【事例あり】ペーパーレス化とは? 方法、進め方、メリット

ペーパーレス化とは、IT技術を活用して紙の書類を無くすこと。今回はペーパーレス化の方法や進め方、メリットなどを解説します。

1.ペーパーレス化とは?

ペーパーレス化とはITシステムやツール、Webサービスの活用やデジタル化などにより、紙の書類を無くすこと。主にビジネスの文脈で使われ、広義には「紙の書籍から電子書籍」「紙のチケットから電子チケット」など、日常生活の変化も含みます。

ペーパーレス化における現状

法改正を受けて多くの企業がペーパーレス化に取り組んでいるものの、半数以上の従業員はいまだ導入を実感できていません。

e-文書法や電子帳簿保存法の改正に後押しされ、多くの企業がペーパーレス化に取り組み始めました。しかし一般社団法人日本能率協会の2021年の調査によれば、「この1年ペーパーレス化が進んでいない」と答えた従業員は56.1%。

企業の取り組みとは裏腹に、従業員は十分な実感を得られていないのです。

参考 2021年「ビジネスパーソン1000人調査」【ペーパーレス化の実施状況】一般社団法人日本能率協会

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2.ペーパーレス化の目的

ペーパーレス化の目的は、紙を減らすことによるコスト削減や業務の効率化、セキュリティ強化、環境保全などさまざまです。

紙を減らせば、書類の印刷や郵送、保管にかかるコストが削減できます。データとして検索できるようになるため、紙の書類のような探す時間も必要ありません。紛失や情報漏洩も起きにくくなるうえ、森林伐採の抑制にもつながります。

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3.ペーパーレス化が重要視される理由

ペーパーレス化が重要視される背景には何があるのでしょう。ここではペーパーレス化が重要視される理由を説明します。

  1. 働き方改革の推進
  2. 重要書類の紛失や漏えいのリスク軽減
  3. 地球の環境保全への貢献
  4. 電子帳簿保存法の改正
  5. テレワークの拡大

①働き方改革の推進

働き方改革推進で働き方が多様化し、あわせてペーパーレス化による業務の効率化が求められるようになりました。

たとえば働き方改革の一環としてテレワークや時短労働を導入した場合、テレワークの実現にはデジタル化が、時短労働の実現には業務効率化が欠かせません。ペーパーレス化はデジタル化と業務効率化、双方を叶えるものとして注目されたのです。

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②重要書類の紛失や漏えいのリスク軽減

情報の重要性が増していくなか、企業はペーパーレス化による重要書類の紛失、漏えいのリスク軽減を求められています。今や情報は「ヒト、モノ、カネ」と同じく経営資源のひとつであり、情報化の発展で個人情報への保護意識も高まっているからです。

ペーパーレス化は、災害やヒューマンエラーによる紛失や情報漏洩を防止します。企業の利益を守り、内外に安全性をアピールする手段として、より重要視されるようになりました。

③地球の環境保全への貢献

地球環境への保護意識が高まるなか、ペーパーレス化は森林伐採を抑制する手段としても注目されています。現在の地球では、森林の伐採に再生が追いついていません。この状況が続けば、大気汚染や地球温暖化、生物の減少などがさらに起こりえるのです。

紙の原料は木でありペーパーレス化はそのまま木材需要の減少につながります。環境保全への貢献にもなるとして、企業や個人を問わず重要視されるようになりました。

④電子帳簿保存法の改正

電子帳簿保存法(国税書類のデジタル化について定めた法律)が改正され、国税書類がよりペーパーレス化しやすくなりました。令和3年度の改正により、税務署長への事前承認制度の廃止、スキャナーを使った保存要件の緩和が盛り込まれました。

こうした国税書類のデジタル化推進をきっかけに、より多くの企業がペーパーレス化の検討を始めています。

⑤テレワークの拡大

新型コロナウイルス感染症の影響で急速にテレワークが拡大。それとともにペーパーレス化の需要も高まりました。紙の書類は直接の受け渡しを要するため、テレワークの効率を著しく損ないます。

