基礎控除申告書とは?【提出しないとどうなる】書き方、計算

基礎控除申告書とは、年末調整にて基礎控除を適用させる書類のこと。基礎控除申告書の定義や提出しない場合はどうなるか、書き方、注意点、関連書類を解説します。

1.基礎控除申告書とは?

基礎控除申告書とは、年末調整において基礎控除を適用させるため、従業員が会社に提出する書類のこと。

もともと令和1年度以前、基礎控除は所得額に関係なく一律38万円でした。しかし令和2年度以降、所得額が2,500万円以下の場合にのみ、段階的に違う金額が適用されるよう変更されたのです。

勤務先は従業員の所得額を把握する必要が出てきたため、新たに設けられたのが基礎控除申告書です。

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そもそも基礎控除とは?

所得控除の一種で、収入から経費を差し引いた所得から、所得税の算出前にさらに差し引く金額です。

基礎控除の金額は、所得額が2,400万円以下なら48万円、2,400万円超2,450万円以下なら32万円、2,450万円超2,500万円以下なら16万円となります。

働き方や扶養する家族の有無など、所得額以外の適用条件はありません。その性質から多くの納税者に適用される、所得控除のなかでも最も基本的な控除です。

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2.基礎控除申告書を提出しないとどうなる?

基礎控除申請書を提出しなければ、年末調整での基礎控除は受けられません。会社側に生じる不利益は特にないものの、未提出者は自らでの確定申告を迫られます。

確定申告は税金の基礎知識が必要なうえ、それなりの手間がかかるもの。さらに怠れば、基礎控除が受けられず、所得税を余分に払うことになります。

年末調整で基礎控除が受けられれば、こうした手間やリスクは発生しません。基礎控除申告書を提出するよう、従業員には適切な働きかけを行いましょう。

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3.基礎控除申告書の書き方

ここからは基礎控除申告書の書き方について、給与所得の収入金額と所得金額、給与所得以外の所得合計額、控除額の計算を説明します。

給与所得の収入⾦額

その年の1月から12月に支給された給与を、すべて合計して算出します。まだ支給されていない給与があれば、見込み額の概算で構いません。複数の会社から給与を支給されている場合も、すべてを合計して算出してください。

ここでいう「給与」とは、税金や保険料が引かれる前の総収入額から、交通費や通勤手当などの非課税額を除外したもの。従業員が間違えないよう、あらかじめ給与明細の見方を周知しておきましょう。

ただし所得が2,400万円以下の場合、基礎控除は一律48万円です。所得が2,400万円を大幅に下回る見込みであれば、そこまで神経質に計算する必要はありません。

給与所得の所得金額

給与所得の収入金額から給与所得控除を引いた金額で、基礎控除申告書の裏面にある計算式に当てはめて算出します。

給与所得以外の所得の合計額

給与所得を除く、以下9つの所得を合計して算出します。

  1. 事業所得
  2. 利子所得
  3. 配当所得
  4. 不動産所得
  5. 退職所得
  6. 山林所得
  7. 譲渡所得
  8. 一時所得
  9. 雑所得

それぞれの所得は、経費を差し引いてから合計しましょう。ここまでで得た「給与所得の所得金額」に「給与所得以外の所得の合計額」を足すと、「あなたの本年中の合計所得金額の見積額」が算出できます。

控除額の計算

判定欄の選択肢のうち、「あなたの本年中の合計所得金額の見積額」が当てはまるところにチェックを付けます。チェックした選択肢の右横に記載された金額が、その年に適用される基礎控除の額です。その金額をそのまま、「基礎控除の額」欄に記入しましょう。

また「区分Ⅰ」欄には、チェックした選択肢に記載されているAまたはB、あるいはCを、そのまま記載してください。区分Ⅰの情報は、配偶者控除や配偶者特別控除の適用に利用されます。

所得が1,000万円を超える場合、配偶者控除や配偶者特別控除は適用されないため、区分Ⅰの記入も必要ありません。

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4.基礎控除申告書を書く注意点

基礎控除申告書の書き方は、「給与以外の所得があるかどうか」「配偶者控除や配偶者特別控除が適用されるか」によって異なります。

給与以外の所得があれば「給与所得以外の所得の合計額」の算出が必要ですが、そうでない場合は算出・記入の必要はありません。同様に、配偶者控除や配偶者特別控除が適用外であれば、区分Ⅰは空欄で提出します。

配偶者控除や配偶者特別控除が適用外になるのは、以下のいずれかに当てはまる場合です。

  • 本人の合計所得額が1,000万円を超える
  • 配偶者の合計所得額が133万円を超える

本人と配偶者、双方の合計所得額に制限があるので、注意しましょう。

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5.基礎控除申告書以外の年末調整に必要な書類

ここからは基礎控除申告書以外の年末調整に必要な書類について、従業員・労務担当の双方の立場から説明します。

従業員が提出する必要のある書類

従業員が提出する必要のある書類は、扶養控除等(異動)申告書と保険料控除申告書の2つ。そのほか、住宅借⼊⾦等特別控除申告書や融資額残⾼証明書、源泉徴収票などの提出が必要な場合もあります。

扶養控除等(異動)申告書

扶養する家族の人数や年齢、所得などを申告する書類のこと。当年12月末時点の情報で提出し、それにもとづいてさまざまな控除が適用されます。扶養控除等(異動)申告書で適用が判断される控除は、以下のとおりです。

