エンゲージメントスコアとは? 意味や高め方、計測方法を解説

エンゲージメントスコアとは、従業員の企業に対する愛着心を示す指標。ここではエンゲージメントスコアを高めるメリットや、向上する取り組みの事例などについて説明します。

1.エンゲージメントスコアとは?

エンゲージメントスコアとは、従業員が自身の所属する企業に対して抱いている愛着心を示す指標のこと。

エンゲージメントスコアで従業員の熱意や貢献意欲などを数値化すると、表面化しにくい課題を発見でき、信頼関係を強化するための施策を講じやすくなります。

エンゲージメントと従業員満足度の違い

2つの違いは下記のとおりです。

  • 従業員満足度:給与や福利厚生、休暇など実際的な待遇に対する満足度を示す指標
  • エンゲージメント:企業が掲げる経営理念やビジョンへ共感し、自社にどれほど愛着心を持っているかを表す

待遇への満足度が高まると離職防止効果は高まります。しかし貢献意欲にはつながりにくく、パフォーマンスや仕事に対するモチベーションなどの向上効果はあまり期待できません。

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日本におけるワークエンゲージメントスコアの現状

ワークエンゲージメントとは、熱意や意欲を持って仕事に没頭できる状態のこと。厚生労働省の資料によると、日本に限定したワークエンゲージメントスコアは、他国に比べて低い傾向にあります。

また日本では、非正規雇用の従業員のほうが正規雇用の従業員よりも、若干スコアが高いのです。そのほか自身が望んだ企業や役職で働いている人ほど、スコアが高くなる傾向も見られます。

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2.エンゲージメントスコアが注目される理由

的資本経営への活用と労働力人口の確保という観点から、エンゲージメントスコアへの注目が高まっています。

  1. 人的資本経営における活用が重要視されている
  2. 労働力人口の減少

①人的資本経営における活用が重要視されている

人的資本経営の実現において、エンゲージメントスコアを高める施策が必要です。人的資本経営とは、従業員の能力を「資本」と見なして投資し、企業価値の向上を図るという考え方。

エンゲージメントが高まった従業員はパフォーマンスが最大化し、生産性向上に寄与します。そのため人的資本経営の人事施策にて、進捗を可視化するための指標となるのです。

なおエンゲージメントスコアは、義務化が予定されている人的資本の情報開示において、企業の将来性を見極める指標ともなります。この点も注目される理由のひとつです。

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②労働力人口の減少

人材不足を改善するための指標として、エンゲージメントスコアは重要視されています。

日本国内では労働力人口の減少が慢性化し、2021年の総務局の調査によると15歳から64歳の労働力人口は5,931万人。男性は20万人減少、女性は6万人増加、全体としては前年に比べて約15万人の減少となりました。

このような状況下、人材を確保し続けるには、新規採用だけでなく既存従業員の離職防止対策を講じなければなりません。従業員のエンゲージメントスコアを高めれば、従業員と長期に渡って良好な信頼関係を築けるため。従業員の定着率を高められるのです。

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3.エンゲージメントスコアが高いことで期待できるメリット

エンゲージメントスコアが高いことで得られるメリットは「労働生産性」「従業員定着率」「課題解決力」の向上です。これらについて説明します。

  1. 労働生産性の向上
  2. 従業員定着率の向上
  3. 組織課題の発見と解決

①労働生産性の向上

エンゲージメントスコアが高くなると、業務における生産性の向上が期待できます。このことは厚生労働省が2019年に実施した「労働経済の分析」でも示されておりワークエンゲージメントスコアが上昇すると労働生産性は1%から2%上昇するとされているのです。

ワークエンゲージメントスコアが向上すると、積極性や集中力、モチベーション、仕事の質などが向上するため、生産性も向上すると考えられています。また同時に集中力が上がると仕事上でのミスが減る点も、生産性を高める要因です。

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②従業員定着率の向上

エンゲージメントスコアが高いと、従業員定着率が上がる効果も期待できます。自社への思い入れや愛着心が仕事そのものに対する満足度につながるからです。

先に挙げた厚生労働省の「労働経済の分析」においても、ワークエンゲージメントと離職率は相関する傾向があるとされています。海外の企業ではエンゲージメントスコアが2%向上するごとに離職率が1%減少した事例もあるのです。

