同調圧力とは、集団の中で考えや行動などを強制することです。ここでは、同調圧力について詳しく解説します。
目次
1.同調圧力とは?
同調圧力とは、組織などの集団の中で起きる強制の力です。少数意見を持った人に対し、周囲にいる多数意見を持つ人と、同じように考えたり、行動することを強制します。
同調圧力は、仲間からの暗黙のプレッシャーと言い換えられます。そのため、一般的にはネガティブな意味で使われる言葉です。
同調圧力に従わない場合、少数派が非難・批判などなんらかの制裁を受けるのではないかという不安を感じる傾向があります。
2.同調圧力は日本特有のもの?
同調圧力は日本特有のものではありません。同じアジアやアメリカ、ヨーロッパにも存在します。それぞれの特徴を見ていきましょう。
アジア
アジアにおける同調圧力は、ひとつの民族という濃い人間関係の中から生まれます。アジア人には、家族の強い絆があり、個人主義や周囲と疎遠な関係を好む人は異端児扱いされがちです。
そのため、同じ民族であることから同調圧力が働き、周囲の空気を読んで行動することや民族内の慣習に従うことを強制されます。
アメリカ
個人主義を重んじているアメリカですが、心理学者であるS. E.Aschによる実験によると、アメリカ人の平均同調率は25%と日本人平均の23%とあまり差がないことがわかっています。
ヨーロッパ
ヨーロッパにおける同調圧力は、歴史の中からも見て取れます。ナチスドイツに併合されたオーストリアでは、同調圧力によりヒトラーへの忠誠の誓いが強制されていました。
同調圧力は日本特有のものであると考えがちですが、このようなヨーロッパの史実から考えても、同調圧力は世界中に存在することがわかります。
3.同調圧力が働く理由
同調圧力が働くのには理由があります。ここでは、同調圧力が働く理由を4点あげてそれぞれ簡単に解説します。
場の空気
同調圧力が働くひとつ目の理由は、場の空気です。場の空気とは、
- 対人関係
- 集団の様子
- その場の状況
- 社会的雰囲気
などを意味する言葉です。同調圧力が働く背景には、
- 場の雰囲気を読む
- チーム内の大多数の考えに合流する
ことがコミュニケーションの鍵となるといった無意識の価値観の存在があります。
村社会
同調圧力が働くふたつ目の理由は、村社会です。村社会とは、有力者を頂点とした閉鎖的な集団です。村社会では、秩序維持を目的として同じ目的に向かって互いに協力し合うことが求められます。
組織も村社会と同じく、ひとつの目標に向かって力を合わせなければなりません。組織や集団が村社会の性質が強いほど、同調圧力が働くことが考えられます。
和の文化
同調圧力が働く3番目の理由は、和の文化です。和の文化には、
- 同調
- 協調
- 調和
といったものを美徳とする傾向があります。
ことを荒立てず、周囲とうまくやっていくことが美徳であるとすれば、
- 多数を占める意見に反対意見が出ないようにする
- 周囲との和を乱さないように配慮を求める
といった同調圧力が働くことも容易に想像できます。
バンドワゴン効果
同調圧力が働く4番目の理由は、バンドワゴン効果です。多数の人があるものを選んでいるという事実が、さらにその選択を増加させることを意味します。
バンドワゴン効果によれば、
- 他人と同じものが欲しい
- 流行を抑えておきたい
といった心理的作用により、周囲の所有、利用の増加と比例するように需要も増加します。これは、同調圧力が目に見える形であらわれたものです。
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4.コロナ禍における同調圧力の例
コロナ禍における同調圧力について、
- 社員にコロナ感染者が出たケース
- ワクチンハラスメント
といったポイントから解説します。
社員にコロナ感染者が出ると謝罪する企業
コロナ禍おける同調圧力のひとつは、企業が社員の中でコロナ感染者が出ると謝罪するケースです。企業は社内で新型コロナウイルスに感染した人が出ると、感染そのものが不可抗力であったとしても、管理責任を謝罪します。
企業が謝罪することにより、社員に対して絶対に感染してはならないという同調圧力となっていることがわかります。
ワクチンハラスメント
ワクチンハラスメントとは、新型コロナウイルス感染症に対するワクチンの接種に関するハラスメントとして、広く知られるようになった言葉です。
- ワクチンを打っていなければ出社してはいけない、などとワクチン接種を強制する
- 本人の自由意志でワクチン接種しない人に対し、接種を拒んだことを理由に差別をする
といったハラスメントです。
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5.適度な同調圧力がもたらすメリット
