バーチャルチームとは、離れた場所にいるメンバーがITツールを使い、共同で作業するチームのこと。バーチャルチームの「メリット・デメリット」や「実践方法」などを解説します。
目次
1.バーチャルチームとは?
バーチャルチームとは、物理的に離れているメンバーがITツールを活用して作業するチームのこと。SNSやWeb会議システム、チャットといったネット上の機能を駆使し、実際に顔を合わせなくても仕事を進めていきます。
なお実際に顔を合わせて仕事を進めていくチームは「リアルチーム」と呼ばれるのです。
バーチャルチームの意味
物理的に離れている人同士が仮想空間を通して一緒に仕事をすることに、バーチャルチームを組織する意味があります。
リモートワークの導入が進んだ現在、オフィスへ出社しない社員も増加しています。また海外の企業と製品やサービス、システムなどの研究開発を行うケースも見られるようになりました。
このようなプロジェクトでは、チームミーティングなどを対面で行うのが難しいもの。そこで、物理的に離れている人同士でも、コミュニケーションを取って仕事を進められるバーチャルルームの必要性が高まっているのです。
バーチャルの意味
バーチャル(Virtual)は「仮想」や「仮の」という意味の語です。たとえば空に浮かんでいる太陽は実物ですが、パソコンの画面に表示されている太陽は実物ではないため仮想(バーチャル)な太陽といえます。
身近な例では音楽と映像を組み合わせた「バーチャルリアリティ(仮想空間、VR)」があり、ゲームやアトラクション、さらには医療や航空機の訓練などにも活用されているのです。
バーチャルチームの類似語、バーチャルオフィス
バーチャルオフィスとは、バーチャル(仮)のオフィスのこと。
バーチャルなオフィスなので物理的には存在しませんが、一般的なオフィスと同様に住所や電話を取得して事業所として登録できます。また普段の仕事は自宅やカフェで行い、郵便の受け取りはバーチャルオフィスで行うといった使い分けが可能です。
近年、コロナ禍の影響で働き方が見直され、実際のオフィスを閉じてバーチャルオフィスに移行する企業も増えています。
2.バーチャルチームが増加する背景
バーチャルチームが増加している背景として挙げられるのは、企業のグローバル化や働き方の多様化です。
3.バーチャルチームのメリット
企業がバーチャルチームを組織するメリットについて、説明します。
- 地理的制約を受けないビジネス展開
- 24時間稼働可能
- 生産性向上
- ワークライフバランスの実現
- 優秀な人材の採用
①地理的制約を受けないビジネス展開
SNSやITツールなどを活用して連絡を取り合えば、お互いが違う場所にいても効率的に仕事を進めていけます。
テレワーク社員の参加はもちろん、世界各国の優秀な人材を集めてビジネスチームを結成するのも可能です。グローバル展開を目指す企業は導入を検討すべきでしょう。
②24時間稼働可能
たとえばバーチャルチームの編成で、世界各国の異なるタイムゾーンに住んでいる人をチームに組み入れると、時差を利用した24時間体制のサポートを実現できます。
チームミーティングなどは時間の調整が必要ですが、通常の勤務時間まで合わせる必要がなく、各国のメンバーに負担をかける心配がありません。
③生産性向上
バーチャルチームの良さは、時と場所を超えて連帯感と協調性が生み出せること。バーチャルであれリアルであれ、チームが一致団結して目標に向かって事業を進めていくことは、企業全体の生産性の向上につながります。
バーチャルチームの場合、直接会わなくてもITツールを活用してチーム力を高めていけるのです。
④ワークライフバランスの実現
バーチャルチームで働く社員は、ワークライフバランスを実現しやすくなります。バーチャルチームの社員は、出社せずに自身の好きな場所と時間で仕事ができるため、仕事とプライベートの時間のバランスが取れるのです。
育児をしている女性や、在宅介護が必要な人なども柔軟な働き方が可能となり、勤務時間を理由とする退職を防げます。
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⑤優秀な人材の採用
バーチャルチームは、人材採用においても地理的な制限を受けません。企業にマッチした人材、プロジェクトに合わせた人材を、全国や海外から採用できます。柔軟な勤務体制がとれるので、応募者の増加にもつながるでしょう。
4.バーチャルチームのデメリット
バーチャルチームを組織する場合、デメリットとなりえる点に注意が必要です。
- 気軽な話ができない
- 不安定なテクノロジー
- 管理や評価の難しさ
①気軽な話ができない
困ったことがあってもメンバー同士が遠い場所にいるので、コミュニケーションがとりにくくなります。Web会議やチャットなどのITツールを使ったコミュニケーションでも、即座に返答が来るとは限らないからです。
問題が発生しても、誰にも相談できず仕事が進まない可能性もありえます。ちょっとした雑談も控えがちになるので、小さな課題を見逃してしまう恐れもあるでしょう。
②不安定なテクノロジー
バーチャルチームでの仕事はITツールが必須です。しかしITツールが100%確実に作動する保証はありません。ITツールの不具合、インターネット回線の障害など、テクノロジーの不安定さによって仕事が進まないケースもあります。
③管理や評価の難しさ
バーチャルチームでは、社員の仕事状況を把握しづらくなります。一般的なオフィス勤務であれば、社員の仕事ぶりを確認できますが、バーチャルチームでは進捗管理が難しくなります。
また人事評価も課題です。既存の評価方法が適用できない場合、評価制度を見直さなければなりません。社員側も「自分は正当に評価されているだろうか」と、評価方法や評価結果に不信を抱く恐れがあります。
5.バーチャルチームビルディングとは?
