早期退職とは?【わかりやすく】退職金、メリット、優遇制度

早期退職とは、従業員の意思で定年年齢より前に退職することです。ここでは、早期退職について解説します。

1.早期退職とは?

早期退職とは、従業員自身の意思により、通常よりも早く退職すること。日本では定年退職が一般的でした。しかし近年、柔軟な働き方が推奨されたため、従業員の選択肢を広げる理由から早期退職が増加しているのです。

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定年退職との違い

定年退職とは、定年制度のある企業に勤務する従業員が、定年年齢を超えたときに退職すること。早期退職と定年退職との違いは、下記のとおりです。

  • 早期退職:基本、会社都合退職となり、退職時の年齢は決まっていない
  • 定年退職:自然退職ともいわれ自己都合退職扱いとなり、退職時の年齢は企業が定める定年年齢である

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2.早期退職優遇制度の目的

早期退職優遇制度とは、優遇措置を設け、定年年齢より前に退職を希望する従業員に自主的な退職を促す制度のこと。下記のようなものがあり、一般的に福利厚生の一部として運用されています。

  • 割り増し退職金支給
  • 有給休暇の買い上げ
  • 再就職支援サービス

ここでは早期退職優遇制度の目的について、解説します。

  1. 従業員のライフプランを支援
  2. 人材の新陳代謝
  3. 人員整理

①従業員のライフプランを支援

早期退職優遇制度は、従業員自身の意思による退職をサポートする制度です。セカンドキャリアを模索する従業員が制度を利用すれば、有利な条件で再就職活動ができます。

働き方の多様化で新たなチャレンジをしたい中高年齢の従業員は増えています。早期退職優遇制度は、このような従業員の退職後のライフプランをサポートできるのです。

②人材の新陳代謝

早期退職制度とは、人員整理や社内の活性化を目的とする制度です。早期退職優遇制度があれば、従業員は安心してセカンドキャリアに移れます。

「経営状況によって定年退職による自然減少を待てない」「社内の年齢構成がアンバランスである」などを解決しながら、人材の新陳代謝を促せるのです。

③人員整理

希望退職者募集制度は、従業員に対して自主的な退職を募るため、リストラの意味合いが強まります。一方、早期退職優遇制度は、定年年齢前に退職する従業員のセカンドキャリア構築をサポートする制度です。

業績悪化といったさまざま理由で人員整理を行う企業に早期退職優遇制度があれば、従業員の退職をよりスムーズに促せます。

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3.早期退職とFIREの違い

FIREとは、経済的自立や早期リタイアのことで、Financial Independence, Retire Earlyの略語です。たとえば「若年令時から節約、蓄財に取り組む」「資産の運用益で生計できるため退職する」人が該当します。

早期退職とFIREの違い

早期退職とFIREの違いは、退職後の資産にあります。

早期退職の場合、退職金の支払い以降、金銭の支給はありません。一方、FIREは退職後も、株式投資の配当金や不動産収入などから一定の収入を得られるのです。

ただし早期退職者でも退職を見込んで資産運用するケースもあるため、一概に「早期退職では退職後の収入がない」といえません。

FIREを実現する方法

FIREを実現する方法は、下記のとおりです。

  • 退職前に「退職後の年間支出×25」の資産を形成する
  • 年間で必要な生活費を資産の4%以内に抑える
  • 退職後、資金を運用する
  • 注意点は、下記のとおりです。
  • 想定する生活費を低く見積もらない
  • 税引き後4%になるよう資産を減らさない運用を考える
  • 自由な時間と収入のワークバランスを考える

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4.早期退職と希望退職の違い

希望退職とは、自主的に退職する従業員を会社が募集する制度です。一定期間の給与保障や退職金割増、有給休暇の買い取りなど有利な条件を用意し、従業員の退職を促します。

早期退職と希望退職は、会社が働きかけて従業員の意思で退職する点が共通しているものの、違いもあるのです。ここではその違いを解説します。

制度の目的

希望退職の目的は、企業が将来の経営リスクに備えること。リスクに備える必要がある時期に限定し、従業員へ早期退職者を募ります。

一方、早期退職の目的は、福利厚生の充実です。また早期退職は定年年齢前に従業員が自らの意思で会社を退職し、セカンドキャリアを構築するといった新たな働き方にチャレンジできます。

募集時期

希望退職の募集時期は、企業がリスク対策を行うとき。将来的なリスクに備える必要があると判断したとき、希望退職者を募ります。一方、早期退職の募集時期は通年です。福利厚生の意味合いが強い希望退職は、恒常的な仕組みとして設定されます。

退職理由

希望退職の退職理由は、下記のようになります。

  • 経営悪化によるリストラの前段階といった、企業の経営方針に紐づく退職になるため会社都合
  • 引き止めを受けているにもかかわらず従業員の意思で退職した場合は、自己都合

一方、早期退職の退職理由は、会社が早期退職を促しても従業員が自ら希望して早期退職した場合でも基本、会社都合として取り扱います。

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5.早期退職の割増退職金とは?

