インテグレーションとは、統合や統一、一体化や集積など「まとめること」を意味する用語のことです。ここではインテグレーションの使い方や関連用語などについて解説します。
目次
1.インテグレーションとは?
インテグレーション(integration)とは、異なる複数のものを組み合わせること。すなわち「まとめること」を意味するのです。
教育や福祉、ITや数学など幅広い分野で使われており、インテグレーションで何をまとめるか、どのようにまとめるかなどは分野によって異なります。
教育では教科の統合や障がいのある子どもの統合教育を、人種や宗教の問題では差別撤廃と統合を、また数学の分野では積分法を指すのが一般的です。
2.インクルージョンとの違い
インクルージョンとは包括や一体性、包含といった意味を持つ言葉のこと。ビジネスでは、従業員一人ひとりのスキルや能力、経験などさまざまな強みが生かせる環境を「インクルージョン」と呼ぶのです。
対する「インテグレーション」は提携や合併など「まとめる」という意味で使われます。インクルージョンと近い意味の言葉ではあるものの、イコールではありません。
3.各分野におけるインテグレーションの意味
日本のビジネスシーンにてインテグレーションは、提携や合併など複数の異なる要素を組み合わせてひとつにするという意味で用いられます。しかしインテグレーションは、ビジネスだけでなくさまざまな分野で、さらに細かい意味を持って使われているのです。
ここではビジネス以外の分野で使われるインテグレーションの意味について解説します。
福祉
福祉や介護の分野におけるインテグレーションには「本人を中心にして周囲が合わせることで、効率やサービスの質をあげていこう」という考えがあります。この業界におけるインテグレーションの意味は、次の2つです。
ハンディキャップを持った人が、日常生活に支障をきたさないよう、その地域のなかで生活する住民や団体、関連機関などが中心となって問題解決にあたる
社会福祉の対象者が、ほか住民と差別なく地域社会と密着した環境で生活できるよう援助する
福祉の分野で必要とされる背景
2007年、日本は65歳以上の人口が全人口の21%を超える「超高齢社会」に突入。療養が長引いて長期入院になると、生活力が低下します。このように福祉の分野では長期的な療養と共存しながら、QOL(生活の質)の維持・向上を図る必要があるのです。
福祉サービスのインテグレーションを図り、高齢者が自立できる生活環境作りは日本において急務の課題となっています。
事例
福祉の分野におけるインテグレーションの具体的な活動として、以下のものが挙げられます。
- 地域支援事業:介護状態を予防し、自立した生活を維持できるよう促進する支援活動
- 地域包括ケアシステム:住み慣れたまちで自分らしく暮らし続けるための支援体制
- ケアマネージャー:地域包括ケアシステムの調整役。必要に応じて外部サービスや各関係機関を結ぶ窓口としても活動する
教育
障がいの有無にかかわらず、その地域の学校で教育が受けられるようにすることを、「インテグレーション」といいます。教育の現場では、インテグレーションは「統合教育」を意味する言葉になるのです。
かつて日本の教育現場では、障害者と健常者を分けて教育を行う制度が根付いていました。しかし現在ではこれが大きく変わり、障がいのある生徒も通常の学級で一般生徒と一緒に教育するシステムになっています。
インクルーシブ教育との違い
障害のある子どももない子どもも、ともに教育を受けて共生するシステムを「インテグレーション教育」といい、似た言葉に「インクルーシブ教育」があります。
インテグレーション教育は「障害のある子どもも同じ環境で学ばせる」という部分がフォーカスされていました。その結果一人ひとりに対する配慮が不足するという問題が発生したのです。
これを改善し、合理的配慮によるサポートを受けながら共生することに重きを置いたのがインクルーシブ教育です。
学校
インテグレーションは学校の現場でも多く用いられます。この場合、インテグレーションの意味は「複数の教科や教材をひとつに統合すること」になります。
代表的なものが、1992年に設置された「生活科」です。この教科には「家庭と生活」「動植物の飼育や栽培」「地域と生活」など「理科」と「社会」の要素が組み込まれています。
人種・宗教
人種や宗教においても「インテグレーション」という用語が用いられます。この分野におけるインテグレーションの意味は、人種による差別や宗教ごとの対立をなくす、すなわち「差別を撤廃すること」です。
ほかにもひとつの宗教のなかでいくつもの派閥があるために生まれる、宗派ごとの対立や差別をなくすのもインテグレーションと呼びます。
数学
数学の世界でインテグレーションといえば「積分法」。積分の原理は、関数から得られる複数の面積を足し合わせて、最終的な面積を求めること。関数f(x)から得られる領域の面積部分を求める、という方法です。
積分記号「∫」もインテグラルと読みます。複数の要素を「まとめる」という意味では、ほかの分野と同じといえるでしょう。
4.インテグレーションの使い方
インテグレーションはビジネスシーンでも多く使われる用語です。
「新製品の企画や開発、生産発表後のサポート、またリニューアルの提案を一貫して行うこと」をインテグレーションと呼ぶ場合もあれば、「複数企業の業務提携や事業統合の動き」を指してインテグレーションと呼ぶ場合もあります。