このことから、離職率の低下を目指す企業は、エンゲージメントスコアの向上に向けた施策を取り入れる必要があります。

③組織課題の発見と解決

エンゲージメントスコアから、組織に隠れる課題を見つけられる場合があります。たとえばテレワークの導入でシステム面を強化したにもかかわらず、生産性やパフォーマンスの低下が見られたといったケースです。

このようなときエンゲージメントスコアを調べて、従業員の意欲やモチベーションの低下が見られたら、原因の解明と対策の考案に移れます。

複数の課題がある場合、エンゲージメントスコアは優先度を判断するための基準ともなりますし、対策の効果を確認するうえでも基準のひとつとなるのです。

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4.エンゲージメントスコアを高める方法

エンゲージメントスコアの向上を図る場合、エンゲージメントの構成要素を理解しておく必要があります。また従業員の声に耳を傾け、各従業員の状況に合った対策を取り入れるのもポイントです。

  1. エンゲージメントスコアを理解
  2. 企業内コミュニケーションを活性化
  3. 従業員の状況を考慮しながら施策を作成
  4. 外部に向けて企業の魅力を発信

①エンゲージメントスコアを理解

エンゲージメントは、複数の要素から成り立ちます。これらの要素を知っておかないと、エンゲージメントスコアの低い要素に対する最適な改善施策を取り入れられません。

早くからエンゲージメントスコアを導入していたアメリカのコーンフェリー社では、スコアリングの基準として、以下の12の項目を策定しています。

  • 企業理念などの浸透、共感、支持
  • 管理職のリーダーシップ
  • 個人の尊重
  • 高品質な商品やサービスの提供
  • 成長機会の充足度
  • 待遇への満足度
  • 業務や課題への理解、それに対する適切な評価
  • 業務における権限や裁量
  • 教育や研修の充足度
  • 他者との協力体制
  • 業務プロセスや組織体制への満足度

②企業内コミュニケーションを活性化

エンゲージメントスコアを高めるうえでは、企業内におけるコミュニケーションを活性化するのも不可欠です。従業員の声に耳をかたむけるだけでなく、企業としてのビジョンや目標を従業員に周知するのも目的とします。

コミュニケーション施策を取り入れる際は、双方向かつオープンなやりとりができる方法がオススメです。たとえば経営層から一従業員まで、誰もが自由に投稿できるチャットや掲示板などを設ける方法があります。

③従業員の状況を考慮しながら施策を作成

従業員とのコミュニケーションを通じて課題が明確になったら、それを解決する方法について考えます。このとき従業員の状況を考慮しましょう。

たとえばエンゲージメントが低いとき、従業員は何かしら不満がある状態であるため、まずは不満を解決する施策を講じなければなりません。一方エンゲージメントが高いときは、従業員が新たな業務や役割などを受け入れやすい状態です。

また施策を実行している間も、エンゲージメントスコアの変動をチェックしましょう。大きく下がるようならば、ほかの施策に切り替える必要があります。

④外部に向けて企業の魅力を発信

課題を解決するための施策を実行してエンゲージメントスコアが向上したら、外部に向けて取り組みと結果を発信するのも大切です。企業そのものの評価が上がって他者から承認を得られると、自社への愛着や貢献意欲がさらに高まるからです。

ほかにも取引先や優秀な人材の確保といった効果も得られるでしょう。このようなメリットで業績の向上を実現すれば、またエンゲージメントスコアを向上させるという好循環を生み出します。

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5.エンゲージメントスコアの計測方法

実情に即した正確なエンゲージメントスコアを算出するためには、適切な計測方法を把握しておく必要があります。エンゲージメントスコアの計測方法で代表的なのは下記の3つです。

  1. エンゲージメントサーベイ
  2. パルスサーベイ
  3. 従業員サーベイ

①エンゲージメントサーベイ

従業員と企業のエンゲージメント状態の数値化を目的とした社内調査です。一般的にはアンケート形式で行われ、自社で設問を用意する方法と、外部へアンケート調査を委託する方法があります。

