クリティカルとは? クリティカルパス、クリティカルシンキング

クリティカルとは、危機に瀕しているさまや致命的な状態であるさまを指した言葉です。ここではクリティカルパスやクリティカルシンキング、クリティカルマスについて解説します。

1.クリティカルとは?

クリティカルには「検討して評価するさまや批判的な様子」と「きわめて危険である様子」2つの意味があります。英語では「critical」、危機を意味するcrisisと、批評家や評論家を意味するcriticの形容詞形です。

ビジネスシーンではおもに「致命的な」「批判的な」「重大な」という意味で、クリティカルという言葉を使います。「このバグはクリティカルかもしれない」「急いで対処しないとクリティカルな問題になる」といった使い方です。

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2.クリティカルを冠する用語

クリティカルを冠する用語にはさまざまな種類があります。ビジネスシーンで聞くことの多い用語は以下の4つです。

  1. クリティカルパス
  2. クリティカルシンキング
  3. クリティカルケア
  4. クリティカルマス

①クリティカルパス

プロジェクトの各工程にて、「前の工程が完了しないと次の工程が始まらない」という依存関係にあるとき、所要時間が最長になる作業経路のこと。「最長経路」や「臨界経路」と呼ばれる場合もあります。

一般的にクリティカルパスの長さ=プロジェクトの期間です。

②クリティカルシンキング

論理的かつ構造的な思考パターンのこと。自分が無意識にとっている行動や考え方を意識化して、客観的に振り返るという意味で使われます。

経験や直感だけに頼らず客観的な視点で分析し、周囲に納得感のある形で伝えるためのスキルです。類似した概念に「ロジカルシンキング」があります。

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③クリティカルケア

生命の危機的状況(クリティカル期)にある重篤患者に対して行う専門的な措置や看護のこと。医療の現場で用いられる用語です。

多くは集中治療室で行われます。また緊急手術のあとに生命を維持するための観察やサポートを継続して行うのもクリティカルケアの一部です。

④クリティカルマス

商品やサービスの普及率が一気に跳ね上がる分岐点のこと。マーケティング用語のひとつです。

マーケティングでは商品やサービスが市場に登場した場合、はじめにイノベーターと呼ばれる層に受け入れられ、徐々に保守的な消費者層に広がっていくと考えられています。この分岐点における普及率をクリティカルマスと呼ぶのです。

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3.クリティカルパスのメリット

クリティカルパスには以下2つのメリットがあります。いずれも業務の効率を上げ、生産性を高めるには欠かせないポイントです。

  1. 作業優先度の決定
  2. 効率的なスケジュール管理

①作業優先度の決定

クリティカルパスを見つけられると、プロジェクト内で重要な作業は何かを理解できます。これにより、重要度に合わせた優先度を決められるでしょう。

クリティカルパスの遅延はプロジェクト全体の遅れにつながります。プロジェクトをスムーズに進めるには、クリティカルパスの理解が欠かせません。適切な作業優先度を決められると、次の効率的なスケジュール管理もスムーズになるでしょう。

②効率的なスケジュール管理

クリティカルパスを明確にすると、各工程に必要な工数やプロジェクト全体の作業日数などを把握できます。クリティカルパスをメンバーに共有すれば各々が作業日数と工数時間を把握するため、納期厳守の意識も作れるでしょう。

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4.クリティカルパスの見つけ方

作業優先度を立て、効率なスケジュール管理を行うのに欠かせないクリティカルパスは、以下の方法で見つけられます。

  1. PERT図の作成
  2. クリティカルパスの特定

①PERT図の作成

PERT図(Program Evaluation and Review Technique)とは、プロジェクトにかかわるそれぞれのタスクを丸と矢印で図表化したもの。「アローグラム」や「アローダイアグラム」とも呼ばれるのです。

作業タスクと順番を丸で記入してそれぞれを矢印でつなぎ、工数や期間を記入します。矢印の近くに最短開始時や最適完了時などを記入する場合もあるのです。

②クリティカルパスの特定

続いて作成したPERT図をもとにクリティカルパスを特定します。PERT図の1から矢印にしたがって工数を足していくだけです。工程ルートの洗い出しによって、全体遅延がもっとも少ないクリティカルパスを特定できます。

クリティカルパスの遅延はプロジェクト全体の遅延につながるもの。プロジェクトマネージャーは早い段階でクリティカルパスを把握し、進捗を見ておかなくてはなりません。

プロジェクトによっては作業が複雑なものもあるため、見落としに注意してPERT図を作成、クリティカルパスを特定します。

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5.クリティカルパスの注意点

時間のかかる大きな作業がつねにクリティカルパスであるとは限りません。誰が見てもわかるような大きい工程だけでなく、小さくかんたんな工程にクリティカルパスが潜んでいる可能性も考えられるからです。

たとえばタスクのひとつに取引先への電話連絡があるとします。工数としては数分で終わるものの、スキップしてしまうと次のタスクに必要な材料が十分に集められないかもしれません。

作業が止まって遅れが生じてしないよう必要な工程をあらかじめすべて洗い出したうえでクリティカルパスを見つけるのが重要です。

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6.ビジネスにおけるクリティカルシンキングのメリット

自分の考えや意見に客観性を持たせる「クリティカルシンキング」には3つのメリットがあります。

  1. 新たな視点や発想を創出し、ビジネスチャンスの拡大につなげられる
  2. 問題解決の精度を高める
  3. 相手の伝えたいことや前提を理解したうえで、問題の本質を見極められる

①新たな視点や発想を創出し、ビジネスチャンスの拡大につなげられる

過去の成功体験が今も必ず成功するとは言い切れません。ビジネス環境の変化は激しく、前例に従うだけでは競争に取り残される時代です。クリティカルシンキングでは当たり前を疑う意識が重要になります。

