キャピタルゲインとは、保有している資産を売却することで得られる売買差益のこと。ここではキャピタルゲインのメリットとデメリット、対象となる物や税率について解説します。
目次
1.キャピタルゲインとは?
キャピタルゲインとは、保有していた資産を売却することによって得られるリターン(利益)のこと。たとえば株価30万円で購入した株式があったとしましょう。この株式が40万になったタイミングに売却すると、差額10万円が生まれます(手数料や税金を除く)。この差額がキャピタルゲインです。
なおキャピタルゲインと似た言葉の「インカムゲイン」は、資産の保有によって得られる利益のこと。インカムゲインに比べてキャピタルゲインのほうが利益は大きくなる可能性が高いといわれています。
2.キャピタルゲインのメリットとデメリット
キャピタルゲインは投資における重要な概念のひとつです。ここではキャピタルゲインのメリットとデメリットについて説明します。
キャピタルゲインのメリット
キャピタルゲインのメリットは大きく分けて以下の2つです。どちらもインカムゲインにはない、キャピタルゲインならではのメリットです。
- 大きな利益を得られる
- 短期間で利益を得られる
①大きな利益を得られる
一般的にキャピタルゲインを狙った資産運用は「ハイリスクハイリターン」だとされています。株価が安いタイミングで取得し、高くなったタイミングで売却すれば、大きなキャピタルゲインを得られるからです。不動産や絵画などの資産も同様でしょう。
価格変動をひんぱんに確認できる人や、ある程度リスクを負ってでもハイリターンを狙いたい人に適しています。
②短期間で利益を得られる
株価は常に変動しています。極端な話、購入した翌日に大きく値を上げる可能性もあるのです。このタイミングで売却してしまえば、わずか1日でキャピタルゲインを得られるでしょう。
このような成長株を見つけ、こまめに株価変動をチェックできれば、短期間で資産を大きく増やせます。利益の幅もわかりやすいため、資産形成の計画も立てやすくなるのです。
キャピタルゲインのデメリット
キャピタルゲインには短期間で大きな利益を得られるというメリットがある一方で、いくつかのデメリットも存在します。
- 売却時まで金額が確定しない
- 損失額が大きくなる
- 安定的な利益確保が難しい
- 投資知識と判断が求められる
①売却時まで金額が確定しない
キャピタルゲインは投資した資産を売却して得られます。よって売却時までキャピタルゲインは確定しません。もしも売却前に含み益があっても、売却時に投資資産の価格が急落していればキャピタルロスになる可能性があるのです。
また銘柄すべての売却を予定していたものの、売却中に市場価値が変動して損失が出るケースも考えられます。さらに不動産の場合、将来的に価値が上がる可能性を見込んで数年間保有していても、維持管理費や固定資産税によって赤字になる可能性が高いです。
②損失額が大きくなる
キャピタルゲインは利益が大きくなる可能性を持つと同時に、保有期間中の価格下落によって損失額が大きくなる可能性もあります。
特に株式投資では投資先企業の業績だけでなく、自然災害や経済変動の影響を受けます。事実、リーマンショックの後には株価が一気に下がり、資産価値が大きく目減りしました。
損失を最小限に抑えるためには、価値が下がった状態で資産を売却し、それ以上損失を増やさない「損切り」の対応が重要です。
③安定的な利益確保が難しい
短期的に大きな利益を狙えることがキャピタルゲインのメリットですが「想像していたほど利益が伸びない」「予定していた期間内に値上がりしない」など、予想していたとおりの結果が得られないこともめずらしくありません。
特に値動きの激しい暗号資産(仮想通貨)ではその傾向が顕著です。安定した利益を確保したい場合、キャピタルゲインよりもインカムゲインのほうが適しています。
④投資知識と判断が求められる
キャピタルゲインでは利益が大きくなるタイミングを見極めるため、また損失を最小限に抑えるための投資知識と判断力が必要です。
知識量が増えれば増えるほど安定的な利益の確保につながります。基本的な知識のほか、税金に関する知識も身につけておくと安心でしょう。
3.キャピタルゲインの対象物と税率
キャピタルゲインによって利益を得るためにも、対象と税率を正しく理解しておきましょう。
キャピタルゲインの対象物
キャピタルゲインの対象は4つです。
- 不動産投資:不動産を売却して得た利益。一度に動かす金額が大きいため利益額も大きくなるが、同時にリスクも大きい
- 株式投資:株式の売却によって得られる収益。企業の動向や株価の分析が必要
- 投資信託:分配金はインカムゲインだが、投資信託の売買によって収益が生じるとキャピタルゲインになる
- 預金:為替相場にて差益の生じる外貨預金がキャピタルゲインに分類される。預金による利息はインカムゲイン
キャピタルゲインの対象物ごとの税率
キャピタルゲインにも税金がかかります。投資商品によって異なり、なかには最大55%の税金がかかるものもあるのです。
- 株式・投資信託・FX
- 不動産投資
- 仮想通貨
- 金・プラチナ
①株式・投資信託・FX
株式や投資信託、FXにかかる税率は一律20.315%。内訳は所得税が15.315%、住民税が5%です。これら税率は、特定口座源泉徴収があれば自動的に源泉徴収されます。
