ガクチカとは「学生時代に力を入れたこと」の略語です。ここでは自己PRとの違いや具体例、評価基準などについて解説します。
目次
1.ガクチカとは?
ガクチカとは、「学生時代に力を入れたこと」を略した言葉で、就職用語のひとつです。
新卒採用では中途採用と違って前職での成果やエピソードを聞けません。そこで学生をより深く知るための方法として、面談やエントリーシートでガクチカを質問するのです。
定番となったこの質問に対して、学生はしっかりと対策してきます。人事担当者には内容を見極めるスキルが必要でしょう。
2.企業がガクチカを尋ねる意味
人事担当者が新卒採用時にガクチカを尋ねるおもな理由は4つです。
- 成長率を見る
- 価値観を知る
- 個人の好みを知る
- プロセス評価
①成長率を見る
人事担当者はガクチカのエピソードから「困難をどう乗り越えたのか」「そこから何を得たのか」を知ります。そこからその学生が持っている能力や成長度を測るのです。
「困難に向かってどのような努力をしたのか」「何を工夫して目標を達成したのか」などを知った担当者は、そのエピソードから入社後の貢献、成長を期待して採用の基準とします。
②価値観を知る
人事担当者はガクチカのエピソードをとおして「この学生にはチームワークがあって、仲間を尊重するタイプなんだな」「自分のアイデアを形にして、周囲を巻き込むのがうまいタイプなんだな」と理解します。
とりわけ新卒の採用選考では実務スキルや経験で判断するのが難しいもの。よって価値観や考え方を重視する傾向にあるのです。
③個人の好みを知る
ガクチカを尋ねると、学生の好みやセンス、人柄を理解できます。
たとえば「学生時代はテニスを続け、県大会に出場したこともある」というガクチカがあった場合、担当者は「好きなことに打ち込んで結果を残せるタイプなんだな」という印象を持つのです。
また「趣味のプラモデル作成を活かして作品の制作に取り組んできた」と聞けば「コツコツと続けるのが好きなタイプなのかも」ととらえられます。
④プロセス評価
目標達成だけでなく、成果にいたるまでのプロセスに着目した人事考課手法として「プロセス評価」があります。これは社会人にはもちろん、学生にも通用する評価基準です。
学生時代に力を入れたガクチカのエピソードから、目標に対してどのようなプロセスを経て成果につなげたのかを理解します。そこで得た経験や教訓を入社後も生かせるのか、入社後も課題に対して適切なプロセスを踏んで解決につなげられるかを測るのです。
プロセス評価とは?【わかりやすく解説】具体例、項目例
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3.ガクチカと自己PRの違い
「自身をアピールする」という意味ではガクチカ自己PRも同じです。しかし2つを混同してしまうと担当者が意図する回答を得られず、相手を正しく評価できません。ここではガクチカと自己PRの違いについて説明します。
自己PRの意味
自己PRとは、能力や人柄など自分のよさを相手にアピールして採用メリットを示し、企業でいかに活躍できるかを売り込む活動のこと。
企業がどう評価するかが重要になるため、応募者は企業が求める人材像に合わせてアピールします。また企業はそのアピールを見て企業に合った人材か、自己分析がきちんとできているかを確認するのです。
違いは求めるポイント
相手に自分をアピールするという意味では自己PRもガクチカも同じです。しかしこれらには「質問者の意図」に違いがあります。
自己PRでは自分の強みや特徴を求めています。そのため「私の強みはコミュニケーション力の高さです」「私は最後まで諦めない人間です」といったように、企業にプラスとなる自己の性格や強みを伝えるのです。
これに対してガクチカでは困難の乗り越え方を求めます。「学生時代はボランティアに取り組み、この課題をこうして乗り越えました」のようなエピソードを伝えるのがガクチカです。
ガクチカと自己PRはどちらも重要
ガクチカと自己PRはどちらも重要度の高い質問です。ガクチカと自己PR、そして志望動機は面接やエントリーシートでの出題頻出が高いため、就活3大質問とも呼ばれています。
またガクチカと自己PRのエピソードは重複しやすいもの。しかし別のエピソードが望ましいといわれています。これは複数エピソードを用意したほうが経験豊富な人材だとアピールできるためです。
4.ガクチカの例
ガクチカを評価する際は、単に何かに一生懸命に取り組んだという体験ではなく、成果に結びついたプロセス、成功体験に注目することが重要です。ここでは各事例での評価ポイントについて説明します。
