まん延防止等重点措置とは?【わかりやすく】発令基準、罰則

まん延防止等重点措置とは、新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するための取り組み。公示時期によって措置の期間や内容などが異なります。

1.まん延防止等重点措置とは?

まん延防止等重点措置とは、新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するために行われる地域ごとの取り組み。政府が特定区域に対して公示するもので、対象地域は以下のとおりです。

  • 感染が拡大し、生活や経済に大きな影響を及ぼすおそれがある地域
  • 医療体制や公衆衛生へ支障が出るおそれのある地域
  • 具体的な措置の内容として、以下のものが挙げられます。
  • 飲食店に対する制限要請
  • 施設の使用制限要請
  • イベントなどの開催制限要請
  • 外出や移動、 職場への出勤に対する要請

改正特別措置法とは?

改正特別措置法とは、「新型インフルエンザ等特別措置法」の改正法のこと。2021年2月3日に交付、同年2月13日に施行されました。目的は、緊急事態宣言を発令しなくても、政府が感染防止を目的とした「協力要請」と「命令」を行えるようにすることです。

要請に従わない場合、法的効力を持つ命令が出されます。改正で追加された内容は以下のとおりです。

  • 「まん延防止等重点措置」の新設
  • 都道府県知事から出された営業時間の変更や施設の使用制限などの「命令」に違反した場合の過料

なおこの改正では事業者への規制にくわえ、感染者に対する規制も強化されています。

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2.まん延防止等重点措置の全面解除

2021年9月30日、すべての地域において緊急事態宣言とまん延防止等重点措置が解除されました。ワクチン接種や日常生活における基本の感染対策は継続して要請するものの、飲食店やイベントなどの制限が段階的に緩和。

東京都の飲食店では20時まで、と時間を制限したうえで酒類の提供が再開されました。移動についても原則制限を撤廃し、一斉登校や県をまたぐ移動が可能となったのです。

ただし政府による空港での無料PCR検査や企業独自の入場制限など、一部の感染対策は継続されています。

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3.まん延防止等重点措置の発令基準

まん延防止等重点措置の基準は、感染状況を表す「ステージ」です。ステージは1から4までわかれ、ステージの数字が大きいほど緊急度が高いことを意味しています。

緊急事態宣言の発令目安はステージ4であるため、その前段階であるステージ3がまん延防止等重点措置の目安となるのです。

感染状況のステージ

感染状況のステージは、新型コロナウイルス感染症対策分科会での審議を経て決定されます。この審議では以下を指標としているのです。

  1. 病床のひっ迫具合(確保病床の使用と入院率)
  2. 療養者数(人口10万人あたりの全療養者数)
  3. PCR陽性率
  4. 新規感染者の報告数
  5. 感染経路不明の割合

ステージ3と4では上記の項目に目安の数字が設定されているものの、実際の審議ではこれらの数字だけでなくさまざまな要素を含めて総合的に判断します。

ステージ3とステージ4の違い

指標におけるステージ3とステージ4の違いは、以下のとおりです。

【病床のひっ迫具合】

入院全体における確保病床の使用率

  • ステージ3:20%以上
  • ステージ4:50%以上

入院率

  • ステージ3:40%以上
  • ステージ4:25%以上

重症者における確保病床の使用率

  • ステージ3:20%以上
  • ステージ4:50%以上
【療養者数】
  • ステージ3:人口10万人あたり20人以上
  • ステージ4:人口10万人あたり30人以上
【PCR陽性率】
  • ステージ3:5%以上
  • ステージ4:10%以上
【1週あたりの新規陽性者数】
  • ステージ3:人口10万人あたり15人以上
  • ステージ4:人口10万人あたり25人以上

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4.まん延防止等重点措置と緊急事態宣言の違い

まん延防止等重点措置と緊急事態宣言の違いとして挙げられるのは、対象とする地域や制限レベル、国会での報告義務などです。

国会への報告

新型インフルエンザ等対策特別措置法にて、緊急事態宣言の発令や区域変更、解除などを行った場合、国会へ報告しなければならないと定めています。

一方まん延防止等重点措置に対して、国会への報告義務はありません。ただし第204回国会の付帯決議にて「公示や変更、解除などを行ったら国会へ速やかに報告すること」とされました。

