1on1のやり方は、上司と部下のあいだに信頼関係をつくる重要な要素です。1on1の事前準備や実践方法、効果的なポイントなどについて解説しましょう。
目次
1.1on1はやり方次第で効果が変わる
1on1とは、上司と部下が1対1で対話する機会のこと。1on1によって上司は部下の現状を把握できるため、部下は課題や悩みを解決するための支援を受けられるのです。
1on1は相互に信頼関係を構築する重要な機会となります。しかしやり方を間違えるとかえって現場の負担が増すため注意しなければなりません。
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2.1on1の事前準備
何の準備もなく1on1に臨んでも、具体的なアクションにつなげられないまま時間が過ぎるおそれもあります。1on1を効果的な時間にするためには、以下3つの事前準備を意識するとよいでしょう。
- 目的を共有する
- スケジュールを決める
- 話す内容を考える
①目的を共有する
まずは何のために1on1を実施するのか、その目的を明らかにして双方で共有します。1on1は上司が部下に知りたいことや聞きたいことを尋ねる時間ではありません。
目的は部下が自発的・自立的な成長につながる気付きを得ること。上司からの指導や評価は必要ないと、部下そして上司や人事担当者が認識しておくのです。
②スケジュールを決める
1on1を一度実施して終わりではありません。定期的な開催と継続によって、お互いの距離が縮み、情報の共有も密になるのです。
直前にスケジュールをおさえるのではなく、「毎月第2火曜日の15時から30分間」のように一定のスケジュールを決めておきましょう。毎回予定を調整する手間が省け、定期的な開催が可能になります。
③話す内容を考える
1on1の失敗理由として多いのが、「何を話せばよいのかわからない」。せっかく目的を共有し、スケジュールを決めたのに雑談しかできなかった、とならないよう、あらかじめ話す内容を考えておくとよいでしょう。
ここで重要なのは、1on1の主役は上司ではなく部下という点。できる限り話す内容やテーマは、部下側で準備しておきましょう。
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3.1on1のやり方
1on1の進め方に絶対的な正解はありません。1on1は完璧を求めるものではなく、継続してこそ効果を発揮するものだからです。ここでは1on1の一般的なやり方について説明します。
- チェックイン
- テーマについて部下に話してもらう
- 上司からフィードバックし、今後のアクションプランを考える
- 話の内容をまとめ記録する
①チェックイン
いきなり本題に入らず部下の体調や精神状態などコンディションを確認しながら、話しやすい雰囲気をつくります。
「最近慌ただしそうだけど休めていますか」「昨日こんなニュースがあったけれど見ましたか」など、軽い質問から短時間の会話をはじめるのです。業務中話題にあがりにくいものについて話すと、相互理解のきっかけになるでしょう。
②テーマについて部下に話してもらう
続いて今回のテーマについて、部下から主体的に話してもらいます。ポイントは上司が問いかけや舵取りを行うのではなく、部下が主体的に話せるような雰囲気にすること。
もう少し部下の話を詳しく聞きたいときや、部下が言葉に詰まるときのみ上司から質問して話をつなぎます。上司は相槌や頷きを返しながら聞き役に徹することが重要です。
③上司からフィードバックし、今後のアクションプランを考える
上司がフィードバックするのは部下が話し終わったあと。その際、一方的にアドバイスするのは控えましょう。
「その方法が効果的だと思ったのはなぜですか」「なぜそうなったのだと思いますか」など思考を深める質問を投げかけ、部下自身の内省や考察を促します。「来週までに〇〇を試してみる」といった具体的なアクションや期限を決めるのも効果的です。
⑤話の内容をまとめ記録する
最後に話の内容を振り返り、整理したものを記録します。この記録は部下に残してもらい、上司と共有するとよいでしょう。
部下本人が改めて内省するだけでなく、その後の振り返りに活用したり次回以降の1on1で達成度合いを確認したりするのに役立ちます。過去の記録をさかのぼれば、成長度合いも実感できるでしょう。
4.1on1のテーマ例
1on1の時間を有効的に使うには、部下からうまく話を引き出すことが重要です。ここでは1on1を効果的なものにするテーマ例について説明します。
- プライベート
- 心身の状態
- 能力開発やキャリアアップ
- 仕事や組織の課題
①プライベート
1on1のテーマとして取り上げやすいのが、プライベートに関する話題。本題に入る前のチェックインに効果的です。
「休日はどのような過ごしかたをしていますか」「最近はどんなニュースが気になりましたか」など、仕事以外の情報を共有すると、相手の考え方や価値観を知っていけます。このような雑談は緊張しがちな1on1の空気も和むでしょう。
②心身の状態
部下の心身状態、健康状態は毎回冒頭で確認してもよいでしょう。これらは仕事のモチベーションや離職にも関わる重要な要素です。
「体調に変化はありませんか」「最近はちゃんと寝られていますか」などの質問を投げかけ、働くうえで大前提となる健康状態について確認します。
また「家に仕事を持ち帰っていないか」「日々の業務量は過多になっていないか」などの質問は、心身の健康状態を確認できるとともに、仕事の状況や業務に対する不満や要望を聞き出すきっかけにもなるのです。
③能力開発やキャリアアップ
今後挑戦したい仕事や部下自身の強みや弱みなどをテーマにするのも有効です。日常業務をとおして気付きを促し、部下が自身の能力開発や今後のキャリアを考えるきっかけを作ります。
「将来的に挑戦したい仕事はありますか」「現在の課題をクリアすればどのような成長ができると考えていますか」などを問いかけるのです。
明確なビジョンや具体的なキャリアイメージがない場合は、現在の仕事を振り返って部下のキャリア開発、サポートにつなげるとよいでしょう。
④仕事や組織の課題