  • 配偶者控除
  • 扶養控除
  • 障害者控除
  • 寡婦控除
  • ひとり親控除
  • 勤労学生控除

受ける控除の種類によっては、追加書類の提出が求められます。

また扶養控除等(異動)申告書は、令和3年から住民税の「給与所得者の扶養親族申告書」と一体化しました。これにより扶養控除等(異動)申告書の提出で、住民税の控除も受けられるようになったのです。

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保険料控除申告書

当年に支払った保険料などを申告する書類のこと。証明書を添えて申告すると、所得税の算出前に該当の金額が控除されます。保険料控除申告書で申告するのは、以下の支払い金額です。

  • 一般生命保険料
  • 介護医療保険料
  • 個人年金保険料
  • 地震保険料
  • 本人が直線払った社会保険料
  • ⼩規模企業共済等掛⾦
  • 確定拠出年⾦(iDeCo)

一般生命保険料と介護医療保険料、個人年金保険料は、契約時期によって、新旧2つの保険料にわかれます。保険料控除申告書には、新旧それぞれの合計額を記入しましょう。

そのほかの書類

当年の状況によっては、扶養控除等(異動)申告書や保険料控除申告書以外にも、住宅借⼊⾦等特別控除申告書や源泉徴収票などの提出が求められます。マイホームを購入するのに住宅ローンを組んだ場合、以下3つの提出が必要です。

  • 住宅借⼊⾦等特別控除申告書
  • 融資額残⾼証明書
  • 年末残⾼等証明書

これらの提出により、住宅借⼊⾦等特別控除または特定増改築等住宅借⼊⾦等特別控除が受けられます。提出はローンを組んだ初年度のみで、2年目以降は必要ありません。また転職により中途入社した場合、以前の会社が発行した源泉徴収票の提出が必要です。

労務担当が作成する必要のある書類

労務担当が作成する必要のある書類は、⽀払調書や源泉徴収票、法定調書合計表や給与⽀払報告書などです。

⽀払調書

個人や法人に支払った金額を税務署に知らせる書類のこと。「誰に」「何のために」「どれだけ」支払ったのかが記載されており、提出により税務署は納税者の支払いを正確に把握できます。

支払調書にはいくつか種類があり、最も一般的なのが「報酬、料金、契約金および賞金の支払調書」です。「報酬、料金、契約金および賞金の支払調書」は、以下のような支払いに対して必要となります。

  • フリーランスへの外注費
  • 弁護士や税理士といった専門家への報酬
  • 事業宣伝広告としての賞金
  • 社会保険診察報酬支払基金が払う診察報酬

また支払調書は法定書類で、前年1年分を翌年1月末までに提出するよう義務づけられています。

源泉徴収票

各従業員の年間の所得額や控除額、源泉徴収税額などを記載した書類のこと。年末調整が終わったあと、従業員と税務署にそれぞれ一部ずつ発行します。源泉徴収票に記載されている内容は以下のとおりです。

  • 給与の支払金額
  • 給与所得控除後の給与額
  • 所得控除の合計額
  • 源泉徴収税額
  • 扶養する家族の情報
  • 社会保険料や生命保険料、地震保険料の控除額

年末調整の結果報告という意味合いが強く、従業員には当年の12月末まで、税務署には翌年の1月末までに、それぞれ提出しなければなりません。年末調整後以外にも、従業員の退職時などに臨時で発行される場合があります。

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法定調書合計表

源泉徴収票と支払調書の内容をまとめた書類のこと。その会社が当年に支払った金額を知らせるため、支払調書などの法定書類とともに税務署に提出します。法定調書合計票に記載されている内容は、主に以下のとおりです。

  • 給与所得の源泉徴収票合計票
  • 退職所得の源泉徴収票合計票
  • 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書合計票
  • 不動産の使用料等の支払調書合計票

自社の従業員に対して発行した源泉徴収票はもちろん、各支払調書の内容も合計して記入します。法定調書合計票の提出期限は翌年の1月末ですが、その性質から年末調整の完了後にしか集計開始できません。期限内に提出できるよう、早めの対応を心がけましょう。

給与⽀払報告書

従業員に払った給与の額を市区町村に知らせる書類のこと。市区町村は記載された給与額にもとづき、翌年の住民税額を決定します。給与支払報告書を構成するのが、個人別明細書と総括表の2つです。

  • 個人別明細書:各従業員に支払った給与の額を記載したもの、
  • 総括表:個人別明細書を市区町村別にまとめたもの。市区町村への提出時、個人別明細書の表紙として使われる

給与支払報告書と源泉徴収票は、提出先こそ異なるものの内容に変わりはありません。システムや複写用紙などを使い、同時に作成を進めるとよいでしょう。

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6.基礎控除申告書は余裕を持って提出しよう

基礎控除申告書の提出期限は、当年最後の給与を受け取る前日までと定められています。提出が遅れれば、自ら確定申告をしたり、所得税を払い過ぎたりなどになりかねません。

確定申告の手間や所得税の過払いを避けるためにも、従業員は早めの提出を心がけましょう。

なお従業員からの提出がなくとも、会社側に不利益はありません。しかし早期提出の働きかけや書き方の周知などを行えば、スムーズな記入・提出が期待でき、従業員の手間やリスクを減らせます。