5段階評価とは、5段階の評価段階で物事を評価する方法のことです。5段階評価の特徴やメリット・デメリットを解説します。
目次
1.5段階評価とは?
5段階評価とは、5段階にわけた評価段階にて特定の物事を評価する方法のこと。評定尺度法とも呼ばれます。
アンケートでもよく利用される「大変良い」「良い」「普通」「あまり良くない」「良くない」といった回答は、5段階評価にもとづいているものです。2択よりもユーザーや回答者の意見を吸い上げやすく、深い考察や評価を行うのに向いています。
それぞれの評価段階(スケール)は「リッカート尺度」と呼ばれ、これはアメリカの社会学者レンシス・リッカートの名前に由来しているのです。
人事評価における5段階評価では共通基準を使う
一般的に人事評価における5段階評価は「共通基準」が用いられます。共通基準とは「S・A・B・C・D」や「5・4・3・2・1」など、業種・役職を問わない同じ評価基準のこと。
Sと5が最高評価、Dと1が最低評価になります。5段階評価は古くからある評価方法ですが、現在でも採用している企業は少なくありません。
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2.5段階評価における絶対評価と相対評価
人事評価の方法は2種類にわかれます。それぞれどのような評価方法なのでしょう。
- 絶対評価
- 相対評価
①絶対評価とは
あらかじめ設定された目標をクリアしたかどうかで評価する方法のこと。所属している部署やグループ単位ではなく、社員一人ひとりの目標の達成具合によって客観的に評価を下します。
勤続年数や所属グループで評価が変わらず、純粋に個人の成果が評価に直結するため、社員のモチベーションアップやスキルアップにつながるのです。近年、年功序列型の古い評価制度を改め、絶対評価を採用する企業が増えています。
②相対評価とは
ほかの社員と実績を比較して評価を決定する方法のこと。比較の際はあらかじめランクを決めて、そこに社員を当てはめていきます。
たとえばある企業に50人の社員がいたとき、最初から「S評価:2人」「A評価:5人」「B評価:8人」「C評価:15人」「D評価:20人」という具合に、ランクと割り当ての人数を決めておくのです。
そして成績順に割り当てていきます。少し前まで、この相対評価を採用する企業が多く見られました。
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3.5段階評価の評価基準と表現方法
5段階評価の評価基準は、回答しやすい評価段階の用意が重要です。一般的な評価段階とその意味を説明しましょう。
- 非常に優れて達成している
- やや優れて達成している
- 標準的に達成している
- 達成がやや不十分
- まったく達成できていない
①非常に優れて達成している
「非常に優れて達成している」は、5段階評価のなかで最も良いと判断される評価段階のこと。ランクでは「S」や「5」に該当し、社員のなかで抜きんでた成果を出し、ほかの社員の見本となるような場合にこの評価がつけられます。
「極めて優秀」「模範となる成績」「期待をはるかに上回る結果を出した」などの意味を含むことが多いでしょう。
②やや優れて達成している
「やや優れて達成している」は、期待された水準を上回っていると判断される評価段階のこと。ランクでは「A」や「4」に該当し、期待された水準を申し分なく越えている、または難易度の高いノルマをクリアした場合にこの評価がつけられるのです。
「日常まったく問題ない出来」「期待値を上回る結果を出した」などの意味でも使われます。
③標準的に達成している
「標準的に達成している」は、期待された水準を概ね達成していると判断される評価段階のこと。ランクでは「B」や「3」に該当し、期待された水準どおりの結果を出している、標準的に達成している場合にこの評価がつけられます。
5段階評価のなかで中間点に位置する評価段階で、「可もなく不可もなく、あくまで標準」という意味が強いでしょう。
④達成がやや不十分
「達成がやや不十分」は、期待された水準をやや下回っていると判断される評価段階のこと。ランクでは「C」や「2」に該当し、期待された水準を満たしていない、達成度がやや足りない場合にこの評価がつけられるのです。
期待を下回っているため、「課題がある」「部分的に指導が必要」「少し手がかかる」など、ややマイナスな意味を含む場合もあります。
⑤まったく達成できていない
「まったく達成できていない」は、5段階評価のなかで最も悪いと判断される評価段階のこと。ランクでは「D」や「1」に該当し、期待された水準にまったく届いていない、目標を大きく下回っていると場合にこの評価がつけられます。
この評価では「業務に支障が出る」「ミスが多すぎる」「要指導」など、問題のある社員としてみなされるかもしれません。
評価基準とは?【作り方をわかりやすく】目的、項目の具体例
評価基準とは評価するための水準であり、公平かつ客観的な評価を行ううえで重要な指標です。人事評価への不満は優秀人材の離職の原因ともなり、最悪のケースでは業績不調を招く恐れもあります。
今回は、評価基準と...
