フラッグシップには、フラッグシップカンパニーやフラッグシップショップなどといった関連用語があり、混合されやすいビジネスワードも存在します。フラッグシップについて、さまざまな点から見ていきましょう。
目次
1.フラッグシップとは?
フラッグシップとは、企業の製品でトップに位置する、つまり企業の顔となるモデルのこと。旗(flag)と船(flagship)が組み合わさった言葉で、日本語では「旗艦(きかん)」「艦隊の指揮をとる軍艦」などと訳されます。
もともと旗艦を意味する言葉で、そこから派生して「グループの中でもっとも重要なもの」「代表的なもの」「ブランドの中で最上級のもの」といった意味合いで使われるようになりました。
フラッグシップは企業の製品でトップに位置するため、おのずと自社の顔になります。フラッグシップといわれる製品を挙げれば、どの企業のものかわかるでしょう。
ハイエンドとの違い
ハイエンドとは、その企業が生み出した製品のすべて、またはシリーズ中もっとも機能や性能が高いモデルのこと。
「シリーズの中のトップモデル」という位置づけのため、複数存在する場合も多いです。一方、フラッグシップは企業の顔となる唯一の最上級モデルという位置づけになるため基本、一つしか存在していません。
ローエンド
ローエンドは、その企業の製品あるいはサービスのなかで、機能や価格といった部分にて低いモデルのこと。なお中間に位置するものをミドルレンジといいます。
- ハイエンド
- ミドルレンジ
- ローエンド
上記3つは性能や機能、価格で大きくわけられます。
2.フラッグシップモデルとビジネスデザイン
前述のとおりフラッグシップは、企業の顔となるモデルです。これをビジネスの戦略としてとらえ、有効活用すると新たな事業の柱(ビジネスデザイン)を作れるでしょう。
その場合、企業が持つコアな技術や最新技術はもちろん、ブランドイメージや経営者の想いも落とし込みます。できるだけ多くの要素をフラッグシップに落とし込めれば、企業としての評価向上がも期待できるでしょう。
3.フラッグシップモデルの例
世界にはフラッグシップの確立に成功している企業がたくさんあるのです。ここでは有名企業のフラッグシップモデルをご紹介します。
トヨタ・センチュリーシリーズ
トヨタ自動車でフラッグシップとして挙げられるのは、「トヨタ・センチュリー」です。1967年、日本国内のVIP向けとして開発されました。
当時の最新技術をこのシリーズに注ぎ込み、トヨタブランドのなかでも最高級の車を製作。デザインから溶接、塗装に至るまですべてにこだわって作られたのです。
ハイクオリティな仕上がりからVIP御用達の車としても愛され、初代誕生から30年後の1997年には2代目が登場しました。その後、2018年に3代目が登場。3代目のトヨタ・センチュリーは、外観のイメージはそのままにより洗練された仕上がりになっています。
ダンロップ・SP−SPORT
ダンロップで、フラッグシップとして確立されている製品は「ダンロップ・SP−SPORT」です。乗用車専用のラジアルタイヤでは傑作と称されており、1968年のライプチッヒ国際見本市では金賞を受賞しています。
2015年にはシリーズ最新作「SP SPORT MAXX」が登場。海外をターゲットにした製品として、ロシアや中南米、中国などでも販売されています。
ダンロップ・SP−SPORTはポルシェ959に採用された歴史があり、一般的な乗用車への装着はやや敷居が高いイメージもあるかもしれません。SP SPORT MAXXシリーズに至っては、輸入車やプレミアムカーへの装着を宣言しています。
富士通・arrowsシリーズ
富士通コネクテッドテクノロジーズのスマートフォンとして、フラッグシップの地位を確立しているのが「arrowsシリーズ」です。arrowsシリーズが誕生したのは2011年で、現在はグループ傘下のFCNT株式会社に移管して製造されています。
arrowsシリーズは2011年の発売以来、複数回グッドデザイン賞を受賞。最新モデルは5G対応になっており、通信速度も快適で操作性もさらに改良されました。防水性能も高く、ハンドソープで洗ったりアルコール除菌シートで拭いたりするのも可能です。
キヤノン・EOSシリーズ
キヤノンが販売している製品のうちフラッグシップモデルと称されているのが一眼レフカメラのEOSシリーズです。同シリーズは1987年3月1日に発売された「EOS650」が初期モデルとなります。
EOSシリーズは最新技術を積極的に導入し、精度の高いオートフォーカスが評価されました。
その後1991年に販売された「EOS100 QD」と1922年に販売された「EOS1000S QD」が、先進的かつ革新的な技術に対して贈られる賞“ヨーロピアン・イノベーション・オブ・ザ・イヤー”を受賞しています。
4.フラッグシップカンパニーとは?