テレワークでそれ以前と同等の業務量をこなすためには、ペーパーレス化が欠かせません。新型コロナウイルス感染症、そしてそれをきっかけとしたテレワークの拡大により、多くの企業がペーパーレス化の導入に踏み切りました。

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4.ペーパーレス化の効果・メリット

ペーパーレス化の効果やメリットは何でしょうか。それぞれについて解説します。

  1. 経費の削減
  2. セキュリティ強化
  3. 社内外コミュニケーションの活性化
  4. 企業のイメージアップ
  5. オフィススペースの有効活用

①経費の削減

ペーパーレス化の導入は紙代や印刷代、人件費など多方面での経費削減につながります。

ペーパーレス化により削減が期待できる経費は、紙代や印刷代だけではありません。書類の印刷や配布、保存、廃棄、検索に関わる手間も含みます。このような手間が大幅に減少すると人件費の削減にもつながるのです。

そのほか保管場所の確保や輸送に関わる費用の削減も見込めます。

②セキュリティ強化

デジタル化した書類はパスワードやアクセス権限を設定できるため、手軽にセキュリティ強化が図れます。

これまで書類のセキュリティ強化には、キャビネットや鍵、管理帳票の運用など、多方面のコストがかかりました。しかしデジタル化した書類は、パスワードやアクセス権限を設定するだけで、かんたんにセキュリティを強化できます。

ヒューマンエラーの防止にもつながるうえ、災害による紛失や情報漏えいのリスクも軽減されるのです。

③社内外コミュニケーションの活性化

ペーパーレス化により情報の共有がかんたんになれば、社内外のコミュニケーションが活性化します。

名刺をクラウド保存した状況を例に考えてみましょう。ネットワークを介してかんたんに共有できるため、誰もが必要な取引先に素早く連絡できるようになります。

それまであり得なかったスピード感や連携が生まれるため、より大きなあるいは新しい成果を得るのも可能です。

④企業のイメージアップ

ペーパーレス化は地球環境に貢献する取り組みであり、社内外によりよいイメージを与えられます。紙の削減は原料となる森林の伐採の抑制に寄与するからです。

ペーパーレス化への取り組みは、地球環境の保護やサステナビリティの推進にほかなりません。こうした意識は世間一般にも広く浸透しており、ペーパーレス化は環境貢献企業としてのイメージアップにもつながります。

⑤オフィススペースの有効活用

デジタル化した書類は、物理的な保管スペースをほとんど必要としないため、空いたオフィススペースを有効活用できます。

これまで紙の書類にはファイルや引き出し、キャビネットや倉庫などといった、物理的な保管スペースが必要でした。しかしペーパーレス化が進めば、そういったスペースはほとんど必要ありません。

空いたスペースに机やOA機器を増やしたり、ミーティングスペースとして使ったりすれば業務効率も向上するでしょう。

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5.ペーパーレス化のデメリット

ペーパーレス化のデメリットは何でしょうか。それぞれについて説明します。

  1. 導入費用の発生
  2. 視認性の問題
  3. システム障害リスク
  4. ITリテラシーの向上

①導入費用の発生

ペーパーレス化の実現には、パソコンやタブレット、スキャナーなどのハードウェアにくわえ、用途に応じたツールの導入費用が発生します。長い目で見れば経費削減につながるものの、まとまった一時的な出費は避けられません。

②視認性の問題

デジタル化した書類は、並べて見るのに向いていません。同じ画面に並べて表示すると、書類が多いぶん、一つひとつが小さくなってしまいます。作業の種類によっては、ペーパーレス化がかえって効率の低下を招いてしまうのです。

③システム障害リスク

ネット環境やクラウドサーバーに障害が起こると、書類データにアクセスできない時間が発生します。多くの従業員が同時に悪影響を被るため、企業全体の業務が大きく妨げられるでしょう。