4.5段階評価を作成する際のポイント
5段階評価で公正な評価を出すには、5段階評価の内容に注意する必要があります。5段階評価を作成する際のポイントを説明しましょう。
- 中立的な立場を用意する
- 評価段階を増やしすぎない
①中立的な立場を用意する
5段階評価では「どちらでもない」「可もなく不可もなく」などの中立的な尺度が用いられます。中立的な尺度は、良いか悪いかを明確に判断できない場合の選択肢で、回答者に心理的な負担がかからない点がメリットです。
しかし回答しにくい項目は中立的尺度に回答が集中しやすいため、項目によっては5段階評価だけでなく3段階評価なども必要となります。
4段階評価や6段階評価もある
近年は5段階評価だけでなく、4段階評価や6段階評価を採用する企業も増えています。4段階評価や6段階評価では、5段階評価に必ずある「中立的尺度」がなくなるため、「良いか悪いか」を明確に判断できるのです。
評価段階を偶数にすると「真ん中より上か下」という点がはっきりするので、社員もその点を強く意識できます。このように中立的尺度を省いた結果、曖昧な評価が出なくなる点が、評価段階を偶数にするいちばんのメリットです。
②評価段階を増やしすぎない
評価段階を増やしすぎると、それぞれの違いが細かくなりすぎて評価しにくくなります。選択肢が多すぎると回答が難しくなり、回答そのものの回収率が低下しかねません。
また得られた結果を分析する際も、評価段階が多すぎるとそれだけ検証に時間がかかってしまいます。7段階評価の場合、5段階評価と同じく中立的尺度が入るためそこに回答が集中し、5段階評価と大して変わらない結果になるときもあるのです。
評価段階に正解はない
評価段階に「これが正解」というものはありません。とある企業では4段階評価のほうが評価しやすく、別の企業では5段階評価のほうがよいといったケースはよく見られます。
評価段階を作成する際は「アンケートを実施するいちばんの目的は何か」を考えたうえで、評価段階の数や中立的尺度を入れるかどうか、決定しましょう。
5.5段階評価のメリットとデメリット
5段階評価のメリットとデメリットをそれぞれ説明します。
5段階評価のメリット
5段階評価のメリットは、回答に「中立的な尺度」がある点。「良い・悪い」のどちらかで判断しなければならない場合、回答者にとってある程度負担になるものの、「どちらともいえない」「普通」などの評価段階があれば心理的な負担が軽減されます。
集計する側のメリットは、平均値を出しやすく分析が楽である点です。
5段階評価のデメリット
5段階評価のデメリットは、中立的尺度に回答が集中してしまう可能性の高い点。もともと日本人は心理的な面で極端な回答をせず、中立的な立場を取る傾向にあります。
中立的尺度に回答が集まると、良いか悪いかの判断が曖昧になってしまい、「アンケートを集計しても改善点が把握できず、無駄な時間とコストを費やした」という結果になりやすいでしょう。
最低評価と最高評価がつかない場合も多い
5段階評価では、最高評価または最低評価がつきにくくなります。中立的尺度に回答が集まりやすいのと同様、日本人は極端に良し悪しを判断したがらない傾向にあるのです。
人事評価でも、意図的に大きな差をつけないようにする評価者が多く、最低評価はほとんど設定されないでしょう。しかし最低評価は明確な問題点を見つけやすく、迅速な改善につながります。早期改善を促すならば最低評価も活用すべきです。
6.5段階評価の活用と集計
5段階評価で得られたデータの活用方法は、人事や営業などさまざまです。5段階評価の活用および集計の仕方を説明します。
5段階評価は給与や昇進などさまざまな場で使われる
5段階評価は、社員の給与や昇進の決定や社員教育などで活用されます。5段階評価を実施する最大の目的は、社員の働きを評価したり、組織や部署の現状を把握したりすること。
各社員の5段階評価を分析すると、社員の給与や昇進を検討する際の参考にできます。また「指導や教育が必要」とされる社員を見つける点でも役立つでしょう。
顧客満足度の調査や成績評価に活用する場合も
5段階評価は、人事評価だけで活用されるものではありません。日本では昔から、人事評価だけでなく顧客満足度調査や学校の成績表など、さまざまな業界で5段階評価が採用されてきました。
企業では販売している商品やサービスが、ユーザーからどのような評価を得ているかなどを知るために、5段階評価が実施されています。
集計には単純集計やクロス集計を使う
5段階評価で得られたデータは、適切な集計を実施してはじめて有効に活用できます。主な集計方法は「単純集計」と「クロス集計」です。
- 単純集計:質問ごとに何人から回答が得られたか、また割合としてそれが全体の何パーセントかなどを計算する
- クロス集計:単純集計で出た数値を「男女別」「年齢別」「地域別」など、ほかの質問とかけ合わせる。より詳細なデータを導き出せる
ヒューマンエラーが起こる可能性もあるので注意
集計を手作業で行うと、ヒューマンエラーが発生する可能性もあるので注意が必要です。エクセルを使用してもよいですが、評価項目の多さや複雑な分析作業から計算違いなど、さまざまなミスが発生する恐れもあるでしょう。
企業によっては、ミスなく効率的に集計するために専用の集計ツールを導入しているケースも少なくありません。