データドリブンとは、分析で得たデータを用いて課題解決や意思決定を行うこと。ここではデータドリブンの概要や、具体的な運用方法を解説します。
目次
1.データドリブンとは?
データドリブン(Data Driven)とは、収集したデータを元に意思決定を行うことです。日本語で「データ駆動」と訳されます。
経営者が経験や感覚で意思決定すると、行動や判断が偏ってしまうでしょう。データドリブンを実施すれば、主観を含めず情報を客観的に分析してビジネスに活用できるのです。これにより、顧客のニーズが明確になり、課題解決の精度を高められます。
言葉の使い方
データドリブンという言葉の使い方として挙げられるのは、以下のようなものです。
- 「これからはKKD(勘・経験・度胸)ではなく、データドリブンで考えよう」
- 「データドリブンの根幹は、ビッグデータ(リアルタイムで積み上がる膨大なデータ)にある」
データドリブンはビッグデータを用いて行われます。
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言い換え方
データドリブンの「ドリブン(driven)」は「drive」の過去分詞で「〜に突き動かされた」という意味です。そのため、「データドリブン」を直訳すると「データに突き動かされた」となり、「データを元にした」とも言い換えられます。
2.データドリブン関連語
データドリブンを含む関連語でよく知られているのが「データドリブン経営」と「データドリブンマーケティング」です。それぞれの語について説明します。
データドリブン経営
従来、解析できなかったビッグデータを詳細に分析し、経営戦略の策定や意思決定など積極的に事業へ活用する経営手法のこと。現状をリアルタイムで把握し、顧客ニーズを解析した「根拠ある意思決定」ができます。
顧客や従業員のニーズ変化、ビジネスのスピード化などに伴って注目度が高まっている手法です。
データドリブンマーケティング
市場動向や顧客の行動データを詳細に分析し、それらのデータにもとづいて施策を実施するマーケティング手法のこと。市場や顧客への理解を深められるため、より確実な戦略と戦術を採択できます。
注目される背景として挙げられるのは、販売チャネルやタッチポイントの拡大、ユーザー行動の複雑化などです。
3.データドリブンが注目される理由
多くの企業がデータドリブンに注目し、導入を開始した大手企業も少なくありません。データドリブンが注目される2つの理由を説明します。
データ活用幅の拡大
技術の進歩により、多くのデータを集めやすくなったことが挙げられます。たとえばSNSや口コミサイトから顧客のリアルな声をかんたんに集められますし、Webサイトを訪れたユーザーの行動を可視化できるツールも登場しました。
手軽に膨大なデータを集められるようになった結果、経営やマーケティングに有効に生かすデータドリブン手法が注目されたのです。
AI分析の普及
AIを活用したデータ分析が浸透し、短時間で高精度の分析を行えるようになったのも理由のひとつです。
AIに分析させれば、人件費や人為的ミスを減らす効果も得られます。業務効率化や生産性向上が期待できるだけでなく、長期的には事業の拡大や経営状態の向上にもつながるのです。
またAIの分析方法を変えると収集したデータをほかの分野にも利用でき、新たな課題や応用方法が見いだせることがあります。
4.データドリブンのメリット
データドリブンをビジネスに導入すると、具体的にどのような効果を得られるのでしょうか。ここでは3つのメリットを説明します。
- 売上や利益率の増加
- 顧客ニーズの発見や理解
- 意思決定の精度向上
①売上や利益率の増加
データドリブンの導入はデジタル化も推進するため、売上や利益率の増加が期待できます。たとえば書類として蓄積された過去データをデジタル化すれば、時間や場所を問わずに必要な情報を瞬時に引き出せるのです。
無駄な時間や労力を削減できればほかの業務へあたれますし、オンラインで仕事を完結するのも可能でしょう。営業活動の効率化や作業コストの削減が促進し、売上や利益率の向上が実現できます。
②顧客ニーズの発見や理解
