休業指示とは? 休業手当、コロナ禍でのケース別の対応、雇用調整助成金

休業指示とは、休業を命じることです。ここでは、休業指示についてさまざまなポイントから簡単に解説します。

1.休業指示とは?

休業指示とは、休業を命じること。新型コロナウイルス感染症の流行でよく耳にするようになった言葉のひとつで、休業命令と呼ばれる場合もあります。

企業が従業員に対して仕事を休むよう要請する際に用いられるものです。しかしそれだけでなく、政府や都道府県などの自治体が緊急事態宣言を発令して、一般市民に外出自粛を要請したり飲食店に営業自粛を要請したりする際にも用いられます。

休業指示と休職指示の違い

休業指示と休職指示の違いは、下記のとおりです。

  • 休業:会社の都合で従業員を休業状態に置くため無給にはならず、休業手当の支払いが必要
  • 休職:雇用関係を維持し、在籍したまま労務義務を免除されるため、期間中は無給が原則

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2.休業指示に関する企業の義務

休業指示に関する企業の義務は3つあります。それぞれについて解説しましょう。

  1. 企業の故意や過失行為などが原因のケース
  2. 企業の経営管理上の障害が原因のケース
  3. 天災事変が原因のケース

①企業の故意や過失行為などが原因のケース

企業の故意や過失行為などが原因のケースでは、民法536条2項により企業は従業員へ賃金の全額を支払わなければなりません。

懲戒事由に該当する行為を行った従業員に対し、処分決定まで自宅待機を命じるといった合理的な範囲であれば、就業規則で給付額を100%未満に変更できます。ただし労働基準法26条により、平均賃金の60%未満には変更できません。

②企業の経営管理上の障害が原因のケース

企業の経営管理上の障害が原因のケースでは、労働基準法26条により企業は従業員へ休業手当として平均賃金の60%を支払わなければなりません。設備機器の故障・検査や資材の供給不足など、企業に故意や過失がなくても従業員が休業を強いられるためです。

就業規則に「平均賃金の60%超の額を支払う」旨があればその額の支払いが必要となります。

③天災事変が原因のケース

天災事変などが原因のケースでは、賃金と労働基準法第26条に明記されている休業手当、ともに支払い義務はありません。

たとえば、台風などで公共交通機関が運休している場合、従業員は会社に行けません。このようなケースではノーワーク・ノーペイの原則により、休業した分の賃金は発生しないのです。

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3.休業指示と休業手当

休業指示と休業手当は密接な関係にあります。それぞれについて解説しましょう。

  1. 休業補償との違い
  2. 休業手当の計算方法
  3. 日雇い労働者の平均賃金の計算方法
  4. 休業手当の計算方法のサンプル

①休業補償との違い

休業手当と休業補償の違いは、下記のとおりです。

  • 休業手当:企業が従業員に対して仕事を休むよう要請する際に支払う手当
  • 休業補償:業務中の怪我や病気などで就労できなくなる際の救済制度。労災保険から賄われ、金額は平均賃金の8割

②休業手当の計算方法

休業手当の計算式は、「平均賃金×60%以上×休業日数」です。平均賃金の計算方法について解説しましょう。

平均賃金の計算方法

平均賃金は、「事由の発生した日以前3カ月間の賃金の総額÷3カ月間の暦日数」で計算します。たとえば「3カ月の賃金総額が45万円」「3カ月間の暦日数が90日」の場合、一日の平均賃金は45万円÷90日=5,000円になるのです。

なお1日の平均賃金を算出し、銭未満の端数が生じたときは切り捨てます。

直前3カ月間とは?

直前3カ月間とは、休業直前の賃金締切日からさかのぼった3カ月間のこと。賃金締切日がない場合、休業開始日の前日からさかのぼった3カ月間となります。

また賃金締切日と同じ日に休業を開始した場合、その前の賃金締切日からさかのぼった3カ月間になるのです。直近3カ月にはいくつかのパターンがあるため注意しましょう。

直前3カ月間が適応外となるケース

直前3カ月間が適応外となるケースは、下記のとおりです。

  • 業務上の負傷または疾病で療養のため休業した期間
  • 産前産後休業期間
  • 使用者の責めに帰すべき事由によって休業した期間
  • 育児および介護休業期間
  • 試用期間

直近3カ月の間に上記期間がある場合、その期間の日数や賃金額を控除して平均賃金を計算します。

③日雇い労働者の平均賃金の計算方法

日雇い労働者の平均賃金の計算方法は、一般的な平均賃金の計算方法と異なります。日雇い労働者は、日によって勤務先が異なる場合も多いため、以下のような計算方法を用いて平均賃金を計算するのです。

  • 本人に同一事業場で1カ月間に支払われた賃金総額÷その間の総労働日数×73%
  • 同種労働者の賃金総額÷その間の同種労働者の総労働日数×73%

④休業手当の計算方法のサンプル

休業手当の計算方法のサンプルを見ていきましょう。

月給制の場合

月給制の例です。

  • 月給:20万円
  • 通勤手当:1万円/月
  • 賃金締切日:毎月末日
  • 勤務予定日:6/1~6/30のうち22日間
  • 休業日:6/15、16、17の3日間

この場合、下記のようになります。

  • 平均賃金は630,000÷92=6,847.826(銭未満は切り捨て)
  • 休業手当は6,847.82×0.6×3=12,326.076(※円未満は四捨五入)で1万2,326円

