コンティンジェンシーとは?【意味を簡単に】プラン、理論

コンティンジェンシーとは、予測できない事態のことです。ここではコンティンジェンシープランの構築方法や注意点、BCPとの違いなどについて解説します。

1.コンティンジェンシーとは?

コンティンジェンシー(Contingency)とは、不確実性や偶然性、不慮の事故や偶発事件などを意味する言葉のこと。日常生活ではあまり馴染みのない言葉ですが、ビジネスシーンの経営管理論やIT現場などで用いられます。

コンティンジェンシーと似た意味を持つ言葉として挙げられるのが「リスクマネジメント」。リスクマネジメントはプロジェクトやチーム単位で考えることが多いのに対し、コンティンジェンシーはさらに大きな規模で考えます。

会社そして事業としての継続を意識して考えるのが、コンティンジェンシーです。

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2.コンティンジェンシープラン

コンティンジェンシー、つまり起こり得る不測の事態を予測して立てる計画や対処策のこと。現代の企業活動では、テロや自然災害、極端な経済要因の変動や個人情報の流出など、さまざまなリスクに巻き込まれる可能性があります。

いずれもその状況に陥ってから対応したのでは遅く、大規模な損害が発生する可能性も高いです。不測の事態が起こっても、企業は可能な限り迅速に通常業務を復旧させ、被害を最小限にとどめなければなりません。

その際に必要な行動指針や事前対策を定めたものを「コンティンジェンシープラン」といいます。

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コンティンジェンシープランの目的

目的は「不測の事態が発生した場合にその被害を最小限に抑えること」。これには緊急時における自社の被害軽減はもちろん、取引先や顧客の連鎖的な損失を回避する目的もあります。

万が一自然災害やテロなどに遭遇した場合、従業員や企業資産などを守るために備えておかなければ被害は拡大しますし、安定して企業活動を続けられません。

緊急時でも社会的責任を果たすために活動し続けなければならない企業ほど、コンティンジェンシープランは必須です。

コンティンジェンシープランが注目される理由と背景

高度情報化社会と呼ばれる現代の企業活動では「何が」「いつ」「どのように」リスクの要因になるか予測できません。現代社会のリスクは多様化しているものの、対応を誤れば企業にとって大きな損害が生じてしまうでしょう。

そこで必要なのがコンティンジェンシープランの策定です。これにより不測の事態によって起こり得る損害を最小限に食い止められます。

コンティンジェンシープランは、企業活動だけでなく社会活動を持続するためにも重要です。たとえば生活インフラ業界の企業活動には、社会インフラ的な意味もあり、企業活動がストップすると一般生活者にも多大な影響を与えてしまいます。

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3.コンティンジェンシープランとBCP

コンティンジェンシープランと混同しやすいものに「BCP」があります。BCPの意味およびコンティンジェンシープランとの違いについて説明しましょう。

BCP(Business Continuity Plan)

通常業務の遂行が困難になった際、復旧や事業の継続を速やかに実行するための計画のこと。日本語では「事業継続計画」や「業務継続計画」などと訳されます。

緊急時に起こる可能性のある事業縮小や倒産を防ぐには、BCPを平常時から用意しておく必要があります。それによって緊急時に早期復旧、事業継続できるようにするのです。

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コンティンジェンシープランとBCPの違い

コンティンジェンシープランとBCPはどちらも緊急時の計画であるものの、それぞれ目的や観点が異なります。

  • コンティンジェンシープラン:各業務における緊急時の対応を策定する。「どうやって被害を抑えるか」にフォーカスした短期目線の計画
  • BCP:事業の継続を目的として各業務の復旧に優先順位をつける。「緊急時でもいかに事業を継続するか」に重点を置いている中長期的な計画

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4.コンティンジェンシープランの構築方法

コンティンジェンシープランは、一度大枠を策定してしまえば定期的に手をくわえるだけで運用可能です。ここではコンティンジェンシープランの構築方法について説明します。

  1. 作成目的と基本方針を明確にする
  2. 経営資源を見直してリスクを洗い出す
  3. 具体的な対応策を検討する
  4. メンバーへの周知
  5. 改善
  6. コンティンジェンシープランに関する参考書