アルバイトの評価ポイント
アルバイトの経験は「仕事」という切り口でアピール、評価できるため、将来の具体的な働き方につなげやすいです。
たとえばカフェのアルバイトでは、シフト管理に使用したExcelの利用経験や人材補強のための施策提案、リピート客増加に向けたセットメニューやキャンペーンの提案などを評価できます。
学業の評価ポイント
ガクチカで学業を評価する際は、次の3点を見ます。
- 学業に対する姿勢から真面目さや積極性、継続力を知る
- 学業に対する興味関心を知る
- 学業選択に対する思考の深さを知る
たとえば理系の学部に進んだ学生から「数学が得意で問題を解くが楽しい」というエピソードを聞き出したとしましょう。するとこのエピソードから、「数字に強い営業活動が期待できそう」「分析力が高そう」といった判断ができるのです。
ゼミの評価ポイント
ゼミでの研究は専門性が高い場合も多いため、初見の人が読んでもすぐ理解できる内容にまとめられているかを見ていきます。ガクチカで注目すべきは専門性より「どのような目標を立てて」「どのようにアプローチしたのか」という課題解決能力です。
そこで「専門用語の補足に多くの文字数を使っていないか」「過去の事象を羅列しただけになっていないか」などをチェックします。
部活の評価ポイント
部活動をテーマとしたガクチカも多く見られます。ここでの評価ポイントは「明確な目標や目的を立ててそれに向けて行動できたか」「周囲とのかかわりによって何を得られたのか」の2つ。
前者では目標設定や達成プロセスに関する評価を、後者では入社した際にチームの一員としてどのような行動ができるかを評価できます。
サークルの評価ポイント
サークル活動のガクチカはマネジメント力やリーダーシップ、チームや組織における学びを評価します。仕事では多くの場合チームという組織に属して活動するもの。サークル活動で身につけた協調性や信頼構築能力はすべての分野、業界に必要なスキルです。
また学年や学部、役職の異なるメンバーが集まったサークル活動での素養は、年代や職種、役職などが異なるメンバーで構成された会社という組織でも再現しやすいというメリットがあります。
趣味の評価ポイント
ガクチカではテーマそのものではなく、人間性や物事へ取り組む姿勢、学ぶ力を見ます。そのため趣味に関するガクチカも有効です。
とくに趣味は個人の志向性や興味の方向性を明確にあらわすため個性が出しやすく、他者との差別化を図りやすくなります。
もちろん差別化を図るのが目的ではありません。経験や実績のインパクト、企業で活かせる学びなどを的確に評価します。
ボランティアの評価ポイント
ボランティア活動もガクチカのエピソードとして用いられやすいテーマです。「目的や目標を明確化しやすい」「主体性や行動力、具体的な学びをアピールしやすい」点がメリットといえます。
もちろんボランティア活動そのものが評価につながるわけではありません。人事担当者は「ボランティアからどのような学びを得たのか」「学んだことを生かした入社後の活躍がイメージできるか」を見極めなければなりません。
5.ガクチカの評価基準、ポイント
多くの人事担当者は基本、ガクチカの実績内容をそこまで重視していません。では担当者はガクチカの何を評価するのでしょうか。ここではガクチカの評価基準を3つにわけて、説明します。
- 実行力の高さ
- 協調性の高さ
- 克服力の高さ
①実行力の高さ
「入社後、経験をとおして身につけた力を社内で活用できるか」を評価するもの。たとえば以下のガクチカを比較した際、後者のほうが入社後の再現性が高いため、実行性が高いと評価できます。
課題解決のために日々学習を重ねて、解決に必要な力を身につけた
課題解決のために学習の計画を立ててPDCAサイクルを回し、課題解決力と計画性を身につけた
②協調性の高さ
ガクチカのエピソードから既存社員との協調性を見る場合もあります。会社は基本的に組織で動きます。学生の気付きや学びから協調性のある人材か、組織でも活躍できる人物かを評価するのです。
たとえば「ルールや慣習を重視する環境下で柔軟に活躍できた」「メンバー同士の意見が異なるチームでも方向性を決めて目的を達成できた」などのエピソードから、協調性の高さを見ていけます。
③克服力の高さ
困難をどのように乗り越えたかというエピソードから、入社後の具体的な働き方をイメージできます。以下のように具体的な数字が盛り込まれていれば、より明確にプロセスをイメージできるでしょう。
