キャリア形成促進助成金は、労働者の効果的なキャリア形成促進を目的とした助成金です。キャリア形成促進助成金とは一体どんなものか、概要について解説します。
目次
1.キャリア形成促進助成金とは?
キャリア形成促進助成金とは、職務に関連した専門知識や技能を労働者に習得させる人材育成制度を導入した企業に支給される助成金のことで、労働者の効果的なキャリア形成促進を目的としています。
助成対象は、訓練経費や・訓練中に支払われた賃金の一部などで、「労働者のキャリア形成」「企業の人材育成」を共にサポートしてくれるのです。
2.キャリア形成促進助成金の目的
キャリア形成促進助成金の目的には、「労働者のキャリアを促進する」「労働者のキャリア促進により、企業全体の人材育成を推し進める」の2つがあります。これにより、国際競争が激化する経済社会で戦っていける企業づくりを手伝っているのです。
3.キャリアアップ助成金との違い
キャリア形成促進助成金と類似する助成金に、キャリアアップ助成金があります。キャリアアップ助成金とは、非正規雇用労働者のキャリアアップに関する取り組みを行った企業に対して支給される助成金のことです。
4.キャリア形成促進助成金の対象となる訓練
キャリア形成促進助成金の対象となる訓練には、4つのコースがあります。
- 雇用型訓練コース
- 重点訓練コース
- 一般型訓練コース
- 制度導入コース
①雇用型訓練コース
キャリア形成促進助成金の対象となる訓練の1つ目は、雇用型訓練コースです。
特定分野認定実習併用職業訓練
特定分野認定実習併用職業訓練とは、企業や事業主団体などを対象とした、建設業や製造業、情報通信業が実施する厚生労働大臣の認定を受けたOJT付きの訓練のこと。助成額は、下記の通りです。
- OFF-JT賃金助成として1人1時間当たり800円(中小企業以外は400円)
- OFF-JT経費助成として2/3(中小企業以外は1/2)
- OJT実施助成として1人1時間当たり700円(中小企業以外は400円)
認定実習併用職業訓練
認定実習併用職業訓練とは、企業を対象として、厚生労働大臣の認定を受けたOJT付き訓練のこと。助成額は、下記の通りです。
- OFF-JT賃金助成として1人1時間当たり800円(中小企業以外は400円)
- OFF-JT経費助成として1/2(中小企業以外は1/3)
- OJT実施助成として1人1時間当たり700円(中小企業以外は400円)
OFF-JT経費助成の割合は、特定分野認定実習併用職業訓練と異なります。
中高年齢者雇用型訓練
中高年齢者雇用型訓練とは、直近2年間の中で継続して採用した正規雇用の経験がない中高年齢者に対して実施するOJT付き訓練のこと。助成額は、下記の通りです。
- OFF-JT賃金助成として1人1時間当たり800円(中小企業以外は400円)
- OFF-JT経費助成として1/2(中小企業以外は1/3)
- OJT実施助成として1人1時間当たり700円(中小企業以外は400円)
②重点訓練コース
キャリア形成促進助成金の対象となる訓練の2つ目は、重点訓練コースです。
若年人材育成訓練
若年人材育成訓練とは、「採用して5年以内」「35歳未満」の若年労働者に対する訓練のこと。助成額は、下記の通りです。
- OFF-JT賃金助成として1人1時間当たり800円(中小企業以外は400円)
- 若者雇用促進法に基づく認定事業主または定の要件を満たすセルフ・キャリアドック制度導入企業については、助成率が1/2 のものは 2/3 へ、1/3 のものは 1/2 へそれぞれ引き上げ
熟練技能育成・承継訓練
熟練技能育成・承継訓練とは、「熟練技能者の指導力強化」「熟練技能者のための訓練」「認定職業訓練」のこと。助成額は、下記の通りです。
- OFF-JT賃金助成として1人1時間当たり800円(中小企業以外は400円)
- OFF-JT経費助成として1/2(中小企業以外は1/3)
若年人材育成訓練と同様、助成金額が中小企業と中小企業以外とで異なる点に注意してください。
成長分野等・グローバル人材育成訓練
成長分野等・グローバル人材育成訓練とは、成長分野や海外関連業務に従事するための人材を育成する訓練のこと。助成額は、下記の通りです。
- OFF-JT経費助成として1/2(中小企業以外は1/3)
成長分野等・グローバル人材育成訓練に対しては、経費助成のみで賃金助成はありません。