①作成目的と基本方針を明確にする

はじめに「コンティンジェンシープランを作成する目的」を明確にします。「緊急時の被害を最小限にする」という大枠は共通目的ですが、その基準や何をもって被害とするか、被害の復旧とするかの意識はメンバー間で異なります。

そこに齟齬が生じないよう、あらかじめ作成目的や基本方針を明文化しておきましょう。方向性を見失わずに済みます。

②経営資源を見直してリスクを洗い出す

続いて平時の業務とその遂行に必要な人材、設備などを見直して、緊急時にさらされるであろうリスクを洗い出します。その際、一人の担当者にリスクの洗い出しをさせると偏りが生じたり漏れが生じたりする可能性も高いです。

各部署から複数の担当者を集め、意見交換を交えながらリスクを洗い出しましょう。

③具体的な対応策を検討する

リスクが洗い出せたら、それぞれに対する具体的な対応策を検討します。想定するリスクの具体的なシナリオをもとに、緊急時の体制と役割、経営資源が確保できなくなった場合の代替手段などを策定していく段階です。

担当者が不在であったり、何らかの事情で対応できなかったりする状況も想定して、複数の代行者、代行策を決めておくとよいでしょう。

④メンバーへの周知

プランが完成したら関係メンバーに共有、公開します。コンティンジェンシープランを一部のメンバーが理解しているだけでは、緊急時の対応が遅れたり、的確な対応ができなかったりする可能性も高いです。

リスク発生時に速やかな対応ができるよう、またメンバー全員が必要に応じて情報を参照できるように周知、保管します。

⑤改善

コンティンジェンシープランを一度作成すれば効果を発揮できるわけではありません。定期的な見直しと改善が必要です。継続的なブラッシュアップによって新しいリスクが発見できたり、実効性の高いコンティンジェンシープランになったりします。

⑥コンティンジェンシープランに関する参考書

FISC(金融情報システムセンター)では「金融機関等におけるコンティンジェンシープラン(緊急時対応計画)策定のための手引書」を発行しています。

システムリスクとオペレーショナルリスクに対するコンピュータセンターの対応、営業店や本部機構の対策などをまとめた書籍です。コンティンジェンシープラン策定のプロセスがシンプルに書かれているため、金融機関以外にも活用できます。

参考 コンティンジェンシープランFISC(金融情報システムセンター)

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5.コンティンジェンシープラン作成の注意点

起こり得る不測の事態を予測して対応計画を立てるコンティンジェンシープランを作成する際、何に注意すればよいのでしょう。

  1. コンティンジェンシープランの策定が最終目的ではない
  2. 周囲の理解を得られないときもある
  3. 定期的な訓練と改善が必要

①コンティンジェンシープランの策定が最終目的ではない

コンティンジェンシープランの策定には時間がかかります。より正確かつ質の高いプランを考えようとするあまり、検証や実行にたどり着かないこともあるでしょう。

また実際の運用によって、効果的な改善案や、これまで見えなかった問題点に気づけることもあります。

プランの策定は最終目的ではなく過程のひとつに過ぎません。策定に時間がかかりすぎる場合は作成途中のプランを仮運用し、そのなかでブラッシュアップするとよいでしょう。

②周囲の理解を得られないときもある

コンティンジェンシープランはあくまでも緊急時の予備計画です。多大な時間と手間をかけてプランを完成させても、それが必ず役立つとは限りません。よってプラン策定に対する理解を周囲から得られない可能性も高いです。

この状況のまま策定を進めても、十分なレビューが得られず、深刻なリスクを見落としてしまうでしょう。プラン策定時に社内全体の理解を得て、必要性を共有する必要があります。

③定期的な訓練と改善が必要

リスクによっては上層部から具体的な指示が出せず、現場スタッフの判断で動かなければならない場合もあります。コンティンジェンシープランを策定したあとは、各スタッフへの定期的な教育や研修を実施しましょう。

またコンティンジェンシープランは日々の改善によってブラッシュアップされ、より効果的かつ効率的になります。日頃からレビューと見直し、改善の機会を積極的に設けましょう。