「資格試験に1度落ちてしまったので毎朝1時間早起きして勉強時間を増やした。2回目の試験まで3か月あったので、これにより90時間分の勉強時間を増やせて、問題集を1冊多くクリアできた。この結果、2回目で資格試験に合格できた」
6.評価できるガクチカの書き方・構成
ガクチカでどれだけ魅力的な取り組みをアピールされても、そこから何も学んでいないのであれば人事担当者の目には留まりません。
担当者はガクチカから学生の素直さや誠実さなどの人柄、コミュニケーション能力などの対人スキル、学生の価値観と企業カルチャーのフィットなどを評価します。
ガクチカのフレームワーク
ガクチカとして魅力的なエピソードや有意義な経験を伝えるには、論理的な文章に組み立てて的確にPRする必要があります。とくに次のようなフレームワークを意識したガクチカなら、担当者も入社後のイメージを描きやすくなります。
- 結論:結論ファーストで「何に取り組んだのか」が書かれている
- 動機:なぜ取り組んだのかという理由
- 課題:障害となった困難や目標を明確にとらえられているか
- 成果:具体的にどのような取り組みでどのような成果を得たのか
- 自己紹介:自身のどのような人柄が成果につながったのか
- 学び:何を学び、今後どのように活用するか
ガクチカ内容と評価判断
人事担当者はガクチカの内容から応募者の価値観や考え方を判断します。ここではガクチカから企業が評価するポイントについて説明しましょう。
人物像の評価
ガクチカのエピソードから、応募者は企業研究を入念に行ってきたか、企業が求める人物像なのかを評価します。
たとえばWebコンテンツ制作会社に記事作成の経験を、接客業にカフェアルバイトでの接客経験をというように、企業が専門に扱っている技術や分野に関するエピソードなどがあると評価しやすくなるのです。
担当者はこれらのエピソードから自社のビジョンに合った人材か、本人の価値観は自社の文化に合っているかなどをチェックします。
具体性の評価
評価時はガクチカの内容に具体性があるか、もチェックします。これは入社後も具体的な行動を取れる人材かを判断するためです。
課題解決の方法はひとつではなく、同じ課題に対しても人によって取るべき行動は異なります。また具体的なエピソードからは、先に述べた応募者の人物像や、後述する論理性についても評価できます。
論理性の評価
論理的なガクチカからはロジカルシンキング能力、つまり物事を整理して効率よく行うための能力も評価できます。
たとえば「飲食店での接客経験から、お客様のさまざまなニーズに応える力をつけました」というエピソードからは、接客に力を入れた理由が見えません。
これに「もともと人とかかわることが好きで、接客経験が営業職に必要なスキルの習得につながると考えたからです」という理由があれば、本人の価値観や考え方が伝わり、高評価にもつなげやすくなります。
7.ガクチカを確認する際に注意すべきこと
人事担当者がガクチカを見る際は、次の3点に注意しましょう。形式的に情報が羅列されたガクチカを鵜呑みにせず、物事の本質を見極めるのが重要です。
- 嘘がないか確認
- 企業に対する理解力と協調性
- 語彙力や表現力の高さ
①嘘がないか確認
一部学生のあいだでは「就活は嘘つき合戦」ともいわれています。そういわれるほど、就活で嘘をつくことはめずらしくないのです。
人事担当者は態度や話し方、論理性などから嘘を見極めなければなりません。嘘のガクチカは入社後のミスマッチに、また早期退職につながるおそれもあります。質問に対して支離滅裂な回答をしていないか、言動に嘘のサインが出ていないかを確認しましょう。
②企業に対する理解力と協調性
ガクチカからは企業に対する理解力や学生の協調性なども見ていけます。
業務内容や求める人材像にあったガクチカであれば「企業理念や社風についてきちんと研究してきているんだな」「それらを理解したうえでコミュニケーション能力の高さやリーダーシップ経験をアピールしてくれているんだな」と判断できます。
③語彙力や表現力の高さ
語彙力や表現力は、商談やプレゼンなどさまざまなビジネス現場で活用できるスキルです。ガクチカの状況説明が長く、後半の過程や結果についての説明が短くなっていないか確認してみましょう。
また「なぜそれに取り組んだのか」「どのような役割をしたのか」などの説明から論理的思考能力や表現力を測れます。「なんとなく」「漠然と」という理由では語彙力や説明力が高いとはいえません。
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