ビジネスドメインとは?【意味をわかりやすく解説】具体例

ビジネスドメインとは、企業の事業領域や主力事業となる本業のことです。ここでは事業ドメインをさまざまな角度から解説します。

1.ビジネスドメインとは?

ビジネスドメインとは、企業が経済活動を展開する事業領域や主力事業となる本業のこと。事業ドメインの設定は、マーケットにおける競争で優位性を得る重要な経営戦略のひとつと位置づけられています。設定にあたっては、下記が必要です。

  • 事業の将来性や可能性を把握する
  • 企業の中核となる能力(コアコンピタンス)を理解する
  • 的確なマーケットの調査、選択する

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2.ビジネスドメインと間違えやすい用語

ビジネスドメインには、経営理念や市場セグメンテーションといった、混同されやすい用語があります。ビジネスドメインとそれらとの違いを見ていきましょう。

経営理念との違い

経営理念とは、「企業をどのように経営していくかという基本方針」「経営に対する創業者の思いや信念、価値観」などのこと。抽象度が高く、「誰に何をどのように」提供するのかを示すビジネスドメインとは性質が異なります。

経営理念とは?【わかりやすく解説】有名企業の例(事例)
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市場セグメンテーションとの違い

市場セグメンテーションとは、ターゲットとなる顧客の趣味・嗜好、属性などを分析して市場を細分化し、自社の長所が生きる市場において事業を行うこと。マーケティング用語のひとつです。

ビジネスドメインの設定では、ターゲットよりも自社の長所に重点を置いて市場をとらえます。よってこの点に大きな違いがあるのです。

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3.ビジネスドメインのメリット

ビジネスドメインを設定すると、どのようなメリットが得られるのでしょう。下記について見ていきます。

  1. 競合相手が明確になる
  2. 無駄な投入を防止できる
  3. 商品価格を上げられる
  4. 多角化により安定化につながる

①競合相手が明確になる

ビジネスドメインを設定すると、競合相手が明確化し、事業展開を見直すきっかけになります。

ビジネスドメインを設定していない場合、どの企業が競合相手なのか、はっきりしません。同じような商品やサービスを扱っている企業でも、ターゲット層が異なる場合もあるのです。また逆にまったく別の競争相手が確認されるときもあります。

②無駄な投入を防止できる

ビジネスドメインの設定により、経営資源の無駄な投入やノンコア事業への不必要な分散などを防げるのです。

そもそもビジネスドメインの設定は、自社の事業領域や主力事業を正確に理解・把握したうえで行われます。なぜなら経営資源の重点的な投下を目的としているからです。自社にとっての不要な多角化を未然に防ぎ、経営資源の効率的な投入を可能にします。

③商品価格を上げられる

多くの人に自社の商品の価値を理解してもらえれば、商品の価格を上げられるでしょう。

顧客は商品の質に見合った金額を支払っているのではなく、自分が感じた価値に見合った金額を支払っているもの。質は普通でも、長所がしっかり訴求できている商品なら、高値で販売できる可能性は高まります。

④多角化により安定化につながる

限られた経営資源を最大限に生かし、有効な多角化が図れます。ビジネスドメインの設定で自社の事業領域や主力事業を正確に理解・把握すると、自社の強みを効率的に利用する新規事業の立ち上げに役立つからです。

新たな顧客の獲得や事業分野への進出へのきっかけが生まれ、自社の安定成長につながります。

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4.ビジネスドメインを設定するCFTフレームワーク

ビジネスドメインを設定する「CFT分析」というフレームワークは、一体何でしょうか。CFT分析は、下記3つからなるものです。それぞれについて解説しましょう。

  1. 顧客軸(Customer)
  2. 機能軸(Function)
  3. 技術軸(Technology)

①顧客軸(Customer)

「商品やサービスは誰に対して価値を提供するのか」を、年齢や性別、地域や嗜好性などから分析します。

「自社の商品やサービスはどのような層の人々の課題解決に貢献できるのか」「ニーズを満たせるのか」などを、マーケットを客観的に分析して把握していくのです。

②機能軸(Function)

「商品やサービスが顧客にどのような価値を提供できるか」を明確にします。「顧客のどのようなニーズを充足させ」「どのような価値を与えられるか」を検討するのです。

自社の強みが生かされていて、競合他社とは差別化された機能を選びましょう。このプロセスは、顧客にとって高い価値をもたらす商品・サービスの開発に役立ちます。

③技術軸(Technology)

自社にあって競合他社にはない、差別化できる技術を特定します。自社の技術を競合他社の技術と比較しながら分析し、自社の優れた点を見つけるプロセスです。

ここで見つけられた技術は、既存の主力事業をさらに発展させたり、新規事業を立ち上げたりする際に役立ちます。

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5.ビジネスドメインの設定手順

ビジネスドメインの設定には4段階の手順があります。それぞれについて解説しましょう。

STEP.1
事業状況を明確にする
まずは下記の再確認から始めます。

  • 自社にどのような顧客が存在するのか
  • 顧客の層はどうなっているのか

この作業をつうじて自社の主力事業を支えている、競合他社とは差別化された技術やサービスについてさらなる把握・理解が可能です。CFT分析の顧客軸、機能軸、技術軸の3軸によってアプローチするとよいでしょう。

