1on1の効果とは?【一覧】モチベーション向上、離職防止

1on1の効果とは、上司と部下が1対1で面談を行うこと。目的は「部下のモチベーション向上」「業務効率化」などで、得られるメリットも多くあります。効果を上げるポイントはどのようなものでしょうか。企業事例も交えて解説します。

1.1on1の効果

1on1の効果は、「部下の成長促進」「上司と部下の信頼関係の構築」「部下や現場に対する理解度の向上」「部下のモチベーションアップ」「業務の効率化」「離職防止」です。

1on1の火付け役になったのはヤフーといわれています。ヤフーは2012年に1on1制度を導入。現在、7,000人ほどの従業員が在籍し、リモートワークになっても、オンラインでの1on1が継続的に行われているそうです。

そもそも1on1とは?

上司と部下で行う定期的なミーティングのこと。1on1は部下の成長をサポートするうえで欠かせないものでしょう。1on1ミーティングで使用する時間は平均15分から30分程度。短時間の面談を高頻度で繰り返すと効果を発揮します。

上司から部下へ積極的にコミュニケーションをとる「人事考課」に対し、「1on1」は部下からも気づいた点を共有する、つまり対話の場であるといえるでしょう。

1on1ミーティングとは? 目的や効果、やり方、話すことを簡単に
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2.1on1で期待できる効果

上司と部下が1対1で対話を行う1on1には、次のような効果が考えられます。人材マネジメントの観点からどのようなメリットがあるのか考えてみましょう。

  1. 部下の成長促進
  2. 上司と部下の信頼関係の構築
  3. 部下や現場に対する理解度の向上
  4. 部下のモチベーションアップ
  5. 業務の効率化
  6. 離職防止

①部下の成長促進

部下は上司と失敗を振り返ると、課題に気づけます。なぜなら「どのような過程で」「なぜ問題が起きたのか」を2人で考えるからです。

また上司が部下へ成功したことを問い、成功体験を共有すれば、お互いの絆はより深まるでしょう。1on1ミーティングは部下の成長促進に必要不可欠なのです。

②上司と部下の信頼関係の構築

上司と部下の相互理解を深めると、信頼関係を構築できます。1on1での上司と部下の対話は仕事の話に限りません。「体調はどう?」「家族は元気?」など何気ない会話もお互いの距離感を縮めるうえで重要です。

近年「優秀な部下が突然辞めてしまった」という事例は少なくありません。1on1を実施し、信頼関係を築くと、部下の退職を防止できるでしょう。

③部下や現場に対する理解度の向上

管理職が1on1を取り入れると、現場に対する理解度の向上が期待できます。部下と接する機会が多い上司であれば「問題」や「これから発生しそうなトラブル」に早く気づき対応できるでしょう。

直属の上司による情報提供は重要です。そのため直属の上司と管理職の間でも1on1の場を設けましょう。

④部下のモチベーションアップ

部下が1on1で持ち込んだ問題点を上司と共有し、「検証」そして「実践」して成功体験が得られれば、モチベーションアップにつながります。また1on1で上司に伝えた意見が取り入れられれば、部下は組織にて存在意義を感じられるでしょう。

この2つにより個人のモチベーションが向上され、より高いパフォーマンスを発揮できるのです。

⑤業務の効率化

1on1で、部下が上司と打ち解けていければ、自己啓発していることや会社がまだ把握していない部下の能力を知るきっかけになるでしょう。

また1on1をきっかけに適材適所も期待できます。従業員の能力を理解したうえで、やる気を引き出せるのです。従業員個人のモチベーション向上は、組織全体の業務の効率化につながるでしょう。

⑥離職防止

部下のエンゲージメントやモチベーションの低下を早期に察知し、離職を防止できます。1on1で生まれた悩みに対し、明確な解決策が決まらないまま放置されれば、部下のモチベーションは下がってしまうでしょう。

最悪の場合、部下の「心身不調」や「組織に対する不安」が募り、離職してしまう場合もありえます。こうした事態を防ぐためにも、上司が部下一人ひとりと1on1にて向き合う必要があるのです。

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3.1on1のデメリット

「導入したものの、思っていたほどの効果が得られない」と感じている企業も少なくありません。1on1の効果が低いと感じた理由には、次のようなデメリットがあるためです。