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6.コンティンジェンシー理論

ビジネスシーンには「コンティンジェンシー理論」があります。コンティンジェンシー理論の概要と、誕生の背景について説明しましょう。

コンティンジェンシー理論とは

「どのような状況であっても完全に対応できるリーダーシップは存在しない」という考え方のこと。近年。「状況適合理論」とも呼ばれ、注目を集めています。

経営環境にはさまざまなスタイルがあり、唯一最善の経営組織はありません。リーダーが高いパフォーマンスを発揮できるかどうかは、本人の「資質」以上に職場環境や人間関係などの外的要因が影響します。

コンティンジェンシー理論では、このことを踏まえ、環境の変化に応じて組織の管理方法も変化すると考える理論です。

コンティンジェンシー理論とは?【意味をわかりやすく】
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コンティンジェンシー理論誕生の背景

それまで一般的だったのは、優れたリーダーには生まれながらにして知性や行動力、責任感などが備わっていると考える「リーダーシップ資質論」が一般的でした。

しかし技術の発展や産業の高度化が進む1960年代に入ると組織のニーズは多様化し「唯一最善のリーダーシップ」が通用しなくなってきたのです。

そのなか1964年、経営心理学者のフィドラーによって「求められるリーダー像は状況によって異なる」というコンティンジェンシー理論が提唱されました。

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6.コンティンジェンシー理論のメリットとデメリット

コンティンジェンシー理論におけるリーダーは、状況に合わせて自身の振る舞いを変化させます。人材育成におけるコンティンジェンシー理論のメリットとデメリットについて説明しましょう。

コンティンジェンシー理論のメリットとは

コンティンジェンシー理論のメリットとして下記の3つが挙げられます。

  1. 変化に強いリーダーを育成できる
  2. 組織の柔軟性を高める
  3. 上下関係に縛られにくい

①変化に強いリーダーを育成できる

リーダーには、状況を十分に理解して必要な行動を取れる能力が求められます。たとえば緊急時では、従来のマニュアルや組織のルールに反した行動が求められる場合もあるでしょう。

もし急を要する状況のリーダーが、「現場レベルのタスクがわかっていても上層部の指示があるまで動けない」場合、事態が悪化する可能性も高いです。

コンティンジェンシー理論では基本、「どのような状況でもつねに正解なリーダーは存在しない」と考えます。これにより変化に強いリーダーが育成可能です。

②組織の柔軟性を高める

たとえば同年代を相手にしていたリーダーなら根底の価値観が似ているため、具体的な指示がなくても部下は的確に動けます。しかし幅広い相手をまとめる場合、この「阿吽の呼吸」が通用しません。物事をロジカルに伝えられるリーダーが必要です。

このように変化に合わせてリーダー像を変えて、組織としての柔軟性を高められるのも、コンティンジェンシー理論のメリットといえます。

③上下関係に縛られにくい

組織内の人間関係がフラットなチームなら、個々のリーダーシップが発揮しやすくなります。また上下関係に縛られないため、ボトムアップでの声も上がりやすくなるでしょう。

必要以上に上下関係を意識しないため、一人ひとりが物事を柔軟に考える「ジェネラリスト的観点」を身につけるのも可能です。

コンティンジェンシー理論のデメリットとは

コンティンジェンシー理論にはさまざまなメリットがある一方、下記のようなデメリットも存在します。

  1. 専門性を高めるのが難しい
  2. 組織のコントロールが難しい

①専門性を高めるのが難しい

コンティンジェンシー理論では、どのような状況にも「正解」といえるリーダーシップは存在しないと考えています。「この分野の専門性を高めればどこに行っても通用する」という概念がないため、リーダーの専門性を高めるのには不向きです。

また組織内に専門的な知識やノウハウが蓄積されないため、場合によっては企業独自の競争力が低下する恐れもあります。

②組織のコントロールが難しい

とりわけ組織内がフラットな有機的組織は、上下関係に縛られにくい一方、全体をコントロールしにくくなります。場合によっては現状を正確に見極められず、組織が誤った方向に進み、最悪の場合業績が悪化してしまうでしょう。

コンティンジェンシー理論では、主導するリーダーに対して現状を正確に見極め、変化に合わせて的確に組織を変革できる能力が求められるのです。