チームビルディングとは、目的達成のために社員ひとりひとりの個性やスキルを踏まえてチームを組織すること。ここではチームビルディングについて説明します。
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バーチャルチームビルディングの目的
特定の事業のみならず企業全体の生産性を向上させることが、チームビルディングの大きな目的です。各社員の個性やスキルが十分に生きるチームを組織すれば、企業全体のパフォーマンスが向上し、利益アップに結びつきます。
ほかにも社員同士のコミュニケーションの「活性化」や「ビジョンの共有と浸透」、「人材育成」といった目的で、チームビルディングが活用されます。
6.バーチャルチームビルディングの実践方法
ここではバーチャルチームビルディングを効果的に行う方法を説明します。
- プロジェクト管理ツールを使う
- コミュニケーションツールを使う
- バーチャルオフィスをつくる
- 研修やセミナー、ワークショップを実施する
①プロジェクト管理ツールを使う
バーチャルチームはメンバーの仕事の状況が把握しにくいのでプロジェクト管理ツールを使い、各メンバーの仕事の進捗状況や課題などを管理することが重要です。管理者だけが状況を見るのではなく、チームメンバー全員へリアルタイムに共有しましょう。
②コミュニケーションツールを使う
1on1ミーティングを定期的に行う目的は、バーチャルチーム内の部下の自主性や協調性の促進。1on1ミーティングとは、上司と部下が1対1で行う定期面談で、チームにおける部下の帰属意識を高められます。
1on1ミーティングを定期的に行うと、連帯の取れたバーチャルチームビルディングを実現できます。
③バーチャルオフィスをつくる
バーチャルオフィスを作ると、メンバー同士が気軽にコミュニケーションを取れる環境を生み出せます。とはいえバーチャルオフィスは実在しません。
ここでいうバーチャルオフィスは、Webのコミュニケーションスペースです。メンバー一人ひとりが会話できる状態にしておけば、どれだけ距離が離れていても社内で顔を合わせるのと同じようにコミョニケーションを取っていけます。
④研修やセミナー、ワークショップを実施する
バーチャルチーム内で定期的に研修やワークショップを実施すると、チームワークを強化できます。
バーチャルチームはその特性上、コミュニケーション不足になりやすいのがデメリット。そのため現在の状況やプロジェクトの内容に合わせて、短期または長期的な研修やワークショップを実施するのが効果的です。
バーチャルチームビルディング研修で使えるゲーム
バーチャルチームビルディングにおいても、研修やワークショップなどが必要です。研修コストをなるべく抑えたいときは、無料で使用できるオンラインツールを活用しましょう。
無料で実施できる研修方法のひとつとして「デジタルツアー」が挙げられます。これはバーチャルチームの各メンバーが、自身の住んでいる場所の特徴やおすすめスポットなどを、オンライン上で紹介するというものです。
撮影した動画やGoogleストリートビューなどを使って、自分の情報を共有します。メンバー同士がお互いのことをよく知っていけるため、親近感や連帯感の向上につながるのです。
7.バーチャルチームビルディングの注意点
ここではバーチャルチームビルディングを行ううえで注意すべき点を説明します。
- 目的の明確化
- 通信環境や導入ツールの検討
- 会社主導
- ルール作り
- トラブル発生時の対応
- 定期的な振り返り
①目的の明確化
バーチャルチームビルディングで最も重要なことは、チームの目的を明確にすること。目的が明確でなければ、チームが進むべき方向や目標が曖昧になり、メンバーはどのように行動していけばよいのかわからなくなります。
5W1Hといったフレームワークを活用し、目標と期限、手段や役割などを明確にしましょう。それによりメンバー一人ひとりがパフォーマンスを維持しながら仕事に集中できます。
②通信環境や導入ツールの検討