業界の中でもっとも規模が大きい企業のこと。同じようなビジネス用語で「リーディングカンパニー」という言葉もあります。
リーディングカンパニーは、業界を先導する企業を指す言葉です。英語ではLeading companyと書き、「率いる」や「導く」という意味の(leading)が派生して「業界を導く・先導する企業」という意味で使われます。
このふたつの言葉は混合されやすいのが、リーディングカンパニーは業界を先導する企業であれば必ずしも最大規模でなくても構いません。
5.フラッグシップショップとは?
多店舗展開している小売業にて、代表的な店舗やもっとも重要な店舗のこと。旗艦店と呼ばれる場合もあります。由来は海軍のような艦隊にて、指揮をとる人間や幕僚が乗っている船に司令旗を掲げたことです。
フラッグシップショップはほかの店舗と異なり、自社のコンセプトやブランドをアピールする役割を持ちます。集客率が高い店舗が選ばれるため、企業内でもっとも規模が大きい、または立地条件に恵まれている店舗が選ばれやすくなっているのです。
6.フラッグシップショップ戦略の意義
オセロのようにポイント(点)でシェアを取るスタイルのこと。世界にいくつかある有名都市のなかでも、さらに一等地と評される場所にポイントを絞って店舗を構えます。
この戦略で自社のコンセプトをアピールし、ブランドイメージを高めて、その店舗に業界平均を超える売り上げを達成させます。ほかグローバル企業にエリア(面)では勝てなくても、ポイントでシェアを獲得して、互角に戦う力を得ていくのです。
対となるクリティカルマス戦略
局地的に戦うスタイルのフラッグシップショップ戦略に対しクリティカルマス戦略はエリアすべてをフィールドにするスタイルです。
クリティカルマスとは、商品やサービスの普及率が急激的に上がる分岐点を指すマーケティング用語のこと。普及率が急激的に上がる分岐点に達するまで、エリア内にとにかく店舗を立ち上げていきます。
資金やもの、人など経営資源の豊富なグローバル企業が実施することの多い戦略です。短期間でシェア率を上げて知名度を高めていきます。
7.フラッグシップショップの例
フラッグシップショップ戦略を成功させている企業をいくつかご紹介します。どんな特徴があるのかチェックしてみてください。
ディズニーフラッグシップ東京
2021年に東京の新宿にオープンした「ディズニーフラッグシップ東京」は、日本最大のディズニーストアです。
「想像の、その先へ」をコンセプトに掲げ、訪れたゲスト(客)がディズニーの世界観に違和感なく入り込めるよう店舗全体をデザインしています。
店舗は3フロア構成になっており、国内外のディズニーリゾートで扱われている商品を販売。そのほかディズニーフラッグシップ東京でしか購入できない限定品や有名ブランドとコラボした商品もラインナップして集客率を高めているのです。
またこれまでディズニー公式のオンラインストアでしか注文できなかったオーダーメイドアイテムの製作も、この店舗でできるように工夫しています。
NIKE HARAJUKU
東京都の渋谷区にある「NIKEHARAJUKU(ナイキ原宿)」は、自社商品を国内で最大規模ラインナップしているナイキのフラッグシップです。
リニューアル後は1階のワンフロアすべてをウィメンズ商品にしたり、おしゃれなフィッティングルームを設置したりして女性の集客アップを図っています。
またデジタルとの融合を目指し、ナイキ公式のアプリ(NIKEアプリ)の新機能と店舗を連動して新たなリテール体験を提供。在庫検索や取り置きサービスなどができるようになり、より便利にショッピングが楽しめるようになっています。
シャネル銀座
銀座3丁目にある「シャネル銀座並木」が、シャネル(CHANEL)のフラッグシップ店舗です。1994年にオープンした日本の路面1号店で現在、9フロアからなる自社ビルのうち6フロア、おおよそ476平方メートルを売り場としています。
シャネルのブランドカラーである黒と白を基調とし、フロアごとにアクセントとなるカラーを設定。各フロアにはさまざまな国の有名アーティストの作品が飾られています。
3年弱をかけてリノベーションしたこの店舗ではハンドバッグやウォッチ、プレタポルテやアクセサリー、シューズなどを販売。8階には、日本初展開となるシャネルのトリートメントサロンが設置されています。
UNIQLO TOKYO
ユニクロのフラッグシップ店舗となる「UNIQLO TOKYO」が、2020年に銀座でオープンしました。国内最大級の店舗としてユニクロが展開するコンテンツを国内のみならず世界へ発信しています。
同店舗は、プリツカー賞や世界文化賞を受賞した経験を持つ、スイスの建築ユニット「ヘルツォーク&ド・ムーロン」が一部をリノベーション。
テーマパークのようと称される店舗では、商品を販売するだけにとどまらず機能を実体験できるコーナーが設けられたり視覚的に楽しめるようなディスプレイがあったりと随所に工夫がみられます。