ICTとは、情報通信技術を利用したコミュニケーションおよびその方法のことです。ITとの違い、ICTのメリットや活用事例を解説します。
目次
1.ICTとは?
ICTとは、インターネットを活用した情報共有を実現する技術の総称のこと。たとえばメールやチャット、SNSといったコミュニケーションツールはもちろん、ECサイトといったWebサービスもICTに含まれます。
ICTは何の略? 正式名称
ICTは「Information and CommunicationTechnology」の略で、日本語では「情報通信技術」と訳されます。
2.ICT、IT、IoTの違い
ICTと似た言葉に、ITやIoTがあります。それぞれの意味とICTとの違いを説明しましょう。
ICTとITの違い
ITは「InformationTechnology」の略で、日本語では「情報技術」と訳されます。
違いは、ITは「情報技術そのもの」、ICTは「情報技術の方法(使い方)」という点。たとえば、ITはパソコンやスマホ、アプリやインターネットなど情報通信のために開発された技術です。一方、ICTはメールや通販サイトなどITの活用方法を指します。
同義で使われるケース
近年、ITとICTはほぼ同義語として扱われます。ただし民間企業ではIT、政府機関および国際機関ではICTを使う場合が多いようです。
ICTとIoTの違い
IoTは「Internet ofThings」の略で、日本語で「モノのインターネット」のこと。あらゆるモノがインターネットとつながった状態、あるいはその状態を生み出す技術を指します。
たとえばスマート家電や車の自動運転機能などで、モノ本体から直接インターネットへ接続できます。
一方ICTは、ネットワークを活用して人とインターネット、人と人とをつなぐ技術や方法であり、つなぐ対象が異なるのです。
3.ICTが必要とされる理由
現代社会のデジタル化にともない、ビジネスにおけるICTの活用は必要不可欠といわれています。ICTが必要とされる理由について説明します。
- 労働人口の減少
- テレワークの浸透
- 生産性や効率性の向上
①労働人口の減少
現在の日本は少子高齢化と労働人口が低下傾向にあり、中小企業を中心に人手不足が深刻化。この問題を解決する方法として、ICTの活用が注目されているのです。
ICTを活用すれば、少人数でも業務を遂行できる体制を整えられます。たとえばAIやRTA、ドローンなどを活用したサービスやシステムを使えば、一定の業務を自動化できるのです。
②テレワークの浸透
コロナ禍による働き方の変化にともない、テレワークが浸透しました。
テレワークに必要となったWeb会議やWebチャットのデジタルコミュニケーションツール、あるいはクラウドサービスなどもICTに含まれます。つまりテレワークの環境を整えるにはICTの導入が不可欠だったのです。
③生産性や効率性の向上
2018年の総務省「情報通信白書」を見るとICTを導入した企業で「業務の省力化」が1.1倍、「業務プロセスの効率化」が2.5倍に向上したと記載されています。また「新規製品やサービスの展開」においては、これらを上回る4倍にも達しているのです。
ICTをうまく活用すれば、生産性の上昇やコスト削減だけでなく、顧客の増加や新市場の開拓なども可能になります。
4.ICTをビジネスに導入するメリット
現代社会では、企業を成長させるためにICTの導入は必須ともいえるのです。ICTをビジネスに導入するメリットを説明します。
- 新たなビジネスチャンスの獲得
- コミュニケーションの円滑化
- 迅速な情報共有
- 迅速な意思決定
- ヒューマンエラーの防止
①新たなビジネスチャンスの獲得
国内外を問わず多くのステークホルダーと接触する機会を増やせます。たとえばSNSやメールなどのサービスを使えば、不特定多数の人々へ情報を届けられるでしょう。新たな客層や地域、分野へのアプローチが成功すれば、自社の利益を増大できます。
②コミュニケーションの円滑化
グループで会話ができるツールを活用すれば、その場にいないメンバーとも情報を共有できます。
顧客とのコミュニケーションも同様です。外出中の担当者へ急ぎの問い合わせがあっても、スマホやパソコンなどからメッセージを返信できるのです。込み入った話ではメールやチャットではなくWeb会議を使うと、誤解を生む心配が減るでしょう。
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③迅速な情報共有
スマホやタブレットなどを使えば、場所や時間を問わず必要な情報を必要なときに発信できます。
社員同士のコミュニケーションだけでなく、顧客に情報を届ける場合にも役立つのです。リアルタイムに適切な情報を発信すれば、顧客のエンゲージメントを高められるでしょう。
④迅速な意思決定
たとえば会議で重要な決定をしなければならないとき、決定権を持つ人が参加できなければ、その場での意思決定は不可能ですし、アクションへの移行も遅れてしまうでしょう。しかしICTを活用すれば遠隔でも会議に参加でき、意思決定をスムーズに行えるのです。
また会場の手配が不要なWeb会議なら、会議の開催そのものがスピーディーになり、意思決定のタイミングをさらに早められます。
⑤ヒューマンエラーの防止
どのような業務であれ、人間が作業する場合はケアレスミスの可能性が付きまとうもの。とりわけ単調なルーティン作業は、慣れや集中力の低下からミスが起こりやすくなります。
人的ミスを回避するためには、ICTを活用した業務の自動化が効果的です。業務の自動化はヒューマンエラーの回避だけでなく、業務効率の改善にもつながります。
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5.ICT化推進のポイント