中長期的キャリア形成訓練
中長期的キャリア形成訓練とは、厚生労働大臣が専門実践教育訓練として指定している講座のこと。助成額は、下記の通りです。
- OFF-JT賃金助成として1人1時間当たり800円(中小企業以外は400円)
- OFF-JT経費助成として1/2(中小企業以外は1/3)
育休中・復職後等人材育成訓練
育休中・復職後等人材育成訓練とは、「育児休業中」「育児休業復帰後」「再就職後の能力向上」のため実施する訓練のこと。助成額は、下記の通りです。
- OFF-JT経費助成として2/3(中小企業以外は1/2)
なお、育児休業中の訓練である育休中・ 復職後等人材育成訓練に対しては経費助成のみ行い、賃金助成はありません。
③一般型訓練コース
キャリア形成促進助成金の対象となる訓練の3つ目は、一般型訓練コースです。
一般企業型訓練
一般企業型訓練とは、雇用型訓練や重点訓練以外の訓練のこと。助成額は、下記の通りです。
- OFF-JT賃金助成として1人1時間当たり400円
- OFF-JT経費助成として1/3
なお、一般企業型訓練を実施する場合は、セルフ・キャリアドックの実施が必要となります。受給資格要件をしっかり確認した上で、適切に申請を行いましょう。
一般団体型訓練
一般団体型訓練とは、事業主団体等が行う訓練のこと。助成額は、下記の通りです。
- OFF-JT経費助成として1/2(ただし、育児休業中等に係る訓練の場合には2/3)
通常の助成額と育児休業中等に係る訓練での助成額が異なる点に注意してください。また、一般企業型訓練と一般団体型訓練の助成額も異なります。助成額の算出方法を改めて確認し、正しく算出した助成金額を申請しましょう。
④制度導入コース
キャリア形成促進助成金の対象となる訓練の4つ目は、制度導入コースです。
教育訓練・職業能力評価制度
教育訓練・職業能力評価制度は、中小企業を対象としたもので、ジョブカードを活用して、教育訓練や職業能力評価を実施する制度のこと。助成額は、下記の通りです。
- 事業主団体助成以外では、制度導入助成として50万円(中小企業以外では25万円)
- 事業主団体助成制度では、制度導入助成として2/3
制度導入コースでは、導入・適用計画届提出時における企業全体の雇用する被保険者に応じて、最低適用人数が1~5人と変わります。
セルフ・キャリアドック制度
セルフ・キャリアドック制度とは、労働者に対して「定期的にジョブカードを使用したセルフ・キャリアドック制度を導入する」「セルフ・キャリアドック制度を適用済み」といった2つの要件を満たした場合に助成金が支給される制度のこと。
助成額は、下記の通りです。
- 事業主団体助成以外では、制度導入助成として50万円(中小企業以外では25万円)
- 事業主団体助成制度では、制度導入助成として2/3
また、制度導入コースでは、導入・適用計画届提出時における企業全体の雇用する被保険者に応じて、最低適用人数が1~5人と変わります。
技能検定合格報奨金制度
技能検定合格報奨金制度とは、技能検定に合格した労働者に対し、「報奨金の支給制度を導入」「報奨金の支給制度を実施」といった2つの要件を満たした場合に助成される制度のこと。助成額は、下記の通りです。
- 事業主団体助成以外では、制度導入助成として50万円(中小企業以外では25万円)
- 事業主団体助成制度では、制度導入助成として2/3
また、制度導入コースでは、導入・適用計画届提出時における企業全体の雇用する被保険者に応じて、最低適用人数が1~5人と変わります。
教育訓練休暇等制度
教育訓練休暇等制度とは、「教育訓練休暇制度」「教育訓練短時間勤務制度」どちらかを導入して、実際に適用した場合に助成される制度のこと。助成額は、下記の通りです。
- 事業主団体助成以外では、制度導入助成として50万円(中小企業以外では25万円)
- 事業主団体助成制度では、制度導入助成として2/3
また、制度導入コースでは、導入・適用計画届提出時における企業全体の雇用する被保険者に応じて、最低適用人数が1~5人と変わります。
社内検定制度
社内検定制度とは、「社内検定制度を導入する」「社内検定制度を実施」といった2つの要件を満たした場合に助成される制度のこと。制度導入コースの助成は、下記の通りです。
- 事業主団体助成以外では、制度導入助成として50万円(中小企業以外では25万円)
- 事業主団体助成制度では、制度導入助成として2/3
