シルバー人材センターとは、高齢社会対策を支える組織のことです。ここではシルバー人材センターの概要や具体的な仕事内容、利用の流れや料金にいて解説します。
目次
1.シルバー人材センターとは?
シルバー人材センターとは、地域の高年齢者に就業を提供して生きがいのある生活を実現、またボランティア活動などさまざまな社会参加を通じて、地域社会の活性化や福祉の向上に貢献する組織のこと。
シルバー人材センターは原則、都道府県知事の許可を受けた公益法人です。高齢社会対策を支えるための重要な組織として、市区町村単位に設置されています。
注目される理由
定年退職した高年齢者のなかには、就業意欲や仕事で培った知識はあるのにニーズに合致した仕事がないため、家の中で余生を送っているという人も存在します。
シルバー人材センターはシニア人財が貴重な社会資源として活動できるよう、臨時的あるいは短期的な就業を希望する高年齢者に提供したり、起業する高年齢者に対して各種手続きの相談や、資金調達の支援などを行ったりする組織として注目されているのです。
2.シルバー人材センターの概要
シルバー人材センターが目的とするのは「生きがいを得るための就業」。ここではシルバー人材センターの設置場所や会員条件などの概要について、説明します。
設置場所
先に触れたとおり、シルバー人材センターは原則、都道府県知事の許可を受けた公益法人であり、市区町村単位に設置されています。「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律」にもとづき、各センターが独立して運営している組織です。
会員の条件
シルバー人材センターを利用するためには会員登録が必要です。以下の条件を満たしていれば、誰でも登録できます。
- 原則として60歳以上である
- 管轄の市区町村内に住んでいる
- 常態的に仕事をしていない
- 健康で就業意欲がある
- 入会説明を受け、入会申込書の提出、シルバー人材センターの趣旨に賛同できる
- 会費を納入できる
就業形態
シルバー人材センター入会後は下記の4形態で仕事を受託します。それぞれの就業形態について説明しましょう。
- 請負
- 委任
- 派遣
- 職業紹介
①請負
シルバー人材センターが発注者と委託契約を結んで業務を受注し、それを会員に提供(紹介)する形態のこと。「請負」の場合、発注者と業務を請け負った会員とのあいだに雇用関係は生じないため、発注者は会員に指揮命令ができません。
また発注先の社員と一緒に業務を行うことは「偽装請負」と呼ばれる違法行為にあたるため禁止されています。
②委任
シルバー人材センターが発注者から業務を受注し、その業務を会員に委任する就業形態のこと。シルバー人材センターは受注者と業務実施を目的とした委任契約書を締結します。さらにその業務を目的とした会員と委任契約を締結したうえで業務を実施する形態です。
こちらも「請負」と同じく委託を受けた会員の裁量で業務が行われるため、発注者は会員に指揮命令できません。
③派遣
シルバー人材センターが発注者から業務を受注し、会員を事業所などに派遣して業務を行う形態のこと。シルバー人材センターは発注者と「労働者派遣契約」、会員と「雇用契約」を締結します。
「派遣」の場合、「請負」や「委託」と違って発注者からの指揮や命令を受けて働きます。業務の中心は発注先の従業員と一緒に働く「混在作業」です。
④職業紹介
シルバー人材センターが発注者に会員を紹介し、紹介された発注者がその会員を雇用して業務を行う形態のこと。職業紹介は会員以外に地域の高齢者も対象となります。
発注者が会員を雇用するため、発注者による指揮命令が可能です。また職業安定法や労働基準法、労働安全衛生法などの労働関係法令も適用されます。
3.シルバー人材センターに依頼できる仕事内容の例
シルバー人材センターではさまざまな業務を取り扱っています。いずれも具体的な内容はセンターごとに異なるため、詳細は管轄のシルバー人材センターに確認が必要です。ここではシルバー人材センターに依頼できるおもな仕事の内容について説明します。
事務作業
シルバー人材センターでは企業運営に欠かせない一般事務や経理補助、調査集計などの事務作業を紹介しています。筆耕や宛名書きなど手間や時間のかかる事務作業もあれば、ホームページの更新やWord、Excelなどを使った業務もあるのです。
専門的な作業
シルバー人材センターには実務経験豊富なシルバー人材も数多く登録されています。そのため翻訳や通訳、植木の剪定や壁のペンキ塗りなど専門性の高い作業を紹介することもあるのです。大工仕事や衣類のリフォーム、学習教室の講師なども依頼できます。
軽作業
シルバー人材の知識と経験、技術を生かした軽作業も請け負っています。公園や施設などの清掃、学校施設や図書館での管理業務、除草や草刈り、自転車整理など屋内外の軽作業もシルバー人材センターで取り扱っているのです。
4.シルバー人材センターの利用料金
シルバー人材センターでは事務作業から専門性の高い作業、軽作業までさまざまな業務を扱っています。しかし利用にはそれぞれどのくらいの料金が発生するのでしょう。
ただし具体的な利用料金は地域によって異なるため確認が必要です。ここでは利用料金の目安について説明します。
料金形態
一般的に同センター内でも「時間単価制」と「作業単価制」にわかれます。以下はそれぞれの具体的な仕事と料金の一例です。
- 時間単価制:家事手伝い 1時間1,067円~、経理事務 1時間1,067円~、パソコン個別指導 1時間1,320円など