  1. 負担増加
  2. 効果の数値化が困難
  3. 形骸化
  4. 効果が出るまでに時間がかかる
  5. 上司のスキルに左右される
  6. 関係悪化のおそれ

①負担増加

1on1には時間や工数が必要です。多忙な管理職は、1on1の時間を作ろうとするあまり、通常業務に支障が出てしまう場合もあります。

また上司と部下の心理的負担も軽視できません。上司が「部下育成に自信がもてない」と感じている場合、1on1の実施が負担になってしまうのです。部下の場合も、1on1に対する意味を理解していないと参加の意義を感じられないでしょう。

②効果の数値化が困難

部下がどう成長したのか定量的に見えにくい点が挙げられます。たとえば「営業数字」や「コストの低減」といった数値化できるものは評価しやすいです。しかし部下の行動心理は数字にできません。

上司が1on1にて部下の成長を実感しても、直接接触していない管理部門から見ると客観的な評価が難しいのです。

③形骸化

部下が1on1の意義や活用方法を理解しないまま、ミーティングを続けていくと形骸化(けいがいか)しやすくなります。1on1を実施する前に、「目的」と「効果」を明確にしておきましょう。

適切に事前準備をすれば、上司と部下がお互いに「1on1で何を話せばいいのかわからない」状態になるのを避けられます。

④効果が出るまでに時間がかかる

時間と工数がかかるわりに、成果が出るまで時間がかかります。1on1ミーティングは部下の自主性を育てるものですが、すぐに成果につながるとは限らないのです。

目安として、少人数の職場では3カ月から1年、100人以上の職場では1年から3年程度が必要とされています。部下の育成につなげるためにも、時間はかかっても1on1を継続して続けていくとよいでしょう。

⑤上司のスキルに左右される

上司のコミュニケーションスキルに、部下の成長が左右されてしまう場合もあります。コミュニケーションスキルとは、「部下が話しやすいよう聞き出す力」「自主的に問題を解決できるよう誘導できる力」のこと。

また1on1をうまく運用するには、上司がスキルを身につけるのも必要です。1on1の研修やセミナーなどの機会を利用して、部下にも1on1に対する意義を浸透させるとよいでしょう。

⑥関係悪化のおそれ

部下の成長に向けて行っている1on1が、逆に関係を悪化させてしまう場合も考えられます。上司に悪気はなくても、プライベートを詮索しているように受けとられてしまい、気まずい雰囲気になることもあるからです。

また上司が会話の主導権を握り、一方的に話し続けてしまうと部下はどこで話せばいいかわからなくなるため、苦痛な時間になってしまいます。上司には会話のテクニックが求められるのです。

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4.1on1の効果を上げるポイント

ただ実施するだけで十分な効果は得られません。1on1の効果を最大限に引き出し、活用するためのポイントをいくつか紹介します。

  1. 話す内容をあらかじめ決めておく
  2. 部下のタイプを把握する
  3. 部下の話に耳を傾ける
  4. 話した内容をメモに取る
  5. 「ゴール」を確認する
  6. キャンセルではなくリスケをする

①話す内容をあらかじめ決めておく

話す内容の「基本フォーマット」を決め、部下と事前に共有しておけば会話がスムーズに進みます。例は下記のとおりです。

  • 最近仕事で困っていること
  • 最近仕事で成功したこと
  • サポートして欲しいこと
  • 個人的な悩みの相談

ミーティングの時間を設けたにもかかわらず、「何を話せばいいかわからない」という事態にならないよう、話す内容を決めておきましょう。

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②部下のタイプを把握する

会社には、さまざまな価値観や考え方を持った部下がいます。上司は部下をよく観察し、一人ひとりの性格を理解しましょう。部下の性格を把握すれば、次のようなことが期待できます。

  • 得意なことがわかる
  • 不得意なことがわかる
  • 健康状態を知れる
  • 悩みポイントを知れる
  • 信頼関係を築ける

③部下の話に耳を傾ける

部下とコミュニケーションを取る際相手の話にしっかりと耳を傾けましょう。それにより次のようなことが把握できます。

  • 日頃どのようなことを考えているのか
  • 日頃自分をどう思っているのか
  • どのような想いで業務に臨んでいるのか
  • 何に対し不満や不安をもっているのか

④話した内容をメモに取る

複数の部下と繰り返しミーティングを行うと、話した内容を忘れてしまう場合があります。話した内容はすぐメモしましょう。それにより次回の1on1前に復習できます。メモの例は次を参考にしましょう。