チームビルディングを実施する際は、事前にどのようなITツールを使用するかを確認して、メンバー全員が同じ環境で仕事を取り組めるようにします。
バーチャルチームビルディングは、ITツールがなければ成り立ちません。しかしそれぞれがバラバラのITツールを使用していては、統制が取れなくなり、無駄な作業が発生する恐れもあります。
メンバーによっては使用するツールに不慣れな場合もあるので、場合によっては指導や研修も必要です。
③会社主導
バーチャルチームビルディングは企業主導で行います。同様にチームメンバーの交流を促進するのも、企業や上司の仕事です。
リモートワークだとどうしてもメンバー間のコミュニケーションが希薄になりやすいもの。チーム力を高めるためには企業や上司が率先してメンバー同士のコミュニケーションを促す必要があります。
④ルール作り
バーチャルチームビルディングでは、メンバー同士が距離的に離れていることを考慮したルールの設定も重要です。
たとえば会議のルールが挙げられます。時差がある国との会議開始時間をどうするか、どの言語でコミュニケーションを取るかなどを決めなければなりません。
またオンラインではしぐさや声が伝わりにくいので、意思表示や質問、確認などに関するルールなども必要になるでしょう。そのほか報告や情報共有、作業環境のルールなども挙げられます。
⑤トラブル発生時の対応
バーチャルチームに参加する社員のなかに、リモートワークやITツールに慣れていない人がいるかもしれません。もしものトラブルが発生したときでもすぐに問題が解決できるよう適切なフォロー体制を構築しておく必要があります。
⑥定期的な振り返り
チーム内のルールや方向性の定期的な振り返りも重要です。
「チーム本来のビジョンや目的にズレが生じていないか」や「現状のルールで問題がないかどうか」を確認します。もし改善点があればメンバーから意見や要望を聞きながら、チーム全体をブラッシュアップしていきましょう。
8.バーチャルチームビルディングツールの選択ポイント
ここではバーチャルチームビルディングで使用するツールの選び方を説明します。
- 定性情報が把握できるか
- 最適な機能の選択
- 料金
- 使いやすさ
①定性情報が把握できるか
バーチャルチームビルディングでは、メンバー全員の定型情報を共有できるツールが有効です。定性情報とは、数値に置き換えるのが難しい情報のこと。たとえば文章や画像、映像などが該当します。
バーチャルチームビルディングにおける定性情報にはチームメンバーの考え方や性格、体調なども含め、これらをメンバー内で共有しましょう。メンバー同士で共有できる情報が多ければ多いほどコミュニケーションが円滑になり、チーム力がアップします。
②最適な機能の選択
バーチャルチームビルディングツールには、以下のような機能が搭載されています。
- コミュニケーション機能
- データや画像の共有機能
- チームメンバー管理機能
コミュニケーション機能にはチャット、Web会議システムなどが該当し、物理的に距離があるバーチャルチームに必須の機能です。データや画像共有機能があれば、仕事で必要となるデータをメンバー間でスムーズに共有できます。
チームメンバー管理機能は、「メンバーが今どこで何をしているか」や「誰と誰がミーティングを実施しているか」などをチェックできる機能です。各機能のメリットを検討し、現状のチームに最適なツールを選ぶとよいでしょう。
③料金
チームビルディングツールは、それぞれで料金形態が異なります。たとえばユーザーライセンス型をとっても、使用する人数の多さや機能によって料金が上下するからです。
チームの結成期間やプロジェクトの内容に合わせて、用途やコスト面で最適なツールを選択しましょう。
④使いやすさ
チームビルディングツールを選ぶ際は、使いやすさの考慮も重要です。どれほどコストや時間をかけてツールを導入しても、操作が複雑あるいは難しくては、社員が使いこなせません。
バーチャルチームのメンバー全員が「使いやすい」と感じられる、そしてメンバーのスキルやリテラシーに合ったツールを選べば、より作業効率をアップできます。