契約社員と正社員の違いとは? 福利厚生、責任、給与、保険

契約社員と正社員には契約期間や給与、福利厚生や責任などに違いがあります。ここでは契約社員と正社員の違いについて解説します。

1.契約社員と正社員の違いを把握すべき理由

契約社員と正社員の違いは、雇用期間や給与・賞与などの待遇、福利厚生や業務上の責任にあります。それぞれの違いを正しく理解しておけば、トラブルの原因も防げるでしょう。

まれに正社員の就業規則はあっても契約社員の就業規則はないという企業も存在します。しかし基本、契約社員にも就業規則は必要です。労働基準法では常時10名以上の労働者を使用している事業所には、就業規則の作成と届出を義務づけています。

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2.契約社員と正社員における契約期間の違い

契約社員と正社員の違いとして第一に挙げられるのが、契約期間の違いでしょう。正社員は無期雇用、契約社員は有期雇用とするのが一般的です。

正社員は無期雇用

正社員とは、期間を定めずに正規雇用された労働者のこと。基本、1日の所定労働時間は8時間、1週間の所定労働時間は40時間のフルタイムです。

しかし契約書に「正社員雇用(1年間の試用期間あり)」といった内容が記載されている場合、有期雇用でも違法になりにくいといえます。この場合、1年以内の契約解消は会社の契約違反になるものの、契約満了時の終了勧告には応じなければなりません。

契約社員は有期雇用

契約社員とは、正社員と同じく企業に正規雇用されているものの、雇用期間を定めた「有期雇用契約」の社員のこと。1日の所定労働時間も基本、正社員と同じフルタイムです。

有期雇用契約の場合、1回の契約期間は最長3年と定められています。ただし高度な専門知識や技術を持っていたり、特定の経験があったりする場合、例外的に5年の契約期間が認められるのです。

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3.契約社員と正社員の給与の違い

契約社員と正社員とでは、給与や賞与など待遇にも違いがあります。ただし原則、同じ職務範囲なら正社員も契約社員も同じ給与でなければなりません。

給与やボーナス

正社員の多くは、1か月を単位として賃金を固定する月給制です。一方、契約社員には年俸制や時給制など、月給制以外の給与形態を採用している企業もあります。

原則、正社員と同じ職務範囲であれば、契約社員の基本給も正社員と同じでなければなりません。

賞与の支給は会社の義務ではないため、なかにはボーナスを支給しない会社もあります。また正社員にはボーナスを支給するが、契約社員には支給しない会社も少なくありません。

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昇給

正社員には実績や能力などを査定して昇給する機会があります。しかし契約社員は、契約時に業務内容や給与額を決めるため基本、昇給や昇進はありません。

もちろん企業から高く評価された場合、契約更新時に昇進、昇格が見込める可能性はあります。ただし人件費削減のために契約社員を採用している場合もあるため、昇給は見込みにくいといえるでしょう。

退職金

退職金制度も法的に定められた制度ではありません。近年、退職金制度を設けない会社も増えました。退職金制度を設けている会社でも、正社員には支給するが契約社員には支給しないケースが大半です。

東京都産業労働局の調査によれば、契約社員に対して退職金を支払っているのは13.2%(2015年)。ここからも、契約社員に退職金を支払うケースは非常に少ないとわかります。

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4.契約社員と正社員の福利厚生の違い

福利厚生には「法定福利厚生」と「法定外福利厚生」の2種類があります。そして原則、どちらの福利厚生も契約社員、正社員ともに共通の待遇になるのです。

  1. 住宅手当
  2. 扶養手当
  3. 交通費
  4. 資格手当

①住宅手当

従業員の住宅に関する補助を支給する制度のこと。家賃補助や社宅の提供、引越し手当の支給などもこれに含まれます。住宅手当の導入や規定に法的制限はなく、契約社員にも正社員と同様に支給するかどうかは会社の判断になるのです。

支給対象の条件も会社が独自に定めます。正規雇用の従業員か、扶養家族がいるか、賃貸暮らしかなどの条件を設定するのが一般的です。

②扶養手当

扶養する家族がいる従業員に支給する手当のこと。こちらも法的に定められた制度ではないため、そもそも支給するのかしないのか、契約社員にも支給するのかしないのかは会社によって異なります。

ただし過去には契約社員に扶養手当がないことを、最高裁が不合理と判断した事例もあるため、職務内容や責任度合いに明確な差がなければ正社員、契約社員ともに支給するのが基本です。

③交通費

「同一労働同一賃金」の導入により、交通費の支給についても格差の見直しが行われました。契約社員と正社員のあいだには、交通費の上限に不合理な格差を作らないのが原則です。なお交通費には下記の2つが含まれます。

  • 通勤手当:社員の自宅から労働場所までの移動にかかる費用
  • 旅費交通費:出張や営業など業務上必要な移動にかかる費用

トラブルが発生しやすいのは前者の通勤手当です。もちろん企業規則で正社員に交通費の支給はないと定めている場合、契約社員にも支給はありません。

④資格手当

業務に生かせる資格を取得した社員に支給する手当のこと。資格手当の導入により、企業は個のスキルアップによる生産力の向上、起業イメージの向上などが期待できるのです。

資格手当も「同一労働同一賃金」の考えにもとづき、契約社員と正社員、双方に同等の手当を支給する必要があります。正社員と同じ資格を持ち、同じ仕事をしている契約社員には、正社員と同じ金額を支給しなければなりません。