- 作業単価制:着物着付け(留袖) 5,500円、リサイクル自転車 4,550円、障子張り(普通大サイズ) 1,263円など
料金相場
シルバー人材センターの具体的な利用料金は地域によって異なるため、詳細は管轄のシルバー人材センターに確認が必要です。参考までに、東京都中央区の利用料金目安を見ていきましょう。
- 一般事務(継続):1時間1,072円~
- 筆耕(毛筆、目録):1枚2,500円~
- ビルマンション清掃(トイレ清掃あり):1時間 1,300円~
- 草刈り機を使用しない草取り:1時間1,500円~
事務作業
書類整理やファイリングなど一般事務の場合、利用料金の相場は1時間あたり1,000円前後。なお東京都中央区の場合、継続は1時間1,072円~であるのに対し、単発は1時間1,200円~となります。このように就業形態や継続、単発受注によって多少変動するのです。
専門的な作業
専門的な作業の場合見積もり後に料金が決まることもあるため、料金相場の幅は広くなります。秋田県秋田市の場合、庭木の剪定が9,890円、大阪府東大阪市の場合、網戸張替えが2,500円/枚、大工や塗装仕事などは現場確認のうえ見積もりとなっているのです。
軽作業
軽作業の利用料金は1,000~1,500円がおおまかな目安となります。大阪府東大阪市の場合、清掃作業が1時間1,105円~、草刈(機械使用)が1時間1,540円です。
しかし大阪府松原市の場合、3時間程度の清掃が1回3,180円、商品陳列が1回3,180円となっており、地域により大きく異なるとわかります。
5.シルバー人材センターの仕組み
シルバー人材センターは仕事の依頼主、つまり発注者の「手伝ってほしい」という要望と、「誰かの役に立ちたい」と考えている高年齢者の意欲から成り立っています。
シルバー人材センターに登録している会員は、仕事内容と就業結果に応じてシルバー人材センターから配分金を受け取れます。しかしこれは一定の就業日数や収入を保障するものではありません。
またシルバー人材センターによっては事業を委託するだけでなく、独自に仕事を開拓して実施している組織もあります。
6.シルバー人材センター利用の流れ
企業がシルバー人材センターに業務を依頼する際、以下5つのステップで手続きを進めます。企業がシルバー人材センターを利用する際の流れについて、説明しましょう。
センターによっては電話やFAXのほかインターネットでも受け付けているところ、契約しない限り申し込み後キャンセルを可能としているところなども。まずは受付相談窓口に相談してみるとよいでしょう。
また有害、危険な作業、重労働と思われる作業など、高年齢者にふさわしくない仕事はこの段階で断られます。
センターによっては直接現場を見学してから契約するところや、2回目以降の同一業務依頼の場合電話だけで契約となるところもあります。
一般的に就業期間は月10日、週20時間を超えないことを目安としています。
企業が直接会員に振込や支払をする必要はありません。
7.シルバー人材センターを利用するメリット
企業がシルバー人材センターを利用するメリットは3つです。それぞれについて解説しましょう。
- 即戦力の獲得
- 人件費の削減
- ダイバーシティ(多様性)の実現
①即戦力の獲得
仕事や趣味に意欲的で、新たな価値観を取り入れることや健康意識、自立意識が高い高年齢者を「アクティブシニア」といいます。アクティブシニアはこれまで長く社会人として活躍してきたため、若い年代に比べて豊富な経験と専門知識を有しているのです。
シルバー人材センターを利用すると、これらを生かしたアクティブシニアを即戦力として獲得できます。
②人件費の削減
シルバー人材センターの会員は企業が雇用するのではなく、センターとの請負契約になります。そのため一般社員を雇用する際に発生する社会保険料といった負担は、一切ありません。
また公益団体であるシルバー人材センターは収益を目的としていないため、相対的に見て人件費を削減できます。さらに企業がシルバー人材を活用すると、国から助成金や税制上の優遇などを受けられるのです。
③ダイバーシティ(多様性)の実現
ダイバーシティにおける多様性とは女性や子育て世代、外国人だけではありません。シルバー人材にも職場環境を確立できれば、ダイバーシティが実現可能な会社と評価され、企業としてのブランディング、社会的信用の向上が期待できるのです。
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8.シルバー人材センターを利用する際の注意点
シルバー人材センターの利用にはさまざまなメリットがある一方、注意点もあるのです。ここではシルバー人材センターを利用する際の注意点を2つ説明します。
依頼できる仕事内容に制限
「シルバー人材センター利用の流れ」の項目でも触れたとおり、業務内容によっては依頼が断られる可能性もあります。そもそもシルバー人材センターの会員は全員が高年齢者です。そのため過酷な環境下での就業や複雑で難しい作業などは、依頼できません。
また「高年齢者の雇用の安定等に関する法律」により、原則、臨時的かつ短期的な業務のみ対応しています。長期的な作業や複雑な業務などには不向きです。
原則会員の指定は不可
シルバー人材センターでは、原則として特定の会員を指定できません。ただし介護のように特別な知識や技能が必要な場合、継続的な就業も可能としているセンターもあります。あらかじめ管轄のシルバー人材センターに確認しておくとよいでしょう。