  • 部下がいま悩んでいることはなにか
  • 問題に対し、次回までにどのようなアプローチをするか
  • なにを目標に行動していくか

⑤「ゴール」を確認する

1on1を始める前に「今日の1on1が終わったあと、どういう状態になっていたいか」を部下に確認しましょう。事前に部下へ期待値を聞いておくと、ミーティングをスムーズに進められます。またゴールを確認しておくと次のような効果が期待できるでしょう。

  • 期待するゴールまでに何を話し合うべきか、全体像が把握できる
  • 1on1ミーティングの本題がそれてしまうことを防げる

⑥キャンセルではなくリスケをする

キャンセルではなくリスケすれば、部下に1on1を重要視していると伝わります。急な予定で1on1ができなくなったときは必ずリスケしましょう。ポイントは下記のとおりです。

  • 直前の連絡ではなく、1on1ミーティングが実施できなくなったタイミングで部下へ連絡する
  • メール連絡は相手が見ていない場合もあるため、電話で連絡する
  • リスケの候補日時を2つほど決め、お互いのスケジュールの擦り合わせをする

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5.1on1の効果的な進め方

より効果的な進め方として、4つのステップを紹介します。1on1を実施する際、参考にしてみてください。

STEP.1
目的の決定および共有
まず1on1の実施目的を部下に伝えます。急に「1on1を実施する」と伝えると部下は疑問に思ってしまうため、何のために行うのか目的を伝えましょう。

最終目標は部下の成長でも、「あなたが不安に思っていること、悩んでいることを知りたい」「お互いの理解を深めたい」など部下の気持ちに寄り添って伝えることがポイントです。

STEP.2
日時や場所の設定
1on1を実施すると決めたら、定期的な予定として組み込みましょう。また「予定どおりに実施できない場合、必ず日程変更する」というルールを事前に決め、周知します。

1on1を行う場所は談話室や会議室など、個室を選びましょう。自分のデスクが目に入る場所ではお互いの話に集中できません。またほかの従業員の目が気になり、部下が本音を話してくれない可能性もありえます。

STEP.3
1on1を実施
ミーティング中も手順を確認していきます。限られた時間を有意義な時間にするため、部下と何を話すのか確認しながら進めましょう。

前回の内容を振り返り、進展があったか確認するのはもちろん、部下の心身の健康状態を把握したり、アイスブレイクを入れたりします。最後に今回のミーティングを振り返り、次回の課題を明確にしましょう。

STEP.4
次回の日時と場所を決定
上司と部下の信頼関係をより強固にするため、間隔を開けずに1on1を実施しましょう。

理想は週1回、間隔を空けても3週間に1回の頻度でスケジュールを組むのがベストです。都合がつかなくなってしまったり、別の予定が入ってしまったりした場合は、必ずリスケしましょう。

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6.1on1を効果的に運用している企業例

すでに1on1を実施している企業ではどのような効果が出ているのでしょうか。1on1を効果的に運用している企業から3社を紹介します。

グリー

各従業員が半期ごとにMBO(目標による自己管理)を設定し、1on1を「目標と現状とのギャップに関して上長と共に認識する場」として利用しています。

1on1での情報をもとに、上長や同僚、部下からの評価やアドバイスを収集し、自身の働き方を見直すマルチフィードバックを実施。また1on1を行う上長にも、より効果を上げるため、会社独自の研修制度が設けられています。

グノシー

タスクの進捗管理とメンタリングの2軸で、1on1の場を目的別に分けて運用。頻度や時間は変えながら直属のマネージャーとメンバー間で実施しているのです。

1on1を行った結果、個人のキャリアといった中期的な目標や理想の状態について、より話し合えるようになったといいます。

また従業員だけではなく、アルバイトメンバーにも1on1を実施。マネジメントスキル向上を目標に、アルバイトメンバーと1on1メンターを含む従業員でミーティングが行われています。

楽天グループ

管理職は、直属の部下全員に対して毎週か隔週で30分間の1on1を実施。同社では1on1導入に先立ち、経営層に対してコーチング会社の1on1トレーニング研修を行いました。上層部が先に1on1の価値を実感した結果、全社の導入がスムーズになったといわれています。

また現在同社では、相互のフィードバックによって「学習する組織」を目指しており、1on1がその取り組みのひとつとして示されているのです。