ICT化は、単にICT機器を導入するだけではありません。ICT化で達成を目指す目標や目的があるからです。なぜICT化が必要なのかを社員へ伝えれば、ICTの利活用を浸透させやすくなるでしょう。ここではICT化を推進する際のポイントや注意点を説明します。
- ITリテラシーの強化
- 効果測定と改善を実施
- 社員の意見を重視
①ITリテラシーの強化
ICTを導入するといっても、すべての社員が等しくICTを使いこなせるとは限りません。そのため社員のITリテラシーを強化する必要があります。
ITリテラシーとは、パソコンやインターネットといったIT技術を使いこなす能力のこと。また関連するSNSやクラウドサービスといったツールの使い方や、情報セキュリティに対する知識などもITリテラシーに含まれます。
ITリテラシーを高めるための研修や、ICTに慣れていない人へのサポート体制を整備しましょう。
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②効果測定と改善を実施
ICTを導入後、どのような効果が出ているか、効果を測定しましょう。ICT化は目的ではなく手段であり、目標とする効果が出ていなければ意味がありません。必ず効果測定の結果をもとに費用対効果を算出しましょう。
効果が低い場合、導入しているICT機器やツールの見直し、または廃止を検討します。
③社員の意見を重視
ICTツールの選定では、社員の意見を重視しましょう。どれだけコストをかけてICTを導入しても、社員が扱いやすいツールやシステムでなければ、思うような結果が出ないかもしれないからです。
社員の意見や要望を聞き、社員が「使いやすくて便利」と感じられるICTを導入しましょう。無料版や試用期間でテスト導入すれば、導入までのコストを抑えられます。
6.ICTの活用事例
ICTはビジネスの分野だけで利用されるわけではありません。近年、さまざまな分野でICTの導入が進んでいるのです。それぞれの分野におけるICTの活用事例を紹介しましょう。
- 企業
- 教育分野
- 医療分野
- 介護分野
- 看護分野
- 土木建設分野
- 農業・漁業分野
- 防災分野
- 地域活性化
①企業
大手通信会社のNTTは、コールセンター業務の質向上や業務効率改善のためにAIを導入。具体的な内容は、「顧客から寄せられた質問の自動作成」「メールや電話の対応の自動化(自動チャット化)」などです。
コールセンター業務にAIを導入後、対応の質は30%、問い合わせの解決率は25%、顧客満足度は18%、それぞれ上昇しています。
②教育分野
埼玉県立川越南高校では、「主体的な学びと対話の促進」を目的としてICTを導入。科学の授業で生徒にChromebook(ノートパソコン)を配布し、Google Classroom(オンライン学習システム)上で問題の回答を共有する、といった取り組みを行いました。
ICTの活用でグループワークにおける対話が促進され、生徒のモチベーション向上が見られています。
③医療分野
医療分野では近年、遠隔医療システムの構築を目的としてICTを導入。遠隔医療システムは、病院から離れた場所に住む患者さんに診療や医療を提供する試みです。
実際に遠隔医療システムを導入した徳之島徳洲会病院では、オンライン診療のほか、患者さんの異常(呼吸不全や不整脈など)のチェック、夜間の状態を反映した薬の処方が可能になりました。
④介護分野
介護分野では、チャットツールを導入する施設が増えています。その目的は、スタッフ間での情報の正確な共有。電話連絡は口頭でのやり取りになるため、情報が正しく伝わらない場合もあるからです。
介護サービスを提供するアイムでは、1日に数時間かかっていた電話の時間を、チャットツールの導入で半分に短縮できました。
⑤看護分野
患者数の多い看護施設では、問診票の電子化が進んでいます。紙の問診票を大量に扱う場合、ファイリングといった書類の管理業務が大変になるからです。
京都大学医学部附属病院をはじめ多くの病院では問診票を電子化し、タブレットでの管理を実施。業務効率は大幅に改善され、患者の待ち時間が短くなるといった効果が見られています。
⑥土木建設分野
近年、土木建設分野ではドローンの導入が盛んです。土木建設分野でドローンが導入される目的のひとつが、人の出入りが難しい場所の点検や調査。たとえば高層ビルや大型ダムなどは、人が入る際に危険が伴う場所も多いです。
すでに国土交通省もさまざまな調査にドローンを使用。危険個所に立ち入らず正確なデータを取得し、自律飛行による定期的な自動点検も進めています。
⑦農業・漁業分野
農業や漁業分野では、人手不足や生産性の向上を目的としてICT導入を推進。IoTセンサーやドローンなどを活用し、デバイスで収集したデータをほかの端末(スマホやパソコンなど)に送る手法が多く取り入られています。
こちらも農林水産省でさまざまな検証が行われており農業ではセンサーを活用した水位情報の取得や農機の自動走行などが実現。漁業ではセンシングによる水温管理や資源管理、漁場予測などに取り組んでいます。
⑧防災分野
防災分野では、埼玉県上尾市が自動架電(リストにある連絡先へ自動的に音声メッセージを発信する)システムを導入。
導入の目的は、防災リーダー(防災会会長や副会長)への情報伝達の迅速化です。自動架電システムの導入で、数時間かかる電話連絡が数分に短縮されました。2019年に大型台風が上陸したときも、避難準備や避難勧告を迅速に発令できています。
⑨地域活性化
政府はICT導入による地域活性化を目的に、官民データ活用プラットフォームを提供。提供されるサービスは、「オープンデータ・地域特性分析」「IoTエリアセンシング」「AIエージェント」「セミナー実施によるデータ活用人材の育成」などです。
岡山県倉敷市が実際に活用し2018年には30件以上も新たなプロジェクトやビジネスが創出されました。