ただしストックオプションによって得たキャピタルゲインは、総合課税の対象となる場合もあるため確認が必要です。あくまでも売却して実現した利益に対して課税されるため、含み益には課税されません。
②不動産投資
不動産投資のキャピタルゲインは、不動産の所有期間によって税率が異なります。不動産を所有して6回目の正月を迎えると長期譲渡所得、迎えるまでは短期譲渡所得として分類されるのです。
長期譲渡所得の税率は20.315%(所得税15.315%、住民税5%)ですが、短期譲渡所得の税率は39.63%(所得税30.63%、住民税9%)と大きく上がるため注意が必要です。
「キャピタルゲインを得るために短期で不動産売買すると税金があがる」点を必ず理解しておきましょう。
③仮想通貨
仮想通貨の取引で得た売買損益は「雑所得」に分類されます(2022現在)。
雑所得は「総収入金額-必要経費」で算出するため、売却価値と取得価値の差額が雑所得の金額になるのです。仮想通貨は株式の申告分離課税とは違う「総合課税」となり、税率は所得によって異なります。
たとえば所得課税が5%の場合、住民税とあわせておよそ15%になり、所得税+住民税=20.315%の申告分離課税より得になるのです。
ただし所得税率が10%を超えると申告分離課税のほうが得になります。仮想通貨は給与所得と合算されるため、最高55%にまで達するのです。
④金・プラチナ
金やプラチナを売却して得た利益も課税の対象となります。営利目的で継続的に売買している場合は雑所得、事業として売買している場合は事業所得とするのが一般的です。なお給与所得者が個人で金やプラチナを購入した場合、譲渡所得に分類されます。
課税されるタイミング
キャピタルゲインを対象とした課税のタイミングは、資産を売却したとき。キャピタルゲインは所得が実現した時点ではじめて課税対象となるため、納税者は任意で課税のタイミングを操作できます。
また任意のタイミングを逃がすと課税できないため注意が必要です。また預貯金の場合、課税対象が利息となって「利子所得」に分類されるため、入金の時点で税金が引かれていることになります。そのため後から追加で税金を納める必要はありません。
4.諸外国におけるキャピタルゲインに関する税金
キャピタルゲインに関する税率や税制は各国によって異なります。ここでは諸外国におけるキャピタルゲインの税金について説明します。
主要国のキャピタルゲインに関する税率
主要国のキャピタルゲインに関する税率は以下のとおりです。それぞれ異なる制度を設けており、課税対象も国によって異なります。
- アメリカ
- ドイツ
- フランス
- イギリス
①アメリカ
アメリカでは、配当所得や給与所得などの所得にキャピタルゲインを合算して計算する方式をとっています。
全体の所得のうち、39,375USドル以下の部分には0%、39,375USドル超434,550USドル以下の部分には15%、434,550USドル超の部分には20%の税率になるのです(単身者の場合)。このほか地域によって異なる州・地方政府税が加算されます。
②ドイツ
ドイツでは利子収入に対する「キャピタルゲイン税(Abgeltungssteuer)」を導入しています。
証券の売却益やBauspar(住宅用貯蓄)口座、銀行口座につく利息に25%のキャピタルゲイン税がかかるほか、これに対する連帯付加税が5.5%、さらに人によっては教会税(Kirchensteuer)がくわわるのです。
日本と違い、購入後10年以上経った不動産の売却益は非課税になります。
③フランス
フランスの税率は各種控除適用後の所得によって課税、非課税が変わります。利子を含む所得が801ユーロ以下の場合は非課税ですが、これ以上の場合は課税対象になるのです。
なお非課税でない場合は17.2~62.2%の総合課税と、一律30%の分離課税、どちらか選べます。いずれも17.2%の社会保障関連諸税が含まれているので覚えておきましょう。
④イギリス
イギリスが採用しているのは、アメリカと同じく給与所得や配当所得などの所得にキャピタルゲインを合算して計算する方式。インカムタックス(所得税)のレートにより、以下2つにわかれます。
- 40%以上の所得税(ハイヤーレート)を支払っている場合:28%
- 20%の所得税(ベーシックレート)を支払っている場合:18%
キャピタルゲインに関して非課税の国
キャピタルゲインはすべての国で課税対象となるわけではありません。課税対象がごく一部に限定されていたり、キャピタルゲイン税そのものがなかったりする国もあります。
- マレーシア
- 香港
①マレーシア
マレーシアでは、不動産関連以外にキャピタルゲイン税が課税されません。よって株式投資で得た利益は非課税になるのです。
なおここでいう不動産とは「マレーシア所在のあらゆる土地およびその土地をめぐる利権、訴権、または権利」。そのため土地に付随する建造物は課税の対象です。
②香港
香港もキャピタルゲイン税はかかりません。そのため株式や債券、不動産の売却益をすべて手元に残せるのです。また香港には地方税(住民税)や相続税もなく、所得税も日本に比べて上限が低く設定されています。
香港で資産運用を行えばこれらの恩恵を受けられるでしょう。しかしその資産を日本に戻す場合、税金がかかります。