エスノグラフィーとは民俗学、文化人類学などで使われる研究手法です。これをビジネスの分野に取り入れると思わぬ発見があります。マーケティングやマネジメント、そして人材育成にも取り入れられるエスノグラフィーの手法と、参与観察について紹介します。
エスノグラフィーとは?|エスノグラフィーの意味とその由来
エスノグラフィー(ethnography)は、ギリシア語のethnos(民族)、graphein(記述)から来た英語で、「民族誌、民族誌学」と訳されています。民族学、文化人類学などで使われている中心的な研究手法で、フィールドワークによって行動観察をし、その記録を残すことです。
たとえば外界から閉ざされた場所で暮らす民族を調査するために、その民族を長期にわたって観察し、話を聞いて、彼らの文化や行動様式を詳細に記録していきます。
この手法は、心理学や教育学、医療分野やビジネスの分野でも取り入れられており、ビジネスの分野では、マーケティングやマネジメント、人材育成などでも新たなニーズや問題を発見するために有効な方法として注目を集めています。
エスノグラフィーの手法とその意義とは?
マーケティング分野でのエスノグラフィーの効果を見てみましょう。消費者のニーズを探るために沢山の消費者に対して行うアンケートにおいて、調査する側があらかじめ用意したアンケート項目では、最初から調査する側の視点が入ってしまっているため、新たなニーズ、ニッチなニーズを探るのは難しい面がありました。
しかし、エスノグラフィーを取り入れると、特定の消費者の生活様式を理解し、行動観察してその場で疑問に思った行動についてインタビューして理解することで、観察者の先入観が入る余地がなく、観察者が思いつきもしなかったニーズを掘り出すことが可能です。アンケートの調査が量的なデータであるとすると、エスノグラフィーで得られるデータは質的なデータといえます。
人事の分野でも、エスノグラフィーは業務改善や人材育成において効果を発揮します。業務改善でエスノグラフィーを取り入れる場合、対象者の行動観察をし、その最中に「なぜそうしているのか?」を聞くことで、本音での回答が得られて潜在的な問題が浮かび上がります。
エスノグラフィーでは行動観察をする人のことをエスノグラファーと呼んでおり、アメリカのIT企業などではエスノグラファーを使った調査を積極的に行っています。
エスノグラフィーにおける参与観察とは
エスノグラフィーでも、観察者自身が観察対象者の生活や業務に参加し、行動を共にしながら調査することを参与観察といいます。民俗学や文化人類学では、長い期間をある民族に密着して観察する場合、この参与観察が求められてきます。
人事部門において、業務改善やプロジェクトマネジャーの人材育成などでエスノグラフィーを取り入れる場合、その職場やプロジェクトに参加して、自身もその一員となって行動することで、より具体的な問題の把握や改善点を見つけることができます。
問題把握がなかなか進まない、あるいは改善点がありきたりになっていると考えられる状況では、エスノグラフィーや参与観察を取り入れてみることをおすすめします。