人事管理システムとは、人事管理を効率化するためのシステムの総称です。人事管理システムの機能や比較するときのポイント、人事管理システム10選について解説します。
1.人事管理の必要性
人材の確保と育成、適切な人材配置などを行う人事管理は、経営資源である「人材」の能力を最大限に発揮させるために必須です。人材の能力が発揮されれば、業務効率化やパフォーマンス向上、ひいては業績の向上も見込めます。
2.人事管理システムの導入で得られるメリット
人事管理システムを導入すると、どのようなメリットが得られるのでしょう。それぞれについて解説します。
- 客観的な評価ができる
- 情報を一元管理できる
- 人事業務を効率化できる
- 的確に人材を育成できる
①客観的な評価ができる
企業が独自で作成した人事システムの場合、評価基準に経営層や評価者の意図が影響し、客観性や公平性が保てなくなることも珍しくありません。
外部が作成した人事システムは独自的な調査やノウハウなどが盛り込まれており、評価基準の偏りやブレを防げるのです。
②情報を一元管理できる
部署や支社などが別拠点でも、リアルタイムにデータを収集できます。パソコンやタブレット、スマホなどからアクセスできるシステムも多く、会社内だけでなく外出先でもかんたんにデータを確認できるのです。
またメールやチャットなどでデータの受け渡しをする手間がなくなるので、業務の時間短縮や効率化につながります。
③人事業務を効率化できる
これまで雇用や社会保険、承認や評価などでは、エクセルのデータや紙の書類を使う場合が多く、やりとりはメールや郵送などが一般的でした。そのため回収や配布、更新変更などに多くの工数と時間がかかっていたのです。
人事管理システムでは、これらの業務をシステム上で行えます。一部の業務は自動化も可能です。
④的確に人材を育成できる
多くの人事管理システムには、データベースや分析の機能が搭載されているため、従業員のスキルや能力などのデータをさまざまな角度から分析できるのです。
経営戦略に適した人材の検索や育成、配置などもスムーズに進むでしょう。また人事管理システムで従業員のモチベーションやエンゲージメントなどを管理すると、育成だけでなく離職防止にも役立ちます。
3.人事管理システムの比較のポイント
人事管理システムを導入する前に、複数のシステムを比較しておきましょう。ここでは比較するときのポイントについて解説します。
- 導入の目的を明確にする
- 提供形態が自社に適切なものか
- ほかのツールと連携できるか
- 使いやすいか
- サポート体制が整っているか
①導入の目的を明確にする
「どのような業務を効率化させたいのか」「どのような問題を解決したいか」など、導入目的を明確にしましょう。
人事管理システムによって搭載されている機能は異なるため、目的を明確に定めていないと「それを達成するため必要な機能が何か」決められないのです。
また自社が必要としている機能を搭載していなければ、誰も使おうとしません。導入コストを無駄にしないよう、人事部における課題の洗い出しから始めましょう。
②提供形態が自社に適切なものか
「人事システムの提供形態が自社に適しているか」についても検討しましょう。人事システムの提供形態は、クラウド型やパッケージ型、オンプレミス型など数種類にわかれ、それぞれ導入にかかる期間やコストが異なるからです。
提供形態によっては、導入後に自社での保守作業も必要になります。運用のしやすさとコストを考慮したうえで、自社に適した提供形態を選びましょう。
③ほかツールと連携できるか
「ほかツールとの連携可能か」という点も調べておく必要があります。多くの企業では、すでに何らかのツールやシステムを導入している場合が多いからです。
既存システムと連携できれば、それらが管理するデータの取り込みや、旧システムから新システムへの移行などにかかる工程を減らせます。
④使いやすいか
「操作性や操作画面が見やすいかどうか」という点も見逃せません。人事管理では大量のデータを取り扱い、さまざまな情報を同時に表示させる場合も多いです。データの検索や抽出などが容易か、分析結果の視認性が高いかなどで、作業効率は変わるでしょう。