日給制・時給制・出来高給制の場合

日給制・時給制・出来高給制にて平均賃金を計算する際は、通常の計算方法と最低保障額の計算法を比較し、金額の大きいほうを採用します。

  • 時給1,500円
  • 一日6時間、通勤手当1日1,000円
  • 出勤日数 4月10日間、3月10日間、2月5日間

この場合、下記のようになります。

  • 原則による平均賃金は、2,717.391円(銭未満は切り捨て)
  • 最低賃金による平均賃金は、6,000円
  • 休業手当は3,600円

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4.新型コロナウイルスが原因の休業指示と休業手当

新型コロナウイルスが原因の休業指示と休業手当の問題は、さまざまな場面で生じています。ここでは下記2つのポイントと支払い義務の例外について解説しましょう。

  1. 賃金の支払い義務
  2. 休業手当の支払い義務

①賃金の支払い義務

新型コロナウイルス感染症の流行が原因となる休業指示を行った場合、100%の賃金支払い義務はありません。これは「企業の故意・過失による行為、又は信義則上これと同視すべき事由」には該当しないからです。

法律の趣旨から考えると労働者に対し、必ずしも賃金の全額を支払う義務を負うものではないと考えられます。

例外①就業規則に記されている

新型コロナウイルス感染症の流行が原因となる休業指示を行った場合、賃金の全額支払い義務はありません。

しかし就業規則に特別なルールが記載されている場合、就業規則が優先されます。たとえば、就業規則に「休業の場合に平均賃金の80%を支払う」としていた場合、平均賃金の80%を支払うのです。

例外②不当な休業命令

就業規則に規定があった場合以外でも、不当な休業命令が行われていた際、賃金全額の支払いを請求できる可能性があります。

たとえば「新型コロナウイルス感染症の流行を理由として、長期間、不当な自宅待機を命じられた」といったケースです。このようなケースでは賃金を全額請求できる可能性が残されています。

②休業手当の支払い義務

休業手当の支払い義務が発生するか否か、は非常に難しい問題です。不当な休業命令かどうかを判断するためには、下記のポイントから総合的に判断するとよいでしょう。労働問題に詳しい弁護士からアドバイスを受ける方法もあります。

  • 企業の経営状況がどうであるか
  • 労働者との協議がされたかどうか
  • 企業が労働者の不利益回避の努力を十分に行ったか
  • 在宅ワークやテレワークなどの導入が現実的に可能かどうか

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5.【ケース別】新型コロナウイルスが原因の休業指示

新型コロナウイルスが原因で休業指示を出すケースがあります。それぞれについて解説しましょう。

  1. 従業員が感染した
  2. 従業員が感染した疑いがある
  3. 従業員が自主的に休業した
  4. 「帰国者・接触者相談センター」の診断で休業させた

①従業員が感染した

「従業員が新型コロナウイルスに感染した」「都道府県知事による就業制限で休業する」場合、「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当しないため休業補償は不要です。

②従業員が感染した疑いがある

この場合、企業が自主的な判断を行って従業員を休業させているため、「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当します。よって休業手当の支払い義務があるのです。

③従業員が自主的に休業した

新型コロナウイルス感染症も、通常の病欠と同じ扱いをします。発熱で労働者が自発的に会社を休んだ場合、病気休暇制度を使えるのです。

④「帰国者・接触者相談センター」の診断で休業させた

「帰国者・接触者相談センター」の相談結果によって、休業を余儀なくされた場合、「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当しないと考えられます。よって休業補償をしなくてもかまいません。

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6.休業指示と雇用調整助成金の特例措置

休業指示と雇用調整助成金の特例措置の関係とは、新型コロナウイルス感染症が原因となって企業が休業指示を出す場合、雇用調整助成金の特例措置の申請を検討できること。

雇用調整助成金とは、経済上の理由で事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、従業員の雇用維持を目的として休業手当に要した費用を助成する制度のこと。新型コロナウイルス感染症に限らず広く雇用維持を目的として活用されます。

条件

雇用調整助成金には条件があります。それぞれについて解説しましょう。

  1. 支給対象となる事業主
  2. 助成対象となる労働者

①支給対象となる事業主

支給対象となる事業主は、下記のとおりです。対象要件を確認して申請しましょう。

  • 新型コロナウイルス感染症の影響により経営環境が悪化し、事業活動が縮小している
  • 特殊措置を除き、最近1カ月間の売上高または生産量などが前年同月比5%以上減少している
  • 労使間の協定にもとづいて休業を実施し、休業手当を支払っている

②助成対象となる労働者

助成対象となる労働者は、事業主に雇用された雇用保険被保険者です。雇用調整助成金は、雇用された雇用保険被保険者に対する休業手当が助成対象となっています。

もし雇用保険被保険者以外の学生アルバイトを雇用していた際、当該アルバイトへの休業手当は「緊急雇用安定助成金」の助成対象になるのです。

助成率と助成額

雇用調整助成金の助成率と助成額は次のとおりです。上限額は、1人1日あたり1万3,500円となります。

  • 中小企業:休業手当に相当する額の4/5(解雇を行わず雇用維持に取り組む場合は9/10)
  • 大企業:休業手当に相当する額の2/3(解雇を行わず雇用維持に取り組む場合は3/4)