自由な対話から上司と部下の信頼関係を築く1on1だからこそ、普段の業務や評価面談では話しづらい課題について話せます。
「人間関係におけるトラブルや課題はありますか」「組織に対する課題は何だと思いますか」「会社やチームの目標に対してどう考えていますか」などをヒアリングするのです。日常では出てこない改善点や問題点を抽出できるのも、1on1の強みでしょう。
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5.効果的な1on1のやり方
1on1が効果的なものになるかどうかの鍵は、上司が握っています。ここでは1on1を効果的なものにするためのポイントについて説明します。
- 部下の話に耳を傾けることに徹する
- 話しやすい雰囲気をつくる
- 定期的に実施する
- 口外しないことを明示する
- 完璧さを求めない
①部下の話に耳を傾けることに徹する
もっとも重要なのが、部下の話に耳を傾けること。慣れないうちは通常の業務や人事評価面談のように、必要なことを一方的に伝えてしまうかもしれません。
しかし1on1は部下のための時間。言いたいことがあっても別の機会にとっておき、ここは部下の話に耳を傾ける時間と意識して取り組みましょう。
②話しやすい雰囲気をつくる
1on1は部下が本音で自分の悩みや考えと向き合う場。信頼関係が築けていない上司にいきなり「なんでも話して」と言われても、どうしたらよいかわからなくなってしまうでしょう。
まずは相槌を打ったり共感を示したりして、部下が話しやすい雰囲気を作ります。気になる点に質問を繰り返して話の腰を折ってしまうと、部下も話すことに消極的になってしまうため注意が必要です。
③定期的に実施する
1on1は定期的な開催と継続が重要です。一回の話し合いだけでは現状把握や課題解決につながりません。
コミュニケーションの頻度は高ければ高いほどお互いの距離を縮め、情報共有を密なものにします。一回あたり15分程度でも問題ありません。はじめは月一回を目安に実施し、徐々に回数を増やしていくとよいでしょう。
④口外しないことを明示する
聞いた話は人事部に共有してもよい情報なのか、あるいは他人に知られたくない内容なのかなど、部下とともに決めておきましょう。
部下が1on1を安心して話せる場だと感じるためにも重要です。また無暗に情報を口外すると、職場内の関係性が悪くなったり部下からの信頼を失ったりします。
⑤完璧さを求めない
先に触れたとおり、1on1のやり方に絶対的な正解はありません。1on1がうまくいかない理由は必ずしも上司のスキル不足だけが原因ではありませんし、部下のせいでもないのです。
完璧さは求めず「うまくいかなかった」という事実だけを認識しましょう。1on1は完璧に実施するより継続的に実施するほうがより効果を発揮できます。
6.上司に求められる1on1のスキル
1on1で部下の成長を促すため、上司には下記3つのスキルが求められます。
- コーチング
- ティーチング
- フィードバック
①コーチング
問題解決に向けた行動を部下に促す質問をすること。「なぜ今回はうまくいったのか」「もっと効率を上げるためにはどのような方法があるか」など、部下の内部にある答えを引き出すために必要です。
コーチングで重要なのは、上司は答えを出さず、部下自身に考えさせること。上司の思い込みや考え方を押し付けないよう注意しなければなりません。
②ティーチング
その名のとおり知識を教える力のこと。資料の作成方法や課題の問い合わせ窓口など、部下が解決策を知らない内容について提示します。
ただし部下が自分で考えていけばわかることや調べればすぐにわかる情報などを教えすぎてしまうと、本人の成長を促せません。ティーチングは部下本人のなかに行動の選択肢がない場合に機能するスキルです。
③フィードバック
日々の業務や言動で気になった点などを、上司から部下に伝えて気付きを与えること。効果的なフィードバックは内省を深め、行動や変化につながります。
フィードバックの際は部下の人格を否定しないよう注意しましょう。部下にとって耳が痛い内容をフィードバックする際は、褒めたあとに改善点を指摘し、もう一度褒める、という順番で話す「サンドイッチ型」が効果的です。
7.1on1を導入している企業例
1on1を導入する企業は年々増えています。しかし単に面談を増やしただけでは期待する効果も得にくいのです。ここでは1on1を導入し、成功している企業の実例について説明します。
ヤフー
ヤフーは国内における1on1ミーティングが注目されるきっかけとなった企業です。同社では「週に1度30分程度の時間をかけて部下の話を聞く」というシンプルなミーティングを実施しています。
コーチング・ティーチング・フィードバックのうち、ヤフーが特に重要視したのはコーチング。その結果コミュニケーションが活発化し、従業員の9割が隔週で1回以上の1on1を実施するようになりました。
クックパッド
日本最大のレシピサイト「クックパッド」を運営しているクックパッドには、多くのエンジニアが在籍しています。同社ではチームプレイが得意ではない従業員も含め、全体のチーム力向上を課題としていました。
そこでメンバーの相互理解を深めるために1on1を導入。定期的にコミュニケーションする時間を確保し、メンバー間の信頼関係構築につなげたのです。
楽天グループ
2017年から全社的に1on1を実施している楽天グループでは、1on1を「相手の成長のみを考えて実施するプレゼント」と考えています。
同社にとって1on1は部下の価値観を深く知る機会で、人事考課に結び付ける面談ではありません。上司から部下への指導の場ではなく、質問して部下に考えさせる場として30分の1on1を毎週あるいは隔週の頻度で実施しています。
日清食品
大手食品会社の日清食品では、さらなる年商や企業規模の拡大を目標とした人材育成ツールとして1on1を活用しています。目標実現のためにはただ動くだけでなく、考えて内省する人材が必要であると考えたためです。
1on1に不慣れな管理職に対しては質問スクリプトを作成。部下にはこの取り組みにどのようなメリットがあるかをしっかりと説明しました。