ITリテラシーとは、情報通信機器を使う際に必要な知識や技術のこと。ITリテラシーを高める必要性と方法について説明します。
1.ITリテラシーとは?
ITリテラシーとは、IT(情報通信技術)を使う際に必要とされる、情報の扱いに関する理解や操作に関する能力のこと。安全に情報通信技術を活用するには、通信の内容やネットワーク、セキュリティなどの理解と、正しい判断と操作が求められます。
そもそもリテラシーとは?
リテラシー(literacy)とは、「読み書きの能力」という意味を持つ英語です。日本でリテラシーという言葉を使う際、「特定の分野におけるつながりや裏側を読み解くための能力」という意味が強くなります。
また「ネットリテラシー」や「セキュリティリテラシー」のように、リスクを回避して有効活用するという意味も含まれるのです。
2.3種類のITリテラシー
ITリテラシーには一般的に、下記3つの要素が含まれています。
- 情報基礎リテラシー
- コンピュータリテラシー
- ネットワークリテラシー
①情報基礎リテラシー
情報を探して、見つけた情報の真偽を見極め活用していく能力のこと。インターネット上には膨大な情報があふれているものの、必ずしも正しい情報ばかりとは限りません。
しかし情報基礎リテラシーが高ければ、適切な情報を取捨選択できるのです。もちろん日常生活におけるうわさ話やデマなどを見極めるためにも、必要な能力とされます。
②コンピュータリテラシー
デジタル端末を使いこなすための能力です。パソコンやタブレットなどのデバイスの使い方はもちろん、ソフトやアプリ、クレジットカードの読み取り機や、バーコードリーダーの使い方なども含みます。
これらの使い方だけでなく、おおまかな仕組みについても知っておけば、誤操作を防げるようになり、情報漏えいのリスクを下げられます。
③ネットワークリテラシー
ネットワークやセキュリティ、モラルに関する知識を理解して活用する力のこと。企業はWebサイトやSNSといったネットワークを活用してやり取りするなか、自社とステークホルダーの情報を保護しなければなりません。
もし誹謗中傷をしてしまえば、自社の信頼を大きく損なうでしょう。このようなトラブルを防ぐためにネットワークリテラシーが必要とされるのです。
ネットワークリテラシーの基本項目
ネットワークリテラシーを持つために、インターネットを使う際の5項目を千葉県警察が公開しています。企業のITリテラシー向上にも役立つ内容です。
- インターネットは世界中の人が見られる
- インターネットには間違っている情報もある
- 直接会って言わないことは、ネットにも書き込まない
- ネット上に一度出てしまった情報は完全に削除できない
- 通信業者は通信記録を保存しているので、誰がアクセスしたかを特定できる
3.ITリテラシーが低いことによるリスク
ITリテラシーが低いままでは、企業として大きな損失を被る可能性も高いです。ここでは5つのリスクを説明しましょう。
- 業務効率の低下
- IT化の遅滞
- 情報漏えい
- 市場を把握できない
- 企業のイメージダウン
①業務効率の低下
コンピュータリテラシーのレベルが低いと、コンピュータの入力だけでなくプリンターといった周辺機器や、タブレットといった端末もうまく扱えません。だからといって周りの社員がフォローすれば、その社員の業務が遅れてしまうでしょう。
円滑に業務を進められず、全体の作業効率も落ちてしまうのです。
②IT化の遅滞
ITリテラシーが低いと、電子化やDXの推進が進みません。たとえばコロナ禍にて、テレワークの導入とともに次々と便利なツールや仕組みが提供されました。
そこでテレワークに切り替えたくとも社員が対応できない場合、導入が遅れます。それにより生産性や競争優位が低下するリスクもあるのです。
③情報漏えい
もっとも恐れなければならないリスクは、情報漏えいの発生。「怪しいメールを開いてウイルスに感染して個人情報が流出してしまう」「社員が誤った操作や行動をとり、うっかり情報を漏えいさせてしまった」事例は後を絶ちません。
とくに個人情報の漏えいは顧客からの信頼を大きく損ね、損害賠償にも発展しかねません。経営や業績の悪化を招く重大なリスクです。
④市場を把握できない