酒類の提供

緊急事態宣言とまん延防止等重点措置では、いずれも酒類提供の停止を要請できます。まん延防止等重点措置では、緊急事態宣言が発令されていなくても都道府県知事の判断で酒類提供停止の要請や再開、緩和が行えるのです。

さらに緊急事態宣言は酒類を提供する飲食店や施設などへ営業時間の短縮と休業の要請が可能ですが、まん延防止等重点措置は、時短要請は可能であるものの休業要請は認められていません。

対象地域

緊急事態宣言の対象地域は各都道府県であり、市区町村ごとの指定はできません。一方まん延防止等重点措置は、知事が対象とする市区町村や区画の指定が可能です。

東京であれば「東京都23区のみ」や「調布市および町田市」など、まん延防止等重点措置を適用する地域を絞れます。なおまん延防止等重点措置を実施しても効果が認められない場合、知事から政府へ緊急事態宣言の発令を要請する場合もあるのです。

2021年の8月から9月にかけて、19都道府県に緊急事態宣言が発令されました。地域と期間は以下のとおりです。

  • 東京都:2021年7月12日から2021年9月30日
  • 神奈川県:2021年8月2日から2021年9月30日
  • 千葉県:2021年8月2日から2021年9月30日
  • 埼玉県:2021年8月2日から2021年9月30日
  • 大阪府:2021年8月2日から2021年9月30日
  • 沖縄県:2021年5月23日から2021年9月30日
  • 茨城県:2021年8月20日から2021年9月30日
  • 栃木県:2021年8月20日から2021年9月30日
  • 群馬県:2021年8月20日から2021年9月30日
  • 静岡県:2021年8月20日から2021年9月30日
  • 京都府:2021年8月20日から2021年9月30日
  • 兵庫県:2021年8月20日から2021年9月30日
  • 福岡県:2021年8月20日から2021年9月30日
  • 北海道:2021年8月27日から2021年9月30日
  • 岐阜県:2021年8月27日から2021年9月30日
  • 愛知県:2021年8月27日から2021年9月30日
  • 三重県:2021年8月27日から2021年9月30日
  • 滋賀県:2021年8月27日から2021年9月30日
  • 広島県:2021年8月27日から2021年9月30日

大規模イベントの人数制限

大規模イベントの人数制限は、緊急事態宣言とまん延防止等重点措置のいずれも同じで、5,000人を上限としています。ただし双方は、以下のように細かな条件が異なるのです。

【緊急事態宣言】

  • 収容率:50%
  • 人数上限:5,000人

【まん延防止等重点措置】

  • 収容率:「大声あり」は50%、「大声なし」は100%以内
  • 人数上限:5,000人

緊急事態宣言とまん延防止等重点措置のいずれにおいても、収容率と人数上限のうち、より少数である人数を上限とします。

罰則

改正特別措置法にて、緊急事態宣言とまん延防止等重点措置において罰則を設定しました。正当な理由なく都道府県知事の協力要請や命令に従わない事業者には過料(罰金)が課せられます。金額は以下のとおりです。

【緊急事態宣言】

  • 事業者が立入検査や報告徴収を拒否した場合:20万円以下
  • 事業者が命令に違反した場合:30万円以下

【まん延防止等重点措置】

  • 事業者が立入検査や報告徴収を拒否した場合、および「命令」に違反した場合:20万円以下

発令の基準

緊急事態宣言とまん延防止等重点措置は、いずれも感染状況を表す「ステージ」が発令基準となります。緊急事態宣言はステージ4、まん延防止等重点措置はステージ3が目安です。

ただしあくまでも目安で、実際にはさまざまな要素を考慮して総合的に判断されます。そのためステージ2と判断されたとしても、これから感染拡大が予想される地域にまん延防止等重点措置を実施する場合もあるのです。