STEP.2
将来の方向性を検討する
事業状況を明確にしたら、次は自社におけるビジネスドメインの方向性を検討しましょう。

このプロセスでは今後、既存の市場をメインにするのか、新規の市場で事業展開していくのかを見極めなければなりません。どちらかによって、事業の方向性は大きく異なります。

事業の多角化にも関係してくる部分です。さまざまな情報を収集して判断に生かしましょう。

STEP.3
整合性を調査する
方向性を決定する際、事業の整合性の調査も必要になります。成功には、CFT分析における顧客軸・機能軸・技術軸の3つがバランスよく相互作用をもたらすかどうかが、重要になるからです。

ビジネスドメインの設定によって、下記はどうなるか、確認しましょう。

  • どのような相乗効果が獲得できるか検討する
  • 現在から将来における競合他社の存在を把握する
STEP.4
取締役会で承認を得る
最後は取締役会を開催して承認決議を得るプロセスです。ビジネスドメインの設定によって得られるメリットを、役員へ丁寧に説明します。

ビジネスドメインの設定には、既存の再定義や経営方針や経営理念などとのすり合わせなどが必要になる場合もあります。役員が納得できるようなデータも求められるため、取締役会には入念な準備が不可欠です。

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6.ビジネスドメイン設定のポイント

ビジネスドメインを設定する際、何に気をつければよいのでしょう。そのポイントについて、見ていきます。

  1. 企業を再定義する
  2. コアコンピタンスやケイパビリティを意識する
  3. 優位性が築ける市場を選択する
  4. 設定範囲を慎重に検討する

①企業を再定義する

ビジネスドメインを設定する際、「自社は何をする企業なのか」、改めた定義が必要です。独自の強みを生かせる適切な領域に再定義できれば、効率的な多角化につながるでしょう。

プロセスとCFT分析の組み合わせは、ビジネスドメインの設定において非常に重要です。

②コアコンピタンスやケイパビリティを意識する

2つの内容は下記のとおりです。

  • コアコンピタンス:自社の持つ技術の中でも核となる技術や特色
  • ケイパビリティ:組織の能力(個人の能力と組織構成を掛け合わせて決まる)

ビジネスドメインを設定する際は現在のケイパビリティで達成可能なものを定義するとよいでしょう。

③優位性が築ける市場を選択する

事業の成功に必要不可欠な条件は、競合他社との差別化を図り、市場での競争で優位性を保つこと。そのためには、市場での競争状態を把握する必要があります。

また競争が激しくなくても、成長市場でなければ意味がありません。成長市場でかつ、自社が十分に差別化を図れる市場の選択が必要です。

④設定範囲を慎重に検討する

ビジネスドメインの設定は、主力事業を選択して経営資源の投入先を決める作業になります。よって設定範囲を慎重に検討しなければなりません。

狭すぎず、広すぎない範囲で自社の長所を生かす意識が必要でしょう。範囲が狭すぎるとすぐに市場の成長が止まり、範囲が広すぎると経営資源の投入が遅延するため、注意が必要です。

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7.ビジネスドメインの企業事例

適切なビジネスドメインを設定した結果、優良顧客を獲得して成長をとげた企業があります。どのような企業か、見ていきましょう。

セブン-イレブン

セブン-イレブンのビジネスドメインは「近くて便利」です。一般的に、コンビニエンスストアでイメージするのは食品や雑誌などの「物」。しかしセブン-イレブンは「便利」なのです。

実際にセブン-イレブンは、公共料金の支払いや荷物の受け取り、銀行ATMなど、「物」の提供にとどまらないサービスを展開しているうえ、「近く」にあります。

モスフードサービス

モスフードサービスのビジネスドメインは「安心安全で高品質な商品を提供する」という理念のもと、設定されました。高品質な商品を提供し、低価格帯のファストフード店との差別化に成功しています。

モスフードサービスのビジネスドメインは、利益を第一に追求するのではなく、顧客満足度を最優先して設定された例といえるでしょう。

ヤナセ

ヤナセでは、富裕層顧客を対象に高価格・高機能の高級外国車を提供し、事業を展開しています。ヤナセが設定しているビジネスドメインは「自動車はつくらない。自動車のある人生をつくっている」というもの。

これは自社製の自動車は持たず、メルセデス・ベンツやBMWといった「既存の優れた自動車を提供する」という非常に明確なものとなっています。

タニタ

「タニタ食堂」で有名なタニタは、もともと計測機器のメーカーでした。そこからタニタはビジネスドメインを「人々の健康を作る」に定義し直し、タニタ食堂という新規事業を立ち上げます。これが成功した結果、タニタは新規顧客を獲得できたのです。

もしビジネスドメインを再定義せず、計測機器のメーカーのままだったなら、現在のタニタは存在しなかったでしょう。

NEC

NECでは1970年代、通信事業とPC開発をつなげた「C&C(コンピューター&コミュニケーション)」とビジネスドメインを再定義しました。

今のNECは、本業の通信事業にくわえ、コンピューター・半導体事業などにも進出し、情報化社会における中心的な存在です。

主力事業に過剰に固執せず、自社の強みと時代の流れを的確に把握したうえで、柔軟にビジネスドメインを設定したために成功した、といえます。