市場の動向を把握する手法がインターネット中心となった今、ITリテラシーが低いままでは顧客の動向を把握できなくなります。データの収集自体ができなかったり、データがあっても分析ができなかったりするからです。
インターネット上の情報やアンケートを活用する際も、信ぴょう性を見極められないでしょう。市場を正確に把握できないと、戦略の策定もままなりません。
⑤企業のイメージダウン
ブログやSNSを活用したものの、社員の不用意な投稿でイメージダウンを招く場合もあります。ITリテラシーが低いと、誹謗中傷ととられる発言や取引先に関する情報、社内の機密情報などへの配慮ができないからです。
とくにSNSは情報の拡散力が高いため、問題になった投稿を削除しても悪いイメージが払拭しきれない場合もあります。
4.ITリテラシー向上のメリット
社員のITリテラシーが高まると企業も多くのメリットを得られます。4つのメリットについて、説明しましょう。
- セキュリティ強化
- DXの促進
- 情報の質が向上
- 生産性の向上
①セキュリティ強化
ITリテラシーが高まると情報やデータが持つ意味や業務にどのように影響するのか、漏えいした場合にどうなるのか、イメージできるようになります。
それによりトラブルやセキュリティの重要性への意識が高まるため、各部署における情報管理体制の見直しにも目を向けられるのです。企業全体の情報セキュリティ強化につながります。
②DXの促進
DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、デジタル技術を活用したビジネスや社会の変革のこと。ITリテラシーの高い人材が増えると、DXを進めやすくなるのはいうまでもありません。
DXは単なる業務効率化だけでなく、新たなビジネスモデルの創出につながります。ITリテラシーを高めるとDX戦略を実施しやすくなり企業価値や優位性、業績などの向上といった成果も得られるのです。
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③情報の質が向上
社員のITリテラシーが高まれば質のよい情報を入手できるようになります。公開元や参照元が不明で不確かだと判断した情報があった際、「正しい情報か」といった視点を持てるからです。
先輩社員や上司はもちろん、必要だと判断すれば官庁や専門家に問い合わせるようにもなります。情報の質が高まれば業務の質も向上するでしょう。
④生産性の向上
ITリテラシーが高まってインターネットを活用できると、生産性も向上します。多くの社員がデジタルデバイスやソフトウエアを使いこなせれば、それだけ業務効率が上がるからです。
また市場の動向が把握しやすくなり、顧客に対しても効果的なアプローチが行えるようになり、マーケティングや営業販売での成約率も向上するでしょう。時間と売上の両面でよい効果を得られると、それだけ生産性が向上するのです。
5.ITリテラシーを高める方法
ITリテラシーを高めるためには、社員任せにせず企業も環境整備といった取り組みを進める必要があります。ここでは4つの方法を紹介しましょう。
- 研修の実施
- 資格取得
- 環境整備
- 積極的なITの活用
①研修の実施
たとえばIT機器の扱いやツール・業務システムの使い方、セキュリティのリスクとトラブルへの対処などを研修で学びます。基本的なITリテラシーに関する知識の研修であれば、企業内講師やeラーニングなどでも実施が可能です。
システム運用やデータの収集分析など、専門性が高い研修をしたい場合、ITに精通した専門家に依頼するとよいでしょう。
②資格取得
ITリテラシーは、IT関連の資格取得を進める過程でも高められます。
たとえば「ITパスポート試験」「情報セキュリティマネジメント試験」は、ITリテラシーに必要な内容を網羅しているのでオススメです。企業が資格取得を推奨するとともに受験費用の負担、報奨金などの支援を行えば社員の学習意欲も高まるでしょう。
③環境整備
いくらITリテラシーが高まる取り組みを進めても、社内にIT環境がともなっていなければ意味がありません。業務をアナログで進めていたり、社内のネット環境のアクセスが悪かったりしては、社員はデバイスに触れず過ごしてしまうからです。