データドリブンで膨大な情報の収集と分析を行うと、リアルタイムの市場や顧客の行動を可視化でき、顧客ニーズの発見や理解につながります。今まで着目していなかったデータを客観的に分析すると、新たな顧客ニーズが見つかることもあるからです。
顧客が本当に望むサービスの提供が可能となり、顧客満足度の向上や新規顧客の獲得が期待できます。
③意思決定の精度向上
データドリブンでは、意思決定を経験や勘ではなくデータにもとづいて客観的に判断します。そのため意思決定の精度とスピードが向上するのです。
勘や経験をもとにして適切な意思決定を行うには、一定以上の経験やノウハウが欠かせません。また周囲の理解と納得を得られるだけの明確な根拠を提示するのは難しいでしょう。
データによる意思決定には数値による合理的な根拠があり、担当者が代わっても安定した意思決定を行えるのです。
5.データドリブンのデメリット
導入すれば多くのメリットがあるデータドリブンには、デメリットもあります。それぞれについて解説しましょう。
- データを扱うスキルが必要
- データを分析する人材が必要
- ツールやインフラ整備のコストが必要
①データを扱うスキルが必要
せっかくデータドリブンを取り入れても、データを経営資源として生かす能力がなければ意味がありません。膨大なビッグデータを扱うには、データの分析環境を構築し運用する能力が求められます。具体的には以下のようなスキルが必要です。
- 営業活動の詳細な内容をデータとして蓄積するスキル
- 収集したデータを読み込み分析するスキル
- 分析した情報をわかりやすくまとめるスキル
②データを分析する人材が必要
データドリブンをビジネスに導入する目的は、データを元に適切な計画を立案して実行すること。
そのため膨大なデータを扱うスキルと知識を持った「データサイエンティスト」や、マーケティングに精通した経験豊かな「プロジェクトマネージャー」などの人材が欠かせません。社内での育成や外部からの招致が必要となるでしょう。
③ツールやインフラ整備のコストが必要
データドリブンの導入にはIT機器やツール、インフラ整備などの初期コストが必要です。
たとえばデータ収集や解析に必要なITシステムやマーケティングツール、データを蓄積するストレージなどの確保が挙げられます。また営業活動の詳細なデータを収集するために、担当者にタブレットを支給する必要もあるでしょう。
6.データドリブン実現に必要な4つのプロセス
データドリブンはデータ収集から始めるものの、収集だけで終わってはいけません。では何をすればよいのでしょう。ここではデータドリブン実現に必要な4つのプロセスを説明します。
①データの収集
業務システムやWebサーバーや従業員へ支給しているPCなどからデータを収集して一元管理を行います。まずは以下のようなデータを集めましょう。
- 顧客情報
- 売上データ
- 商品やサービスデータ
- Webサイトへのアクセス数や経路
- SNSの閲覧数
- 口コミやレビュー
できるだけ多くの情報を集めるのが望ましいです。しかし長い時間をかける必要はありません。不足している情報があれば、後から追加しても問題ありません。
②データの可視化
分析しやすいよう収集したデータを整理して可視化します。
不要なデータは削除して、必要なデータは種類ごとに振りわけるのです。さまざまなデータを一度に管理できる仕組みが必要ですし、分析結果はわかりやすく表やグラフにまとめなければなりません。
このようなデータの可視化を手作業で行うと膨大な時間がかかるので、ツールを利用するのが一般的です。
③データを分析
可視化したデータを、解決したい問題や現状に照らし合わせて分析します。
分析では「最大値」「最小値」「現状の順位」など定量的な数値に注目しがちです。しかし「変化」や「傾向」など定性的(数値化できない)要素の見極めも重要となります。
定性的なデータからは知問題点や新しい課題を発見しやすいため、新たな戦略の創造にもつながるのです。
④計画の策定と行動
分析した結果をもとに課題解決への計画を策定し、具体的なアクションを実行します。立案した施策を実行したら、施策後のデータ収集を行い、効果の検証と分析をとおして改善行動を考案するのです。