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5.まん延防止等重点措置の対象地域と期間

まん延防止等重点措置は、特定の地域における感染拡大を防止するための措置。そのため感染状況に合わせて、措置を実施する市区町村や区画を指定できるようになっています。

もちろん感染状況によっては緊急事態宣言と同様、措置の対象が都道府県内全域に渡る場合もあるでしょう。たとえば東京都では、都内全域を対象とした2021年4月12日から同年4月24日までまん延防止等重点措置を実施しています。

対象となった県

2021年の8月から9月にかけて、8都道府県に緊急事態宣言が発令されました。地域と期間は以下のとおりです。

  • 石川県:2021年8月2日から2021年9月30日
  • 福島県:2021年8月8日から2021年9月30日
  • 熊本県:2021年8月8日から2021年9月30日
  • 香川県:2021年8月20日から2021年9月30日
  • 鹿児島県:2021年8月20日から2021年9月30日
  • 宮崎県:2021年8月27日から2021年9月30日
  • 宮城県:2021年9月13日から2021年9月30日
  • 岡山県:2021年9月13日から2021年9月30日

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6.まん延防止等重点措置による事業者への要請

まん延防止等重点措置では、対象区域の事業者および住民に対して、消毒や飛沫感染対策、三密回避などの対策実施を「要請」します。一方対象区域ではない住民には「お願い」として、外出の自粛やマスクの着用など基本の感染対策を依頼するのです。

なお要請や命令を受け入れない事業者には罰金が課せられるものの、住民への罰金はとくに設定されていません。

飲食店

飲食店に対する要請には、以下のものが挙げられます。

  • 営業時間の短縮
  • 酒類提供を停止、あるいは提供時間を制限
  • 飲食を主とする事業はカラオケの利用を自粛
  • 収容人数や1グループあたりの人数に上限を設定

なお2022年1月には、ワクチン接種証明を提示すれば、1グループあたりの人数引き上げを認めている都道府県もみられました。

イベント・スポーツ

イベントやスポーツ観戦など催物開催に対する要請では基本、収容率と人数上限が設けられます。開催が認められる条件は以下のとおりです。

  • 収容率:「大声あり」は50%、「大声なし」は100%以内
  • 人数上限:5,000人
  • 収容率と人数上限のうち、より少数である人数を上限とする

なお対象となる施設は以下のとおりです。

  • 劇場等:劇場、観覧場、演芸場など
  • 集会・展示施設:集会場、公会堂、展示場、貸会議室、文化会館、多目的ホールなど
  • ホテル・旅館:ホテルや旅館のうち、集会などで使用する部分
  • 屋外運動施設:野球場・ゴルフ場・陸上競技場・屋外テニス場・ゴルフ練習場、バッティング練習場など
  • 屋外遊戯施設:テーマパーク・遊園地など
  • 博物館等:博物館・美術館・科学館・記念館・水族館・動物園・植物園など

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7.まん延防止等重点措置による住民への要請

都道府県知事はまん延防止等重点措置区域の住民に対して、感染防止に必要な協力を要請しています。以下は要請内容の例です。

  • 路上や公園など公共の場所での大人数による飲酒をしない
  • 営業時間短縮の要請が出ている場合に、その時間以降は飲食店を利用しない
  • 感染防止対策が徹底されていない飲食店を利用しない
  • 営業時間短縮の要請に応じていない飲食店を利用しない
  • 都道府県をまたぐ移動をしない
  • 外出は混雑している時間帯および場所を避ける

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8.まん延防止等重点措置の対象区域以外の住民へのお願い

まん延防止等重点措置の対象外である区域の住人には、感染防止への協力をお願いしています。以下は依頼内容の例です。

  • 「三密」および「感染リスクが高まる5つの場面」の回避
  • マスク着用や手洗いうがい、手指消毒や対人距離の確保といった基本的な感染対策の実施
  • 発熱などの体調不良が見られる場合、帰省や旅行を自粛
  • 在宅勤務や時差出勤、テレビ会議などの利活用

