休みが多い社員とは、勤怠不良の社員のことです。ここでは休みが多い社員について、さまざまなポイントから解説します。
目次
1.休みが多い社員とは?
休みが多い社員とは、遅刻や早退なども含め、会社を休むことが多い社員のこと。休みが多い社員は、どの会社にも一定数存在します。休みが多い社員を放置しておけば、下記のようにさまざまな問題が引き起こされるのです。
- 真面目に勤務している社員から不満が噴出する
- 会社全体の士気が低下する
- 人手不足になり、業務がスムーズに進まなくなる
- 休みが多い社員の仕事が対外的な業務であれば、顧客にも迷惑をかける
2.休みが多い社員の特徴
休みが多い社員には特徴があります。それぞれについて解説しましょう。
- コミュニケーションが不得意
- 責任感や向上心が希薄
- 責任感が強すぎる
- プライベートに問題がある
①コミュニケーションが不得意
休みが多い社員は、人間関係を上手に構築できません。上司や同僚、後輩や顧客などと円滑なコミュニケーションが取れず、居心地の悪さから休みがちになります。
②責任感や向上心が希薄
「仕事に対する責任感がない」「毎日同じ仕事をすることに飽きている」という傾向があります。このような人は自分に甘く考える傾向もあるのです。
③責任感が強すぎる
仕事に対する責任感が強い人は、「会社を休んではいけない」という強迫観念に襲われます。しかし緊張の糸が一旦切れてしまうと休みがちになってしまいます。
④プライベートに問題がある
「子どもが小さく病気がちである」「親の介護を一手に背負っている」など、プライベートで何らかの事情を抱えていると休みが多くなる傾向にあります。
3.休みが多い社員への対応策
休みが多い社員への対応策があります。それぞれについて解説しましょう。
- 就業規則の整備
- 注意・指導
- 欠勤理由のヒアリング
- 勤怠管理の徹底
①就業規則の整備
休みが多い社員の対応に苦慮しないよう、就業規則に欠勤についてのルールを定めておきます。
たとえば、懲戒事由の中に「理由がないにもかかわらず遅刻や欠勤を繰り返すこと」と明記します。
このような就業規則を整備したら、従業員への周知を徹底しておかなければなりません。
②注意・指導
休みが多い社員には、上司などが休まないように注意したり、休まなくて済むようにするにはどうしたらいいか指導したりする必要があります。口頭での注意だけで終わらせると証拠が残らなくなってしまうので、必ず書面を使って注意と指導を行いましょう。
③欠勤理由のヒアリング
休みが多い社員はそれぞれ休む理由が異なります。頭ごなしに休んだことを叱責しているだけでは何の解決にもなりません。
休んだ社員へ欠勤理由をヒアリングし、その内容に沿ったアドバイスや対策を講じてあげることも重要な対応であると考えられます。
④勤怠管理の徹底
企業が社員の勤怠管理をしっかり実施していなければ、「社員も自分の勤怠に高い意識が持てない」「社員の勤怠不良を適切に把握できない」といった労使双方にとって不幸な状況となります。会社が社員の勤怠状況を徹底的に把握することが不可欠です。
4.休みが多い社員を口頭で注意・指導するときのポイント
休みが多い社員を口頭で注意、指導するときには、押さえておきたいポイントがあります。それぞれについて解説しましょう。
- 周囲に聞かれないよう心がける
- 感情的にならない
- 毅然とした態度で接する
- 改善策を示す
①周囲に聞かれないよう心がける
社員が会社を休む理由はさまざま。個人的な事情で休むケースもあるため、周囲に休んだ理由を聞かれないような配慮は欠かせません。注意や指導の前のヒアリングを行う場合も含め、個室で面談するほうがよいでしょう。
②感情的にならない
休みが多いにもかかわらず、「休むことが悪い」といった認識がない社員の場合、指導に力が入り感情的になることもあります。しかし注意や指導の際は、威圧的な態度を避けたり感情をできる限り抑えたりしましょう。
③毅然とした態度で接する
「仕事ができる社員だから、休みが多くても甘くみてしまう」「技術を持っている社員だから、休みが多くても許すしかない」といった考えは禁物です。どんな社員に対しても休みが多いことに関して毅然とした態度で注意しましょう。
④改善策を示す
休みが多い理由を把握できたら、ただ単に叱責するだけでなく、休まないようにするための改善策を提示しましょう。社員の勤怠不良には、それぞれ理由があります。その理由に応じた改善策を提示すると勤怠の改善につながるのです。
5.休みが多い社員は減給できるのか?