データドリブンを成長させるためは、4つのプロセスを繰り返すことに意味があります。いわばデータを用いたPDCAサイクルです。あらゆる部門で活用できるでしょう。
7.データドリブン実現を支援するツール
データドリブンではビッグデータを扱うため、可視化や分析をExcelで行うのには限界がありますし、人力での収集も避けたいところです。よってデータドリブンを実現するならシステムやツールが欠かせません。ここでは7つのツールを紹介します。
- DMP(データマネジメントプラットフォーム)
- Web解析ツール
- MA(マーケティングオートメーション)
- SFA(セールスフォースオートメーション)
- CRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)
- CDP(カスタマーデータプラットフォーム)
- BI(ビジネスインテリジェンス)
①DMP(データマネジメントプラットフォーム)
Web上に蓄積された「ユーザーの行動履歴」「属性」「広告配信データ」などを一元管理できるツールです。
DMPは、第三者が収集したオーディエンスデータ(個人を特定しない行動データ)を取得できる「オープンDMP」と、自社データを集約して外部データとともに一元管理できる「クローズDMP」にわかれます。
DMPを使うメリットは、自社のターゲット層に似た新たな顧客を開拓しやすくなることです。
②Web解析ツール
アクセス解析や競合分析、キーワードやヒートマップ分析(Webページ内での行動を分析する手法)などを行えるツールの総称です。
よく知られているツールとして、各ページのアクセス状況を分析する「Googleアナリティクス」や、アクセスまでの行動データを分析する「Googleサーチコンソール」、検索ボリュームを調べる「Googleキーワードプランナー」などが挙げられます。
目的に合わせて複数のツールを導入し、組み合わせて分析するのが一般的です。
③MA(マーケティングオートメーション)
マーケティング活動に必要なアクションを自動化できるツールです。顧客情報の一元管理、顧客の関心度や購買意欲などに合わせたメール配信、成約見込み度合いのスコアリング、顧客に対するアクションシナリオの作成などが行えます。
顧客が多様化した昨今、One to Oneマーケティングを効率的に実現できるツールとして注目されているのです。
④SFA(セールスフォースオートメーション)
日本語では「営業支援システム」と呼ばれ、「顧客管理」「案件管理」「行動管理」「予実管理」「商談管理」という5つの機能を利用できます。営業担当者のスケジュールと進捗、結果などがリアルタイムで反映され、進捗状況をチームで共有できるのが特徴です。
営業活動の効率化や標準化、フォロー体制の構築に役立つでしょう。
⑤CRM(カスタマーリレーションシップマネジメント)
日本語では「顧客関係管理システム」と呼ばれ、「顧客管理」「メール配信」「問い合わせ管理」などの機能を利用できます。
蓄積するデータには「氏名」「年齢」「属性」などの基本情報や、「営業プロセス」「購入履歴」「問い合わせやクレームの履歴」など顧客にアプローチするうえで欠かせない情報も含まれるのです。
そのためSFAとCRMを連動させると、より効果が高まります。
⑥CDP(カスタマーデータプラットフォーム)
企業が取得した各顧客の属性や行動データを「収集」「統合」「分析」するためのツールのこと。自社のWebサイトから「氏名」「生年月日」「住所」「家族構成」「購買データ」などの情報を収集できます。
CDPは先に挙げたプライベートDMPとほぼ同義のツールです。またCDPで収集顧客データが別々のシステムやデータベースで管理されていても、CDPでこれらのデータを集約できます。
⑦BI(ビジネスインテリジェンス)
企業内のさまざまな場所に分散しているデータを統合して、可視化と分析を行うツールのこと。
項目の入れ替えや階層の掘り下げなど多彩な分析が行える「多次元分析機能」や、法則性や類似性を見出す「データマイニング機能」にくわえて、「シミュレーション機能」や「レポーティング機能」などを備えています。データの共有も可能です。