なお「三密」と「感染リスクが高まる5つの場面」とは、避けるべき状況や行動のことです。

【三密】

  1. 密集
  2. 密接
  3. 密閉

【感染リスクが高まる5つの場面】

  1. 飲酒を伴う懇親会等
  2. 大人数や長時間におよぶ飲食
  3. マスクなしでの会話
  4. 狭い空間での共同生活
  5. 居場所の切り替わり

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9.まん延防止等重点措置による罰則

まん延防止等重点措置下において、都道府県知事の命令に従わない事業者に対する罰則が設定されました。ここでは罰則について解説します。

店名の公表と20万円以下の過料

まん延防止等重点措置の適用区域における事業者が、都道府県知事の命令に従わない場合、20万円以下の過料が課されます。なお立ち入り検査や報告徴収を拒否した場合も同様です。また過料が課せられるだけでなく、店名の公表も認められています。

実際に宮城県は、2021年4月から5月のまん延防止等重点措置下において、時短営業などの要請に従わなかった市内の7事業者へ過料15万円を課しました。

正当な理由がある場合

都道府県知事の要請を受けたとしても、正当な理由を認められた場合は罰則不問です。政府は、以下を正当な理由の例としています。

  • 近隣に食料品店がなく、自店が休業すると地域住民の生活維持が困難になる場合
  • 新型コロナウイルス対策に関する重要な研究会等を施設で実施する場合
  • エッセンシャルワーカーの勤務地周辺にコンビニや食料品店などがなく、併設の飲食店が休業するとエッセンシャルワーカーの業務継続が困難になる場合

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10.まん延防止等重点措置の課題

2021年9月30日をもって、すべての緊急事態宣言とまん延防止等重点措置が解除されました。しかし同時にいくつかの課題が残されているのです。

感染再拡大のおそれ

緊急事態宣言とまん延防止等重点措置の解除後は、リバウンドによる感染拡大が懸念されます。実際に東京では、2021年3月と6月の緊急事態宣言が解除されたのち、それぞれ約1カ月後に感染が拡大。これは解除のリバウンドによる感染拡大と考えられました。

そのため東京都は2021年9月30日の解除後に、東京都内全域を対象とした「リバウンド防止措置」を発表し、施設の使用制限や外出の自粛などを要請しています。

実効性への疑問

感染者の減少が見られたものの、まん延防止等重点措置の実効性には疑問が残ります。感染者の減少が見られた2021年9月28日、政府は緊急事態宣言とまん延防止等重点措置の解除に踏み切りました。しかし厚生労働相は「感染者減の理由が不明」と述べているのです。

一方、首相はワクチン接種が効果的と見ており、今後は接種証明や陰性証明の活用を検討。再び緊急事態宣言やまん延防止等重点措置が発令された場合でも、行動制限の緩和を維持する仕組みづくりを考えています。

医療不安の継続

医療体制や医療施設についても大きな課題が残ります。感染者が拡大した場合、各都道府県知事は「臨時の施設」を提供しなければなりません。

2021年6月30日から9月14日の「第5波」では、深刻な医療施設不足に陥り、自宅療養者数は1万人を超え、うち200人ほどが自宅療養中に亡くなったとされています。

一部の都道府県では医療施設を増やすために体育館の転用やプレハブ型の病棟を設置しましたが、多くの都道府県ではそのような対策が取れなかったのです。

感染抑制と経済活動のバランス

感染抑制と経済回復を両立させなければならない点も今後の課題です。消費行動の自粛が長期化したため、緊急事態宣言までに生じた経済損失は膨大な金額となりました。とくに損失額が大きかったのは緊急事態宣言1回目の6.4兆円と、緊急事態宣言2回目の6.3兆円。

緊急事態宣言とまん延防止等重点措置解除後の各都道府県には、まん延防止等重点措置で感染を抑制しながらも、行動規制を緩和して経済活動を促すことが求められるのです。