また人事システムを使うのは、人事担当のベテランだけではありません。情報の入出力に関しては、新人や一般従業員が携わる場合もあるでしょう。理想は誰もが迷わずに操作できるシステムです。
⑤サポート体制が整っているか
「サポート体制は十分であるかどうか」という点も大切です。
独自の雇用制度や報酬制度、人事評価制度などを運用している場合、人事管理システムの導入時、自社制度に関する項目をあらかじめ設定しておかなければなりません。また給与に関する業務では、税法改正や年末調整など複雑や問題が随時発生します。
システムの導入前や運用中には、さまざまなサポートが必要になる場合も考えられるため、比較の時点でサポート期間や時間帯、連絡方法やサポート料金などを確認しておきましょう。
4.人事管理システムの比較で検討したい機能
人事管理システムを導入する目的にもよりますが、導入前に比較検討しておきたい機能は5つです。ここではそれぞれについて解説します。
- 人事管理
- 労務管理
- 採用管理
- 給与管理
- 人事評価管理
①人事管理
従業員の勤怠情報を管理する機能です。
労働基準法では従業員の適切な労働勤務時間を定めているため、企業は労働時間を適切に管理しなければなりません。たとえば出退勤時刻や労働時間数、有給休暇の取得率などです。
人事管理機能では、これらデータを取得するだけでなく、個別あるいは部やチーム単位での分析も可能。企業は適切な労働管理が進められるでしょう。
②労務管理
労働基準法や企業規則に即して労働状況や労働環境を管理する機能です。たとえば健康保険や厚生年金などの社会保険、雇用保険や労災保険、労働条件の変更や雇用契約、従業員名簿などの管理です。
人事管理システムで労務管理が行えると、これらの書類作成業務が効率化します。場合によっては、システム上から行政へ届け出るのも可能です。
③採用管理
人材の採用活動をサポートする機能です。採用業務では求人広告の作成や応募者情報の管理、面接のスケジュール調整や応募者への連絡などを行います。また定期的に採用担当者の評価や、採用率や辞退率などの分析といった業務も生じるでしょう。
採用管理機能を活用すると、これらの関連情報を一元管理できます。
④給与管理
従業員全員の給与を正しく計算し、期日に漏れなく支払う機能です。給与計算は複雑で手間がかかるうえ、わずかな計算ミスも許されません。給与の未払いや過不足は従業員のモチベーションや信頼を損なう恐れがあるからです。
給与管理機能では各従業員の情報をもとに、控除や手当などを反映して給与を自動計算します。またシステムによっては、給与明細の発行や会計での仕訳まで行える場合もあるのです。
⑤人事評価管理
各従業員の能力や資格、目標や成果などの情報をもとに、従業員の評価を管理する機能です。
人事評価は業績評価や能力評価などにわかれているうえ、役職や職種などでも評価基準が変わります。そのため評価者は膨大な関連情報を考察しなければなりません。また被評価者だけでなく、評価者に対する評価も必要です。
人事評価管理機能では評価基準や報酬、過去の評価や現在の目標と進捗、ミーティングや研修などの管理が容易になります。
5.人事管理システムの比較10選
人事管理システムは多数提供されています。目的や必要な機能などを明確にしても、絞り込むのはかんたんではありません。ここではおすすめしたい管理システム10選と、それぞれの機能や特徴、料金などを解説します。
- カオナビ
- ベネワン・プラットフォーム
- 人事労務freee
- HRMOS CORE
- sai*reco
- HRBrain
- SmartHR
- あしたのクラウド
- jinjer人事
- タレントパレット
①カオナビ
カオナビは、タレントマネジメント向けの機能が豊富な人事管理システムです。
- 特徴:能力やスキルなどの従業員の情報にくわえ、顔写真やプロフィールなどを管理できる
- 機能:人材データベースや評価ワークフロー、従業員アンケートや人材配置シミュレーション、グラフによる分析など
- 料金:利用するプランとユーザー数によって料金が変動するため、問い合わせが必要
②ベネワン・プラットフォーム
ベネワン・プラットフォームは、人事データの「収集」「閲覧」「分析」をひとつのプラットフォームへ集約するためのシステムです。