こうしたデータ特有のリスクを嫌い、ペーパーレス化をためらう企業も少なくありません。

④ITリテラシーの向上

ペーパーレス化を社内に浸透させ、また最大限に生かすためには、従業員全員に一定以上のITリテラシーが必要です。企業は従業員の年代や職種による知識の違いを踏まえ、それぞれに適した教育を行わなければなりません。

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6.ペーパーレス化の対象となる書類例

対象書類を適切に見極めなければ、ペーパーレス化はうまくいきません。ここではペーパーレス化の対象となる書類例を説明します。

  1. 会議やミーティング資料
  2. 企業カタログ
  3. 経理や労務管理書類
  4. ペーパーレス化できない書類

①会議やミーティング資料

紙の資料を使った会議やミーティングは出席人数のぶん、印刷や製本、配布の手間がかかります。デジタル化した書類を使えば、こうした物理的な手間が一切必要ありません。

社内外を問わず、デジタル化した書類を会議前にメールやチャットツールなどで送付しておくだけで配布が完了します。

②企業カタログ

企業カタログをデジタル化すればパソコンやタブレット1台でかんたんに顧客への提示や配布が行えます。またデータなら、内容の更新や反映もその場で対応可能。大量の書類を苦労して持ち運ぶ必要も、古いカタログが無駄になることもありません。

③経理や労務管理書類

経理や労務管理の書類にも、ペーパーレス化できるものが多数あります。たとえば取引基本や業務委託の契約書、注文書や請求書、領収書など。年末調整手続きや経費精算も、システムやソフトの導入でペーパーレス化できます。

④ペーパーレス化できない書類

書類の中には、法律によりペーパーレス化が認められていないものもあります。たとえば携帯を前提とした許可証や免許証、緊急時に備えた文書などは、ペーパーレス化できません。誤った書類を対象にしないよう、選定には十分な注意を払いましょう。

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7.ペーパーレス化の方法

ペーパーレス化の方法は主に、書類の電子化、もしくはITシステムやツール、Webサービスの活用のどちらか。

書類を電子化すれば、これまで紙だった書類をデータに置き換えられます。ITシステムやツール、Webサービスを活用すれば、そもそも紙の書類を使う必要がありません。ここではペーパーレス化の方法を説明します。

書類の電子化

紙で出力する代わりにデータで保存する、またはすでにある紙の書類をデータに変換すること。具体的には「OfficeソフトのPDFエクスポート機能を使う」「紙の書類をスキャナーで取り込む」などが挙げられます。

ITシステムやツール、Webサービスの活用

現在オフラインで行なっている作業を、ITシステムやツール、Webサービスに置き換える方法も、紙書類の削減に効果的です。具体例としては、クラウドサービスやOfficeソフト、文書管理システムなどが挙げられます。

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8.ペーパーレス化の進め方

ポイントを押さえて進めていかなければ、ペーパーレス化はうま手くいきません。ここではペーパーレス化の進め方を説明します。

STEP.1
目的を明確化し経営層の理解を得る
ペーパーレス化の目的を明確に定め、それを経営層に伝えます。

明確な目的がなければ、ペーパーレス化はうまく浸透しません。また経営層の年代によっては、ペーパーレス化に抵抗を持っている場合もあります。目的を明確に定めたうえで、それを経営層に伝え、協力を得ましょう。

STEP.2
全従業員へ周知する
全従業員にペーパーレス化を行うこと、そしてその目的を周知します。

実際に現場で作業するのは従業員であり、彼らの理解や協力なくして、ペーパーレス化は達成できません。目的をきちんと伝えたうえで、必要に応じて現場の声を取り入れましょう。

STEP.3
ペーパーレス化の対象を定める
ペーパーレス化する業務や書類を整理し、どれを対象とするかを決定します。

まずはペーパーレス化できない書類を外し、残ったものに目的に応じた優先順位をつけましょう。一気に取り組むのが難しい場合、優先順位の高いものから、段階的に少しずつ進めていきます。