休みが多い社員に対しては、減給できます。下記のポイントから解説しましょう。
- ノーワークノーペイの原則
- 減給処分には限度額があるので注意
①ノーワークノーペイの原則
ノーワークノーペイの原則とは、「出勤日に働かなかった分の給与について支払い義務はない」という考え方のこと。
- 労働基準法:「賃金は、通貨で直接労働者に、その全額を支払わなければならない」
- 民法第624条:「労働者は、その約した労働を終わった後でなければ、報酬を請求することができない」
②減給処分には限度額があるので注意
減給処分には限度額があるので注意が必要です。労働基準法第91条には、「1回の減給額は、平均賃金の1日分の半額を超えてはならない」「賃金支払期において減給できる額は、その賃金総額の10分の1以内でなければならない」と定めがあるのです。
限度額を超えた減給を行う際は、その部分の減給を次期の賃金支払期に延ばします。
6.休みが多い社員を解雇する基準
休みが多い社員を解雇する基準は、過去1年間の出勤率が8割を超えているかどうか。欠勤日数の多さだけで社員を解雇しようとする場合、過去1年間の出勤率が8割を超えていれば解雇事由に該当しにくくなります。
その理由は、出勤率8割を超えている社員に対して有給休暇が付与されるからです。8割を下回る率でない限り解雇の正当な事由にはならないため、出勤率8割以下という数字が解雇の基準に用いられています。
7.休みが多い社員を解雇する際の注意点
休みが多い社員を解雇する際の注意点があります。それぞれについて解説しましょう。
- 証拠となる記録を残す
- 懲戒解雇ではなく普通解雇とする
- いきなり解雇処分としない
①証拠となる記録を残す
解雇の問題は、後の労使トラブルになりやすい問題です。場合によっては裁判にまで発展します。休みの多さを理由に解雇する際は、タイムカードや出勤簿、当該労働者とのやりとりなど証拠となる記録を残しておきましょう。
②懲戒解雇ではなく普通解雇とする
懲戒解雇は、企業秩序違反の行為に対する最も厳しい制裁です。しかし休みが多いといった勤怠不良は、懲戒解雇に該当するものではありません。繰り返される出退勤不良で会社との信頼関係が崩れたことを理由に、普通解雇として対応します。
③いきなり解雇処分としない
休みが多い社員の解雇は、休んだ理由や回数、業務への影響や改善の可能性などを考えて決定します。やむを得ない理由での欠勤はいきなり解雇処分にせず、けん責の処分で改善のチャンスを与えるステップを踏みましょう。
8.休みが多い社員とメンタルの不調
休みが多い社員とメンタルの不調には一定の関係性があると考えられています。ここでは下記のポイントについて見ていきましょう。
- メンタルに不調を抱える社員の見つけ方
- 対応策
①メンタルに不調を抱える社員の見つけ方
メンタルに不調を抱える社員の見つけ方は、大きく3点あると考えられています。
業務に支障が出ている
たとえば、下記のようなものです。
- 電話に出ることが怖くなり、取引先へ電話がかけられない
- 定型書類にも関わらずミスが多く満足に作れない
- 連絡の漏れが多くなり、業務が回らなくなる
同僚との交流が減る
たとえば、下記のようなものです。
- みんなでランチに行っていた人が、急にひとりでランチを取るようになった
- 周囲が話しかけても上の空である
- 周囲との会話が減少する
元気がなくなる
たとえば、下記のようなものです。
- 挨拶の声が日に日に小さくなっていった
- ひんぱんにため息をつく
- 仕事中、ぼんやりしていることが多くなった
②対応策
メンタルに不調を抱える社員に対する対応策は4つあります。それぞれについて解説しましょう。
ストレスチェックやカウンセリングを実施
ストレスチェックの定期的な実施や専門家によるカウンセリングなどを行います。ストレスチェックでは、ストレスの度合いを客観的に捉えられるのです。またカウンセリングでは、専門家に話をすると悩みを減らせます。
社内の労働環境を確認
メンタルの不調は、職場の人間関係や仕事上の悩みなども原因になるのです。そこで職場の人間関係や過重労働、仕事の分担などを定期的に確認します。そしてそれらがメンタルの不調の原因になっていないかどうか、精査するのです。
私傷病休職制度の発令
私傷病休職制度とは、業務外の疾病や精神疾患などによる欠勤が一定の期間続いた時に休職を命じる制度のこと。疾病や精神疾患が回復しない場合、会社側から自然退職や解雇を申し出られます。
リハビリ出勤制度
リハビリ出勤制度とは、休職者のスムーズな復職を進める制度のこと。職場復帰の前段階として、試行的に社員を勤務させます。運用方法は各企業で任意に決定可能です。
厚生労働省では類似する制度として、模擬出勤や通勤訓練、試し出勤からなる「試し出勤制度」を挙げています。どちらも求職者の復帰を目指した制度です。