メンタルモデルとは、認知モデルのことです。ここでは、メンタルモデルについてさまざまなポイントから解説します。
目次
1.メンタルモデルとは?
メンタルモデルとは、個人の実世界に対する認識や解釈に関する認知モデルである認知心理学の用語です。メンタルモデルは、個人の思考の前提となるもので、個人のメンタルモデルを紐解けば過去の経験などに結びつくと考えられています。
たとえば、「人間は詐欺行為を行うものである」というメンタルモデルを形成した人は、過去にだまされた経験があるといったものです。組織開発のアライメントでは、メンタルモデルへの言語化やメンタルモデルへの配慮が重要だとされています。
2.メンタルモデルの例
メンタルモデルの例を知ると、メンタルモデルへの理解が深まります。2つの例から見ていきましょう。
日常生活におけるメンタルモデル
たとえば、上司から声をかけられた部下のケースです。
- ある部下は、上司から何か叱責されるのではないかと萎縮しながら話をする
- ある部下は、上司を尊敬のまなざしで仰ぎ見るように話をする
同じ上司から話しかけられた部下でも対応の違いが生じるのは、異なるメンタルモデルが形成されたからです。同じ対象からの働きかけでも、過去の経験によって全く正反対のメンタルモデルが形づくられるとわかります。
医療現場におけるメンタルモデル
医療現場では、チームワークが求められます。このときチームリーダーは、メンタルモデルを生かして判断する役割を進めるのです。
- チームを構成するメンバーごとの人柄や考え方を把握する
- 目標や方針、方法などの情報を共有する
- 人的資源、物質的資源を適正配置する
またメンバー同士も、お互いのメンタルモデルを共有しながら相互にコミュニケーションをはかります。ミスの許されない命を守る砦である医療現場では、メンタルモデルを重視した意思疎通が不可欠です。
3.メンタルモデルを生かした学習方法
「1時間学習し、そのあと小休憩をとり、再度1時間学習する」「勉強時間を朝・昼・晩と小分けに区切る」といった時間配分法と呼ばれる学習方法です。
一度に長時間学習するのではなく、インプットとアウトプットを交互に何度もくりかえし、短期記憶から長期記憶への移行を促します。また学習の繰り返しよって、苦労した記憶とともに長期記憶として定着させられるのです。
従来の学習方法「集中学習法」の欠点
集中学習法とは、忘れる前に何回も繰り返して学習する方法のこと。これには効率が悪いという欠点がありました。この方法では、覚えたての記憶を何度も繰り返し学習するため、苦労しません。
しかし長期記憶は苦労した記憶とともに定着します。そのため集中学習方法は、メンタルモデル化しにくいとされているのです。メンタルモデル化するためには、長期記憶になりかけた知識の手がかりをもとに苦労しながら思い出すとよいでしょう。
4.メンタルモデルと学習する組織
学習する組織とは、アメリカの経営学者ピーター・センゲが名付けた組織のこと。特徴は、下記の通りです。
- 変化に適応する能力を持っている
- その能力を継続的に開発している
学習する組織のなかでメンタルモデルは、組織目標の実現に必要不可欠な5つの構成技術のひとつという位置づけになっています。そして5つの構成技術は別名「5つのディシプリン」とも呼ばれているのです。それぞれについて解説しましょう。
- メンタルモデルの克服
- システム思考
- 自己実現(マスタリー)
- 共有ビジョン
- チーム学習
①メンタルモデルの克服
個人や組織が潜在的に持っている、固定化・限定化されたイメージを克服すること。当事者自身も気が付いていない無意識の言動をそのまま放置せず、思い込みだとを強く認識させ、意識的に変化させて、個人や組織の性質の変革を実現しやすくするものです。
②システム思考
問題の本質に迫れるよう、現象に捉われず抜本的・根本的な問題の解決を探ること。問題の本質は、表面に見えず奥底に潜んでいるケースがほとんど。そこでシステム思考にて問題の本質に迫り、抜本的な解決を求めるのです。
人材採用難による人材不足のケースの場合、誰でもいいから採用して頭数をそろえても解決はしません。人材の定着率が高まるような企業体質を構築しなければ、抜本的な解決は見込めないのです。
③自己実現(マスタリー)
仕事をとおして「何を実現したいのか」「どんな自分になりたいか」「どう成長したいのか」を考えながら、継続した学習に取り組み、学習した内容の実践を繰り返すこと。個人が自分のなりたい将来像を描く力のことともいえます。
④共有ビジョン
チームといった組織を構成している個々のメンバーが共有しているビジョンのこと。個々のビジョンを持ちつつも、「自分たち組織のビジョン」を共有すると、組織全体のパフォーマンス向上に大きな影響を与えます。
同じベクトルで協力しながら学習を継続すると、個人も組織も大きな成長が見込めます。
⑤チーム学習
対話をベースにして意見を交換し合いながら学習していくこと。自由闊達な意見交換をしたり、意見のぶつかりを恐れないディスカッションを重ねたりして、組織としてより深い学習を可能にするのです。
個々人で学習を進めていくよりも大きな学習効果を生み出します。そして学習効果を、チームワークやチームビルディングといった組織力に活用できれば、学習する組織が自然と誕生するでしょう。
5.共有メンタルモデルとは?