アクセスしやすいネット環境とパソコン、モバイル端末といった通信機器やコミュニケーションツール、業務システムやセキュリティシステムなどの導入やメンテナンスが例にあたります。
④積極的なITの活用
どこでも誰でも利用できる汎用性の高いソフトになじんでいけば、社員はプライベートでも「積極的にITを活用しよう」という気持ちになっていけます。
たとえば仕事でGoogle Driveのスプレッドシートやドキュメントを使用すれば、自宅のパソコンに文書作成ソフトや表計算ソフトが入っていなくても操作を練習可能です。スマホを持っている人ならば、アプリ版ビジネスツールにも触れられます。
6.ITリテラシーを高める資格
ITリテラシーを高める資格といっても、基礎レベルからサイバー攻撃から組織を守れるレベルまでさまざまです。ここでは比較的取得しやすい7つの資格を紹介しましょう。
- ITパスポート試験
- IC3
- 情報セキュリティマネジメント試験
- インターネット検定(ドットコムマスター)
- P検(ICTプロフィエンシー検定)
- ネットリテラシー検定
- 基本情報技術者試験
①ITパスポート試験
ITを使う人が身につけておくべき基礎的な知識があるかどうかを証明する試験です。
インターネットセキュリティの基礎やネットワーク・コンピュータの仕組み、データベースの扱い方、OSの種類や役割など、業務で使うコンピュータのシステムにおける基礎を学べます。
ITを応用するAIやビッグデータ、IoTなどの基本知識も身につくので、マーケティング部門のITリテラシー向上に役立つのです。
②IC3
インターネットやコンピュータに関する基礎知識とスキルがあると総合的に証明できる国際資格です。
クラウドやコンピュータのトラブルシューティング、セキュリティスキル、SNSやWeb会議などのオンラインコミュニケーションやデジタル社会のルール、基本的な表計算ソフトやプレゼンテーションソフトの使い方などを学べます。
それにより対外対応の改善や日々の業務効率の向上といった効果が期待できるのです。
③情報セキュリティマネジメント試験
情報セキュリティに関する知識を有する人材育成に特化した試験です。情報漏えいやサイバー攻撃などのリスク、情報の暗号化やタイムスタンプの仕組み、モバイル端末におけるセキュリティ、セキュリティに関する法令などの知識が身につきます。
日々の業務に関連する項目も多く、一般社員にも自社の情報を守るスキルが身につくのです。
④インターネット検定(ドットコムマスター)
インターネットやネットワークシステムの利活用に関する最新の知識を問う検定です。「BASIC」レベルは日常で安全にインターネットを使えるよう、インターネット接続方法やインターネット使用時のモラルやマナーなどを出題。
「ADVANCE」レベルでは業務向けで、クラウドやセキュリティ、IoTやAIなどの知識を得られます。パソコンやインターネットが苦手な社員でも、段階的にネットワークリテラシーを身につけられるのです。
⑤P検(ICTプロフィエンシー検定)
ICTを活用して問題解決を行う能力についての検定試験です。
パソコン入門レベルの5級からシステム管理者向けの1級まで、6段階にわかれています。4級以上はハードウエアやソフトウエア、ネットワークやセキュリティなどの知識にくわえ、文書作成や表計算などのビジネスソフトを操作するスキルも必要です。
業務遂行に必要なITリテラシーをひととおり学べます。
⑥ネットリテラシー検定
インターネットの便利さと脅威、ルールを理解し、適確な情報を利用して、よりよい情報発信ができる能力を証明する検定です。
ITリテラシーのなかでもとくにネットリテラシーの向上が目的となっており、フィッシング詐欺やスパムメールへの対応なども学べます。情報漏えいといったトラブルを防ぐ効果も高まるのです。
⑦基本情報技術者試験
システム開発や設計などを行うIT技術者の多くが最初に取得する資格です。ITパスポート試験の上位資格であるため、出題分野はおおよそ共通しているものの、各分野でさらに深い知識が求められます。
ハードウエアやソフトウエア、ネットワークやデータベース、マーケティングやセキュリティなどの分野を扱っているため、一般社員の業務におけるITリテラシー向上にも役立つのです。