適度な同調圧力には、それがもたらすメリットがあります。ここでは、適度な同調圧力のメリットについて解説します。
助け合い
適度な同調圧力のひとつ目のメリットは、助け合いです。適度な同調圧力があると、
- お互いに励まし合う
- お互いに助け合う
- お互いに配慮し合う
ことで、効率的に業務を進められます。組織としてひとつの目的に向かって進んでいく場合には、適度な同調圧力はスムーズな組織運営の助けとなります。
モチベーション向上
適度な同調圧力のふたつ目のメリットは、モチベーション向上です。適度な同調圧力が組織の中で働くことにより
- 周囲が頑張っているなら、自分も頑張ろう
- 周囲にできるのなら、自分にもできるかもしれない
- 周囲に迷惑をかけないように、自分が頑張るしかない
といった個々のモチベーション向上につなげられます。
チームワークの向上
適度な同調圧力の3点目のメリットは、チームワークの向上です。組織の中で適度な同調圧力が働いている場合、
- そのプレッシャーをいい意味で跳ね返そう
- そのプレッシャーに対して誠実に応えよう
と組織全体が奮起することがあります。このように適度な同調圧力を利用した奮起が、チームワークの向上に一役買うことがあります。
不正に対する抑止力
適度な同調圧力の4点目のメリットは、不正に対する抑止力です。適度に同調圧力が働けば、組織内で、
- 相互に管理し合う
- 相互に統制し合う
- 相互に監督し合う
ことが可能です。
これは、組織の不正抑止に大きな力を発揮します。組織の中から不正行為を生み出さないためには、このような適度な同調圧力を利用することも効果的であると考えられます。
6.過度な同調圧力がもたらすデメリット
過度な同調圧力がもたらすデメリットがあります。ここでは、4点のデメリットをあげてそれぞれ簡単に解説します。
残業の温床
過度な同調圧力がもたらすひとつ目のデメリットは、残業の温床になることです。過度な同調圧力が働くと、自分の業務が完了していたとしても、周囲が残業していれば帰宅しづらい状況におちいります。
こうなると、
- 必要のない残業が増える
- 残業が本来の意味から逸脱した単なる待機時間になってしまう
といった問題が生じます。
ストレスの増加
過度な同調圧力がもたらすふたつ目のデメリットは、ストレスの増加です。過度な同調圧力が働くと、多数派の厳しい目が少数派に向けられることになります。
少数派としては、
- 他人の目が気になる
- いつも周囲を気にするようになる
- 自分の業務に集中できなくなる
といったことから、ストレスを感じることになります。
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パフォーマンスの低下
過度な同調圧力がもたらす3点目のデメリットは、パフォーマンスが低下することです。過度な同調圧力は、少数派に大きなストレスをもたらします。そうなると、
- 多数派は少数派の動き
- 少数派は多数派の目
を気にするようになります。業務に対する注意力が散漫になり、本来業務で発揮すべきパフォーマンスが低下します。
自己主張が難しい環境になる
過度な同調圧力がもたらす4点目のデメリットは、自己主張が難しい環境になることです。過度な同調圧力を感じれば、
- 少数派は自分の意見を主張しにくくなる
- 多数派もいつ自分が同調圧力をかけられる立場になるかわからないため、自己主張に慎重になる
ことが予想されます。少数派、多数派共に自己主張が厳しい環境になるでしょう。
7.会社・職場で適度に同調圧力を活かす方法
職場で適度に同調圧力を活かす方法があります。ここでは、同調圧力をよい方向で活用する方法をあげて、それぞれのポイントを解説します。
お互いにフォローし合える体制をつくる
職場で適度に同調圧力を活かすひとつ目の方法は、お互いにフォローし合える体制をつくることです。お互いにフォローし合える体制とは、次の通りです。
- お互いのよいところを認め合える
- お互いに改善すべき点を指摘し合える
同調圧力を上手に活用し、互いに切磋琢磨できる文化を構築することは、組織の成長という意味でも重要です。
コミュニケーションの機会を増やす
職場で適度に同調圧力を活かすふたつ目の方法は、コミュニケーションの機会を増やすことです。同調圧力を組織内のコミュニケーションととらえることにより、職場で同調圧力を活かせます。たとえば、仕事以外で親睦を深められる場を設け、社内でイベントを開催することで、
- コミュニケーションの活性化
- 組織の連帯強化
を図れます。
上司がフォローを行う
職場で適度に同調圧力を活かす3番目の方法は、上司がフォローを行うことです。上司も一緒になって同調圧力を活用すると、
- 上司が部下の様子を適宜観察する
- 上司が音頭をとり、部下が仕事をしやすい安定した環境を作る
ことができます。
適度な同調圧力は、組織のマネジメントにも効果が期待できます。