アンケートの設問例は、「企業理念に対してどのような印象を抱いているか」「待遇面での不満を感じていないか」など。回答は「Yes/No」や5段階評価などが基本です。しかし、設問によっては記述式のほうがよい場合もあります。

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②パルスサーベイ

従業員が日々の業務に対して感じている満足度や、現場で起こっている問題を把握するための調査です。

エンゲージメントスコアの減少につながる問題や従業員が感じている不満を早期に察知する必要があるため、週1回から月1回程度の頻度で行うのが効果的とされています。

調査方法では、5問から10問程度のアンケートを使用するのが一般的です。具体的な設問には「現場で業務を停滞させるトラブルは起きていないか」「自身に割り当てられた役割に不満を感じていないか」などが挙げられます。

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③従業員サーベイ

従業員個人が持つ、社内の人間関係や職場環境に対する不満、あるいは問題を把握するための調査です。企業の問題を客観的視点から発見し、解決するために行われます。そのため従業員満足度だけでなく、組織改善や生産性の向上にもつながる調査です。

従業員サーベイでは、「上司や部下との関係で悩みはないか」「労働環境に不満を感じていないか」といった設問などをとおして、個人的な問題を発見します。従業員が自分の感情や考えを表しやすいよう、無記名アンケートにするのもひとつの方法です。

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6.エンゲージメントスコアが高い企業の取り組み事例

エンゲージメントスコアの向上施策を考える際は、実際の取り組み事例を参考するとよいでしょう。

ここでは経営コンサルティングを手掛ける「リンクアンドモチベーション」が行った「Best Motivation Company Award(ベストモチベーションカンパニーアワード)2018」で、「組織のエンゲージメントスコアが高い企業トップ10」に挙げられた企業の事例をご紹介します。

  1. 佐竹食品
  2. サイバーエージェント
  3. 東京海上日動火災保険
  4. LIFULL(ライフル)
  5. ユーザベース

①佐竹食品

佐竹食品はアワード2021でも1位を獲得し、過去3度の受賞歴を持つ企業。全従業員が参加する「ありがとう総会」の開催と、従業員の裁量権拡大という2つの取り組みを行っています。

2年に1度開催されるありがとう総会では、自社のビジョンや目標を共有して全従業員の意識を向上。裁量権の拡大で、従業員の自主性とモチベーションを向上させ、成長を促進させています。

②サイバーエージェント

サイバーエージェントでは、従業員の「存在意義」を高めてエンゲージメント向上を実現。従業員のコンディション把握ツールや社内異動公募制度を活用し、従業員個人の都合や意思を尊重したキャリア形成を可能にしました。

87%もの従業員が「働きがいがある」と回答しており、コロナ禍においてもエンゲージメントが上昇しています。

③東京海上日動火災保険

東京海上日動火災保険では定期的にサーベイを行っていましたが、組織ごとにエンゲージメントスコアの差が生じていました。そこでまず各組織のマネジャーに対してサーベイの重要性や意図を説明したのです。

理解したマネジャーが自主的に組織課題へ向き合うようになり、改善活動を開始するようになりました。この取り組みが評価され、2022年のアワードにおいても2位を受賞したのです。

④LIFULL(ライフル)

LIFULLではコロナ禍において従業員が好きな働き方と場所を選べるよう、新たな勤務ルールを創設。ほかにも正社員の月例給与を約10%増額して従業員のベースアップを図り、新たなコミュニケーションルールを定めました。

これらの取り組みで従業員のモチベーションが上がり2021年に過去最高のエンゲージメントスコアを記録したのです。

⑤ユーザベース

ユーザベースでは、社内で共有する働き方に関する価値観として「7つのルール」を制定。このルールは行動指針でもあり、従業員に「ユーザベースらしさ」を浸透させました。

また新たな人材の採用においてはその方法を定型化せず、自社の企業文化に合致する人材であるかどうかを重視。

そのほかコミュニケーションを取るイベントといった大小さまざまな対策を講じ、多角的な観点からエンゲージメントスコアの向上を図っています。