また、制度導入コースでは、導入・適用計画届提出時における企業全体の雇用する被保険者に応じて、最低適用人数が1~5人と変わります。
事業主団体助成制度
事業主団体助成制度とは、労働者に対して、「教育訓練または職業能力評価を実施する構成事業主に対する支援」「業界検定や職業訓練プログラムの開発を実施」した場合に事業主に対し助成される制度のこと。助成額は、下記の通りです。
- 事業主団体助成以外では、制度導入助成として50万円(中小企業以外では25万円)
- 事業主団体助成制度では、制度導入助成として2/3
また、制度導入コースでは、導入・適用計画届提出時における企業全体の雇用する被保険者に応じて、最低適用人数が1~5人と変わります。
5.キャリア形成促進助成金のメリット
キャリア形成促進助成金のメリットは、2つあります。一体どういうものか、メリットを解説します。
従業員の能力向上
従業員に対する人材育成制度を新たに導入するるため、「従業員の能力や技術の向上」「企業の生産性向上」などが実現できます。
特定人材の教育
キャリア形成促進助成金によって、若年層や復職を目指す人といった、特定の人材に対して重点的な教育が実施できるようになります。
6.キャリア形成促進助成金を受給する流れ、ステップ
キャリア形成促進助成金を受給する流れについて、4つのコースごとに簡単に解説します。申請に関するステップを確認してください。
雇用型訓練コース(特定分野認定実習併用職業訓練、認定実習併用職業訓練)の場合
雇用型訓練コースの、「特定分野認定実習併用職業訓練」「認定実習併用職業訓練」の申請手順は以下の通りです。
計画の作成と提出
最初に、「特定分野認定実習併用職業訓練」「認定実習併用職業訓練」についての計画作成と提出を行います。「訓練においてOJTとOff-JTをどのように組み合わせるか」「6カ月以上2年以下でどのように行うか」など具体的に計画を立てるのです。
訓練を実施する
次に、計画にもとづいて訓練を実施します。「特定分野認定実習併用職業訓練」「認定実習併用職業訓練」といった訓練計画に沿って、OJT・Off-JTを実施し、計画の実施終了後には、訓練結果についての評価を行います。
申請書を提出
訓練終了後、2カ月以内に支給申請書など必要書類を各都道府県労働局まで提出します。審査に通ると、助成金が支給されます。
雇用型訓練コース(中高年齢者雇用型訓練)の場合
雇用型訓練コースの中の中高年齢者雇用型訓練の申請手順は以下の通りです。
計画の作成と提出
最初に、中高年齢者雇用型訓練についての計画の作成と提出を行います。「訓練においてOJTとOff-JTをどのように組み合わせるか」「3カ月以上6カ月以下でどのように行うか」といった具体的な計画を立てます。
訓練を実施する
次に、計画にもとづいて訓練を実施します。中高年齢者雇用型訓練の訓練計画に沿って、OJT・Off-JTを実施し、その後は、当該訓練の結果についての厳正な評価を行います。
申請書を提出
訓練を実施した後、2カ月以内に支給申請書などを各都道府県労働局に提出します。審査に通ると、助成金が支給されます。
重点訓練コースと一般企業型訓練の場合
重点訓練コースと一般企業型訓練の場合の申請手順は以下の通りです。
計画の作成と提出
最初に、計画の作成と提出を行います。「重点訓練コース」「一般企業型訓練」の場合、「事業内職業能力開発計画の作成」「職業能力開発者の決定」「20時間以上のOff-JTの訓練計画の作成」といった手順を踏みます。
訓練を実施する
次に、「重点訓練コース」「一般企業型訓練」それぞれで訓練を実施します。助成金申請に向けて、社内訓練や外部訓練を問わず、計画に基づいた訓練を着実に実施していきます。
申請書を提出
訓練実施後、2カ月以内に支給申請書などを各都道府県労働局に提出します。審査に通ると、助成金が支給されます。
一般団体型訓練の場合
一般団体型訓練の場合の申請手順は以下の通りです。
計画の作成と提出
最初に計画の作成と提出を行います。一般団体型訓練の場合、20時間以上のOff-JTに関する訓練計画を作成し、提出する必要があります。現場に活かせる綿密なOff-JT計画を練ってください。
訓練を実施する
次に、作成、提出してある20時間以上のOff-JTに関する訓練計画を実施します。「復職希望者や若年者といった特定の人を対象とする」「もしくは技能承継などを対象とする」という訓練を実施します。