多くの場合、別の言葉と組み合わせ、意味を限定して使用するのです。
例文
ビジネスの現場におけるインテグレーションは、次のような使い方をします。
- 当社アプリの発注数が増えたのは、システムインテグレーションに力を入れたからだ
- インテグレーションのおかげで社内の作業効率が上がった
- 今後はIT部門の人材教育に力を入れていかなければならない。なぜならば、システムインテグレーションを推進する必要があるからだ
- A社とのインテグレーションが実現し、当社の事業が黒字に転換できた
5.インテグレーションに関する用語
インテグレーションは単体で使う場合もあるものの、別の言葉と組み合わせて、意味を限定するような使い方も多いです。もちろん、「いくつかに分かれているものをひとつにまとめる」という意味では同じとなります。
ここではインテグレーションに関する用語について解説しましょう。
- インテグレーションシステム
- インテグレーションテスト
- データインテグレーション
- インテグレーションツール
- インテグレーション業務
- ワークライフインテグレーション
- インテグレーションテクノロジー
- slackのインテグレーション機能
①インテグレーションシステム
パソコンやソフトウェア、ネットワークなどを横断的に連携させるシステムのこと。利便性を向上させたり、効率化を飛躍させたりして新たなサービスを生み出すシステムです。
代表例は、銀行のオンラインシステム。情報処理がアナログだった頃は、口座を持っている支店でしかお金を引き出せませんでした。
しかしインテグレーションシステムによってネットワークが構築。滞りなく運用されて、全国どの支店からでもお金をおろせるようになったのです。
②インテグレーションテスト
複数のプログラムを組み合わせたとき正常に動作するかどうか試すテストのこと。IT用語のひとつで、単に「結合テスト」「統合テスト」と呼ばれる場合もあります。
システムを開発する際は、「Aの部分」「Bの部分」「Cの部分」とそれぞれ単体で作業を進め、すべてを統合してシステム全体がきちんと動作するかテストするのです。システム品質に大きな影響を与える重要なテストでもあります。
③データインテグレーション
複数のデータソースからデータを統合して意思決定に必要な情報を得るためのシステムプロセス、あるいはビジネスプロセスのこと。
一般的に企業内のデータは基幹や部門などさまざまなシステムに散在しています。形式が統一されていないこれらのデータは、構築や管理に手間がかかるといった問題を抱えていました。
そこで注目されるようになったのが、データソースをひとつに集約・統合して一元管理するデータインテグレーション。これによりデータの流れが可視化され、管理・運用コストも削減可能になったのです。
④インテグレーションツール
ソフトウェア開発にて、短期間で品質管理を行う手法、すなわち「継続的インテグレーション」を行うツールのこと。「継続的インテグレーションツール」と呼ぶ場合もあります。
チームによるシステム開発では、課題の共有やスケジュール管理が必須です。またメンバー全員がつねに最新の状況を把握しておく必要があります。結合テスト時、バグを探す手間を省いて効率をよくするには、インテグレーションツールが必要不可欠なのです。
⑤インテグレーション業務
インテグレーションする人が携わる業務のこと。複数の物事をまとめるインテグレーション業務では、インテグレーションする人を「インテグレーター」と呼びます。
代表的なものとして挙げられるのは、情報システムの企画や構築、運営などの業務を顧客から一括して請け負う「システムインテグレーター」。そのほか国際貨物輸送で貨物の集配を含めた幹線輸送を一貫して行う物流事業者が挙げられます。
⑥ワークライフインテグレーション
仕事とプライベートを統合する考え方のこと。仕事とプライベートはどちらも人生を充実させる大切な要素であるという考えから、双方を切り離さず統合して人生を充実させようと考えるのです。
仕事とプライベートに境界線を設けないため、従業員の生産性向上や業績アップを狙う意図もあります。
ワークライフバランスとの違い
ワークライフインテグレーションと混同されやすいのが「ワークライフバランス」です。しかし2つの意味合いは大きく異なります。
- ワークライフバランス:仕事とプライベートは相反するものとして捉える
- ワークライフインテグレーション:双方は対立せず、一体化させて人生の充実を図る
仕事とプライベートに垣根を作らず、統合的な充実を目指すワークライフインテグレーションは、今後さらに広まるものと考えられています。
⑦インテグレーションテクノロジー
科学技術や工業技術を実用的な目的のために応用する分野を「テクノロジー」といいます。テクノロジーを活用した製品を、要件の定義から納品までまとめて行う会社が「インテグレーションテクノロジー」です。
同社では自動車や航空防衛分野の製品開発をはじめ、配管関連の開発事業や油圧計プラントモデルなど、幅広い分野の技術革新に貢献しています。
slackのインテグレーション機能
SaaS型のビジネスチャットツール「slack」にもインテグレーションに関する機能があります。この機能を活用すれば、GoogleドライブやGoogleカレンダー、Dropboxなどさまざまなツールと連携させられるのです。
各ツールとワークフローがslackをひとつにまとめられるため、情報をすばやく見つけながら仕事に集中できるでしょう。