- 特徴:評価や勤怠、能力などの管理だけでなく、健康管理に役立つ機能も搭載されている
- 機能:業績評価や労働時間、スキルやモチベーションなどの管理および分析、異動シミュレーション、ストレスチェックや健康診断結果の管理など
- 料金:問い合わせが必要
③人事労務freee
人事労務freeeは、労務管理をサポートする機能が充実しているシステムです。
- 特徴:勤怠管理から給与明細発行までの業務をペーパーレスで実現できる。
- 機能:各種保険手続きや入退社管理、給与計算や年末調整、マイナンバー管理など
- 料金:基本料金+従業員料金
- ベーシック 基本料金3,980円/年、従業員料金、従業員ひとり500円/月
- プロフェッショナル 基本料金8,080円/年、従業員料金、従業員ひとり700円/月
- エンタープライズ 年払いのみ、問い合わせが必要
④HRMOS CORE
HRMOSCOREは、タレントマネジメントに関する業務を効率化できるシステムです。
- 特徴:顔写真表示やグラフなどを用いており、瞬時に情報の把握がしやすい。紙やExcelなどからの情報も集約できる
- 機能:データベースや分析レポート、目標や評価シートの管理、1on1管理や組織診断サーベイ、ワークフローなど
- 料金:見積もりが必要
⑤sai*reco
sai*recoは、従業員情報から人事評価や給与明細管理など、人事業務全体を効率化できるシステムです。
- 特徴:定型業務を電子化や自動化する機能が多数搭載されている
- 機能:子会社やグループを含めた会社組織全体の管理や管理項目のカスタマイズ、評価目標やスケジュールの設定、申請承認管理や給与帳票の作成など
- 料金:システム導入費40万円+システム利用費1万8,000円から/月
⑥HRBrain
HRBrainは総合的なサービス。たとえば人事評価に特化した「HRBrain人事評価」や、タレントマネジメントに特化した「HRBrainタレントマネジメント」などが挙げられます。
- 特徴:サービスが評価やタレントマネジメント、労務などにわかれているため、自社が効率化したい業務に合わせて導入できる
- 機能:HRBrain人事評価では目標管理や評価管理、評価シート作成など。HRBrainタレントマネジメントでは人事評価や配置シミュレーション、人材データ分析など
- 料金:見積もりが必要
⑦SmartHR
SmartHRは、人事労務業務のサポート機能が豊富なシステムです。
- 特徴:各種申し込み手続きに関するデータを従業員が直接入力できる。データの変更や更新が発生した際にも、手続きを行うだけで自動的に情報が更新される
- 機能:入退社手続きや年末調整、各種労務手続きや電子申請、オンライン雇用契約やWeb給与明細、人事評価や人事情報の集計と分析など
- 料金:利用人数30名までは無料(機能は限定される)、それ以外は見積もりが必要
⑧あしたのクラウド
あしたのクラウドは、ベンチャー企業や中小企業などから圧倒的な支持を得ている人事評価システムです。
- 特徴:既存の評価システムをそのまま再現できるため、移行がスムーズ。人事評価制度の構築からサポートする
- 機能:AIによる目標添削機能や評価者モニタリング機能、目標と評価の管理や給与の査定と確定、売上管理など
- 料金:見積もりが必要
⑨jinjer人事
jinjer人事は、あらゆる人事管理のデータをリアルタイムで可視化できるシステムです。
- 特徴:社内文書をペーパーレス化できる。ほかjinjerシリーズと連携すればバックオフィス業務全体を効率化しやすい
- 機能:従業員管理や入社処理、人事異動シミュレーションやリアルタイム分析など
- 料金:問い合わせが必要
⑩タレントパレット
タレントパレットは、人材管理にくわえて評価や配置、採用や研修、健康管理といった人事業務全般を効率化するタレントマネジメントシステムです。
- 特徴:マーケティング思考が取り入れられているため、データにもとづいた科学的かつ多角的な分析が行える
- 機能:データベースやプロジェクトチームメンバーの選抜、評価シート設計や異動シミュレーション、適性検査(TPI)やAIによる各種分析 など
- 料金:初期費用+月額費用、問い合わせが必要