たとえば「ビールにはアルコールが入っていて当たり前」という前提を疑った結果、ビールの味がするノンアルコールビールがヒットしました。前例を疑うことが新たなチャンスにつながった事例です。

②問題解決の精度を高める

問題の解決方法に完璧なものはありません。どれだけ素晴らしい解決方法でも何らかの不足や欠陥があるもの。クリティカルシンキングはこの不足を補い、より優れた問題解決を行うための考え方です。

クリティカルシンキングによって、現行の解決方法にひそむ問題点や矛盾を洗い出せます。また余計な情報や無駄な議論を切り離せるため、議論はより本質に近づき、問題の解決方法や課題をより鮮明にできるのです。

③相手の伝えたいことや前提を理解したうえで、問題の本質を見極められる

クリティカルシンキングでは「どうしてこのような結果になったのか」「その正解が本当に正しいのか」など、物事を批判的、客観的な視点で考えます。これは問題の本質を見極めるのに役立つのです。

たとえば「支店の売上が下がって会社の業績も下がった。支店の売上を生み出そう」という意見が出たとしましょう。

ここで「商品を値下げして購入意欲を高めよう」「取り扱う商品の数を増やして顧客の選択肢を増やそう」などの意見に終わらせず、より効果的な解決方法を探します。

「業績が下がったのは本当に支店の売上が下がったせいなのか」「取り扱い商品が顧客のニーズと合っていないのでは?」など疑問を持ち、問題の本質を見極めるのがクリティカルシンキングです。

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7.クリティカルシンキングの鍛え方

クリティカルシンキングを鍛えるには、どうしたらよいのでしょう。以下4つのポイントを解説します。

  1. 客観的に物事を見るようにする
  2. 正しい情報を収集する
  3. 本や映画の批評をする
  4. 仮説を立てる癖をつける

①客観的に物事を見るようにする

「事実」「感情」「意見」をそれぞれ区別して考え、第三者目線で観察、分析することが肝心です。

もちろんただ「難癖」をつけるのとは違います。対象の正しい情報を集めて、自身のなかでその情報を正確に、かつ客観的に組み立てるのです。

そのためには物事を注意深く観察し、情報のインプット量を増やして自分自身に対する理解を深めましょう。

②正しい情報を収集する

クリティカルシンキングが苦手な人に挙げられる特徴は、「正しい情報を正しい手順で組み立てられない」「他人の意見を鵜呑みにしてしまう」「自分の意見に固執してしまう」などです。

頃から正しい情報を集め、それを整理して組み立てられるようにすると効率的なクリティカルシンキングにつながります。

③本や映画の批評をする

クリティカルシンキングは「物事を批判的に捉える思考法」とも呼ばれます。よって映画や本、テレビ番組などを批評するのもクリティカルシンキングの訓練につながるのです。

作品の面白かった場面や気付いたこと、登場人物に共感できるポイントなどを考えながら鑑賞すると、自身の思考の癖や偏りに気付けるでしょう。クリティカルシンキングに必要な「客観的な視点」を鍛えられます。

④仮説を立てる癖をつける

経験や前例に沿った仮説だけでなく、それまでの常識や根拠を無視した仮説を立てることも、クリティカルシンキングを鍛えるのに役立ちます。

仮説を立てる際のポイントは「正反対の立場から考えること」、「問題に対してWhy So?(なぜそうなのか)やSoWhat?(だから何?)を問うこと」

仮説の設定は正しい情報の収集、そして問題の目的を再認識するのにも役立ちます。仮説と検証を繰り返し、少しずつ結論を探していくと、クリティカルシンキングを鍛えられるでしょう。

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8.クリティカルマスの関連用語

マーケティング業界において、商品やサービスの普及率が一気に跳ね上がることを「クリティカルマス」といいます。このクリティカルマスを理解するうえで欠かせないのが下記の2つです。

  1. イノベーター
  2. アーリーアダプター

①イノベーター

新しいサービスや商品などをもっとも早い段階で受け入れる層のこと。直訳すると「革新者」で、市場の約2.5%がこのイノベーターで構成されているといわれています。

特徴は「商品の真新しさを重視する」「これまでの市場になかったサービスや機能に反応して、積極的に取り入れる」などです。

②アーリーアダプター

新しいサービスや商品などをイノベーターに続いて受け入れる層のこと。流行に敏感、周囲への影響力が強いなどの特徴があります。

イノベーターとの違いは利益や質を見極めてから取り入れる点。新商品やサービスが普及するかしないかは、このアーリーアダプターに受け入れられるか否かによるともいわれています。

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9.クリティカルマスに達する方法

新商品や新たなサービスがクリティカルマスの段階に達するためには、どのような施策を取ればよいのでしょう。クリティカルマスに達する方法について説明します。

  1. 販促キャンペーンや値引き
  2. イノベーター、アーリーアダプターへのアピール

①販促キャンペーンや値引き

新製品や新サービスはどうしても消費者がメリットを想像しづらいため、購入をためらってしまいます。これは革新性の高い商品、サービスほど顕著にみられるのです。

そこで既存商品とセットにした販促キャンペーンや値引きを実施して「試しに買ってみよう」と思わせます。

②イノベーターとアーリーアダプターへのアピール

新商品や新サービスに敏感なこの層には、強い発信力があります。

クラウドファンディングや商品展示会などでアーリーアダプターが新製品をアピールすれば「知らない製品だけどこの人が宣伝しているなら安心」「あの人がPRしていた新サービスを使ってみたい」と信頼感の高い製品、サービスとして市場に浸透させられるでしょう。