申請書を提出
訓練実施後、2カ月以内に支給申請書などを各都道府県労働局に提出します。審査に通ると、助成金が支給されます。
制度導入コースの場合
制度導入コースの場合の申請手順は以下の通りです。
教育訓練の場合
制度導入コースの中の教育訓練の場合について解説します。
規定や計画書の作成
最初に、下記の規定を定め、計画書を作成します。規定や計画書は、各都道府県労働局へ提出します。
- 就業規則や労働協約に教育訓練制度を規定する
- 職業能力体系図を作成する
- 教育訓練実施計画書を作成する
制度の実施
次に、作成した規定や計画書に基づき制度を社内に取り入れ、その上で、教育訓練実施計画書をもとに実際に教育訓練を実施します。作成済みの規定や計画をもとに着実な制度実施を試みることが必要です。
支給申請
最後に、制度適用日から6カ月以降の2カ月以内に支給申請を行います。
職業能力評価制度の場合
職業能力評価制度の場合について解説します。
規定や計画書の作成
最初に、規定や計画書の作成を行います。「就業規則や労働協約に職業能力評価制度を規定」「職業能力体系図の作成」「評価項目の作成」「教育訓練実施計画書の作成」を実施後、規定や計画書を各都道府県労働局へ提出します。
制度の実施
次に、職業能力評価制度や職業能力体系図、評価項目などを従業員に伝え、評価を実施します。従業員に対しては丁寧な説明を行い、新しい制度を正しく理解してもらうよう努めることが重要です。
支給申請
最後に、制度適用日から6カ月以降の2カ月以内に支給申請書を各都道府県労働局へ提出します。
セルフ・キャリアドック制度の場合
セルフ・キャリアドック制度の場合について解説します。
規定や計画書の作成
最初に、規定や計画書の作成を行います。下記実施後、規定や適用計画届を各都道府県労働局へ提出します。
- 就業規則や労働協約にセルフ・キャリアドック制度を規定する
- セルフ・キャリアドック制度実施計画書を作成する
制度の実施
次に、制度を実施します。その際、「セルフ・キャリアドック制度を従業員に周知」「キャリアコンサルティングの実施」なども必要になるので、従業員をフォローしながら進めましょう。
支給申請
最後に、制度適用日から6カ月以降の2カ月以内に支給申請書を、各都道府県労働局へ提出します。
技能検定合格報奨金制度の場合
技能検定合格報奨金制度の場合について解説します。
規定や計画書の作成
最初に、規定や計画書の作成を行います。下記実施後、できた規定や適用計画届を各都道府県労働局へ提出します。
- 就業規則や労働協約に技能検定合格報奨金制度を規定する
- 適用計画届を作成する
制度の実施
次に、制度を実施します。「適用計画届をもとに技能検定を実施」「実施した技能検定の合格者に対して報奨金を支給する」といった具合に、実際に報奨金を支給するまで、計画した制度を具体的に実施していくのです。
支給申請
最後に、制度適用日から6カ月以降の2カ月以内に、支給申請書を各都道府県労働局へ提出します。
教育訓練休暇等制度の場合
教育訓練休暇等制度の場合は以下の通りです。
規定や計画書の作成
最初に、規定や計画書の作成を行います。下記実施後、規定や適用計画届を各都道府県労働局へ提出します。
- 就業規則や労働協約に教育訓練休暇等制度を規定
- 適用計画届の作成
制度の実施
次に、制度を実施します。適用計画に基づき、「教育訓練休暇等制度を従業員に周知」「計画書をもとに教育訓練休暇等の取得を実施」といったように、計画に基づいて制度を実施していきます。
支給申請
最後に、制度適用日から6カ月以降の2カ月以内に、支給申請書を各都道府県労働局へ提出しす。
社内検定制度の場合
社内検定制度の場合は以下の通りです。
規定や計画書の作成
最初に、規定や計画書の作成を行います。下記実施後、規定や適用計画届を各都道府県労働局へ提出します。
- 就業規則や労働協約に社内検定制度を規定する
- 資料や計画書を作成する
- 適用計画届を作成する
制度の実施
次に、制度の実施です。適用計画届に記載してある制度を実施する際、「規定した就業規則などを従業員に周知させる」「周知の後、社内検定を実施」といった手順を踏みます。従業員への周知は徹底するよう努めましょう。
支給申請
最後に、制度適用日から6カ月以降の2カ月以内に、支給申請書を各都道府県労働局へ提出します。