオプションに向いているのは、とくに株式公開(IPO)を目指すベンチャー企業です。

発行時に比べて会社の業績が上がるほどインセンティブとしての魅力が大きくなります。

上場を目指すベンチャー企業や、今後業績が上がる可能性を秘めている企業は、株価が上がる可能性が高いため、ストックオプションのメリットが発揮しやすくなります。

上場企業

ストックオプションは今後の成長が期待できる上場企業にとってもメリットのあるインセンティブ制度です。

近年では未上場の企業だけでなく、すでに上場している企業でもストックオプションを活用しています。

ストックオプション制度を優秀な人材の確保、持分回復のための発行、退職金として活用するための制度として考えているためです。

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7.ストックオプションの種類

ストックオプションといってもさまざまな種類があります。導入を検討する際はそれぞれの特性を理解したうえで決めるとよいでしょう。

通常型ストックオプション

ストックオプションと聞いて一般的に連想するのが、権利行使価額を権利割当時の時価以上で設定する「通常型ストックオプション」です。

おもに業績上昇時のインセンティブとしての意味を持っています。

権利行使価額を権利付与時よりも高く設定しているため、株価が上昇した際に権利を行使すれば、その差額を利益として受け取ることができます。

株式報酬型ストックオプション

権利行使価格を1円に設定し、権利を行使することで報酬が得られる制度を「株式報酬型ストックオプション」といいます。

権利行使価額を1株あたり1円で設定していることから「1円ストックオプション」とも呼ばれます。

権利の割当時点ですでに含み益が生じ、価格変動にともなって含み益が増減するこの制度は退職金のかわりに利用される場合もあります。

有償ストックオプション

権利を付与する際にお金がかかるストックオプションを「有償ストックオプション」といいます。

権利付与時の株価で新株予約権を発行し、権利行使時に株価が上がっていればその差額が利益になります。

しかし権利行使時の株価が権利付与時より下がっている場合は損になります。

株を保有している従業員の士気低下を招くおそれがあるため注意が必要です。

信託型ストックオプション

有償ストックオプションの活用形として新たに登場したのが「信託型ストックオプション」です。

発行時点では付与対象者や配分を決めず、信託期間が終了するタイミングで評価や貢献度に応じたストックオプションを付与します。

信託型は、「対象となる従業員の評価や貢献度が分からないまま条件を決めなければならない」というストックオプションの課題を解決する制度として注目されています。

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8.ストックオプションの税制優遇措置とは?

ストックオプションには、税制優遇措置のある「税制適格ストックオプション」と、税制優遇措置のない「税制非適格ストックオプション」の2つがあります。

それぞれ課税時期が異なるため注意が必要です。ここではストックオプションの税制優遇措置について説明します。

税制非適格ストックオプション

税制優遇措置が設定されていないストックオプションを「税制非適格ストックオプション」といいます。

税制非適格ストックオプションは権利行使時と株式売却時の両方が課税対象となるのが特徴です。

権利行使時の時価が権利行使価格を上回っている場合はその差額が「給与所得」になります。

株式売却時の売却価格と権利行使時の時価差額は「譲渡所得」になり、どちらの「所得」も課税の対象となります。

税制適格ストックオプション

税制の優遇措置を受けられるストックオプションを「税制適格ストックオプション」といいます。

ストックオプションは原則として給与所得として扱われるため、その利益には税金が発生します。

税制優遇措置を受けるためには、権利行使価格の制限内であることや権利行使期間内であることなど、いくつかの要件を満たさなければなりません。

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9.ストックオプションを導入する際の注意点

ストックオプションを導入する際は、将来の可能性や発行数などいくつかの点に注意する必要があります

ここではストックオプションを導入する際の注意点について説明します。

将来の株価によって得られる利益が異なる

権利行使価額と売却時の株価の差額が得られるストックオプションですが、必ず利益が得られるわけではありません

株価が大きく上がれば大きな収益になりますが、ほとんど変わらない上がり方をしているなら、当然収益は少なくなります。

株式を上場している公開会社の場合、すでに株価がある程度高くなっているかもしれません。

そのためストックオプション制度を導入してもさほど大きな効果が見込めない可能性があります

付与の基準は明確にする

ストックオプション付与の基準を明確にしておくことも重要です。

勤続年数や役職、直近1年間の実績など、第三者が見ても納得できる基準が必要です。

付与の基準があいまいなままだと、ストックオプションを付与されていない従業員に不公平感が生まれます。従業員間の関係悪化、モチベーションの低下をまねくおそれもあるため注意が必要です。

発行数に注意する

ストックオプション発行数の理想は発行済株式数の10%前後です。多く発行しすぎると上場後に大量のストックオプションが行使され、株式が大幅に増加するおそれがあります。

実際のところ発行枠に上限はありませんが、あまりにストックオプションが多いと既存の投資家にとっては権利が薄まることになります。

1株あたりの利益が低下し、株価全体の価格が下がる危険があるのです。

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10.ストックオプション関する事例

ストックオプションに対して理解を深めるには、実際に制度を導入した企業を参考にするとよいでしょう。

ここではストックオプションの事例について説明します。

スターバックスコーヒー

世界最大のコーヒーチェーン店、スターバックスコーヒーでは1991年にストックオプション制度を導入しました。

「ビーンズストック」と称したこの制度には、従業員のモチベーションを喚起する目的がありました。

同社の経営サイトでは「企業の発展や成功に貢献した人と成功を共有するのが当社のカルチャーだ」と発表しています。

アップル

創業者のスティーブ・ジョブズ氏を失ったアップル社は、その直後に15万株のストックオプションを認証しました。

これには優秀な幹部社員の流出を防ぐ目的がありました。

同社に残った従業員に対して2013年に半分、残りを2016年に渡すという仕組みを取り、人材の流出を防いだのです。

メルカリ

mercariを運営する株式会社メルカリでは、ストックオプションの付与が積極的に行われています。

2018年上場時の発行回数は39回、ストックオプション比率は17.3%という高水準です。

全従業員の6割以上に付与し「All forOne」のバリューを体現しています。