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5.契約社員と正社員の責任の違い

これまで見てきたように、契約社員と正社員には給与や待遇などに大きな違いはありません。しかし裁量権や職位階級など、仕事に対する責任には違いが出てきます。

裁量権

自らの考えにもとづいて行動、判断する権利のこと。正社員の場合、仕事の成果や実績によって昇給、昇格の可能性があるため、自然と裁量権が身につきます。

結果、能動的に仕事をした正社員の裁量権は、契約社員に比べて大きくなるのです。とくに成果主義を取り入れている会社ほど、裁量権は大きくなる傾向にあります。

職位階級

前述のとおり、正社員は係長や課長などの役職に昇進する可能性があるものの契約社員にはこのような職位階級がない、もしくはあっても上限が定められていることがほとんど。

「職位階級がないため転勤がない」「特定の職種や仕事に専念できる」などメリットを受けられる一方、「仕事の幅が広がらない」「職位手当がない」などデメリットも生じます。

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6.契約社員と正社員のメリットの違い

契約社員と正社員には金銭や待遇などさまざまな違いがあり、それぞれ異なるメリットを持っているのです。ここでは契約社員と正社員のメリットの違いについて、説明します。

契約社員のメリット

契約社員のメリットとして挙げられるのはなんでしょうか。それぞれについて見ていきます。

  1. 転勤なし
  2. 柔軟な働き方を実現

①転勤なし

正社員は勤務地が限定されない場合も多いため、転勤や異動の可能性があります。とくに結婚して子どもがいる家庭は、転勤によって引越しや転校、単身赴任などの決断をしなければなりません。

しかし契約社員は、契約内容に勤務地も含まれています。そのため基本、転勤は発生しません。

②柔軟な働き方を実現

「副業をはじめたい」「定時で帰ってプライベートを充実させたい」など、柔軟な働き方が実現できるのも契約社員のメリット。契約社員は正社員にくらべて柔軟な労働条件である場合も多いため、ワークライフバランスも容易に保てます。

正社員のメリット

正社員のメリットとして挙げられるのはなんでしょうか。それぞれについて見ていきます。

  1. 待遇の安定
  2. 社会的信用

①待遇の安定

正社員は、一定の収入が保証されるため、安定した生活を送れます。また賞与の支給があったり、社会保険が完備されていたりという点もメリットでしょう。契約社員にボーナスを支給する会社もあります。しかし一般的に賞与の金額は正社員のほうが高いです。

②社会的信用

正社員は安定した収入が期待できるため、カードローンや住宅ローンを組む際、契約社員や非正規雇用にくらべて審査に通りやすくなります。

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7.契約社員と正社員のデメリットの違い

契約社員と正社員にはそれぞれ異なるメリットがあると同時に、いくつかのデメリットもあります。契約社員と正社員のデメリットの違いを見ていきましょう。

契約社員のデメリット

契約社員のデメリットとして挙げられるのはなんでしょうか。それぞれについて見ていきます。

  1. 正社員よりも低い待遇や社会的信用度
  2. 雇用継続の不安定性

①正社員よりも低い待遇や社会的信用度

契約社員の給与や待遇などは契約時に定められており、基本、契約期間内の更新はありません。短期的な月給は正社員と差がないように見えても、長期的な収入で正社員に劣る可能性も高いのです。

また雇用が不安定であるため社会的信用度が低く、各種ローンの審査にとおりにくいこともあります。

②雇用継続の不安定性

契約社員の場合、本人がどれだけスキルアップしても、業績悪化によって契約更新されない可能性もあります。同じ会社で働き続けたくとも、契約が更新されなければ次の勤務先を探すしかありません。

正社員のデメリット

正社員のデメリットとして挙げられるのはなんでしょうか。それぞれについて見ていきます。

  1. 人事異動の拒否権
  2. 長期休暇の取得が困難

①人事異動の拒否権

正社員は基本、会社からの人事異動命令に従う必要があります。「希望していない部署への異動を命じられた」「この異動は自分のキャリアプランには合わない」と感じ、そこから不眠症やうつ病を発症する人もいるでしょう。

それでも合理的かつ特別な事情がない限り、正社員は人事異動に従わなければなりません。

②長期休暇の取得が困難

契約社員は契約期間満了後、次の契約を開始するタイミングを自分で決められます。このタイミングで長期休暇を取得すれば、数か月間の旅行や留学も可能でしょう。

しかし正社員の場合、数か月の休暇を取得するのは非常に困難です。長期旅行や留学を考える際は、退職を検討しなければなりません。

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8.契約社員と正社員の面接内容の違い

契約社員も正社員も、面接の内容は基本同じです。どちらもこれまでの経歴や自己PR、志望動機や責任感の有無などを確認します。

面接時の服装や髪形

面接時の服装は正社員も契約社員も同じで、スーツの着用が基本です。奇抜な髪型や髪色はビジネスシーンにふさわしくないため、必要に応じてスタイルを整えておきましょう。契約社員でも正社員でも「この人と一緒に働きたい」と思わせる服装、髪型が重要です。

面接回数や質問内容

面接回数や質問内容にも大きな違いはありません。現場担当や人事担当との一次面接、管理職との二次面接など合計3~5回面接を行う企業もあれば、はじめにSPI試験を行う企業もあります。

質問内容も志望動機や自己PR、経歴や将来ビジョンなどについてです。いずれも契約社員、正社員ともに大きな違いはありません。

採用確率

「正社員に比べて契約社員のほうが採用されやすい」ことはありません。会社から見れば契約社員でも正社員でも、自社の社員であることに変わりはないからです。

「契約社員だから受かりやすい」と考えず、「なぜ正社員ではなく契約社員として働きたいのか」を考えたほうがよいでしょう。