早期退職で、割増退職金(通常支払われる退職金に加算して支給する退職金)を支払うケースがあります。割増退職金は、定年年齢前に退職する従業員に対して適用される早期退職優遇制度で用いられるのです。

ここでは早期退職の割増退職金の割増率について、パナソニックの事例とあわせて解説します。

割増率

早期退職における割増退職金の割増率は、下記を考慮し決定します。

  • 企業業績
  • 経営状況
  • 経営環境
  • 早期退職募集理由
  • 退職者の年齢

つまり一律に割増率が定められているわけではないのです。退職金に給与12~24カ月分程度を上乗せするケースが多く見られます。

パナソニックの事例

パナソニックには、早期退職プログラムがあります。「勤続10年以上かつ59歳10カ月以下」「組合員は64歳10カ月以下の再雇用者も含む」といった要件を満たした管理職や組合員に、上限4,000万円の割増退職金を支給するものです。

そのほかキャリア開発休暇や再就職支援を受けられます。

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6.早期退職のメリット

早期退職にはメリットがあります。会社側と従業員側、それぞれのメリットを見ていきましょう。

会社側

会社側のメリットは、下記のとおりです。

  1. 組織の若返りと若手のキャリア形成
  2. 人件費の削減

①組織の若返りと若手のキャリア形成

定年年齢の引き上げや少子高齢化などにより中高齢の社員の比率が高くなれば、会社組織の年齢構成に歪みが生じます。早期退職を活用すれば、組織の若返りや若手の活躍によるキャリア形成を実現できるのです。

②人件費の削減

早期退職では、中高年齢者を対象として「〇歳以上」といった年齢要件を設けるケースが多くあります。なぜなら年齢とともに人件費が高くなりやすいからです。中高年齢者を対象にすれば、定年までに必要な高額の人件費を削減できます。

従業員側

従業員側のメリットは、下記のとおりです

  1. 退職金の割増
  2. 再就職支援の利用
  3. 失業給付の受給

①退職金の割増

早期退職では、通常の定年退職と異なり、割り増した退職金が支給されるのです。金額は先に触れたとおり勤続年数や退職時の年齢、会社の規模や経営状況などで異なります。

②再就職支援の利用

早期退職者のなかには、セカンドキャリアを模索する人もいます。再就職を希望する人に対し、会社の福利厚生として、早期退職優遇制度で再就職支援サービスを提供する企業もあるのです。それにより転職活動がスムーズに進むでしょう。

③失業給付の受給

早期退職したり退職後に就業の意思があったりする場合、雇用保険の失業給付受給資格を得られます。早期退職は一般的に会社都合扱いになるため、自己都合退職の人より2か月早く失業給付を受給できるのです。

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7.早期退職のデメリット

早期退職にはデメリットもあります。会社側と従業員側、それぞれのデメリットを見ていきましょう。

会社側

会社側のデメリットは、下記のとおりです。

  1. 一時的な支出の増加
  2. 有能な人材の流出

①一時的な支出の増加

早期退職者には、通常の退職金より割り増しした退職金を支払います。よって一時的とはいえ、企業の支出が増えるのです。早期退職者を見込んだ備えがない場合、経営に大きな負担がかかるでしょう。

②有能な人材の流出

早期退職優遇制度の存在は、早期退職希望者にとって大きなメリット。よって想定以上に早期退職制度利用者が増える可能性もあります。その際、幹部候補者やスキルワーカーなど優秀な人材が流出するかもしれません。

従業員側

従業員側のデメリットは、下記のとおりです。

  1. 再就職の難易度が上昇
  2. 年金支給額の減少

①再就職の難易度が上昇

早期退職してセカンドキャリアを構築する場合、年齢やスキル、資格や経験などが求められるため、再就職の難易度が上昇します。また給与や福利厚生面などで希望する待遇を確保できるかどうか、未知数です。

②年金支給額の減少

厚生年金制度では、加入期間や在職時の給与額に応じて年金額が決まります。早期退職後、再就職するまでの間にブランクがある場合、定年退職した場合と比較して将来受け取る年金支給額が減ってしまうかもしれません。

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8.早期退職優遇措置の具体例

早期退職優遇措置には、どのような措置があるのでしょう。それぞれについて見ていきます。

  1. 特別休暇制度
  2. 有給休暇の買い上げ
  3. 再就職支援

①特別休暇制度

会社が独自に休暇を付与する制度のこと。労働基準法で定められている休日以外に支給される休暇で、代表的なものには慶弔休暇やリフレッシュ休暇などがあります。

早期退職を希望する人はこのような特別休暇を、再就職活動の準備やセカンドキャリア形成のための勉強などに活用できるのです。

②有給休暇の買い上げ

退職日までに有給休暇を消化できない場合、残った有給休暇を買い上げること。本来、有給休暇の買い上げは禁止されています。しかし退職日までに消化できない有給休暇のみ、買い上げが許されているのです。

③再就職支援

人材会社による早期退職者の再就職支援のこと。会社と人材会社が契約を交わして、企業が行う再就職支援を人材会社に代行してもらいます。代表的な支援例は、早期退職者のカウンセリングや求人紹介、履歴書といった提出書類の添削などです。

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9.早期退職優遇措置の注意点

早期退職優遇措置には注意点もあります。どのような内容なのでしょうか。

  1. 会社の承認を必須条件とする
  2. 誤解を生まないよう従業員へ十分に説明する
  3. 守秘義務を徹底する

①会社の承認を必須条件とする

優れた従業員や将来が有望な従業員を失うのは、大きな損害です。そこで早期退職優遇措置の応募条件に、「会社の承諾なしに早期退職はできない」という一文を明記しておくとよいでしょう。これにより、早期退職による優秀な人的資源の流出を防げます。

②誤解を生まないよう従業員へ十分に説明する

早期退職優遇措置を導入すると、従業員のなかに経営悪化やリストラによる人件費削減などをイメージする人が出るかもしれません。それにより従業員のモチベーションが下がる可能性も考えられます。

早期退職優遇措置を導入する際は、誤解が生じないよう、措置導入の目的や条件などを事前に説明しましょう。

③守秘義務を徹底する

早期退職優遇措置を利用して退職する従業員が、退職後に従事していた業務にかかわる秘密を漏えいしないとは限りません。競合他社に再就職するケースも考えられるため、退職者に対し守秘義務を徹底しましょう。

たとえば情報漏えいに関する誓約書や契約書を作成し、取り交わすといった方法です。