STEP.4
企業に合わせたツールを導入する
自社の目的に沿った、使いやすいツールを導入します。

既存のツールがある場合、まずそれの活用を検討しましょう。使い慣れた既存のツールであれば、従業員の抵抗も少なくスムーズな浸透が見込めるからです。機能の拡張やオプションの追加のみなら、導入費もそれほどかかりません。

STEP.5
定期的に評価と改善を行う
ペーパーレス化の導入後は、定期的に結果や課題を確認し、必要に応じて改善します。

導入の手間やコストに見合う結果がなければ、ペーパーレス化が成功したとはいえません。結果を確認し、十分でない場合は課題の洗い出しや改善を進め行いましょう。

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9.ペーパーレス化の企業事例

マナックや伊藤忠テクノソリューションズ、大和総研など、これまで多くの企業がペーパーレス化に成功してきました。ここではペーパーレス化の企業事例を説明します。

マナック

難燃剤や医薬品原薬、電子材料などを製造するマナックはペーパーレス化により、資料作成時間の大幅な削減に成功。

複数の拠点を持ち、工場勤務の従業員も多いため、人事評価資料の作成に時間がかかっていました。そこで人事評価ツールを導入したところ、資料の作成時間が7分の1に短縮。人事課の業務負担が減り、スムーズに評価を進められるようになりました。

伊藤忠テクノソリューションズ

コンピュータやネットワークシステムを販売する伊藤忠テクノソリューションズも、ペーパーレス化で業務の効率化とテレワークへの移行を達成しています。

グループ企業との統合にともない、申請や承認システムの複雑さが課題に上がりました。そこでワークフローシステムを導入したところ、約4万3,000時間の業務時間、約5万6,000枚の用紙削減に成功。

新型コロナウイルス感染症の流行化でも、スムーズにテレワークへ移行できました。

大和総研

大和証券グループの一員としてシステムのコンサルティングを手がける大和総研は、ペーパーレス化で業務効率化を成し遂げました。

申請の多くが紙で行われていたため、膨大な手間がかかっていたのです。それを改善すべく、外部のワークフローシステムを導入。申請や決裁にかかる時間が減り、業務効率が大幅に向上しました。

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10.ペーパーレス化推進に役立つツール

ペーパーレス化の推進には下記のツールが役立ちます。それぞれについて解説しましょう。

  1. 情報共有ツール
  2. Web会議ツール
  3. ストレージツール
  4. 電子契約ツール
  5. 勤怠管理ツール
  6. 人事評価ツール

①情報共有ツール

業務に関する情報をオンラインで共有するツールのこと。たとえば社内チャットや社内SNS、グループウェア、顧客管理システムなどです。仕事をしている場所にかかわらず、リアルタイムに情報やデータを共有できます。

②Web会議ツール

オンラインで会議やミーティングが行えるツールのこと。テレワークの普及で一般化したZOOMも、Web会議ツールのひとつです。資料や画面を共有しながら、互いの場所に関係なく会議やミーティングが行えます。

③ストレージツール

オンライン上のデータ保管スペースのこと。許可された従業員は、インターネットを介して、いつでもどこでも必要なデータの閲覧や編集ができます。実物を保管する必要がなくなるため、オフィススペースの有効活用にもつながるでしょう。

④電子契約ツール

オンラインで契約を締結できるツールのこと。印鑑と同様の効力を持つ「電子署名」を活用して、対面による押印なしで契約を締結させます。契約のためだけの移動や契約書の郵送がなくなるため、業務効率の向上や費用の削減が見込めるのです。

⑤勤怠管理ツール

従業員の出勤や退勤、休日などをオンラインで管理するツールのこと。どこからでも利用できるため、テレワークや出張中の従業員も困りません。集計機能が搭載されているものも多く、勤務時間を計算する手間も省けます。

⑥人事評価ツール

紙やExcelの人事評価シートをシステム上で再現し、評価業務を効率化するツールのこと。紙やファイルの管理が不要になるだけでなく、評価者・被評価者の負担が少なくなることから労働生産性を高めます。

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