組織の課題や解決方法、役割などについて組織のメンバー同士が共通に持っている知識のこと。
共有メンタルモデルのレベルが高ければ、メンバー同士の行動予測や円滑な協調、的確なコミュニケーションが行われるため、組織の結束力と実行力は高まります。ただし組織で共有する情報の精度が低ければ、良好な組織のパフォーマンスに結びつきません。
6.メンタルモデルを共有するメリット
メンタルモデルを共有するメリットは2つです。それぞれについて解説しましょう。
- 採用と人材育成を連動できる
- チームのパフォーマンス向上
①採用と人材育成を連動できる
採用や人材育成といった複数チームにまたがる業務で、複数の関係者同士がメンタルモデルを使うと、より質の高い人材確保を目指す仲間になっていけます。
メンタルモデルを共有した仲間同士で情報を交換し、採用と人材育成業務を連携させられれば、人事にかかわる複雑な課題や多くの組織を縦断するような課題についても、業務を連携させて取り組めるでしょう。
組織を変えずにメンタルモデルで組織同士の連携が生み出せる点は、人事業務にとって大きなメリットです。
②チームのパフォーマンス向上
チーム内の情報共有を行うだけでは、チームのパフォーマンス向上には不十分といえます。チーム関係者全員で、同じ方向を向いてメンタルモデルを共有するとよいでしょう。
体系化された知識だけでなく、お互いにメンタルモデルを確認してイメージとして保有できれば、チームビルディングが完成します。その結果、チームとしてのパフォーマンス向上が期待できるのです。
7.メンタルモデルダイアグラムとは?
ユーザーに関するメンタルモデルを可視化する手法のこと。たとえばユーザーへのインタビューやユーザーが参加したワークショップへの反応をまとめ、図表に落とし込むのです。メンタルモデルダイアグラムを用いると、下記のようなメリットが得られます。
- ユーザーからの情報をカテゴライズできる
- 偏見や個人的な嗜好などを排除できる
- ツールではなく人物がクローズアップされる
8.メンタルモデルダイアグラムの作り方
メンタルモデルダイアグラムはどのように作るのでしょう。その流れや戦略の立て方について解説します。
作成する流れ
メンタルモデルダイアグラムを作成する流れは、下記のとおりです。
- 社内において予測可能なペルソナの設計、 セグメントの決定を行う
- 決定したペルソナやセグメントなど、メンタルモデルダイアグラムのタワーグループが担っている現在の機能を書き出す
- セグメントユーザーに対してヒアリングを数回行い、その都度、内容を分析する
- メンタルモデルダイアグラムを再設計する
- メンタルモデルダイアグラムの予測と実績とのギャップを分析し、必要なコンテンツや今後必要となるコンテンツなどを明らかにする
ギャップ分析で戦略を立てる
ギャップ分析とは、組織におけるビジネスパフォーマンスに関する理想や現実を比較分析して、目標達成の方法を決めるツールのこと。
ギャップがあればそこから弱点を見つけられますし、よりよい意思決定に役立つ情報も提供でき、優先順位もつけていけます。
ギャップ分析をもとに機能やコンテンツを並べて戦略を立てれば、戦略や企業風土、プロセスや資源、スキルやテクノロジーといった理想と現実のギャップの中にビジネスチャンスを見出せるのです。
9.メンタルモデルについての本
メンタルモデルについての本を2冊、ご紹介します。
『ザ・メンタルモデル』
『ザ・メンタルモデル』は、自分のメンタルモデルを下記4つから捉えられます。それによって自己理解を助けてくれるのです。
- 価値なしモデル「私には価値がない」
- 愛なしモデル「私は愛されない」
- ひとりぼっちモデル「私は所詮ひとりぼっちだ」
- 欠陥欠損モデル「私には何かが決定的に欠けている」
『ザ・メンタルモデルワークブック』
『ザ・メンタルモデルワークブック』は、「自分は本当はどのような生き方をしたいのか」といった問いかけを通じて、自己理解を深めていける書籍です。
読み進めると、潜在意識の中に眠っている本当の自分を「思い出せる」でしょう。知らなかった自分の一面に気付けるかもしれません。